【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未

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32 箱庭師は感謝の気持ちのアクセサリーを作る。

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朝はカイルとライトさんに箱庭整備を頼むことにして、わたくしはコツコツと護符の制作をしておりましたの。
昨夜の続きからですけれど、【帰路の護符】は50個。【身代わりの護符】は30個用意出来ましたわ。
付与アイテムを作れる付与師からしてみれば、この護符こそが一番の収入源とも呼ばれる物で、付与師の中では、護符作りが一人前の証とも言われておりますの。
独り立ちするにしても、護符が作れなくては定期的な収入が無くなってしまいますものね。
その代わり、とても安価な素材で作られていることもあり、値段もお安い商品な為、付与師は護符を大量に作れるようにならねばなりません。
現段階で50個は、少々物足りないかしら……。
護符の材料をとにかく沢山と思い、材料だけは山のように作ってしまった為、この様な事態に……。
取り敢えず【帰路の護符】だけでもあともう少し作らねばなりませんわね。

帰路の護符は銅貨10枚。
身代わりの護符は銅貨50枚で取引されています。

対して、【帰路の指輪】や【身代わりの華】と呼ばれる付与アクセサリーになると、一気に値段は跳ねあがり、回数も増えますのよ。
帰路の指輪でしたら使用回数は50回で、他の店ですと銀貨20枚で売られており、身代わりの華でしたら、使用回数は30回で、金貨1枚で売られています。
身代わりの華の場合、身代わりになるたびに花びらが散り、全部なくなったら終わりと、解かりやすい見た目になってますわ。

お店を守ってくださったと言う双子さんの為にも、身代わりの華は二つ用意しなくてはなりませんわね。
此方の方がわたくしとしては作りやすいんですけれど、コツコツ稼ぐ事も大事ですわよね!
カイルたちがお店に行く前に温泉に入りに来るでしょうから、それまでに帰路の護符を追加で30個作ってから、双子ちゃんの為の身代わりの華を作る事に専念しましたわ。
モチーフの花は花弁の多い花が多く、今回わたくしが選んだモチーフの花はやはり人気の薔薇。
金の髪飾りに薔薇の細工を美しく施し、大輪の薔薇を咲かせていくのがポイントですわ。
集中し、身代わりの華の作成を二つ終わらせる頃には、後ろにカイルとライトさんが立っていることに気がつきませんでしたわ。


「そうやって指先で魔力を流して作っていくのか……」
「綺麗な大輪の赤と白の薔薇ですね」
「まぁ! 集中しすぎて気が付かなくてごめんなさいね」
「いや、俺達もさっき滝から帰ってきたばかりだ。それにしてもまた大量に作ったな」


苦笑いしながら作った護符を手に取るカイルに、わたくしは箱に入ったそれらをズイッとカイルにお渡ししましたわ。


「こちらが今回の護符の納品になりますわ。帰路の護符が80枚、身代わりの護符が30枚出来てましてよ」
「確かに受け取った。それと、その付与アクセサリーは双子への?」
「ええ、ご迷惑をお掛けしましたし、心ばかりのお礼として渡してくださる?」
「ああ、店に来たら渡しておこう」
「ええ、箱を用意してお渡ししますからお店に行くときにお声掛けくださる?」


こうして、簡素な箱に一つずつ身代わりの華を入れ、リボンを施すと出来上がり。
双子の姉妹さん達が喜んでくれると良いんですけれど、こればかりは気持ちも大事ですわよね!
前世では母から『感謝の心を忘れてはならない』とよく言われてましたし、『ありがとう』と言う言葉で嫌な思いをする人は少ないはずですわ。
このアクセサリーは、わたくしからの『ありがとう』が詰まった品。
守ってくださってありがとう。
たまたま居合わせたとしても、それが偶然だったとしても、やっぱり『ありがとう』が出てきてしまいますわ。

その後、急いで着替えて化粧をし、出来る女に変身すると箱詰めしたアクセサリーをカイルに手渡し、カイルかライトさんが呼びに来るまで箱庭で少しの休憩時間を過ごしますの。
無論アイテムボックスには、昨日頼まれていたパール系のマニキュアを在庫の限り入れてありますし、トップコート用のラメ入りも三本入れてきましたわ。

嗚呼、静かな波の音は、まるでわたくしの今の気持ちのよう……。
この海辺が荒れたことは一度も無いのだけれど、光を反射させながら輝く海を見つめ、静かに深呼吸をするとカイルが現れましたわ。


「凄いぞリディア! 護符がドンドン売れてるぞ!」
「まぁ!」
「嬉しい事だが、君が作ったアイテムの品質が良かったのも評判の一つなんだろう。この調子だと明日も100個作っても売り切れる可能性が高い」
「本当に付与師にとっては稼ぎ頭のアイテムですのね」
「だが、リディアは他のアイテムも一人でやってるからな……。護符系のアイテムは作れる時に、出せる時にで良いと思うぞ。あまり無理をするなよ?」
「まぁ! カイルっては過保護ですわ! オーナーなら『頑張って作ってくれ』くらい言いませんの?」
「何を言ってるんだ。リディアの体の方が大事に決まってるだろ?」


あらあら、まぁまぁ!
カイルってば本当に過保護ですわね。
元日本人であるわたくしにとって、あの程度の忙しさは納期前の忙しさと比べたら何てことなくってよ?
でも、心配されるのは嬉しいですわ。
くすぐったいと言うか、カイルの気遣いが心地よいと言うべきかしら?


「フフフ」
「どうしたんだリディア?」
「いいえ、わたくしはとても幸せ者だと思いましたの。カイルは素敵ですわ」
「そ、そうか?」


顔を赤くして在庫を運ぶカイルに、わたくしは笑顔を向け、一緒にお店へと向かいましたの。
既に二階には御三方が座っており、皆さんはわたくしに気が付くと、同時に立ち上がりズンズンわたくしの許へとやってこられましたわ。
一体何事ですの!?

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