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第二章 次なる政策と、娯楽の甘味

38 法外な値段で回っていた商隊に転売屋を思い浮かべつつ断罪する。

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「法外な金額で売りつけている?」
「はい、私どもが国営で国を回り始めてから分かった事ですが」


 そう言ったのは商隊部門大臣ラディリアだ。
 このシュノベザール王国で発展した商隊であるノザールは、シュノベザール王国唯一の大きな商隊でもあった。
 そこが、国から魚の干物などを仕入れて各地のオアシスを周っていたのだが、国営の我が商隊も周る事になった。
 無論国民の生活を知る為でもあったが、まさかノザール商隊が法外な金額で色々と売りつけている等知りもしなかった。

 ――前世で言えば【転売ヤー】と同じ感じだろうか?


「正規の値段で売っている私達に『こっちが本当の値段か!?』と聞いてきて、『あいつ等足元を見やがって』憤ってまして」
「……」
「もう二度とノザール商隊からは買わないと腹を立てている状態です」
「ノザール商隊からは何の連絡も来ていないし、法外な金額で売っていると言う書面も来ていなかったが……脱税か」
「そうですね」
「は~~……ノザール商隊のデミオを呼んでくれ。話をする」
「畏まりました」


 こうして次の日ビクビクとした様子で謁見の間にノザール商隊の長であるデミオがやってきた。目は定まらない所を見ると、自分が何故呼ばれたか知っているのだろう。


「国営の商隊がシュノベザール王国のオアシスを周り始めたのは知っているな?」
「は、はい。でも国王も人が悪い。我がノザール商隊が周っておりますのに」
「各オアシスに住む住民がどのような生活をしているのかの調査もある。その結果、ノザール商隊が法外な値段で色々売りつけていることが判明した訳だ。これについて何か言い分はあるか?」
「ほ、法外だなんて」

「ノザール商隊が毎年送ってきていた収支決算書とは金額が全く合わないんだが。脱税か?」
「い、いえ、そん、な訳は」
「あからさますぎる脱税だと判断している。脱税者はどうなるかお前も知っているだろう」
「き、金貨200枚を払い一族のむち打ちの刑を……免除して貰う……か、でしたっけ」
「そうだな。払えないなら、一族全員鞭打ち100回の刑に処す事と、税収を更に5割増しで徴収する。期間は3年だ。金貨も払えない、鞭打ちを回避したい場合は、貴様は平民なので温情だと全財産没収となる」
「…………」
「だが、ここまで脱税の証拠が揃っている。デミオ、貴様はどうしたい」


 そう言うとデミオは震えながら「金貨200枚を払います」と口にした。


「だが、税収を更に5割増しで徴収する事と、期間は3年と言うのは変わらない。その上オアシスではノザール商隊の品は買わないと言っているが、何とか出来そうか?」
「くっ」
「再起は不可能だろうな。随分と法外な値段で売りつけていたものだ。人件費等掛かるにしても余りにも高すぎる」
「……」
「しかもそれがバレないように、我が国の国境を守る傭兵団の所には行っていない。そうだな?」
「…………仰る通りです」
「傭兵団は数か所にある。再起をかけるならそこを回るしかない。無論法外な値段で取引すればこちらに連絡は直ぐ来るが?」
「た、他国を周ります!!」
「そこで法外な値段で売りつけるか」
「そ、そのような事はしません!」
「一度信用が地に落ちた者の言う事は聞かないようにしているし、他国は既に国営の商隊が周っている。そこに更に行くつもりか?」
「それは……」


 ノザール商隊が生き残る道は一つしかない事を遠回しに伝えているのだが、余り汁を啜ってきた以上それが抜けきらないのだろう。
 何とか出来ないか模索しているようだが……正直言うと甘い。それにもう遅い。


「な、ならば我が社も国営にして頂けませんか!?」
「国営にしてやっても構わんが、ノザールが行くのは国境沿いの傭兵所のみになるぞ」
「そ、そこを何とか避けて」
「なら無理だな。諦めてくれ」
「~~ならそこでも構いません!! 国営になれば税収を更に5割増しで徴収する事と、期間は3年はなくなりますでしょうか!?」
「なくならない」


 何を期待しているんだこのバカは。
 と言った様子で口にすると脂汗がダラダラと流れて言葉すら出ないようだ。


「貴様のやった罪を許すはずないだろう?」


 そもそも前世でも転売ヤーとは滅ぶべしと思っていたくらいだ。
 それと同等の事をしたノザール商隊を許すはずが無い。
 金貨200枚支払った所で殆どの財産は無くなる。その上で再起をかけると言うのはとても難しい。
 それに今ある在庫だってそうだ。
 売りに出さねばただのゴミに変り果てる。
 その際の金銭的なマイナスは計り知れない。
 それに傭兵団だって国営で回って行けばいいだけの話だ。
 ノザール商隊は別段いても居なくても変わらないのだが――今後国営の商隊を大きくするにしても、ノザールの持つ馬車くらいは欲しい所だな。


「もし八方塞だと言うのなら提案しよう」
「!」
「ノザール商隊は消えることになるが、今いる従業員及び馬車や荷物は買い取ってやろう。格安になるがないよりはマシだろう」
「そう……ですね」
「商隊としての仕事が出来ないのに持っていても無駄だろう?」
「……はい」
「わずかに得た金銭で何か商売でも始めればいい」
「……」
「ノザール商隊には期待していただけに残念だ」
「申し訳……ありませんでした」


 そう言って大粒の涙を流すデミオに、なら最初からするなと言いたかったが最早後の祭り。
 俺は小さく溜息を吐くと「後でノザール商隊に使いを出す。話は以上だ」と口にすると、兵士に連れられデミオは謁見室を後にした。
 それから直ぐにこちらも動き、ノザール商隊が無くなる事と、従業員及び馬車や荷物は国が買い取る事と、新たに雇い直すことを伝え、デミオ含めた家族は三日以内に金貨200枚を持ってくるようにと通達を出した。
 無論逃げられてはたまらないので監視が付く。
 その後、しっかりと金貨200枚を支払ったデミオ一家は巨大な店を撤退し、その店も国が買い取る事となった。
 デミオ一家がどこに消えたのかは分からないが、細々とまた仕事を探してするのだろう。

 言わなければわからない。
 バレなやしない。
 そういう安易な考えで転売の様な事やったのだろうが、悪質過ぎた。
 次は全うな仕事をする事を期待して、格安で買った砂漠を走る馬車に冷蔵や冷凍を付け、商隊部門大臣ラディリアに働いていた従業員の教育も頼み、更に国営の商隊が賑やかになって行ったのはいう迄も無い。
 そして、その頃俺はと言うと――。


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