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14 異世界の愚者は嫉妬する。

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一方、城では他国からの手紙が大量に押し寄せ、中には断交すると言う国からの手紙も多く送られてきていた。
まさにカズマが口にした通り、信用、信頼を失ったことによる国へ対する大打撃だ。
手紙を読む女王は髪を振り乱しながら奇声を上げ、王配は手がつけられない女王相手に困惑していた。


「何故こんなことになりましたの!? 何故!?」


奇声を上げながらも、次々と届く他国からの手紙や書類を前に、ついに女王はソファーに座り込んで流れる化粧をそのままに顔を伏して歯を噛みしめた。
実際、ちゃんと依頼料を支払っていれば済むだけの話だったのだが、女王と王配はマリリンがリーダーを務めるギルドを軽視していたのである。
無論、あれだけのギルドを軽視し、依頼料を踏み倒していた事は他のギルドにも知れ渡るのも時間の問題であり、また他の冒険者ギルドも国からの依頼を受けることを拒むのは必然だろう。


「……それで、あの筋肉ダルマのギルドは、今度は何処の国に移籍なさるの」


何度も使者を出し、移籍先を聞き出そうとしたがすべて失敗していた為、呼び出されていた使者は歯切れ悪く「解りませんが、移籍の準備を進めていらっしゃいます」とだけしか言えなかった。
今すぐに踏み倒した依頼料を支払えば、考え直してくれるかもしれない。
そう使者は思ったが、それだけの膨大な金貨等、この国にはない。
そんな金があれば、女王は間違いなく、パーティーでマリリンが着ていたドレスや宝石類を全て買いあさっていただろう。

――女王は嫉妬していた。

あのマリリンの夫と名乗った、カズマと言う若き青年。
少年ともいえるような幼さを持ちながら頭脳明晰で財力も恐ろしい程にある。
何より、将来美しく育つであろう彼が、あのマリリンの為だけに、あれほどのドレスや宝石を用意したことにも腹が立った。
自分の夫とは違い、他の女に手を出すような真似もせず。
ただ一途に、あのマリリンだけを心の底から愛している姿が羨ましくて、妬ましくて、何より――欲しい。
誰もが羨むほどの美貌を持つ自分を前にしても、全く興味のない瞳で自分を見ていたカズマが、憎くも欲しかった。


「……カズマとなら、子が出来るかもしれない」
「一体何を言い出すんだい!?」
「だってそうでしょう? 王配としてわたくしの許へやってきてから今に至るまで、貴方が他所で女に手を出しても、誰一人子供が生まれないじゃないの。子が出来ないのは貴方に問題があるのではないかしら?」


女王は夫に厳しく告げると、彼もまた顔を引き攣らせながら「そんなことは」と言いかける。


「一年の猶予をあげますわ。それでわたくしに子が出来なければ出ていきなさい。平民……いいえ、奴隷に堕として差し上げますわ」
「そんな!!!」
「そして……カズマを新たなる王配にするのよ」


あれだけ若いならば性欲も強いだろう。
経験があのマリリンだけ言うのなら、自分が手取り足取り、色々な事を教えていくのも悪くはない。
一年と言う間に、自分の身の回りもどう変わるかは分からないが、唯一、その一年後にはカズマを自分の王配に決める事だけが楽しみになった。


「こんなところで終われないわ……絶対に……絶対に」



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