【☆完結☆】僕の妻は異世界人で、世紀末覇者のようなマッスルボディの可愛らしい妻です。

寿明結未(旧・うどん五段)

文字の大きさ
18 / 33

19 異世界で僕は常に妻に一途である。

しおりを挟む
休息の三日の間、マリリンは付きっ切りでカズマの傍に居た。
その間もカズマは新たなる雇用改革の為に、冒険者を引退した者たちに対し、力仕事が主になる老人たちの終の棲家で働けるかの面接内容及び、業務内容を細かく書き示し、研修期間で出来ない者は別途違う方向での雇用ということで試行錯誤していた。
真剣に取り組むカズマにマリリンの乙女心は急上昇どころか限界突破しそうであった。

本来ならば、稼げなくなったり動けなくなった人間と言うのは撃ち捨てられて当たり前。
物乞いして何とか生き延びても、路上で死ぬものも多くいたのだ。
それが、劇的に改善されていく様は、こうやってカズマが生み出しているのだと目の前にして理解すると、


「うちの夫はやはり国王になるべきでは?」


と、真剣に思うようになっていった。
しかし、カズマは国王になるつもりは毛頭なかったし、実際にマリリンに告げられても首を横に振って、巨大で岩よりも硬いマリリンの手を握りしめた。


「僕は国王になんてなりたくないよ。僕はマリリンの傍で生きていたい。君の隣に居られることが何よりも幸せなのに、国王なんて無理だよ。君を一番に大事に出来なくなるじゃないか」


最早ノックアウトであった。
マリリンは 「ンン!!」 と堪えながらも鼻血が吹き出しそうになって大変であった。
そんな様子を見ていたジャックとマイケルもまた、男運というか男性から見向きもされず20年生きてきた妹に、これほどまでに愛を囁いてくれるカズマに涙を流し、マリリンの幸せを神に感謝した。


さて、カズマが取り組んだ内容には、レディー・マッスルに関する商売もある。
錬金術アイテムを出来るだけ安価に民衆にも買える値段で売れるものは売り、貴族には品質の差を付けて高く売りつける方法で商売が上手くいき、今ではムギーラ王国の国民の健康度は随分と上がったと言えるだろう。
また、他国からの買い付けも多く、他国からの仕入れ業者専用の窓口を作り、別途料金にて大量販売することにより利益を得ていた。
また、小さな治療院も作り、仕事のない治療師及び、引退した冒険者で治療スキルがあるものが就職することで、軽い怪我ならば安く治療することが可能になった。

また、孤児院にいる子供達にも魔法判定を行い、各スキルに応じて将来なりたい職業に向けての訓練も怠らない。
治療魔法が使える子供たちの半数は、治療院での生活を望んだことも大きかった。

しかし、こうなると子供たちを攫って売りに出そうとする輩も出てくる。
その為の自警団及び警察官の連携は凄まじく、あらゆるスキルを用いて悪徳業者及び、犯罪者には厳しい処罰がされる事が決まっていた。

生活弱者とも言われる老人、子供を守り、雇用を生み出し、苦しんでいる女性を守り、ムギーラ王国は他国からも信用が高く、理想郷と呼ばれるのに時間は掛からなかったが、その貢献がレディー・マッスルのリーダー及び、その婿によるものだと広がると、彼らがムギーラ王国に居てくれる限り、国は安泰だと安心する住民が増えていった。


「この様に、雇用に関しては今居る人材でも十分足りると言う事です。適合しなかった人材に関しては法を犯さぬ限り警察官及び自警団で務めることが可能になり、国全体が安定すると思います」
「素晴らしい判断だ。このまま陛下に進言し許可を貰おう」
「有難うございます。また、暫くお休みを頂きマリリンとの夫婦の時間を作りたいのですが宜しいでしょうか。そろそろ社交場も開きますのでマリリンに相応しいドレスを今から作りたいと思っているのです」
「ン……うむ」


こと、宰相は実の娘であるマリリンを追放してしまったことが何よりの痛手である。
この事は既に他国にも伝わっており、マギラーニ宰相にとっては苦い事でもあった。


「出来れば二週間ほどマリリンと過ごす時間を欲しく思います。最近忙しくマリリンと愛し合う時間が少なかったので」
「そ……そうか。夫婦の時間と言うのは大事だな」
「ええ、とても大事ですね」
「時にカズマ殿は第二夫人を持つ事は、」
「あり得ませんね。私はマリリンだけに一途ですので」
「そうか……」


マギラーニ宰相はカズマに第二夫人を娶らせることで、カズマに宰相の職に就いてもらいたく思っていた。
無論、自分の補佐ではあるが、それすらもマリリンへの愛で却下されてしまう。


「暫くマリリンと他国に向かいますが、二週間もすれば帰宅できると思いますので」
「夫婦水入らずでか」
「ええ! 二日ほどはコチラで過ごすでしょうが、やっと愛する妻との時間を持てると思うと人生に張りが出来ますね!」


心の底から嬉しそうに語るカズマに、マギラーニ宰相は溜息を吐いた。
あの娘のどこが本当に気に入ったのか、解らないのだ。
カズマの好みが一般とかけ離れていると言うのが妥当だろうが、実の娘であるマリリンは見た目以外を除けば、心根の優しい娘であったと記憶している。
きっとカズマは心根の優しいマリリンの内面に恋をしたのだろうと勝手に思い至った。


「……この様な事を言うのは親として失格だろうが、君には第二夫人を貰い、我が公爵家を継いでほしいと思っているよ」
「お断りいたします」
「即答だな」
「マリリン以外の女性など、その辺のカボチャと同じですよ。それでは早く愛しい妻に会いたいので失礼致します」


そう言うとカズマは挨拶をしてから部屋を出て行った。
運命的な出会いをしたカズマとマリリンを離すことは難しい……。何か策を考えなくてはとは思うものの、マギラーニ宰相は決定しかねていた……。




そして、カズマがレディー・マッスルに帰宅し、マギラーニ宰相が言っていた「第二夫人」の話をマリリンとジャック、マイケルの前ですると、ギルドの会議室の窓とドアが威圧で吹き飛んだ。
無論、中にあった調度品等見るも無残である。


「カズマに……第二夫人だと……?」
「一体親父は何を考えているのだ!!!」
「カズマとマリリンの相思相愛を知っていればその様な戯言言うはずがない!!」


三人は今にも国を滅ぼさんとしかねない程に怒り狂っていたが、カズマは一人紅茶を飲みつつ静かに息を吐いた。
三人の威圧、覇気はここ半年でカズマは慣れてしまったのである。


「宰相の地位を継いでほしいと言うのが狙いでしょう。ですが、僕の方からお断りを入れています。これ以上大事な妻との時間を別のカボチャの為に使うなんて勿体ない」
「別のカボチャとは?」
「マリリン以外の僕に群がる女性ですよ。マリリン程の美しい女性を前にすれば、他の女性などカボチャやカブ、キャベツのようなものです」


溜息を吐きながら口にするカズマに、マリリンは頬をボッと染めた。


「そ……そうか? 他の娘達とて若ければ美しい者も」
「マリリン以外の女性の見た目だの若さだの、微塵も興味がありません」
「カズマッ」
「それよりそろそろ社交の季節です。一度元の世界に戻り、またマリリンに美しいドレスをプレゼントせねばなりませんね」


既にこの世界では誰もが作ることが出来ないまでのドレスや宝石を持っているマリリンだったが、更にカズマはマリリンの為に用意すると言っているのだ。
ジャックとマイケルは「素晴らしき夫婦愛だ」と感涙し、マリリンは顔から炎を吹き出しながら照れていた。

カズマが二拠点生活を始めてからというもの、マリリンは角刈りであった髪を伸ばし始め、今ではオシャレなショートヘアーくらいには長くなっていた。
顔は世紀末覇者だが、女性らしい部分も多く出てきたのだ。
無論、筋肉はあの頃より更についてしまったが。


「それに、在庫確認表を見る限り、そろそろ追加で持ってきた方が良さそうなものも多いですし、一度元の世界に戻ろうと思います。マリリンも一緒に付いて来てくれるかい?」
「勿論だとも! たまにはお父様とお母様と冒険の話をしてユックリ過ごしたいものだ!」
「じゃあ、明日には二人で向こうの世界にいこう。それまでに今日やるべきことを終わらせて、何度かこちらとあちらを行ったり来たりしながら過ごそうか」
「それもいいな! それとカズマが前々から欲しがっていた温泉も近々こちらでオープンが待っているぞ!」
「楽しみだよ!!!」


新たなるレディー・マッスルの財源となる温泉旅館。
そして、庶民向けの温泉も近々買い取ったムギーラ王国の巨大な山の近くに出来るとなると、楽しみもひとしおだ。


「一緒に新婚旅行にいこうねマリリン」
「もう……これで何度目の新婚旅行だ?」
「そう言って照れてるマリリンは今すぐ食べてしまいたいほど魅力的だよ」


とろけるようなカズマの声にマリリンは耐えきれず鼻血が出た。
ジャックとマイケルは二人を生暖かく見守り、そのうち温泉宿で二人が一つになった際にマリリンが妊娠すれば、「子宝の湯」として売り出せそうだと考えてしまった。


「じゃあ僕は在庫確認書を鞄に入れて……明日は二人で里帰りしようね」
「ああ、勿論だとも!!」


こうして、マギラーニ宰相の夢、野望をことごとく潰しながら二人はイチャラブのまま、カズマの実家に里帰りするのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~

深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。

【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...