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18 駄肉女神、寝ている間に甲斐甲斐しく治療される。

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――エルグランドside――


隣で寝息を立てて眠るフィフィを見ると、襲いたい気分で一杯になる。
脳が侵される前に何度となくトイレに向かうが、トイレから戻ると眠るフィフィの愛らしさ、そして自分だけの妻であると思うと更にムクムクと……何がとは言わないが元気になる。

神脈詰まりは、神々に時折起きる病の一つだが、長年子供達の世話をし続けたフィフィが気が付かなかったのは仕方のない事だ。
眠るフィフィにゆっくりと近寄り、手をかざしながら自分の太陽神としての力を注ぐと、僅かにフィフィの血管と言うべきか、神脈詰まりを治していくのが今の役目となっている。
沢山、幾つも出来た神脈詰まりは大きく頑固で、まるでフィフィのようだ。
力を入れすぎれば痛みを感じる。そう聞いていたのでゆっくりと……フィフィが起きるまでの間、俺の力をフィフィに注ぐのだが――。

本来、ここまで放置していれば身体が動かなくなり、死んでいても可笑しくはないのだ。
友人でもあり、フィフィに育てて貰ったエルヴァランスですら、フィフィを怯えさせない為に軽くいったが、実際は命にかかわるだけの状態だった。

失いたくない。
フィフィを失いたくない。
彼女にまだ全ての思いをぶつけてもいない。

毎晩毎晩、ゆっくりと力を使って神脈詰まりを取っていく。
一つが取れると、二つ、三つと取れていくのを見てホッとすると同時に、太陽神の力を感じて熱くなったのかフィフィが布団を跳ねのけた。
途端に見える豊かな胸に汗ばんだ肌、はだけたスカートから覗く足。
それらを貪りたい気持ちを抑えながらも治療は続く。
下半身は絶好調!
大きく溜息を吐きたいのを我慢しながら、フィフィの治療に専念すると、エルナが気配を感じたのか部屋に入ってきた。


「喉が渇いていらっしゃるでしょうから、お水を飲ませますね」
「頼む」

エルナにだけは、フィフィが病んでいる病気が命にかかわる状態である事を伝えてあった。
毎晩こうしてフィフィに水を与えつつ、汗をタオルで拭い、エルナの目から見ても分かる神脈つまりの多さに眉を寄せる。
この状態で良く生きていたものだと、エルナは最初泣いたのだ。


「随分と少なくなってきたように思えます」
「ああ、だがどうしても詰まりが頑固でな……」
「治療は長く掛かりますが、フィフィ様が生きていてこそですわ」
「その通りだ」


フィフィを生かす。
俺とエルナにとって、フィフィを生かすことが今最も大事なことだった。


「そう言えば、今日フィフィ様が可笑しなことを言っていたのです」
「可笑しなことだと?」
「ええ。我が妹エナリスの水は苦かったと」
「苦い? どういう事だ?」
「水の女神の水は清らかで美味しいものです。ですが、悪意ある者が作る水とは苦いのです。フィフィ様はその水を長年飲んでいたので、もしかしたらこの詰まりはそれが原因かもしれません」
「………」
「特に豊穣の女神は毒にやられやすいので……悪意ある水を毒と身体が認識していたのかも知れません」
「そうか……エナリスは今どうしている」
「死にましたわ」
「ッチ、俺自らの手で殺してやりたかったな」
「毒は残ったままでも、豊穣の女神ならば清らかな水と太陽の光で神脈詰まりとは取れるそうです。時間は掛かりますが……ただ、タイリスが言うには、豊穣の女神、フィリフィア様に話をすれば、神脈詰まりを取ることが可能ではと」
「フィリフィアか。明日の予定は特になかったな?」
「明日行かれますか?」
「状況を話して診て貰うだけは頼めるだろう。フィリフィアも悪い女神ではない」
「そうですね、では明日はフィリフィア様の神殿にいくという事で。タイリアにも話をしておきます」
「ああ」


こうして、フィフィが起きるまでの間、エルナと俺の力で神脈詰まりを少しずつ小さくしていく作業が続き、そろそろフィフィが起きる頃になるとエルナは自室へと戻り、俺はフィフィに僅かながら触れる時間を楽しんだ。
神脈詰まりを太陽光で焼くことは簡単だ。
だが、それはとても激痛が伴うと聞いている。
特に豊穣の女神にとっては死活問題であることも。

もどかしい……。

もし仮に、命を奪われる寸前であったのであれば、躊躇う事無く使えるのだが――。
全ては本日、フィリフィアにあってから決めようと心に決めた。
そして翌朝、フィフィが起きると俺は力の使いすぎて灰にはなっていたが、太陽光を浴びれは直ぐに復活する為問題はない。


「おはようございますエルグランド様」
「おはようフィフィ、急で悪いが今日はお前の生まれ故郷である豊穣の女神の神殿に行く」
「豊穣の女神の神殿にですか?」
「フィリフィアに豊穣の女神が神脈詰まりを起した場合の処置方法を聞こうと思ってな」
「なるほど」
「何かいい方法があれば、早めに取り除いてやりたいからな。フィリフィアが治せるというのであれば、借りを作っておくのもまた一興だろう」
「分かりました」
「では、朝食の水を飲んだ後は身体をマッサージして貰っておいてくれ。マッサージが終わり次第フィリフィアのいる神殿に向かう」
「了解です!」


フィフィは今日も元気だ。
生きている、元気に生きている。
それがどれ程尊いものなのか、俺は次第に性欲よりも、フィフィを生かす為に力を使う事で性欲を抑えていることに、この時はまだ気が付かないでいた。
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