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第一章 転生と新世界

1   美しき転生者

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 女神様のおかげで生来の明るさを取り戻した主人公。良かったですね。

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 目が覚める。大の字に寝ていたようだ。木々の間から真っ青な空が見える。森かな? どうやら本当に転生したらしいや。大きく深呼吸をすると、都会の喧騒の中の汚い空気とはまるで違う、染み渡るように感じる、田舎に帰ったときよりも空気が美味い。とりあえず起きよう、上半身を起こしたとき頭の中で声が響く。

『あっ、おはようございますー。私でーす、私ー』

 ん? 頭の中に声が…どうやら女神アストラリアのようだ。

「えーと、私私詐欺ですか?」

 心が軽く体も力が漲るようで、憑き物がおちたように思考もクリアだ。

『切れっ切れの返しですねー。そうです私ですよー、あなたの素敵な女神アストラリアですー。色々と設定し忘れたことがあるので、これから決めていきましょう。それと冒険や戦闘の指南です。いわゆるチュートリアルってやつですねー』

 なんか抜けてる女神様だな…。でもとっつきやすくて気安い感じだ。

「何でしょうか? 決めてないこと?」

 うーんと頭を捻る。

『ほら、まずは名前ですよ名前! 日本人ネームのままだとここでは違和感があるでしょうから、現在の名前から多少いじって作りましょう』

 そういうもんか。ナギでもいいけど。そのまんまだしなあ。違和感ないとは言い切れない。

「じゃあ、和士ナギトの和のところを別読みで、カズ、ファンタジーぽいなら<カーズ>でいいですか?」

 ぶっちゃけ名前とかどうでもいいんだが、せっかくだしな。乗っておこう。ゲームでもたまに使う名前だし。因みによく間違われるが、呪いはカース、curseだからね。はい、勉強しとこうね。

「名字はどうしましょうか? アストラリア様、センスのある変換お願いします」

 丸投げ、でも女神様のがセンスは良いだろう。ぶっちゃけめんどくさいんだよね(笑)

『あら、いいんですか? では一色をもじって…今のカーズさんはご希望通り赤髪に金のメッシュが入ったような色合いですから、赤色ってことで<ロットカラー>なんてどうでしょう?』

 流石の女神様。カッコイイ。ロットってラテン語で赤だよな。てかそんな色になってるんだな。長めの前髪を引っ張って見てみる。うん、近すぎてよくわからんな。

「カーズ・ロットカラーか、いいですね! もうそれでOKです」

『やっぱり決断早いですねー。ではそれで設定しますねー』

「はい、お願いします」

『名前設定完了! ところで私も意識を飛ばしてあなたと冒険しようと思います。カーズさんは史上初の転生者ですから行動を共にして、色々とアドバイスなんかをさせて下さい』

 確かに女神様のサポートがある方がトラブルも少ないだろう。聞きたいこともたくさん出てくるだろうし。でも一人の人間なんかについてて大丈夫なんだろうか? 疑問は残るが…。今のところは気にしないでおくか。

「なるほど、了解です。これからよろしくお願いします、女神様」

『はーい、こちらこそ! ちなみに女神様なんて堅苦しいので、フランクに名前呼び捨てで構いませんよー? あと丁寧語じゃなくてもいいですしねー』

 神様を呼び捨ては…、心の中ではよくとも流石に本人に対しては気が引ける。というか畏れ多い。転生させてくれた上に病気も治してもらった、恩がある方だ。抜けてる感はあるけど。

「呼び捨ては…、まだハードル高いですね」

『ではではー、アリアとお呼び下さい。私のあだ名ですし、距離が近くなった感じでしょう?』

 少々逡巡して、これからも長く付き合うことになるんだし仕方ないか、彼女自身がフランクな関係を望んでいるようだし。頑なに拒むのも悪い気がする。

「うん、じゃあわかったよアリア。これからもよろしく。頼りにしてるよ」

『うふふー、デレましたね。カーズさん、こちらこそお願いしますねー』

 嬉しそうな声が頭に響く。しかし神様をあだ名呼びか、妙な気分だ。ちなみに俺は別にツンデレでも何でもない。

「でもアリアは丁寧語だよね? 疲れない?」

『私はこれが素ですのでー、お構いなくー』

 まあ本人がいいならいいか。そういうことにしておこう。それよりも聞きたいことや知りたいことが山ほどある。とりあえずは自分の状態だ。

「じゃあアリア、今俺の状態ってどんな感じなの? さっきから妙に声が高いのも気になるし。容姿の変化とかステータスみたいなのを見たいんだけど」

 見た目はまだわからないが、声が富田美優さんみたいなんだよな。

『ではアイテムに手鏡を入れときましたから出してみて下さい。空間に手を潜り込ませて取り出したいものをイメージすると異次元のアイテム収納庫ストレージにアクセスできますからやってみてください』

「空間に手を潜り込ませるイメージね、やってみよう。こうかな?」

 言われた通りにやってみると突っ込んだ空間から取っ手のある大きな鏡が出てくる。すごい。謎のテクノロジー、これが魔法ってやつか! 原理は全くわからんけどね。

「よしできたー、じゃあ新しい外見をチェック! ……ん? これ誰?」

 そこには前世の面影など全くない、ていうか全くの別人、少し強気な目つきをした超絶美しい女性が映っている。整った顔立ちに目鼻立ち、瞳も大きくまつ毛も長い。髪の毛はセミロングくらいか、赤を基調としたさらさらの髪に毛先は金色が混ざっている。そして結ってもないのにツインテールのようなくせっ毛が生えている。そして頭の真ん中辺りにくるっと巻いたようなアホ毛。謎の髪型だ。ていうか誰だよ? このべっぴんさんは?

「なあアリア、まさかこれって…。俺?」

 不可解な顔をする俺に対してアリアは、ニヤニヤした口調で答える。

『美しいでしょう! 少々私の因子も取り入れましたしー、もう見た目は姉妹のようですよ(笑)』

 すごくいい仕事をしたぞっていうようなドヤ声が頭に響く。ちょっとキレイ目にしてって言っただけなのに。確かにアリアの見た目と被るような気がするでもない。

「ちょっと待て、まさかこれって…」

 ものすげー嫌な予感がして、自分の胸部をまさぐる。幸いなことにペタンコだ。でもまだ油断はできない、股間に手をやってみる。……あった、良かった。しかしアラフォーのナイスガイが見る影もなくなってしまった。まあ新しい人生だし気にするのはやめよう。

「何だろう、かろうじて男って感じがするよ。…ハア、自己統一性の危機だ」

『お気に召しましたかー? いやー頑張ってよかったです。ゲームのアバターとかにやたら手が込んでる人の気持ちがわかりましたねー』

 コノヤロウ……。絶対女と間違われる案件だ。神様にとっての美しさの基準とか、全くわからん。しかもゲームとかしてんのか、神様って暇なのか?

「もう先で起こるトラブルが目に浮かぶようだわー…」

 これ以上ないレベルの溜息が出る。この見た目だ、男の視線が刺さりそうで寒気がする。

『あれっ? やっぱり完全に女性にした方が良かったですか? もー、それならそう言ってくれないとー』

 ヤバイヤバイ、そんな軽いノリで性別まで変えられてたまるか。

「いやいい、男で良かった。これで女だったら犯罪に巻き込まれかねん」

『魔力をコントロールしたら完全に女性の体にもなれますよ。というか私の因子を組み込んじゃったから体的には女性にした方が消耗が少ないです。潜入ミッションとかあったら便利でしょうねー』

 こいつは…、遊んでやがるな。てか神の因子なんて組み込むんじゃねーよ。しかも女の! それにそんなミッションなんか受けたくもない。しかし性別までコントロールできるのか? 魔法、魔力ってすげーな。いや、別に興味があるわけじゃないよ、心の中で言い訳しておくけど。

「何でそんなヤバそうな因子を組み込むようなことしたんだよ?」

『不老不死の体を創造するにはそれが一番手っ取り早かったので、テヘペロリンチョ。カーズさんの体は魔力が常人ではありえない勢いで循環しています。それで若さや命を保っているんですよ。でも老いて死ぬことはないですが、致命傷を負うとさすがに死にますよ。だから注意してくださいね。神様でも死ぬんですからね』

 まあそれはそうだ。それで死ななかったらもう化け物だしな。そこは注意しとこう。てか今テヘって言ったぞ、古いよ。いや、テヘペロリンチョって何だよ? それに神様も死ぬのかよ、怖いな。

『では次にステータスやスキルについて説明しますねー』

 起きてしまったことは仕方ない。アリアも彼女なりの善意でやってくれた…のかはともかく、若い姿でいられるってのはいいことだ。ウキウキしながら次の説明に入ろうとするアリアをたしなめながら、俺はこの先のトラブルを避けることを超真面目に考えないといけないと思った。



 美人を何となく目で追っちゃうのは男のサガだろ? わかってくれるよね? それが自分に向けられる可能性。男性諸君、恐怖しかないだろ?!

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  アストラリア様はノリが古いですが、そこがチャームポイントなんです。そして結構へっぽこな一面があって、人間味あふれるキャラとなっております。
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