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第一章 転生と新世界

18  素人の発想

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さて、アリアに通じますかねー

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 女神刀を鞘に納める。もはやスピード勝負をするつもりはない。

「あら? 一刀に戻すんですかー?」

「ああ、どうせスピード負けする。だからここからは俺のオリジナルだよ」

「ほほーぅ、いつの間に? じゃあじっくりと見ないとですねー」

 そう言い放ち、正眼の構えをとるアリア。いや寧ろ信剣の構えだ、正眼から更に腕を高く挙げて伸ばし、刀を水平にして切っ先を相手の眉間に突き付けるように構える。無行の位とはまた異なる、相手の如何なる攻撃にも即座に対応可能な古流剣術にある防御特化の構え。相手の出方を見ながらも次の攻撃にも繋げられる、崩しにくい構えだ。まあこういう知識は全てアリアから学んだものだが、改めて相手にするとなるほど確かに前方に掲げた剣が距離を取ってある、崩しにくいな。

「やりにくい構えだなー」

「そりゃあちゃんと対策しないとねー」

 だが防御に徹するってことは俺がやろうとしていることはまだ分からないってことだ。さて、通用するかどうか、やるだけやってやろう。

「いくぞ! アストラリア流ソードスキル!」

 地面を蹴る!

「あら? 私の流派はそのままなのねー」

 そりゃそうだ、俺はそれ以外知らない。だが違いはここからだ!

「フェンリル・ファング・フラッシュ閃光!」

 剣に魔力ではなく魔法を纏わせる! こいつが俺なりのオリジナルだ。ただの属性魔力よりも、錬成された魔法の方が方向性も威力も強い! この3日で学んだことだ。光り輝くフェンリル・ファング! アリアは相殺せずに後ろに躱して距離を取った。初めてアリアが回避行動をとったぞ。だがまだここからだ!

「まだまだー! アクベンス・ネイル・ダーク暗闇!」

 今度は相手の視界を奪う闇の魔法だ!

 ガキィ! ビシィ!

 だが今度は視界を奪ったはずのアリアに刀と左指を折り曲げた左手の人差し指と中指の間で白刃取りされ、剣を掴まれた!

「これは、心眼か!?」

 眼を閉じたアリアに完全に止められた。

「惜しいですねー、神眼です。心眼の上位互換ですが、相手の発動する魔法の魔力の色まで視えます。だから視界を奪うダークに対応できたんですよー」

「なるほど、そいつはとんでもない上位互換だ。なら俺が剣に籠める魔法の属性まで丸わかりかよ、結構いけると思ったんだけどな」

「ウフフ、そうでもないですよー。これを使わせたということが、そのオリジナリティがかなり良い線をいってるってことですからねー」

「そうか、そいつは光栄だ。なら出し惜しみはなしだぜっ!!」

 剣を構えなおし、次の攻撃を放つ!

「うおおおおおおお!!! サンセット・リープ・フレイムバースト炎の爆撃!」

 上段からの打ち下ろしに炎の爆撃が加わる!

翔陽閃しょうようせん

 打ち上げる剣閃!

 カッ!! ドオオオオォン!!!

 斬撃は防げても火魔法の爆撃までは防げない! アリアが初めて俺の攻撃を受けて後退した。属性は視えても魔法の種類までは完全にわかるわけではないんだな。

「このまま押し切る!!」

「むぅー、このー!」

 少々怯んだのか、アリアが魔法を撃ってきた、ストーンキャノンにアイスランスか、しかし何て数だ、ユズリハに撃った魔法より上位の魔法、でもこれなら斬れる!

「アストラリア流ソードスキル、ブレイク・スペル!」

 ズバババババッ!!!

 魔法を斬るためのスキル! アリアもたまらず距離を取った、ここで決める!!!

「ストーム・ロンド・ブリザード吹き荒れる吹雪!!」

 嵐の6連撃に氷魔法の吹雪が加わる! むしろブリザード・ロンドって感じだ! 氷雪系は凍てつかせることで相手の速度も奪う、そこへ風の6連撃だ、これで決まってくれ!!!!

 ピキィーーーーーン!!

 分厚い氷壁に全て遮られた、この強度、アイス・ロックじゃない、上位の氷の棺フリージング・コフィン、それを変形させて防御したのか!

「くそっ、ダメだったか…」

 氷壁の向こうからアリアの声がする。

「いやー、アイデアは素晴らしいですよー、とんでもないセンスですねー! ただ、まだまだ剣術の練度が低いですねー、だから魔法はトリッキーでも完全に防御に徹すれば防ぎきれるということですねー。でも大したものですよー、私を防御に集中させたのですからー」

 勝ち誇ってるなあー、だが事実だ、崩しきれないと意味がない。でもなこれで終わりじゃないんだぜ!

「おっと、まだ勝ち誇るのは早いと思うぞ」

「えっ?」

「俺も色々と一人で試してみたんだよ、魔法の属性の融合ってやつを。火と氷、水と風、雷と土っていう感じでね。その中で一番ヤバい組み合わせを見つけて鍛錬したんだよ、まだまだ精々2属性だし、付け焼刃だけどな…、奥の手ってのは更に奥の手を忍ばせておくもんなんだぜ!」

 剣をその場に突き立て、それぞれの手に異なる属性の魔法を具現化する。

「それは聖と闇!? カーズ、危ないからやめて!!!」

「お、さすがアリアは知ってたか。ならこれが今の俺に出来る最大魔法だ、まだ初歩の魔法しか合成できないけどな!」

 魔力をつぎ込み圧縮させる。

「右手からホーリーランス、左手からブラックボルト」

 そして具現化した概念を両手を合わせて1つへまとめる。相反するエネルギーを融合する反発力が途轍もない。まだ初級だが、この聖魔融合は触れたものを消滅させる程の副次効果が生まれるということは実験して分かっている!

「聖魔融合、いくぜ合体魔法<ホーリー・ブラックボルト>!!!」

 融合した概念を投げつけるよう発射する。白く輝く聖なる槍に黒い電撃がバチバチと絡みつくように融合した魔法だ! フリージング・コフィンを突き抜ける! 俺の魔力はもうほとんどない、さあどうする、アリア?

 チキッ!

 抜刀術の構えをとるアリア、マジかよ、相殺するってのか?

「<アストラリア流抜刀術・奥義>」

 奥義か、初めて見るな。

神龍しんりゅう!!!」

 カッ!!!!

 合体魔法に向けて繰り出される、超魔力を纏った神速の一閃! その威力に空間さえも切り裂かれ、まるでストレージを開いたときの異空間へと繋がるかのような剣筋が空間に刻まれる! それが俺の魔法を切り裂いて飲み込んだ。同時にアリアは後ろを向き、納刀。カチーンとその音が響く。その瞬間、空間に刻んだ斬撃跡からとんでもない威力の魔力と剣圧の渦が放出され、巻き込まれる! 体がバラバラになったかと思うほどの衝撃波が俺を飲み込む、何もできずに勢いに飲まれて後ろへ吹き飛ばされた。視界が闇に沈む…。


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「あれ、俺は…?」

 ほんの数分気を失っていたらしい。しかもどうやらアリアに膝枕されているようだ。全身が超痛くて痺れたように感覚がない。これは全身の骨がバキバキだ、全く動けない。ここまでの怪我したことないぞ。

「もう、無茶が過ぎますねー、やれやれ」

 上からアリアの声がする。でも声が出ない、死んだな俺。

ヒーラガ体力・HP完全回復!」

 アリアが唱えると一気に体中から痛みが消えた。全回復の魔法だ、やっぱすげーな。とりあえず痛みは消えたし起き上がれそうな気がする。

「まだ寝ててくださいねー、装備のメンテナンスもしますからねー」

「装備?」

 ふと身体に目をやると、バトルドレスはズタズタになってボロボロだ。マジか…これ着てなかったら即死だったろうな…。アリアのメンテで装備も復活した、綺麗に元通りだ。ようやく起き上がれるな、あ、ヤバい少し体が女性側に引き戻されている。あの2人にバレるのはまずいので、魔力も分けてもらい何とか男性体を維持することはできた。だが起き上がれそうだったのに疲労で全く動けない。仕方なくそのまま大人しく膝枕状態だ。

「あーあ、やっぱり負けたかー。分かっちゃいたけど悔しいもんだな」

「うーん、レベル差がなければ分からなかったですねー。アイデアも驚きましたしー。でも私の加護がなければ死んでましたよ」

 あの一日一回致死ダメージを無効化ってやつか。でもそのレベル差が全てなんだよなー、こういうのはRPGの数字の理不尽さと似ている。

「そっか、まあ女神様に褒められただけで御の字としとくよ」

 もう終わったのが分かったのか、2人もこっちに来た。

「いやー、すげえ立ち合いだったな、目で追えない場面ばっかだったぜ!」

 興奮気味のエリック。

「あのカーズがこんなにボロボロに負けるなんて、アリアさん、人間じゃないですよ…」

 当たり、こいつ神様だからね。

「殺す気でいったんだ、でもまだ姉さんには歯が立たないな…」

「ふふー-ん、敬いなさいー」

「へいへい、普段はぐうたらなのになー」

 まあ3日の経験で我ながら良くやったもんだ。とりあえず自分は褒めておこう。
 <レベルアップしました。スキルの更新を行います>
 あれだけ神様とやりあったんだ、そりゃあ経験も増えるわな…。

「お、何だ俺らまでレベル上がって、ってマジか、何だこれ!?」

「私も40辺りでずっと伸び悩んでたのに…。2人の御陰で一気に倍以上よ! どうなってるの!?」

 エリックは82、ユズリハは84まで…。どんなパワーレベリングだよ。上がり過ぎじゃね? 一応俺も気になるな…、105…。いやいや、物語の序盤で100超えるって何だよ、いきなり強くてニューゲーム状態だよ! 超成長に経験値共有化、とんでもないな。

「とりあえず俺らのスキル情報は伏せといてくれ、こんなにすぐレベルが上がるとさすがに怪しまれるしな。それにこれなら極秘任務に向けての充分過ぎる準備になる。Aランクの試験もあるし、残りの日数は鍛錬に当てよう。それにいきなりレベルが上がったんだ、自分のステータスに振り回されることもある、自己の能力の把握も同時にやっていこう」

「よっしゃやるぜ、カーズに負けてはいられないしな」

「そうね、私ももっとアリアさんから学びたい!」

 生き生きしてるなー、そりゃいきなり壁を超えたんだ嬉しくなるだろうさ。

「さて、もう日が暮れる。今日はここで野営だな」

 そう言ったエリックにアリアが詰め寄る。

「いいえ、今日は宿の女将さんの手料理がたくさん待ってるんです! 帰りますよ」

「えー、アリアさん今から帰ってももう遅いよー」

 ユズリハも同じみたいだ。

「大丈夫です、転移でリチェスターに戻りますよ。カーズ、お願いします、私は空腹で力が出ませんー」

 こいつ、めんどくさいだけだろ。

「そういや空間転移っていう時空魔法があったな。どうやって使うんだ、姉さん」

「んー、訪れた場所をイメージして発動するだけですよー、簡単です」

「なるほど、やってみよう。俺の体に触れてくれ」

 全員が俺の肩や腕に手を置く、じゃあやってみよう。意識をリチェスターのイメージに切り替えて集中。

「空間転移、リチェスター!」

 フッ! っと全員の気配がその場から消え、気付くと街の入り口にいた。おお、すげえ、これ完璧ル〇ラじゃん。まさか自分が使うとは思ってなかったぜ。

「さて折角だしみんなで女将さんの料理を食べようか」

「いいねー、カーズ気が利くわー!」

「俺も行くぜ、折角のお誘いだしな!」

「ううー、もうお腹ペコリーヌですー」

 また言ってるよ、それやめろって。著作権侵害だぞ、って異世界だし関係ないのか。そうして俺達は4人で女将さんの料理に舌鼓を打つことになったのだった。食料が底をついたのは言うまでもない、俺は女将さんに更に追加で食糧費を支払うのだった…。
 あと一週間、油断は出来ない。やれることをやろう。それと、出発前にもう一度アーヤに会いたいな。なぜだか分からないが、そんな思いが巡る。だがそれ以上を考えると、頭痛に襲われて分からないままだ。俺の前世に関係あるのだろうか…。でもまずは任務をこなそう、酷い寝相のアリアと同じベッドで疲労感に包まれながら、その日の晩は目を閉じた。

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予定は決まり、ついに王国へ?
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