OVERKILL(オーバーキル) ~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~

KAZUDONA

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第二章 王国奪還・記憶の煌き

31  The Truth of Reincarnation

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 ダメだ、衝撃的過ぎて頭が回らない。

「そんな…、ならどうして私達は地球に…?」

 アーヤが疑問を口にする。そうだな、それを聞かないと。一瞬思考がフリーズしてたよ。

「救済という形で、別次元の世界へ送ったのです。それが偶然同じように人類が存在する地球だったということです。再びこの世界が成長するまでの間はそこで輪廻転生するようにという処置をして。どれだけ生まれ変わっても私達が見失わないように、目印としてとても小さな神格を与えて。ですが、その時には神々の技術も洗練されていなくて、かなり強引にその世界に存在するはずのない命を送ってしまったのです。因果率を無理矢理捻じ曲げたりとかした反動で、それで与えたただでさえ小さな神格に傷が入ってしまったのです。そして1人はその世界でも再び大きな影響力を与える聖女として称えられながらも非業の死を遂げるということになり、世界へ与える影響力の大きさを危惧したため、神域で英霊として静かに過ごしてもらうことになりました」

 うん、これはジャンヌちゃんだろ、どう考えても。違う世界でも伝説になるとか、根本的に何かが違うわー。

「じゃあ、俺達は? その影響で何が起きたんだ?」

 少し躊躇う様な表情をしたアリア。だがすぐに口を開き始めた。

「あなた達2人は、逆に何度生まれ変わっても、それが様々な国であっても、近くに惹かれ合いながらも結ばれないという運命になってしまったのです。この世界では結ばれるはずなのに、無理矢理因果を捻じ曲げたせいであちらでは前世のあなた達の様な悲恋がずっと続いてしまうことになってしまったのです。約5000年…、その間ずっと互いに惹かれ合いながらも苦しむという結末に。5000年間ずっと…。さすがに見かねた神々が、この世界の管轄に任命した私に2人を見つけ出して再び正しい因果が巡るこの世界に呼び戻すようにという決定が下されたのです。長い輪廻転生で神格への傷が深くなった2人を見つけるのは時間が掛かりました。地球の文化に詳しいのはそれが原因ですね。幸い彩ちゃんは死後魂の状態になっていたので早くに発見することが出来たのですが、前世のあなたはその目印の神格がもうボロボロになって限界の状態でした。だから見つけるまでに時間が掛かってしまったのです」

「ええー、5000年もそんなことを繰り返してたってのか…。ちょっと理解が追い付かん…」

 勿論そんな記憶はない、というかそれだけの年月の悲恋の記憶を見せられたら脳が爆発しそうだ。

「うん、ちょっと想像が…ね」

 そうそれが普通の人間の反応。

「彩ちゃんに起きた因果の影響は、短命。だから神格への傷も深くなかったんですよ。でもカーズ、あなたは生きて苦しむ時間が長かったせいで、傷が彩ちゃんの比ではなかったのです。あなたは生きていて自分がどこか他人とは違う様な違和感を持っていたでしょう? そして本来この世界の人間であったために、地球人とはあらゆる分野で高い能力を持っていたはずなのに、それが上手く発揮できなかったり、認められなかったり、不運に見舞われたりというように」

「…、確かにそれはあるかも知れない。どこにいてもそこが自分の本当にいる場所じゃないような感覚はあった。俺の普通が他者とは違い過ぎたりとか、挙げたらキリがない。そう考えると違和感は多かったな…」

「カーズに起きた因果の影響は、艱難辛苦かんなんしんく。そのせいで人生は常に逆境と試練、波乱万丈だったはずです。そしてそれらの原因は魂の清らかなあなた達を救済するつもりで、粗削りな技術で無理矢理因果を捻じ曲げ、神格に傷をつけてしまった私達の責任です。そして前世のあなたは崩壊するほどに神格が限界にきていて、心を深く病んでしまうほど、魂までもが他の世界の負荷に耐えられなくなっていたということです。漸く見つけられて、呼び戻すことに成功したのですよ。清らかな魂を持つあなた達を救済するどころか、途方もない時間苦しませてしまったということで、特にカーズ、あなたの願いを叶えたり、力を与えるために他の神々は自らの神格を少しずつ分けて私に預けてくれたのです。そうした出来た巨大な神格に、私もこの事態の責任がありましたから、自身の神格の半分を与えました。この世界に慣れるまでは記憶の封印という蓋をして。ですがやはりあなた達2人の魂は当然の様に強く惹かれ合ってしまった。まさか転生させた直後にすぐお互いを見つけてしまうとは…。人間の神秘を目にしたというか、実感した気分でしたよ。そしてあなたはやはり清らかな魂の持ち主でしたね、前世で得た知識や経験を生かしたとはいえ、一つの国、多くの人々を救ったのですから。そして、私が最初に言っていたサプライズがアーヤちゃんとの再会だったということですよ。あなた方が特異点と言われるのはそれが根拠です。理解してくれましたかー?」

 なるほど、何故かは分からないが色々と合点がいった。確かにあの世界では呪われているかのように物事が裏目に出たり、意味不明な邪魔や常に逆境だらけだった。比較したらもっと辛い人なんていくらでもいるだろうけど、地球爆発しろ! なんてよく思ったもんだ。

「なんかスケールがデカ過ぎて理解できないことはあるけど、不思議と納得できた気分だ。それが俺らのルーツってことか…。だから他とは明らかに異なる<特異点>ってことだろ、俺が神衣を纏うことが出来たのもそれだけ大きな神格が俺の中にあったからってことだろうしな。この世界に居心地の良さとか、懐かしさ、風景を無意識に目で追ってしまうのもそういうことなんだろうし。神話やらが好きなのも俺の魂に神々の干渉があった影響かも知れないしな」

「そっか、そういうことだったんだ。不思議…」

 俺もだよ、俺達は5000年もすれ違っていたのか。記憶などないけど、そんな年月の記憶なんて普通の人間が覚えていられるはずもないしな。

「まあ、そういうことですねー。だから転生ものによくあるトラックに撥ねられてランダムに選ばれたり、神の手違いで死にましたーなんて脈略のない転生ではない、ちゃんと選ばれる理由があったということです! 納得してくれましたかー? フンス!」

 なんでドヤるんだこいつ?

「一応納得はいったけど、俺はいきなり色々なヤバいことに巻き込まれ過ぎじゃないか? いきなりはステーキだけにしてくれ。もう邪神とか2度と会いたくないぞ。しかもこの後には大魔強襲スタンピードとかいうのも待ってるしさ。全部終わってアーヤを王様から分捕ったら報酬で家買って、いや王様に用意させてやる。そんでもう引き籠るからな! 暫くの間ゆっくりのんびりしたい、いや、する! 猫に埋もれて蒸しパンになるからな!」

「最後のはよくわかんないよ?」

「色々あり過ぎて混乱してるんですよー。残念な人ですねー(笑)」

 このやろー、お前にだけは言われたくないぞ。

「ああー! もううるさいな! 俺は静かに暮らしたいの! 自分のいるべき世界に戻って来た以上、この世界の平和を守らないといけないとは思うし、それだけの力があるなら見過ごせないとは思うけどさ。でもいつかジャンヌさんには会わせてもらうからな!」

「あ、私も会いたーい!」

「まあそれはその内ですねー。邪神を葬ったことで神々がご褒美にカーズ用の神器を創ってくれていますしー、神域に行く必要もありますから。それにアーヤちゃんもかなりの神格を引き継いでいるので、ステータス確認しておいた方がいいですよー。カーズは確認しましたか?」

 つい此間まで寝てたし見てないな。しかもちょっと見るのが怖い。PT組んでる以上あの2人にも邪神をぶっ飛ばしたり大量の魔人を滅却した経験値も入っているはずだ。あいつらまで人外にしてしまってそうで怖い。

「いや、邪神とか倒したし、絶対ヤバいレベルになってそうで見るのが怖い…」

「確かに神格と神気の力が強力過ぎたとはいえ、相当のレベル差の相手を屠ったわけですからねー。PT組んでた私のレベルももう久々に上がったくらいですからー」

 ええー、3000超えてたレベルでまだ上がったのかよ。ならその10分の1程度の俺のレベル…うん、見たくない、しかも今は寝間着だし。装備の補正値とかもわからんし、MPマイナスでステータス下がってそうだしね。

「全快してから確認するよ。多分今ステータス下がってそうだし。それよりこれからはアーヤも一緒なんだ、装備用意してやってくれよ」

「え、そんなことまで? 何だか申し訳ないような…」

「大丈夫、こいつ自分の装備のセンス以外はまともだから」

「むぅー、またバカにしてー。いいですよ、アーヤちゃんも装備用意してあげます。武器はどうしますか?」

「私は基本魔法主体だし…ロッドかなあ。でも剣術も習っては来たから使うとしたら細剣レイピアかな。出来れば腕にバックラーを付けた籠手があると嬉しいかも。後は接近されたとき用に短剣ダガーがあると便利かな。防具はアリアさんのお任せでお願いします。カーズの装備カッコいいしね」

 カッコいいか? あれドレス? なんだぞ。

「フフフー、OK! 素敵なものを期待しててねー。それにロッドなんて邪魔なものなくても魔法は高威力で発動できますよー、それだけの神格であらゆる能力が大幅に向上してますから。あとは訓練で自分のものにして下さいー、教えますからー」

「こいつの訓練は半殺しにされるからな。気をつけろよ」

「ええー、それは怖いかも…」

「その前に使徒としてしまった以上はアーヤちゃんもこれから同行してもらわないといけませんしねー。王様には何て言うつもりなんですか、カーズ?」

「えっ、くれって言う。最悪魔眼使う」

 だってそう言うしかないだろ。ダメなら強硬手段だ。

「脳筋ですか? 交渉術使いましょうよ」

「こればっかりは正直に言うしかないだろ? どうしろってんだよ」

「それは私が何とかするから、カーズはそのままの気持ちでいてくれたらいいよ」

 ヤイヤイと言い合う俺達にアーヤが言った。何か案があるのかな?

「そっか、ならそれを信じるよ。また離れ離れはゴメンだしな」

「そうですねー、私としても神格を分けた妹ちゃんですからねー。最悪魔眼使います」

 おい、発想が俺と同じじゃねーか。しかも被せて来やがった。

「あはは、あんまり強引にしなくても何とかするから、信じてて。アリアさんは装備の準備をお願いします」

「どうやら決意があるみたいですねー、ならそれを信じましょう。装備はお任せー、もうアーヤちゃんの異次元倉庫ストレージに武器は入れときましたしー。それにお客が来たようですねー」

「ん?」

 ドンドンドン!!!

「おーい、カーズ! いるかー!」

「カーズ! 私よ私ー!」

 あーこのテンションは…。元気だな、良かったけどうるせえ。名乗ろうよユズリハ、私私詐欺か?

「お二人共! 今は一応病室なのでお静かに!」

 あ、クレアの声もする。一緒に来たのか、ていうかあなたの声も大概デカいよ。やれやれ、これは騒がしくなりそうだな…。

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