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第四章 混沌の時代・7つの特異点
68 メキア突入・激闘開始!
しおりを挟む宗教国メキア、アストラリア教の聖教本山のクレモナの中心にある小高い丘の上にアストラリア教の巨大な聖堂がある。まるで塔の様な造りの聖堂だ。
巨大な扉を開けて一階は、欧州ではよくある様なローマの集会堂(バシリカ)をベースとしている様だ。横長の長方形であるが、縦棟が付き、全体に十字形(ラテン十字形)を構成することが多い。入り口から右手の祭壇方向への集中性が顕著で、特にカトリックのミサ儀式に適している。十字架はアリアの神器の形状からしてもそうだし、ある意味キリスト教の大聖堂と似ているのだろう。だがアストラリア教という一神教だけあって施設は巨大だ。
聖堂は地理的な制約がない限り、基本的には東向きに建築される。アプスが東側に位置し、扉口、入口が西側になる。それはここでも同じ様だ。信者達はこの教会内で東方向である奥に歩んでいく。祭壇奥の壁には、十字架と天秤が一体となったモチーフが飾られている。こういうのも地球と同じだな。
クリアストリー(建築上で壁の上部に採光または通気のために置く窓)は、側廊(壁側の通り)の屋根の一番高い位置から上の身廊(中央の通り)の壁部分に明けられた窓(あかり取り)は特にゴシック時代には大きな窓(ステンドグラス)が開けられ教会堂内が明るくなると共に、天空から堂内に色付いた神秘な光が降って来るイメージを醸しだすと言う様に、造りはキリスト教の大聖堂と変わらないな。今はもう日が暮れているから外の光は入って来てはいない。
塔は時代にもよるが、西の入口両脇に対の塔が立てられることが多い。塔は一つだけなのもあったり、非対称形の場合も多い。場合によっては四隅や中央等に多くの塔が立てられることもある。塔は鐘楼として利用される事が多い。鐘楼とは寺院のなかにある建築物のひとつで、仏教法具の場合は釣鐘である梵鐘を吊るすための施設だ。日本の寺院であれば除夜の鐘に代表されるような、ときを告げる音を鳴らす様な場所で、鐘撞き堂、鐘楼堂とも呼ぶものだ。
だがこの施設は祭壇の奥から左右に一つの塔へと昇る階段が上階へと伸びている。これが位の高い神官や法王がいる最上階へと繋がる階段なのだろう。
「しかし、予想はある程度してたけど酷いな……、アガシャはあんまり見るんじゃないぞ」
この神鉄製の大聖堂に入った瞬間に、据えた性の臭いが立ち込めていた。我を忘れた様に肉欲を貪り合う様々な種族の信者達や奴隷達……。隷属の首輪も着けられている。魔眼の影響か目も濁っており、焦点も合っていない。心底気分が悪いな……。言葉にならない声をあげて苦しむ人々ばかりだ。
ここに来たのは俺にアヤ、もう既にキレまくっているアリア、龍人族の救出にダカルー、万が一の為のアヤの精霊武器のためにルティ、アガシャ、そしてどうしても付いて行きたいと言うので、イヴァリースも一緒だ。多少実力を見させてもらったが、剣技は充分な実力だったし、魔神だったときの神格もある。扱えるのかはよくわからないらしいが、危険な時には救護に回ってもらうことにした。
「アーシェス……、よくもこんなことを。隷属の首輪を作ったバルゼも許せません……」
「どうする? この人達、健康状態もかなり悪いみたいだよ」
アヤが言った通りだ。以前ばーちゃんの首輪を力づくで破壊したとき、後遺症の様なものが残った。無理矢理物理的に外すのはリスクが高い。だがその為に考えて創造した聖属性の創造魔法がある。100人近いが、一気に解放してやるからな。
「ああ、先ずはこの魔眼と首輪の支配から全員を解き放つ。いくぜ…」
両手を掲げ、このホール全体に魔法が行き渡る様に強く魔力を練る。
「創造魔法・パーフェクト・キャンセル!!!」
カッ!!! パアアアアアアアアアーーー!!!
「おお、お主はまたしてもこの様な大魔法を…」
パキィーン! パキパキッ!! バキィイイイイーーン!!!
聖属性の輝きに包まれた人々が正気を取り戻し、闇属性の隷属の首輪も粉々に砕けて消え去った。だが、衰えた体力までもは回復できない。俺達は異次元倉庫から出した食料や、買い込んできたポーションを配って回った。体を覆う為のローブなどもアリアが準備しておいてくれた。
「ありがとうございます…。ずっと悪い夢を見ていた様な感覚です……」
一人の神官らしき若い男性が礼を言いに来てくれた。角が額にある、魔族か。一応情報を聞いておくかな。
「アンタ達は堕天した神に魔眼で操られていたんだ。隷属の首輪は破壊したが、ここに奴隷として連れて来られた人達も一緒に無理矢理酷い行為をさせられていた。上の階の状況はどうなっているかわかるか?」
自分も操られていたとは言え、同様の行為を行っていたんだ、ショックを受けている様だ。さすがに記憶までは消せないしな。彼は少し逡巡してからだが、色々と話し始めてくれた。
「私はジェームズと申します。まだ見習いなので、そこまで詳しくはわかりませんが……。塔の最上階の法王の間で唯一神様が降臨なされたという噂を聞き、一目お姿を見たいと思いまして…。こっそりと中を覗いてみたのですが、その時にはいつの間にか龍人族の女性達が連れ込まれていました。そして法王様の椅子に座る女性……、確かに伝説のアストラリア様の御姿でしたが、黒く禍々しい魔力を発し、上位神官達も恐らく先程の我々の様に操られていたのでしょう。普通ではありませんでした……。そしてその女性に見つかり、目が合ったときにはもう既に意識を失って……っ…」
「…そうか、わかった……。そいつは偽物だ、しかも世界中に奴隷制度解放なんてのを法王に発表させやがった。ここにはそういう通信道具があるのか?」
「はい、通信を世界中に発信する魔道具が最上階の奥に……、しかし禁忌を破るなど、何ということを…」
なるほど、それを使うのはあのクソ堕天神をぶっ飛ばしてからだな。それに法王は絶対に助けなければ。あの発表内容を撤回してもらわないといけない。
「あ、あの…、あなた方は一体何者なのですか? これ程の数の人々の洗脳を一瞬で解くなど……」
「……正義と公平の女神様の遣いだよ。ジェームズ、アンタは最上階までの道案内を頼む、他にも同様の目に遭わされている人達がいる。俺はカーズ、Sランク冒険者だ。仲間は全員レベル1000以上、道すがら紹介する。先ずはこの場の安全を他の信者達に任せる様に手配してくれ。奴隷にされていた人達には特に丁寧にな」
「あ、アストラリア様の遣い…? はあ…、しかし、救って頂いたのは事実。それにあなたの姿はどこかアストラリア様と似ている…、あちらの赤髪の女性も…。わかりました。ではカーズ殿。少々お待ち頂けますか」
写真がある訳じゃないから気にしなくてもいいけどな。彼はテキパキと他の信者達に指示を出している。デキる奴だな、見習いって言ってたのに。
「うーん、ボクはこういうことをする奴は許せないのさー、カーズ。本気出してやるのさー」
イヴァがやけにやる気になってるな。
「お前も魔神だったとき悪いことしてたんじゃないのか?」
「それは覚えてないからいいのさー。それにこの剣に呪いをかけられてからの記憶がないということは、これをやった奴が魔神なのさー。そいつらもいつか斬ってやるのさー」
あの呪いはそんなに酷かったのか。でも覚えてなくてもなあ…。…まあ今はどうでもいいか。それにこいつが自発的に変なことをするようにも思えないしな。
「そうだな、そいつらが悪い奴だ。そして今からぶっ潰す奴も悪い奴だからな」
「むっふっふー、カーズの側にいれば悪い奴は斬り放題なのさー」
この猫耳は…、食べ放題みたいなことを言うなあ。そうこうしているうちに、ジェームズがホールの人達をまとめて落ち着かせてくれた。ナイスな手際じゃん。後でちゃんと助けてやらないとな。
「では参りましょう。皆さん」
「道すがら洗脳された人々や奴隷にされた人々は全員助ける。アリア、ちゃんと大将首は譲ってやるからな。神器から出て来るらしい奴らは俺らがやる。負けんじゃねーぞ」
奴の神器の情報はサーシャやルクスから聞いている。巨大な戦斧を振り回す少女と杖で極大魔法を撃ってくる少女に、形状変化するアーシェス本体が振う、アマウシュムガルアンナ。分裂した二体を片付ければ、残りは本体のみ。ここはある意味アリアの聖域、その当人が絶対に譲らなかったしな。
「当然です。よくもこれだけ荒らしてくれたものですよ。絶対に仕留めますから……」
「冷静さを失うなよ。それがお前の一番ダメなところだからな」
「…ええ、そうですね。肝に銘じておきます」
「ほな行こかー」
ルティの気の抜けた言葉と共に俺達は各階の人々を解放しながら、最上階であるという10階を目指した。
・
・
・
10階へと昇る最後の階段。道中でかなり多くの人々を解放したため、俺の魔力も相当消耗した。ということでユグドラシル・ドロップの出番だ。最上階にも龍人族の女性達や操られている人達がいる、ここで一旦回復。飲み干すと一気に魔力も体力も全回復、確かにこれは凄いな。体力は特に減ってはいないが、スッキリした。
この一晩で決着を着ける。神鉄の建物の中、逃げ場はない。それにこいつがやっていることは、俺が一番大嫌いな、人の尊厳を踏みにじる最低最悪の行為だ。絶対に許さん。階段を昇り、扉の前に立つ。内部から沢山の気配を感じる。扉は神鉄製じゃないので、中は筒抜けだ。当然向こうも気付いているはず。恐らく俺達がこの大聖堂に入った時点で気付いているだろう。それでも悠然として、ここまで何も仕掛けて来なかったのは、余裕なのか馬鹿なのか、舐めているのか…、まあそんなことはどうでもいい。ぶっ潰してやるからな。
「ジェームズは救護が始まったら来い。じゃあいくぞ、悪魔も召喚してやがる。一人一殺は覚悟してくれよ。開けるぞ!」
ドガアアーーン!!!
思い切り扉を壊す勢いで蹴り開ける。やはり龍人族の女性達が捕えられている。それに他種族の人達に上位神官達も法王含め全員魔眼で操られている様だ。法王の椅子に座るアーシェタボロス、肩の上の宙に浮いているのが魔神器か。そして召喚された悪魔とその配下達。鑑定、こいつが序列五位の旅団長サルガタナス、軍国カーディスを潰した奴か。サタナキアの銀色バージョンみたいな見た目だな。背中からコウモリの様な羽が生えている。ルクスは配下は斃したと言っていたが……なるほどリザレクト・アンデッドか。道理で精気を感じないはずだ。部屋の左奥には十字架に吊るされたライトブルーの髪をした女の子が、触手が生えたスライムみたいな魔物に纏わりつかれている。あれが聖女勇者か…。酷いことしやがるな。
「あら、アリアに特異点の坊や達。結構時間が掛かったのね。さっさとここまで来ればいいのに。奴隷共や廃人同然の信者達までわざわざ救うなんて、ご立派なことねー」
アーシェタボロス、こいつもかなり見た目が変わってやがる。長く伸びた灰色の髪に6枚の黒い羽、側頭部から生えた鋭くいかつい角、橙色に輝く魔眼にやたらと露出の多い魔神衣。能力も化け物だな…。
「やっぱお前だったか、性悪女神。ティミスとも繋がってるんだろ、もう証拠は挙がってんだよ。それに罪もない人々や、女性達にこんなことをしやがって。絶対に潰してやるからな、逃げんじゃねーぞ!」
「アハハハ! よく気付いたわね、あのコウモリ女の本性に。まあ、あんなのは用済み、月から実験用に特異点を連れて来てくれたしね。それにカーズ、人類なんて罪に塗れているのよ。他の世界の歪んだ伝承のせいで、私は苦しんだ挙句にこんな姿になった。神を貶めておいて罪がないとは、片腹痛いわよ、人間風情が!」
ほう、こいつは恐らく地球の伝承が流れ込んだんだろうな。だとしたらそれを背後で操っている姿を消した7人の神、もしかしたらそいつらに成り代わっている原初の7色の魔神、そいつらがやったことだとは知らないということか…? ならば都合がいい、これも一つの駆け引きだ。使えるタイミングで煽ってやるぜ。そして狙いはアガシャなのか? なら後衛に回って貰おう、近づけさせる訳にはいかないしな。
「ああそうかい、だが先ずはこの部屋の人達を解放させて貰う。パーフェクト・キャンセル!!!」
カッ!!!
この部屋の全ての人々が魔眼の呪縛から解放され、隷属の首輪も粉々になった。皆が自我を取り戻す。そしてアンデッドとして復活させられていた配下共も消えた。死者をこの世に無理矢理死体として繋ぎ止める、ある意味呪縛だ、効果があったんだろうな。さらに十字架に吊るされていた聖女勇者の縛めもキモいスライムも消え去った。あれも呪縛の様なものだったということだな。
「なっ!? これだけの精神操作をあっさり解除する程の解呪魔法が使えるとは…、やはりあなたは危険な存在の様ね、カーズ。奴らを逃がすな、サルガタナス!!!」
「ハッ、アーシェス様!」
「聖剣技・水龍演武」
スゥーー、ザッヴァアアアアンッ!!!
「あ、が…、グゴ…?!」
全身を、水が流れる様な流麗な剣捌きで斬り裂かれたサルガタナスは一瞬で消滅した。
「なーんだ、悪魔って弱過ぎるのさー」
あれがイヴァリースの剣聖としての剣技か……。レベル自体は長い眠りで下がってはいるが、凄まじいな。
「よし、よくやったイヴァ! アガシャにばーちゃんはこの人達の避難を任せる。イヴァは十字架に吊るされていた子を頼む。いくぞ、俺達は大将首だ!」
「わかったのさー!」
「はい、父上。ご武運を!」
「こちらは任せよ。心置きなく闘え!」
神格を解放し、神気を全力で放つ。もうアヤとアリアは神衣を纏っているな。
「来い、俺の神衣よ!」
「いい気になるな……。貴様ら人類など神にとっては塵芥も同じ、泥濘の泡の如く消え失せるのがお似合いだということを教えてやるわ。その力を解放せよ!魔神器アマウシュムガルアンナ! 来なさい、シタ、ミトゥム!」
カッ!!! ドオオオオオン!!!
魔神器が輝くと、その内部から光と共に二人の少女の外見をした奴らが飛び出して来た。この小柄で自分よりも巨大な諸刃の戦斧を軽々と肩に担いでいる奴がシタか。そして先端に黒い球体の魔石が付いた杖を持っている、少し大人びた方が魔法が得意なミトゥムね。魔法相手ならスペル・イーターがある俺の方が与し易いだろうが、アヤが魔法で負けるはずがない。ここは作戦通りにいこう。
「アヤ、ルティ、そっちの杖持ちは頼む。俺はこのクソガキを潰す!」
「ええ、任せて!」
「何をこそこそと言っているのかしら、私もいると言うことを忘れるな!」
ガキィイイン!!!
「おっと、あなたの相手は私ですよ、アーシェス。この世界に無駄な混乱を生んだ裁きを受けなさい!」
剣の形状になった魔神器でアリアの攻撃を防ぐアーシェタボロス。よし、これでこいつらは身動きが取れない。救助も進んでいるし、先ずは俺がこのガキを潰す。
<明鏡止水・未来視・神眼が発動します>
「ウフフフ、お姉ちゃんかと思ったら男なんだー。こんな幼気な女の子に手を出していいのかなっ?!」
ドゴオオオオ!!!
叩きつけた戦斧を敢えてギリギリで躱す。先ずは敵の力の検証だ。床も神鉄、衝撃波も起こらない。こいつは要はあの蠅野郎と同じ力極だ。しかもあの蠅よりは遥かに劣る。
「お前らは神器、要は元天使だ。見た目通りじゃないババアだろうが。幼気とか自分で言う奴なんかいねえよ。それにしょうもない理由で性別差を振りかざして自分を正当化する奴が俺は大っ嫌いなんだよ。まあいいぜ、ならこれで相手してやるよ」
全身の魔力の制御を解除する。少し背が低く、線も細くなるが能力に変化はない。胸は邪魔だけど。
「ほら、これで条件は同じ。同性だ。自称幼気なババアにキッチリと教育してやる」
「な…、ズルい! カスみたいな人間のくせに、そんなに綺麗になるなんて…」
「黙れよロリババア、テメエらがしてきたことにこっちはいい加減腸が煮えくり返ってんだよ……。さっさと来やがれ、クソババアが!」
「生意気っ!! ぐちゃぐちゃになっちゃえ!!!」
ガシイイイイイッ!!!!
「なにっ……?!」
跳躍して放った渾身の打ち下ろしだったのだろう、それが俺の左手一本で受け止められていることに驚いている。こういう奴は真正面から力量差で叩き潰すのみ!
「うおおおおおおお!!!」
バギインッ!!!
受け止めた部分の斧の刃に俺の指が食い込み、穴が空く。そして握った斧を持ち上げると、それを掴んでいるゴスロリの様な服を着た薄い青髪セミロングのシタの体も宙吊りになる。
「くそっ、放せ! カスみたいな人間の分際で!」
「この状態でまだ吠えるか、ロリババア。なら先ずはこいつを喰らえ! アストラリア流格闘スキル・奥義!」
右手拳に闘気と神気を全力で込め、その拳でボディに一撃をねじ込み、天高く撃ち上げる!
ドゴオオオオオオオオオ!!!!!
「アルティメット・ヘヴン!!!」
グワシャアアア!!! ドゴオオオン!!!
「げぶっ!! がはあっ!?」
さすが神鉄製、天上も頑丈だ。そして床も抜けないで済む。この中で吹き飛ばし系の技は屋外の戦闘よりも強烈だな。床に叩きつけられて呻いているシタに片刃を破壊した戦斧を投げ返す。
「ぐ、…よくも、人間の分際で……。ぐあっ、何だ!? 私の戦斧が凍り付いている!?」
掴んだ斧が余りにも冷たかったのだろう。だが手を放そうとしても皮膚がくっついて離れない。所謂凍着現象。凍着とは『二つの物体の間に水分がある場合、その水の凍結により物体間の氷による接合が生じる現象』だが、これは絶対零度のそれだ、無理に剥がせば皮膚ごと剥がれる。しかも両手、いくら天使でも凍傷でおかしくなるはずだ。握ったときに魔力で渾身の凍気を流し込んでおいたからな。
「痛いか? クソ堕天使」
「くそっ、痛いに決まってるだろ!!! どうにかしろ!」
「ここにいた人達はもっと痛くて苦しかったんだろうさ。その気持ちがわかるか?」
「ふん、虫けらの気持ちがわかる訳がないだろう! さっさと元に戻せ!」
「そうか……、じゃあ俺にはそんなお前の気持ちは一切、全く微塵もわからん。氷を砕きたいんだったな、なら温度差で一緒に粉々になれ。来い、ニルヴァーナ!」
ガシィ!!!
「な、何だよっ…!? その燃え盛る炎の様な剣は…?!」
「これはニルヴァーナの戦型・炎。全てを焼き尽くす灼熱の業火だ。じゃあな、魂まで燃え尽くされろ! アストラリア流ソードスキル!」
ゴオオオオオゥッ!!! ドパアアアン!!!
「ギアアアアアアアアッ!!!」
「クリムゾン・エッジ・9スラッシュ!!!」
温度差で戦斧も粉々、本体も灼熱の9連撃には耐えられずに燃え尽き、灰になって消滅した。
「まあ、お前らみたいなクズに燃える様な魂がある訳がないよな」
残りはアーシェスにミトゥム、だが負ける訳がないさ。いざとなれば手助けすればいい。邪魔したら怒られるしね。後から伝承のことで煽ってやってもいいしな。
部屋の中の人々の救出はもうかなり進んでいる。俺はイヴァが様子を見ている聖女勇者のところへと向かった。
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