純白のレゾン

雨水林檎

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 土曜日、顧問をしている柔道部の試合を終えて駅前で向島と待ち合わせる。待ち合わせ十五分前に到着した駅の改札でシャツにデニムパンツと黒のジャケットを合わせた向島が待っている。その手には文庫本。おいおい真面目かよ、休みの日まで……。

「待たせたなあ、向島!」
「ああ、青海先生こんばんは」
「何読んでんの?」
「図書館で借りた初期の江戸川乱歩の作品を」
「ああ、少年探偵団か。昔の本は挿絵ちょっと怖いよな、夢に見そうで夜はページひらけなかったわ」
「初期の短編は幻想文学要素が多くて短時間でも世界観に浸れますよ」
「知らねー、俺、今は読書するほど暇じゃねえわ」

 向島が持っていたトートバッグに文庫本をしまう。その外見は大学生と言っても構わないくらい幼い。身長も平均的で、少し痩せ型か。部活の生徒に今度高々と持ち上げさせようか……ふ、こいつの怯えた顔が見たい。
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