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2章

開戦

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「効くわけがないじゃないか、そんな攻撃。」

「サタン……」

そう、そこには無傷の魔王の姿があった。

「それにしても意外だったよ……まさか君、人間じゃないんだね。」

いいや、正確には少女の服はボロボロに破れており、決して無傷には見えないのだけれど……彼女はそう言って高橋の方を見やった。

「なあ、頼む。頼むからコイツらを殺さないでくれ……」

六花は魔王に対してそう頼み込む。

「それは出来ないと言っているだろう。」

「なんでだよ!」

「それは、コイツらがいると邪魔なんだよ、色々とね。僕にとっても、そして君等にとっても。」

少女は冷酷にそう言い放った。

「彼女を、春野芽生を助けたいだろ?さあ、こっちにおいでよ、六花。」

そう言って少女はその手を六花に向かって差し伸べる。

「ふざ……けんな。」

六花はボロボロになったその体を起こしてそう言った。

「それは一体どういう意味だい?」

魔王は心底不思議そうにそう言った。

「確かに、俺は無力で何も出来ないちっぽけな存在かもしれない。お前に頼った方が早く芽生に会えるかもしれない……けどよ、彼女が、芽生が助けてくれって……迎えに来てくれって頼んだ相手はお前じゃ無くて、俺なんだよ……それを横からゴチャゴチャ五月蝿ェんだよどいつもコイツも。」

「へぇ~、君にもそんな顔が出来るんだ。」

吹けば飛ぶかの様な存在___深雪六花を見下げて魔王はそう言った。

「だからよ……俺は俺のやり方で芽生を救うっ。」

「もう遅いんだよ、六花。何故なら君は僕と結んでしまった……をね。」

___刹那、二つの黒の閃光が宙で飛び交った。

   ***

「ちょっと、どこに連れて行くつもりっ。」

二階堂凛奈はロジャーの背中にしがみつきながら、那須太一に対してそう言った。

「ああ、今から助けに行くのさ……深雪六花をね。」

「六花を?」

突然の太一のその言葉を聞いて凛奈はその動揺を隠しきれれない。

「ああ。どうやらもうタイムリミットみたいだしね。」

そう言って太一は粒子を展開させて高速で空を駆け抜ける。

「あいつらと……何か関係があるの?」

凛奈‘は恐る恐るといった様子でそう聞いた。

「逆に、彼等と深雪六花が関係が無いとしたら僕はビックリするよ。」

太一は諭す様にそう言った。

「それよりアンタ、何よその血。」

凛奈は不貞腐れた様に、否、彼女にとってこの状況はさして違和感の無かったことなのだが、認めたく無いといった様子で話を逸らすためにそう言った。

「なんてーー?」

しかし、太一はそれを、その声を拾ってはくれなかった。

「そろそろ着くぞ、用心しろよ。」

どうやら六花の監禁されている場所がそろそろ近ずいてきているらしい、太一は大声でそう言った。

「?!」

___刹那、眩い閃光が周囲を覆っていた。

   ***

「あはは……良いね、君はやっぱり最高だ。」

興奮した様に頬を赤らめ、少女はそう言った。

「くっ……」

六花は彼女からのその攻撃を防ぐことで手一杯であった。

「でも、そろそろ終わりにしようか……」

そう言って魔王は六花に迫って来る。

「?!」

魔王の動きがピタリとまたしても止まった。

深雪六花は有ろう事か、最愛の人を、その時計を自身の前に掲げたのである。

「ほう……どうやらお前はこれを壊せないらしいな……」

六花は勝ち誇った様にそう言った。

「いいか、もう俺に、俺達に手を出すんじゃねぇ。

「君は一体……何をしているのか分かっているのか……?」

少女のその表情が固まる。

「君がそれを壊せば……君はもう春野芽生と会う事は出来ないんだよ?その時計は___春野芽生その人なんだぞ。」

「ああ、いいさ。それでも、例え彼女が死んだとしても……俺は芽生を迎えに行く。」

「なんでそこまでするんだ?何故、君はそこまで彼女を信じられるんだ?」

少女は不思議そうにそう尋ねた。

「……そんなの簡単な事さ。彼女が、春野芽生が俺に初めて頼んでくれたんだ……いつか、迎えに来て欲しいってな……」

吹けば飛ぶちっぽけな存在、

「あはは、やっぱり君は最高さ。」

しかし、その覚悟、その愛情は魔王を退けるには十分過ぎるものであった。

「____。」

彼女は六花にそう何かを囁くとどこへとも無く消えていった。

「逃がさない……待っててね、お父さん。」

下を見やるとそう六花を呪う高橋美沙の姿があった。
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