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第2章 過去と現在
聖なる光の物語(4)
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今、読んだ話は、本当のことなんだろうか?
ディルク様は、この本を読んだら僕が今いる世界のことや、セントラルランド王国のことがわかると言っていた。
本当だとしたら、この世界には獣人や魚人、竜人、魔族も存在していることになる。
そんなことがあるのだろうか。
僕がいた世界ではありえないことだけど、こっちの世界では魔法も存在している。
完全に否定することはできない。
しかし、この本はセントラルランド王国に昔から伝わる言い伝えを物語にしたものだ。
日本の古い言い伝えである日本神話にも、ヤマタノオロチのように現実ではありえないものがでてくる。
外国の伝説でもドラゴンや妖精がでてくる。
ということは、この本に書かれていることが必ずしも本当とは限らない。
そうだとしたら、どうしてディルク様はこの本を僕にくれたのだろう?
コンコン。
「はい。」
ドアの方を振り返ると、オスカル様が入ってきた。
「おっ、頑張ってるな。どこまで読んだんだ?」
「第1章の終わりまでです。金色の光の中から現われた少女と魔族の長だった青年によって、世界が輝きを取り戻したところです。」
「ああ、グレート・マザーのところまでか。」
「グレート・マザー?」
「そう、グレート・マザー。物語の中では、グレート・マザーという言葉は出てこなかったか?」
「はい。」
オスカル様の話では、この世界の人間の祖先となった少女をグレート・マザーと呼んでいるらしい。
「じゃあ、魔族の長だった青年は、グレート・ファーザーですか?」
「いや、彼には名前はない。それどころか、人間の祖先が魔族の青年だったということも知らない人間の方が多い。」
獣人や魔族が人間の祖先だと認めたくなかったのか、違う物語も作られているらしい。
昔は、少女に救われた闇の精霊王と一緒に世界中を浄化してまわり、やがて一緒になったという物語が作られていたらしい。
しかし、闇に恐怖を感じるのか、闇よりも光の方がいいというイメージからか、相手が光の精霊王にかわっていったらしい。
他にも少女が精霊たちの力を借りて一人で世界を救い、一人で子どもを産んだという物語も作られているらしい。
「でも、物語だから好きなように作ってしまいますよね。」
「いや、これは歴史に対する冒涜だ。」
えっ、それってどういうことですか?
まさか、この物語は本当の話!?
「もしかして、魔族の人って本当にいたりしますか?」
僕は、恐る恐る訊いてみた。
「ああ、いるよ。西の大陸には魔族の国がある。」
オスカル様は平然と答える。
「じゃあ、もしかして獣人や魚人、竜人もいますか?」
「ああ、セントラルランドは人間の国だが、世界には獣人や魚人、竜人の国もある。ハルトの世界にはなかったのか?」
「はい、僕の世界には人間の国しかありませんでした。じゃあ、もしかして精霊もいますか?」
「ああ、いるよ。精霊たちの国はないけど、世界中に精霊たちはいるんだ。俺やハルトの周りにもいるんじゃないかな。」
「えっ!?」
俺はキョロキョロと辺りを見回した。
が、何も見えない。
「ハハハハハ。精霊の姿が見える奴なんていないよ。」
オスカル様に笑われてしまった。
確かに精霊の姿が見えるなら、昨日この世界に来てから今までの間に見えていたはずだ。
だけど・・・
「グレート・マザーは精霊たちにお願いしたり、精霊たちに力を借りたりしていたんですよね?」
「ああ、グレート・マザーや聖女たちは、精霊たちの声を聞くことができたらしい。俺たちのように魔法が使える人間は、精霊たちの気配を感じることはあるが、魔法が使えない人間は精霊の気配を感じることもないらしい。」
じゃあ、魔法が使えない僕には無理な話だ。
しかし、僕には見えないけど精霊たちも存在していて、精霊と話すことができる人もいた。
「この物語に書かれていることは、本当にあったことなんですか?」
「本当にあったと伝えられてきた話ばかりだ。もしかしたら一部脚色されているかもしれないが、本当にあったことがもとになっている。」
『残念ながら、異世界からこの国にやってきた人間が元の世界に戻ったという記録はない。』
ふと、昨日ディルク様から聞いた言葉が頭に浮かんだ。
「もしかして、グレート・マザーは異世界からやってきた少女ですか?」
「ああ、俺たちの世界、特にセントラルランドでは、世界や国が危機的状態に陥った時、異世界から聖なる光に包まれた聖女様がやってきて救ってくださると信じられている。まあ、詳しくはその物語に書いてあるから、続きを読んだらわかるさ。」
「はい。」
僕は返事をして、もう一度本の表紙に目を落とした。
『聖なる光の物語』
この物語には、僕のように異世界からやってきた人間の話が書かれているらしい。
ディルク様は、この本を読んだら僕が今いる世界のことや、セントラルランド王国のことがわかると言っていた。
本当だとしたら、この世界には獣人や魚人、竜人、魔族も存在していることになる。
そんなことがあるのだろうか。
僕がいた世界ではありえないことだけど、こっちの世界では魔法も存在している。
完全に否定することはできない。
しかし、この本はセントラルランド王国に昔から伝わる言い伝えを物語にしたものだ。
日本の古い言い伝えである日本神話にも、ヤマタノオロチのように現実ではありえないものがでてくる。
外国の伝説でもドラゴンや妖精がでてくる。
ということは、この本に書かれていることが必ずしも本当とは限らない。
そうだとしたら、どうしてディルク様はこの本を僕にくれたのだろう?
コンコン。
「はい。」
ドアの方を振り返ると、オスカル様が入ってきた。
「おっ、頑張ってるな。どこまで読んだんだ?」
「第1章の終わりまでです。金色の光の中から現われた少女と魔族の長だった青年によって、世界が輝きを取り戻したところです。」
「ああ、グレート・マザーのところまでか。」
「グレート・マザー?」
「そう、グレート・マザー。物語の中では、グレート・マザーという言葉は出てこなかったか?」
「はい。」
オスカル様の話では、この世界の人間の祖先となった少女をグレート・マザーと呼んでいるらしい。
「じゃあ、魔族の長だった青年は、グレート・ファーザーですか?」
「いや、彼には名前はない。それどころか、人間の祖先が魔族の青年だったということも知らない人間の方が多い。」
獣人や魔族が人間の祖先だと認めたくなかったのか、違う物語も作られているらしい。
昔は、少女に救われた闇の精霊王と一緒に世界中を浄化してまわり、やがて一緒になったという物語が作られていたらしい。
しかし、闇に恐怖を感じるのか、闇よりも光の方がいいというイメージからか、相手が光の精霊王にかわっていったらしい。
他にも少女が精霊たちの力を借りて一人で世界を救い、一人で子どもを産んだという物語も作られているらしい。
「でも、物語だから好きなように作ってしまいますよね。」
「いや、これは歴史に対する冒涜だ。」
えっ、それってどういうことですか?
まさか、この物語は本当の話!?
「もしかして、魔族の人って本当にいたりしますか?」
僕は、恐る恐る訊いてみた。
「ああ、いるよ。西の大陸には魔族の国がある。」
オスカル様は平然と答える。
「じゃあ、もしかして獣人や魚人、竜人もいますか?」
「ああ、セントラルランドは人間の国だが、世界には獣人や魚人、竜人の国もある。ハルトの世界にはなかったのか?」
「はい、僕の世界には人間の国しかありませんでした。じゃあ、もしかして精霊もいますか?」
「ああ、いるよ。精霊たちの国はないけど、世界中に精霊たちはいるんだ。俺やハルトの周りにもいるんじゃないかな。」
「えっ!?」
俺はキョロキョロと辺りを見回した。
が、何も見えない。
「ハハハハハ。精霊の姿が見える奴なんていないよ。」
オスカル様に笑われてしまった。
確かに精霊の姿が見えるなら、昨日この世界に来てから今までの間に見えていたはずだ。
だけど・・・
「グレート・マザーは精霊たちにお願いしたり、精霊たちに力を借りたりしていたんですよね?」
「ああ、グレート・マザーや聖女たちは、精霊たちの声を聞くことができたらしい。俺たちのように魔法が使える人間は、精霊たちの気配を感じることはあるが、魔法が使えない人間は精霊の気配を感じることもないらしい。」
じゃあ、魔法が使えない僕には無理な話だ。
しかし、僕には見えないけど精霊たちも存在していて、精霊と話すことができる人もいた。
「この物語に書かれていることは、本当にあったことなんですか?」
「本当にあったと伝えられてきた話ばかりだ。もしかしたら一部脚色されているかもしれないが、本当にあったことがもとになっている。」
『残念ながら、異世界からこの国にやってきた人間が元の世界に戻ったという記録はない。』
ふと、昨日ディルク様から聞いた言葉が頭に浮かんだ。
「もしかして、グレート・マザーは異世界からやってきた少女ですか?」
「ああ、俺たちの世界、特にセントラルランドでは、世界や国が危機的状態に陥った時、異世界から聖なる光に包まれた聖女様がやってきて救ってくださると信じられている。まあ、詳しくはその物語に書いてあるから、続きを読んだらわかるさ。」
「はい。」
僕は返事をして、もう一度本の表紙に目を落とした。
『聖なる光の物語』
この物語には、僕のように異世界からやってきた人間の話が書かれているらしい。
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