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いや、ひとりです

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「いやぁ、上々の出来でしたねー。ゲッコウ隊長。カメレオン部隊は残念だったけど、本隊同士の戦いは大勝利。その上、シェド隊のジャカルも殺すことができたなら言うことなしですね」
「ああ、そうだな」

機嫌良く話し出すアマゲに対して、ゲッコウはそのように冷たく返す。ただひたすらに自身の右手を眺めるゲッコウ。そんな彼にアマゲは国を傾げる。

「どうしたんすか? ゲッコウ隊長。せっかく有利に戦いを進められてるのに、浮かない顔して。らしくないっすよ。いつももっと自信満々にしてるじゃないですか」
「うるせぇなぁ。黙ってろよアマゲ」
「うわ、久々ですね。僕の名前、最初から正しく呼ぶの。こりゃ雨が降りますね。ちなみにアマガエルがよく鳴いていると次の日雨が降るって迷信ありますけど、ゲッコウさんあれ信じてます?」
「黙ってろって言ってるだろ! 静かにしてろよ」

 そう声を荒げ、再び、自分の右手をぼーっと眺めるゲッコウ。そんな彼の様子を見てアマゲはなんとなく彼に何があったのか悟る。

「あーわかったかもしれないです。あれですか? ひょっとしてまた戦いで自分が再生能力を使ったこと恥じてるんですか?」
「・・・・・・」

 何も言葉を返すことができないゲッコウ。そんな彼に対してアマゲは続ける。

「そんなん気にしなくていいのに。僕らにとってみれば、隊長が死なないっていうのは随分と気楽なもんですよ。だからもっと自分を好きになればいいじゃないですか」
「違う、そんなんじゃねえんだよ。俺は――」

「あ、一人称俺様から俺に戻ってるじゃないですか。いつも思うんですけど俺様なんてやめた方がいいですよ。いくらゲッコウ隊長が自分に自信ないことを隠すために使っているっていっても、あんなダサい一人称流行らないですよ」 
「アマゲ副隊長! ゲッコウ隊長!」

そんな彼らの会話の間に入ってきたのは、イグアナ部隊の隊員の一人のイアンだ。切迫した様子で、2人の前に現れた彼。そんな彼の様子を見て、ゲッコウは何かよからぬことが起きたということを悟る。

「なんだ! そんなに慌てて、どうしたんだよ? イアン」
「恐れながら申し上げます。夜襲です。今、カニバルの兵がこのレプタリアの本陣めがけて襲撃してきました!」

「夜襲っすか? こんな夜中にそんなことしたって、暗くて何も見えないだけじゃないすか」
「それが、敵は炎をその身に纏っていまして……」

そんなイアンの言葉を聞き、ゲッコウの頭に昼間みた炎の斬撃を飛ばした青年を思い浮かべる。なるほどな。確かにやつがなんの獣人かわからないが、身に炎を纏えるなら、明かりを灯しながら進軍することは可能だ。

「昼間のあいつか。なるほど、つまりはそいつを先頭にしてカニバルの奴らが攻めてきたわけだ。あいつらも考えたな」
「いや、1人です!」

「は?」
「ですから、その男は一人でこの南の峠を登って攻めて参りました! 現在コブラ部隊とイグアナ部隊は壊滅! 今、サンショウオ部隊が迎撃に向かっているところです!!」
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