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世界の平和も守るハクダ団
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――過去――
「おい待てよー」
「ちょっとまってよ。速いって」
「なんだよ、お前らが遅いんだろー」
「そうだそうだ。早く行こーぜ」
荒廃したスラム街、ハクダにて、自らの貧しさなど振り切るように、活力いっぱいに遊ぶ3人の少年と1人の少女。1人の少年と1人の少女は、先にかけて行った2人の少年に追いつく。息を切らしながら、1人の少女が2人に言った。
「もー速いよ。ゲッコウ、アリゲイト。マムスと私は、2人ぐらい早く走れるわけじゃないんだから」
「ほんとそれ。ねーちょっと休もうぜ」
マムスと呼ばれた少年は、その少女の発言に深くうなづく。アリゲイトという少年は、その発言に対して、慌てた様子で言葉を返す。
「おいおいそんな暇ないぞ。マムス。カナハ。近所のタトルばあちゃんが、グレイトレイクに水を汲みにいくんだぜ。早く助けにいかないと、ばあちゃん腰悪くしちまうよ」
「そんなに急ぐ必要ないよ。アリゲイト。やすもーよ。それがダメならせめてあるこー」
「そんなこと言ってもリーダーの意思はかわらねぇだろ。マムス。おまえ最近拾った本ばっか読んでて運動不足なんだから、ちょっとは体動かせよ」
「僕は、ゲッコウみたいな体力バカじゃないんだよ。はぁ、やだなぁ。これだから脳筋は、他の人をすぐ自分と当てはめる」
「なんだと! てめぇ今日こそわからせてやる必要がありそうだな」
「やる気? いいよ、今日こそ僕の毒の前には君の再生能力なんて無意味なことを教えてあげる」
そして互いに拳を構えるゲッコウとマムス。そんな2人にカナハは内心で深くため息をつく。本当にこの2人は昔からウマが合わなくて、よく喧嘩ばかりしていた。カナハは、そんな2人から一歩下がって距離を取る。喧嘩を止めたい気持ちはあるが、自分が止めても、怪我をするだけだ。こんな彼らを止められるのはやはり、リーダーしかいない。
「おいおいやめろよ。それ以上やるようなら2人とも俺がのし倒すぞ」
「だってリーダー、この脳筋がさー」
「あ? おまえの方が先に吹っかけてきたんだろうが! しばくぞ!」
「おいやめろって言ってるだろ。あのなぁ。俺たちは。ハクダの平和、そしてひいては世界の平和も守るハクダ団だろうが。そんな俺たちが、自分たちから平和を乱すようなことをしてどうするんだよ」
ハクダ団。それは、このアリゲイトが始めた、この街の自警団のようなものだった。もちろん子どもの遊びには違いないのだが、その活動は多岐に渡り、スラム街の人々の手伝いから、ハクダで狼藉を働いたやつへの制裁と様々である。
もちろん彼らはまだ子どもである。だから本来は大それたことはできないはずなのだが、当時からアリゲイトとゲッコウは大人顔負けの実力を持っていた。そしてマムスは、そんな2人をうまく活用できる頭脳を持っていた。だからこそハクダ団は、このスラム街でそこそこの影響力を持っていたのだ。
「わかったよ。アリゲイトがそういうなら仕方ない。まあゲッコウ、命拾いしたね」
「なんで最初から俺が悪かったみたいになってんだ」
「おいおい、また始めんなよ。とっととタトルばあさんのとこ行こうぜ、カナハもまだ走れるだろ?」
そして、優しく微笑み、こちらへ言葉を投げかけてくる。相変わらずこの人は、眩しいな。カナハは、少女ながら、彼に対し、そんなことを思う。
「わかったよ。早く行こう」
そして4人の若者たちは、夕日を背に受け走り出す。
カナハは思う。この頃の私たちは、こんな何気ない日常がいつまでも続くと思っていた。ハクダ団は、このまま4人で、ずっとおかしなことをやって、笑い合って、そのままゆっくりと死んでいくのだと本気で思っていたのだ。
でももう二度と、こんな日々が繰り返されることはないのだろう。
――現在――
「うお、これは、空き……家? なのか?」
あまりにもボロボロの内装に、サンはそう呟く。壁には穴が空き、屋根は今にも落ちてきそうで、それはとても家と呼べるものではなかった。そんなサンに対し、ネクはこう告げる。
「……しょうがないの。本来、スラムなんて、場所が空いてたら誰が住み着いてもおかしくない。そんな中で拠点になりそうな場所を見つけるのは、私だって大変だった」
「そうだぞ、サン。あんまわがまま言うなよ。まあとりあえず2人とも座れ。ハクダにもついたことだし、今後の流れを説明する」
シェドにそう言われ、床に腰をかけるサンとネク。オンボロな床がミシミシミシと軋んだ音を立てる。大丈夫か。抜けないのかこれ。そんな不安を抱えながらも、サンはシェドの方を向く。
2人が座ったことを確認し、シェドは話を始める。
「まあとりあえず、すぐには敵の本拠地には向かわず、しばらくこの近辺で集められるだけ情報収集をしようと思う。だから、今日からこのハクダの様子も二手に分かれて調査しようと思っている。まあ本来は3つに分かれてもいいんだが、サンは初めてだからな。今日はネクと一緒に行動してくれ。俺は単独で行動する」
「はい、質問です」
「なんだ、サン?」
「俺たちはさ、カニバル軍で、爬虫類でも両生類でもないだろ? 周りの人に怪しまれたりしないのかな?」
「ネクは、最初から爬虫類だし、サンも炎を出さなければ別に何かの獣の特徴が発現しているわけじゃないから大丈夫だろ。それに俺も厚着して、獅子の特徴を隠せば大丈夫さ。ほら、わからないもんだろ」
シェドは、街の様子に合わせたのか、ボロ切れのようなマフラーと手袋をつけ、体にコートを羽織りサンに示す。まあ確かにただの寒がりな一般人には見えるが。
「今春だよ。そんなに厚着する方が怪しまれたりしないのか?」
「大丈夫だよ。この辺の獣人は寒さには弱いからこんくらい厚着しているやつも少なくはない。まあバレないさ。それよりお前もなにか目立つような行動しないよう気をつけろよ。ネクもちゃんと見張っててくれ」
「……うん、わかった」
「なんだよ。人を何するかわからないやつみたいな扱いして」
「単独で敵陣に突っ込む奴の神経は少なくともまともじゃねえよ。じゃあそういう感じで頼むぞ、2人とも。何かあったらすぐ報告してくれ」
「了解」
「……うん。わかった」
「おい待てよー」
「ちょっとまってよ。速いって」
「なんだよ、お前らが遅いんだろー」
「そうだそうだ。早く行こーぜ」
荒廃したスラム街、ハクダにて、自らの貧しさなど振り切るように、活力いっぱいに遊ぶ3人の少年と1人の少女。1人の少年と1人の少女は、先にかけて行った2人の少年に追いつく。息を切らしながら、1人の少女が2人に言った。
「もー速いよ。ゲッコウ、アリゲイト。マムスと私は、2人ぐらい早く走れるわけじゃないんだから」
「ほんとそれ。ねーちょっと休もうぜ」
マムスと呼ばれた少年は、その少女の発言に深くうなづく。アリゲイトという少年は、その発言に対して、慌てた様子で言葉を返す。
「おいおいそんな暇ないぞ。マムス。カナハ。近所のタトルばあちゃんが、グレイトレイクに水を汲みにいくんだぜ。早く助けにいかないと、ばあちゃん腰悪くしちまうよ」
「そんなに急ぐ必要ないよ。アリゲイト。やすもーよ。それがダメならせめてあるこー」
「そんなこと言ってもリーダーの意思はかわらねぇだろ。マムス。おまえ最近拾った本ばっか読んでて運動不足なんだから、ちょっとは体動かせよ」
「僕は、ゲッコウみたいな体力バカじゃないんだよ。はぁ、やだなぁ。これだから脳筋は、他の人をすぐ自分と当てはめる」
「なんだと! てめぇ今日こそわからせてやる必要がありそうだな」
「やる気? いいよ、今日こそ僕の毒の前には君の再生能力なんて無意味なことを教えてあげる」
そして互いに拳を構えるゲッコウとマムス。そんな2人にカナハは内心で深くため息をつく。本当にこの2人は昔からウマが合わなくて、よく喧嘩ばかりしていた。カナハは、そんな2人から一歩下がって距離を取る。喧嘩を止めたい気持ちはあるが、自分が止めても、怪我をするだけだ。こんな彼らを止められるのはやはり、リーダーしかいない。
「おいおいやめろよ。それ以上やるようなら2人とも俺がのし倒すぞ」
「だってリーダー、この脳筋がさー」
「あ? おまえの方が先に吹っかけてきたんだろうが! しばくぞ!」
「おいやめろって言ってるだろ。あのなぁ。俺たちは。ハクダの平和、そしてひいては世界の平和も守るハクダ団だろうが。そんな俺たちが、自分たちから平和を乱すようなことをしてどうするんだよ」
ハクダ団。それは、このアリゲイトが始めた、この街の自警団のようなものだった。もちろん子どもの遊びには違いないのだが、その活動は多岐に渡り、スラム街の人々の手伝いから、ハクダで狼藉を働いたやつへの制裁と様々である。
もちろん彼らはまだ子どもである。だから本来は大それたことはできないはずなのだが、当時からアリゲイトとゲッコウは大人顔負けの実力を持っていた。そしてマムスは、そんな2人をうまく活用できる頭脳を持っていた。だからこそハクダ団は、このスラム街でそこそこの影響力を持っていたのだ。
「わかったよ。アリゲイトがそういうなら仕方ない。まあゲッコウ、命拾いしたね」
「なんで最初から俺が悪かったみたいになってんだ」
「おいおい、また始めんなよ。とっととタトルばあさんのとこ行こうぜ、カナハもまだ走れるだろ?」
そして、優しく微笑み、こちらへ言葉を投げかけてくる。相変わらずこの人は、眩しいな。カナハは、少女ながら、彼に対し、そんなことを思う。
「わかったよ。早く行こう」
そして4人の若者たちは、夕日を背に受け走り出す。
カナハは思う。この頃の私たちは、こんな何気ない日常がいつまでも続くと思っていた。ハクダ団は、このまま4人で、ずっとおかしなことをやって、笑い合って、そのままゆっくりと死んでいくのだと本気で思っていたのだ。
でももう二度と、こんな日々が繰り返されることはないのだろう。
――現在――
「うお、これは、空き……家? なのか?」
あまりにもボロボロの内装に、サンはそう呟く。壁には穴が空き、屋根は今にも落ちてきそうで、それはとても家と呼べるものではなかった。そんなサンに対し、ネクはこう告げる。
「……しょうがないの。本来、スラムなんて、場所が空いてたら誰が住み着いてもおかしくない。そんな中で拠点になりそうな場所を見つけるのは、私だって大変だった」
「そうだぞ、サン。あんまわがまま言うなよ。まあとりあえず2人とも座れ。ハクダにもついたことだし、今後の流れを説明する」
シェドにそう言われ、床に腰をかけるサンとネク。オンボロな床がミシミシミシと軋んだ音を立てる。大丈夫か。抜けないのかこれ。そんな不安を抱えながらも、サンはシェドの方を向く。
2人が座ったことを確認し、シェドは話を始める。
「まあとりあえず、すぐには敵の本拠地には向かわず、しばらくこの近辺で集められるだけ情報収集をしようと思う。だから、今日からこのハクダの様子も二手に分かれて調査しようと思っている。まあ本来は3つに分かれてもいいんだが、サンは初めてだからな。今日はネクと一緒に行動してくれ。俺は単独で行動する」
「はい、質問です」
「なんだ、サン?」
「俺たちはさ、カニバル軍で、爬虫類でも両生類でもないだろ? 周りの人に怪しまれたりしないのかな?」
「ネクは、最初から爬虫類だし、サンも炎を出さなければ別に何かの獣の特徴が発現しているわけじゃないから大丈夫だろ。それに俺も厚着して、獅子の特徴を隠せば大丈夫さ。ほら、わからないもんだろ」
シェドは、街の様子に合わせたのか、ボロ切れのようなマフラーと手袋をつけ、体にコートを羽織りサンに示す。まあ確かにただの寒がりな一般人には見えるが。
「今春だよ。そんなに厚着する方が怪しまれたりしないのか?」
「大丈夫だよ。この辺の獣人は寒さには弱いからこんくらい厚着しているやつも少なくはない。まあバレないさ。それよりお前もなにか目立つような行動しないよう気をつけろよ。ネクもちゃんと見張っててくれ」
「……うん、わかった」
「なんだよ。人を何するかわからないやつみたいな扱いして」
「単独で敵陣に突っ込む奴の神経は少なくともまともじゃねえよ。じゃあそういう感じで頼むぞ、2人とも。何かあったらすぐ報告してくれ」
「了解」
「……うん。わかった」
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