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世界で誰かを一番傷つける毒
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――過去――
「あいつ、毒持ってるから、触んない方がいいぞ」
「近寄らないで、うちの子に毒がうつるから」
「ごめんね、あなたはいい子なんだけど、うちでは引き取れないの。大丈夫。きっといい人がいるわ」
今でも耳に残っている、耳にぬるりと入ってくる大嫌いな言葉。ネクは、今でこそ、どの毒に対する血清も作れるなどと毒に精通しているが、小さい頃は自身の毒を全く制御することができていなかった。その上ヤマカガシという強力な毒を持つヘビがネクのベースとなった獣である。だからこそ幼少期のネクは、その毒と獣の性質から、誰かに触れるということができなかった。
彼女がこのヴォルファという男に拾われたのもそう言った背景があったからである。様々なことがあって親を失ってしまった彼女は、自らの毒のせいであらゆる親戚や施設にたらい回しにされた。だからこそそんな彼女を恐怖心なく育てられるのは、旅に出て彼女以上の毒も食らってきた彼しかいなかった。
ヴォルファの家の近所の遊び場でもネクはずっと1人だった。彼女はかつて一緒に遊んでいた友達の獣人をとても酷い目に遭わせてしまった。それから近所の子どもは、誰もネクに近づかなくなったし、ネクも誰にも近づこうとしなくなった。
ずっと1人でいい。誰かを傷つけるくらいなら、誰とも触れ合わない方がずっといい。彼女はずっと、そう思って生きてきた。
彼女の内気な性格もそう言った過去が関係していた。
しかし、彼が、シェドが来てから、彼女の世界は一変した。
「おい、ネク。今日はヴォルファがいないから、修行なしだってさ。だからちょっと街案内してくれよ」
あの出来事は、シェドのそんな一言をきっかけにして始まった。あの日この家を訪れてからのシェドの日常は、ヴォルファとの訓練以外になかった。だから急に彼が出かけてシェドは退屈し、ネクに案内を頼んできたのだ。
正直、当時のネクは、新たにこの家にやってきた訪問者に対し、恐怖の念しか感じていなかった。唐突に自身の頬をネクの目の前で切り裂いたのだから当たり前だ。
「……うん、わかった」
だからこそネクには、全く断る勇気などなかった。正直彼女は、上に記した背景から、あまり街に出たいと思っていなかった。しかし彼女にとっては自分をからかってくる獣人たちよりも目の前の頬に傷を負った少年の方が怖かったのだ。
「ありがとよ。助かる」
ちなみにもちろんシェドは、彼女のそう言った心の内を察していた。そして彼は母親に対し、女性をあまり傷つけてはならないという教育を受けている。そのため彼は、自分の衝動的な行動で怖がらせてしまった彼女との距離を詰めようと、彼女に案内を依頼したのだった。
「……あれはおにくやさんで、あれが八百屋さん」
特に何か話を膨らませるわけでもなく、たんたんと2人のいるミドラの街の建物を紹介していくネク。シェドは、どう関わっていいものか分からず、そんな彼女の言葉を静かに聞いていた。そして、しばらくすると、ネクも気付かぬうちに、自分がよく遊んでいた河原へと足を運んでいた。
「……あ」
ネクはそう小さく声を漏らす。そこには、彼女が事件を起こす前によく遊んでいた子どもたちがいた。
かつて自分が手に触れ、大きな怪我を負ってしまった獣人の少年が言う。
「うわぁ、毒女だ! 逃げよ、あっちで遊ぼうせ」
「やば、逃げろ~」
そう言って場所を変える為走って逃げていく少年たち。シェドは、彼らのことを静かに見送ったあと、ネクに尋ねる。
「毒女? なんだよ、ネク。お前いじめられてるのか?」
「……ううん。そうじゃないよ。私の毒が悪いだけ。自分の獣の力をさ。うまく制御できないの。だからさ、しょうがないんだ。私が1人の方が、誰も傷つかないの」
「そっか。ネクは毒蛇だったのか。通りで、ヴォルファの家に山程血清がおいてあるわけだ」
ヴォルファはネクのためにいくつかの血清を作っていた。そしてネクももしもの時のために、その血清をいくつか持ち歩いている。
「……うん。だから、シェドも、私に触るときは、気をつけて」
「おお、わかった。じゃあとりあえず触ってみるか」
「え?」
するとシェドは、ネクに手を差し出し、彼女の手を強く握った。
――あったかい。そっか、誰かの手ってこんなに温かいものなんだ。
そう思うネクの手のひらから、徐々に毒が流れ込む。そして少しずつシェドの体に毒の症状が現れる。
「うわ、いってぇな頭。ずいぶん強い毒だ」
「なにしてるの!? まってて、今血清を打つから!!」
ネクはポーチから血清を取り出して、シェドに注射する。どんどんシェドの体の異変がなくなっていく。
彼は、頭を押さえながら、目を丸くして言葉を発する。
「いやぁ、すごいな。まだ体中いてぇや。強いなこの毒」
「何してるの! 少しでも遅ければ死ぬところだったかもしれないんだよ! これ以上私に、誰かを傷つけさせないで」
声を張り上げて、シェドに怒りをあらわにするネク。そんな彼女にシェドは、少しの驚きを見せながらも、呟く。
「やっぱ優しいよな。ネクって」
「は?」
「いや、ずっと礼を言いたかったんだ。初めて会ったときあんなに怖い思いさせたのに、ネクは俺に普通に接してくれるだろう。それに誰かのためなら、そんなに声を荒げることができる。やっぱりお前さ。優しいよ」
「……ありがとう。でも何言ってるの?」
「なぁ、ネク。俺は毒にはそれほど詳しくないけどさ。一番誰かを傷つける毒が何か知ってるんだ。ネクは、なんだか、わかるか?」
「……え? いや、分かんない」
ネクは、シェドが何を言いたいのかわからず首を振った。一番強い毒、ヤマカガシの毒だってヴォルファから相当強い毒であることは言われたけど、自分より強い毒もきっと世界にはたくさんあるだろうし。
そんな中、シェドがネクの答えを待たずに言葉を発する。
「きっとさ。俺はさ、そんな世界で誰かを一番傷つける毒は、孤独だと思うんだよ」
「…………」
ネクは、静かにシェドの話を聞く。彼は続ける。
「俺さ。母さんと2人きりで暮らしてたんだ。でもある奴にその母さんも殺された。そん時さ。怒りと同時に寂しさも湧いてきたんだ。もしかしてこれからずっと独りなのかって考えたら、不安に押しつぶされそうになった。本当にあの時、ヴォルファが拾ってくれてよかったよ」
「……そっか。そうなんだ」
ネクはこの時、初めてシェドの過去を知った。そして、自分が彼と出会った時、彼にかけた言葉がどれだけ彼を傷つけたのか、理解した。母親を亡くした苦しみなんて、あんなおまじないで消えるわけないじゃないか。
それなのに、そんな自分の手をこの人は今握ってくれたのか。
「なぁ、ネク。独りでいいなんていうなよ。お前が心細くなったら何度だってその手を握ってやるからさ。誰かが独りで生きていく姿を見るのは、あの時の俺を思い出す気がして、なんか嫌だ」
誰かが苦しんでいたら手を差し伸べる。これは、彼の母親であるユキが彼に対して、教えたことの一つに過ぎない。ただシェドは、自らの心にその教えをしっかりと全うする勇気を持っていた。そして彼の心の中に、目の前の世界に押し潰されてしまいそうな彼女の力になってあげたいという優しさももちろんあった。
「……うん。ありがとう。シェド」
そしてネクは、シェドに笑顔を見せた。それは、親が死んでからヴォルファ以外に彼女が初めて見せた笑顔だった。そしてこの時から、少しずつネクは、世界と関われるよう努力してきたのだ。
あの時のことを話したら、きっと今のシェドが、ぶっきらぼうな顔をして『復讐にお前の毒が役に立つと思っただけだ』とでもいうのかもしれない。しかしネクは、知っている。どれだけ彼が冷たい言葉を吐こうとも、その差し伸べる手はどんな人のものよりも暖かいということを。
だからこそ、ネクは、彼にその手を差し伸べられたその時から、彼のことを好きになったのだ。
「あいつ、毒持ってるから、触んない方がいいぞ」
「近寄らないで、うちの子に毒がうつるから」
「ごめんね、あなたはいい子なんだけど、うちでは引き取れないの。大丈夫。きっといい人がいるわ」
今でも耳に残っている、耳にぬるりと入ってくる大嫌いな言葉。ネクは、今でこそ、どの毒に対する血清も作れるなどと毒に精通しているが、小さい頃は自身の毒を全く制御することができていなかった。その上ヤマカガシという強力な毒を持つヘビがネクのベースとなった獣である。だからこそ幼少期のネクは、その毒と獣の性質から、誰かに触れるということができなかった。
彼女がこのヴォルファという男に拾われたのもそう言った背景があったからである。様々なことがあって親を失ってしまった彼女は、自らの毒のせいであらゆる親戚や施設にたらい回しにされた。だからこそそんな彼女を恐怖心なく育てられるのは、旅に出て彼女以上の毒も食らってきた彼しかいなかった。
ヴォルファの家の近所の遊び場でもネクはずっと1人だった。彼女はかつて一緒に遊んでいた友達の獣人をとても酷い目に遭わせてしまった。それから近所の子どもは、誰もネクに近づかなくなったし、ネクも誰にも近づこうとしなくなった。
ずっと1人でいい。誰かを傷つけるくらいなら、誰とも触れ合わない方がずっといい。彼女はずっと、そう思って生きてきた。
彼女の内気な性格もそう言った過去が関係していた。
しかし、彼が、シェドが来てから、彼女の世界は一変した。
「おい、ネク。今日はヴォルファがいないから、修行なしだってさ。だからちょっと街案内してくれよ」
あの出来事は、シェドのそんな一言をきっかけにして始まった。あの日この家を訪れてからのシェドの日常は、ヴォルファとの訓練以外になかった。だから急に彼が出かけてシェドは退屈し、ネクに案内を頼んできたのだ。
正直、当時のネクは、新たにこの家にやってきた訪問者に対し、恐怖の念しか感じていなかった。唐突に自身の頬をネクの目の前で切り裂いたのだから当たり前だ。
「……うん、わかった」
だからこそネクには、全く断る勇気などなかった。正直彼女は、上に記した背景から、あまり街に出たいと思っていなかった。しかし彼女にとっては自分をからかってくる獣人たちよりも目の前の頬に傷を負った少年の方が怖かったのだ。
「ありがとよ。助かる」
ちなみにもちろんシェドは、彼女のそう言った心の内を察していた。そして彼は母親に対し、女性をあまり傷つけてはならないという教育を受けている。そのため彼は、自分の衝動的な行動で怖がらせてしまった彼女との距離を詰めようと、彼女に案内を依頼したのだった。
「……あれはおにくやさんで、あれが八百屋さん」
特に何か話を膨らませるわけでもなく、たんたんと2人のいるミドラの街の建物を紹介していくネク。シェドは、どう関わっていいものか分からず、そんな彼女の言葉を静かに聞いていた。そして、しばらくすると、ネクも気付かぬうちに、自分がよく遊んでいた河原へと足を運んでいた。
「……あ」
ネクはそう小さく声を漏らす。そこには、彼女が事件を起こす前によく遊んでいた子どもたちがいた。
かつて自分が手に触れ、大きな怪我を負ってしまった獣人の少年が言う。
「うわぁ、毒女だ! 逃げよ、あっちで遊ぼうせ」
「やば、逃げろ~」
そう言って場所を変える為走って逃げていく少年たち。シェドは、彼らのことを静かに見送ったあと、ネクに尋ねる。
「毒女? なんだよ、ネク。お前いじめられてるのか?」
「……ううん。そうじゃないよ。私の毒が悪いだけ。自分の獣の力をさ。うまく制御できないの。だからさ、しょうがないんだ。私が1人の方が、誰も傷つかないの」
「そっか。ネクは毒蛇だったのか。通りで、ヴォルファの家に山程血清がおいてあるわけだ」
ヴォルファはネクのためにいくつかの血清を作っていた。そしてネクももしもの時のために、その血清をいくつか持ち歩いている。
「……うん。だから、シェドも、私に触るときは、気をつけて」
「おお、わかった。じゃあとりあえず触ってみるか」
「え?」
するとシェドは、ネクに手を差し出し、彼女の手を強く握った。
――あったかい。そっか、誰かの手ってこんなに温かいものなんだ。
そう思うネクの手のひらから、徐々に毒が流れ込む。そして少しずつシェドの体に毒の症状が現れる。
「うわ、いってぇな頭。ずいぶん強い毒だ」
「なにしてるの!? まってて、今血清を打つから!!」
ネクはポーチから血清を取り出して、シェドに注射する。どんどんシェドの体の異変がなくなっていく。
彼は、頭を押さえながら、目を丸くして言葉を発する。
「いやぁ、すごいな。まだ体中いてぇや。強いなこの毒」
「何してるの! 少しでも遅ければ死ぬところだったかもしれないんだよ! これ以上私に、誰かを傷つけさせないで」
声を張り上げて、シェドに怒りをあらわにするネク。そんな彼女にシェドは、少しの驚きを見せながらも、呟く。
「やっぱ優しいよな。ネクって」
「は?」
「いや、ずっと礼を言いたかったんだ。初めて会ったときあんなに怖い思いさせたのに、ネクは俺に普通に接してくれるだろう。それに誰かのためなら、そんなに声を荒げることができる。やっぱりお前さ。優しいよ」
「……ありがとう。でも何言ってるの?」
「なぁ、ネク。俺は毒にはそれほど詳しくないけどさ。一番誰かを傷つける毒が何か知ってるんだ。ネクは、なんだか、わかるか?」
「……え? いや、分かんない」
ネクは、シェドが何を言いたいのかわからず首を振った。一番強い毒、ヤマカガシの毒だってヴォルファから相当強い毒であることは言われたけど、自分より強い毒もきっと世界にはたくさんあるだろうし。
そんな中、シェドがネクの答えを待たずに言葉を発する。
「きっとさ。俺はさ、そんな世界で誰かを一番傷つける毒は、孤独だと思うんだよ」
「…………」
ネクは、静かにシェドの話を聞く。彼は続ける。
「俺さ。母さんと2人きりで暮らしてたんだ。でもある奴にその母さんも殺された。そん時さ。怒りと同時に寂しさも湧いてきたんだ。もしかしてこれからずっと独りなのかって考えたら、不安に押しつぶされそうになった。本当にあの時、ヴォルファが拾ってくれてよかったよ」
「……そっか。そうなんだ」
ネクはこの時、初めてシェドの過去を知った。そして、自分が彼と出会った時、彼にかけた言葉がどれだけ彼を傷つけたのか、理解した。母親を亡くした苦しみなんて、あんなおまじないで消えるわけないじゃないか。
それなのに、そんな自分の手をこの人は今握ってくれたのか。
「なぁ、ネク。独りでいいなんていうなよ。お前が心細くなったら何度だってその手を握ってやるからさ。誰かが独りで生きていく姿を見るのは、あの時の俺を思い出す気がして、なんか嫌だ」
誰かが苦しんでいたら手を差し伸べる。これは、彼の母親であるユキが彼に対して、教えたことの一つに過ぎない。ただシェドは、自らの心にその教えをしっかりと全うする勇気を持っていた。そして彼の心の中に、目の前の世界に押し潰されてしまいそうな彼女の力になってあげたいという優しさももちろんあった。
「……うん。ありがとう。シェド」
そしてネクは、シェドに笑顔を見せた。それは、親が死んでからヴォルファ以外に彼女が初めて見せた笑顔だった。そしてこの時から、少しずつネクは、世界と関われるよう努力してきたのだ。
あの時のことを話したら、きっと今のシェドが、ぶっきらぼうな顔をして『復讐にお前の毒が役に立つと思っただけだ』とでもいうのかもしれない。しかしネクは、知っている。どれだけ彼が冷たい言葉を吐こうとも、その差し伸べる手はどんな人のものよりも暖かいということを。
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