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第20話 時坂杏奈と魔神の誘い
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【登場人物】
時坂杏奈……二十三歳。無職。勇者。指笛名人。
ジン=レイ……二十四歳。ユーレリア神教ワルダラット支部所属の神務官。
ピーちゃん……巨大ヒヨコ。パルフェという、馬に並ぶポピュラーな乗り物。
「指笛? 来なかったわよ、ピーちゃん。もっとよく仕込まなきゃダメね」
杏奈は何も無い空を見ながら、トレーニング法について考えを巡らせた。
ワルダラット城を出てすでに、三時間。
東の四天王の塔『ティアズの塔』はまだ見えない。
途中、何度か休憩を挟んで進むも、一向に塔は見えてこない。
「ねぇ、道、間違ってるとかいうの無いよね?」
「間違っていないですよ。もう少しこの森を進めば、荒れ地に出ます。その先に目的の塔があります」
「もう少しってどのくらい?」
「あと半日くらいですかね」
「だぁぁぁぁあ! な、ん、で、そんなに、遠いのよ!」
「え? だって近すぎたらすぐ両軍が衝突しちゃうじゃないですか。緩衝地帯っていうんですかね。夫婦だってそうでしょ? 適度な距離が必要なんです」
ジンが分かったような、分からないようなことを言う。
「滝だ……。ねね、ちょっと休憩しよう。ピーちゃんも結構疲れてきたようだし」
森の中で滝を見つけた杏奈は休憩を提案した。
落差は、二十メートル程度で、それほど大きな滝では無い。
だが、滝壺もあり、パルフェに水を飲ませるのにちょうどいい。
足元が濡れるのも気にせず、二人はパルフェを伴い、滝壺に入った。
一生懸命、水を飲むピーちゃんを見ながら、杏奈はその背中を撫でてやる。
そんなとき、杏奈はふと何かを感じ、振り返った。
ボールを持った子供が二人、楽しそうに話しながら、こちらに向かって駆けてくる。
小さな羽を背中に生やし、額からは小さなツノが伸びている。
二人は楽しそうな表情で杏奈のそばまで来て、そのまま杏奈の体をすり抜けていった。
愕然とする杏奈の前を、今度は女性が通り過ぎて行く。
買い物カゴを持っている。
主婦の……魔族だ。
この女性も、杏奈に全く気付いていない。
土の地面。
空には太陽さえある。
だが、杏奈はすぐ太陽に違和感を感じた。
直に空を見たことがある者にしか分からない、太陽の圧倒的な存在感を、ここでは感じない。
おそらく何らかの大魔法が働いているのだろう。
空は、天井を塞ぐ大質量の土を透過して見えているようだ。
お陰で明るいが、地上ほどの明るさは得られていない。
二割減といった感じか。
そうだ、ピーちゃんは?
だが、振り返った杏奈の前には、滝壺も、ジンも、パルフェのピーちゃんもいなかった。
代わりに、そこに喫茶店があった。
……喫茶店?
時代掛かった雰囲気の喫茶店が一件建っている。
魔族の街並みにもそぐわない。
こういうお店は、東京の裏路地にこそあるべきものだ。
それが、道路の真ん中に、いきなり出現している。
杏奈は恐る恐るドアの取っ手に手を伸ばした。
……握れる。
カランカラン。
「いらっしゃい」
マスターの低めの渋い声が杏奈を出迎える。
店の中は、思った以上に小洒落ていた。
濃いめのフローリングに、ナチュラル色の木製テーブルと椅子。
壁には、西洋の白黒写真が飾られ、間接照明が室内を彩る。
微かに流れるジャズが店内に漂う。
夜、こんなお店で口説かれたら、コロっといってしまうかもしれない。
ま、わたしには縁が無いけど。
杏奈は室内を見回し、入り口で突っ立ったままマスターに声を掛けた。
「あのさ、わたし回りくどいの苦手なのよ。察するってことがメチャメチャ苦手でね。見れば分かるでしょ? だから、言いたいことがあるならキチンと言って欲しいのよ。言ってる意味、分かる?」
細マッチョ体型でメガネを掛け、ヒゲを蓄えたダンディなマスターは、一瞬キョトンとし、それから軽く含み笑いをした。
「なかなかどうして面白いお嬢さんだ。女神ユーレリアのお気に入りなだけのことはある。まぁどうぞお好きな席へ。コーヒーでいいですか?」
マスターがサイフォンに火をつける。
杏奈はその動きを見ながら、マスターの正面、カウンター席に座った。
「ここ、どこなの? 魔界?」
「外の風景ですか? えぇ、そうですね。魔界と半分だけ重ねました。今は、どこでも無い空間に繋げてあります。普段は、東京や横浜、神戸とかにもあったりしますよ」
「え? 店ごと移動するの?」
「そうそう。適当な場所を見つけてそこに設置するんです。翌日また来店しようとするも、そこにお店は無い。一夜の幻のような店なんです」
「大神ガリヤードさまと同じね」
「まさにそれ。彼と同じ。この店には、わたしの趣味の粋を注ぎ込んだ」
コーヒーのいい香りが漂ってくる。
「さ、どうぞ」
杏奈は出されたコーヒーに口をつけた。
「美味しい!」
「でしょう? 豆から道具から、何から何まで、こだわり抜きましたからね」
「あぁ、でもお支払いどうしよ。わたし、ヴァンダリーアのお金しか持ってないよ」
「いいです、いいです。今回はわたしが招いたんですからね。オゴリです。もしあなたが地球でわたしの店を訪れるようなことがあれば、そのときにでも」
杏奈はジャズに耳を傾けながら、コーヒーの湯気越しにマスターを見る。
「それで? わたしに何の用なの? 魔神アークザインさん」
「……わたしの正体に気付いていましたか。ではお遊びの時間はここまでです。ここで貴女を食べて、この物語を終わりにしましょう!」
マスターの影がどんどん伸びていく。
壁に映った影に、コウモリのような翼と、巨大な一対のツノが生える。
だが、杏奈の顔に動揺の色は全く無い。
「嘘ね」
「嘘?」
「あなたたち神さまは、世界をチェス盤のようにしか見ていない。自分の手駒を導き、それがどう動くかだけを見ている。だから、相手の手駒に直接手出しはしない。 そんなことしたら、あっという間にゲームが終わっちゃうもの。違う?」
魔神アークザインの影が見る間に引っ込む。
マスターが苦笑いを浮かべる。
「思った以上にキレ者のようだ。わたしはね、杏奈さん。貴女に魔界を見ていただきたかった。そこでは、地上の人々と変わらず、魔族による日々の営みが行われている。創世戦争でたまたまわたしが負けたから、ヒトが地上に、魔族が魔界に住むようになった。だが、入れ替わってもそれは全く同じでしょう。さて、そこでわたしは貴女に問いたい。貴女はなぜ、魔族を殺すのです? 姿かたちが違うから? 女神に言われたから? これまでは情報が何も無かったから流されても仕方ないと思う。だが今、貴女は真実を知った。さぁ、どうします? 今まで通り、魔族を殺し続け、魔王『山本 星海』をも手に掛けますか? 貴女の旅の終着点はどこにあるんですか?」
杏奈は飲み終えたコーヒーカップをゆっくりテーブルに置いた。
「そっか、彼、山本星海っていうんだ。……ね、聞いていい?」
「何なりと」
メガネ越しにマスターの目が光る。
「他の勇者たちは何て? 当然、聞いたのよね?」
「勿論。皆が皆、口を揃えて『だからどうした?』と言いましたよ。まぁ、彼らはヴァンダリーア人でしたからね。ヒトと魔族は敵対する。互いに生存範囲を懸けているわけですし、生まれてきたときからそう教え込まれてきましたから、当然と言えば当然なんですよ。だが、貴女はどちらの陣営にも属さない初めての人だ。その貴女がどういう回答をするか、非常に興味があるんですよ」
杏奈は少し考えながら口を開いた。
「わたしの目的は、身内のしでかした後始末をすること。すなわち、魔王・山本星海を地球に連れ帰って、折檻する。それだけよ。後のことは知らない。ヴァンダリーアで生きるもの同士、思う存分殺し合うがいいわ。ただし、わたしの邪魔をするなら容赦しない。ヒトだろうが、魔族だろうが……魔神だろうが、容赦なくぶっ倒して通る。それだけよ」
「魔王を地球にね……。彼がそれを望めばいいが」
「なに?」
「いえ、何でもありません。回答ありがとう、お嬢さん。そろそろ送りましょう」
杏奈は席を立ち、店の扉を開こうとドアノブに手を伸ばし、そこで振り返った。
「ね、最後に一個だけ質問」
「なんです?」
「割れた護聖球ってあのまんま?」
「いえ、あれは自動復活します。護魔球もそうなんですが、勇者と魔王の戦いが終わり次第、それぞれの地で即座に復活しますよ。座標がセットされていますから、違う場所で割られたとしても、復活は最初の場所、すなわち、各王家の城であり、四天王の塔となります」
「わたしが首尾よく、魔王・山本星海を地球に連れ帰ったとして、そしたらすぐってことね?」
「そう考えてもらって差し支えないですよ。逆に、貴女が魔王に倒され、この地に散ったとしても、です」
「そっか。それ聞いて安心した。じゃ、また。魔王城でお会いしましょ」
「では、また。魔王城でお会いしましょう」
杏奈が喫茶店を出ると、目の前にピーちゃんがいた。
一生懸命、水浴びをしている。
「あれ? 杏奈さん、さっきからそこにいました?」
自分のパルフィに騎乗したジンが、杏奈の姿を見つけ、寄ってくる。
「探しちゃいましたよ。あぁ、でも良かった。そろそろ行きますか」
「そうね。行きましょ」
杏奈は、ピーちゃんに跨った。
ワルダラットはどうなっているだろう。
だが、任せるしかない。
杏奈の使命は、四天王の塔にある護魔球を破壊し、結界を無効化すること。
そして、魔王城に乗り込み、魔王を倒すこと。
今はそれに専念しよう。
杏奈は、東の四天王の塔『ティアズの塔』に向かって、再びピーちゃんを歩ませ始めた。
時坂杏奈……二十三歳。無職。勇者。指笛名人。
ジン=レイ……二十四歳。ユーレリア神教ワルダラット支部所属の神務官。
ピーちゃん……巨大ヒヨコ。パルフェという、馬に並ぶポピュラーな乗り物。
「指笛? 来なかったわよ、ピーちゃん。もっとよく仕込まなきゃダメね」
杏奈は何も無い空を見ながら、トレーニング法について考えを巡らせた。
ワルダラット城を出てすでに、三時間。
東の四天王の塔『ティアズの塔』はまだ見えない。
途中、何度か休憩を挟んで進むも、一向に塔は見えてこない。
「ねぇ、道、間違ってるとかいうの無いよね?」
「間違っていないですよ。もう少しこの森を進めば、荒れ地に出ます。その先に目的の塔があります」
「もう少しってどのくらい?」
「あと半日くらいですかね」
「だぁぁぁぁあ! な、ん、で、そんなに、遠いのよ!」
「え? だって近すぎたらすぐ両軍が衝突しちゃうじゃないですか。緩衝地帯っていうんですかね。夫婦だってそうでしょ? 適度な距離が必要なんです」
ジンが分かったような、分からないようなことを言う。
「滝だ……。ねね、ちょっと休憩しよう。ピーちゃんも結構疲れてきたようだし」
森の中で滝を見つけた杏奈は休憩を提案した。
落差は、二十メートル程度で、それほど大きな滝では無い。
だが、滝壺もあり、パルフェに水を飲ませるのにちょうどいい。
足元が濡れるのも気にせず、二人はパルフェを伴い、滝壺に入った。
一生懸命、水を飲むピーちゃんを見ながら、杏奈はその背中を撫でてやる。
そんなとき、杏奈はふと何かを感じ、振り返った。
ボールを持った子供が二人、楽しそうに話しながら、こちらに向かって駆けてくる。
小さな羽を背中に生やし、額からは小さなツノが伸びている。
二人は楽しそうな表情で杏奈のそばまで来て、そのまま杏奈の体をすり抜けていった。
愕然とする杏奈の前を、今度は女性が通り過ぎて行く。
買い物カゴを持っている。
主婦の……魔族だ。
この女性も、杏奈に全く気付いていない。
土の地面。
空には太陽さえある。
だが、杏奈はすぐ太陽に違和感を感じた。
直に空を見たことがある者にしか分からない、太陽の圧倒的な存在感を、ここでは感じない。
おそらく何らかの大魔法が働いているのだろう。
空は、天井を塞ぐ大質量の土を透過して見えているようだ。
お陰で明るいが、地上ほどの明るさは得られていない。
二割減といった感じか。
そうだ、ピーちゃんは?
だが、振り返った杏奈の前には、滝壺も、ジンも、パルフェのピーちゃんもいなかった。
代わりに、そこに喫茶店があった。
……喫茶店?
時代掛かった雰囲気の喫茶店が一件建っている。
魔族の街並みにもそぐわない。
こういうお店は、東京の裏路地にこそあるべきものだ。
それが、道路の真ん中に、いきなり出現している。
杏奈は恐る恐るドアの取っ手に手を伸ばした。
……握れる。
カランカラン。
「いらっしゃい」
マスターの低めの渋い声が杏奈を出迎える。
店の中は、思った以上に小洒落ていた。
濃いめのフローリングに、ナチュラル色の木製テーブルと椅子。
壁には、西洋の白黒写真が飾られ、間接照明が室内を彩る。
微かに流れるジャズが店内に漂う。
夜、こんなお店で口説かれたら、コロっといってしまうかもしれない。
ま、わたしには縁が無いけど。
杏奈は室内を見回し、入り口で突っ立ったままマスターに声を掛けた。
「あのさ、わたし回りくどいの苦手なのよ。察するってことがメチャメチャ苦手でね。見れば分かるでしょ? だから、言いたいことがあるならキチンと言って欲しいのよ。言ってる意味、分かる?」
細マッチョ体型でメガネを掛け、ヒゲを蓄えたダンディなマスターは、一瞬キョトンとし、それから軽く含み笑いをした。
「なかなかどうして面白いお嬢さんだ。女神ユーレリアのお気に入りなだけのことはある。まぁどうぞお好きな席へ。コーヒーでいいですか?」
マスターがサイフォンに火をつける。
杏奈はその動きを見ながら、マスターの正面、カウンター席に座った。
「ここ、どこなの? 魔界?」
「外の風景ですか? えぇ、そうですね。魔界と半分だけ重ねました。今は、どこでも無い空間に繋げてあります。普段は、東京や横浜、神戸とかにもあったりしますよ」
「え? 店ごと移動するの?」
「そうそう。適当な場所を見つけてそこに設置するんです。翌日また来店しようとするも、そこにお店は無い。一夜の幻のような店なんです」
「大神ガリヤードさまと同じね」
「まさにそれ。彼と同じ。この店には、わたしの趣味の粋を注ぎ込んだ」
コーヒーのいい香りが漂ってくる。
「さ、どうぞ」
杏奈は出されたコーヒーに口をつけた。
「美味しい!」
「でしょう? 豆から道具から、何から何まで、こだわり抜きましたからね」
「あぁ、でもお支払いどうしよ。わたし、ヴァンダリーアのお金しか持ってないよ」
「いいです、いいです。今回はわたしが招いたんですからね。オゴリです。もしあなたが地球でわたしの店を訪れるようなことがあれば、そのときにでも」
杏奈はジャズに耳を傾けながら、コーヒーの湯気越しにマスターを見る。
「それで? わたしに何の用なの? 魔神アークザインさん」
「……わたしの正体に気付いていましたか。ではお遊びの時間はここまでです。ここで貴女を食べて、この物語を終わりにしましょう!」
マスターの影がどんどん伸びていく。
壁に映った影に、コウモリのような翼と、巨大な一対のツノが生える。
だが、杏奈の顔に動揺の色は全く無い。
「嘘ね」
「嘘?」
「あなたたち神さまは、世界をチェス盤のようにしか見ていない。自分の手駒を導き、それがどう動くかだけを見ている。だから、相手の手駒に直接手出しはしない。 そんなことしたら、あっという間にゲームが終わっちゃうもの。違う?」
魔神アークザインの影が見る間に引っ込む。
マスターが苦笑いを浮かべる。
「思った以上にキレ者のようだ。わたしはね、杏奈さん。貴女に魔界を見ていただきたかった。そこでは、地上の人々と変わらず、魔族による日々の営みが行われている。創世戦争でたまたまわたしが負けたから、ヒトが地上に、魔族が魔界に住むようになった。だが、入れ替わってもそれは全く同じでしょう。さて、そこでわたしは貴女に問いたい。貴女はなぜ、魔族を殺すのです? 姿かたちが違うから? 女神に言われたから? これまでは情報が何も無かったから流されても仕方ないと思う。だが今、貴女は真実を知った。さぁ、どうします? 今まで通り、魔族を殺し続け、魔王『山本 星海』をも手に掛けますか? 貴女の旅の終着点はどこにあるんですか?」
杏奈は飲み終えたコーヒーカップをゆっくりテーブルに置いた。
「そっか、彼、山本星海っていうんだ。……ね、聞いていい?」
「何なりと」
メガネ越しにマスターの目が光る。
「他の勇者たちは何て? 当然、聞いたのよね?」
「勿論。皆が皆、口を揃えて『だからどうした?』と言いましたよ。まぁ、彼らはヴァンダリーア人でしたからね。ヒトと魔族は敵対する。互いに生存範囲を懸けているわけですし、生まれてきたときからそう教え込まれてきましたから、当然と言えば当然なんですよ。だが、貴女はどちらの陣営にも属さない初めての人だ。その貴女がどういう回答をするか、非常に興味があるんですよ」
杏奈は少し考えながら口を開いた。
「わたしの目的は、身内のしでかした後始末をすること。すなわち、魔王・山本星海を地球に連れ帰って、折檻する。それだけよ。後のことは知らない。ヴァンダリーアで生きるもの同士、思う存分殺し合うがいいわ。ただし、わたしの邪魔をするなら容赦しない。ヒトだろうが、魔族だろうが……魔神だろうが、容赦なくぶっ倒して通る。それだけよ」
「魔王を地球にね……。彼がそれを望めばいいが」
「なに?」
「いえ、何でもありません。回答ありがとう、お嬢さん。そろそろ送りましょう」
杏奈は席を立ち、店の扉を開こうとドアノブに手を伸ばし、そこで振り返った。
「ね、最後に一個だけ質問」
「なんです?」
「割れた護聖球ってあのまんま?」
「いえ、あれは自動復活します。護魔球もそうなんですが、勇者と魔王の戦いが終わり次第、それぞれの地で即座に復活しますよ。座標がセットされていますから、違う場所で割られたとしても、復活は最初の場所、すなわち、各王家の城であり、四天王の塔となります」
「わたしが首尾よく、魔王・山本星海を地球に連れ帰ったとして、そしたらすぐってことね?」
「そう考えてもらって差し支えないですよ。逆に、貴女が魔王に倒され、この地に散ったとしても、です」
「そっか。それ聞いて安心した。じゃ、また。魔王城でお会いしましょ」
「では、また。魔王城でお会いしましょう」
杏奈が喫茶店を出ると、目の前にピーちゃんがいた。
一生懸命、水浴びをしている。
「あれ? 杏奈さん、さっきからそこにいました?」
自分のパルフィに騎乗したジンが、杏奈の姿を見つけ、寄ってくる。
「探しちゃいましたよ。あぁ、でも良かった。そろそろ行きますか」
「そうね。行きましょ」
杏奈は、ピーちゃんに跨った。
ワルダラットはどうなっているだろう。
だが、任せるしかない。
杏奈の使命は、四天王の塔にある護魔球を破壊し、結界を無効化すること。
そして、魔王城に乗り込み、魔王を倒すこと。
今はそれに専念しよう。
杏奈は、東の四天王の塔『ティアズの塔』に向かって、再びピーちゃんを歩ませ始めた。
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