最弱層にあるモンスターハウス出身の悪魔が魔王に成り上がる

ぱけ

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第一章 スターターダンジョン編

第18話 ロバートの道①

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 私はロバート。貴族であり、冒険者である。
 私はスターターダンジョンの最上層にあるモンスターハウスで撤退をしてしまった。周りからの評価は逃げたと言われる始末。
 確かに私が逃げた訳では無いが、もし騎士長がいなくて奴を目の前に出た時、私は真っ先に逃げることを優先するだろう。

 奴は魔法を使ってきた。私も使える。
 だが、あの日以来魔法は封印することにした。
 格上の魔法。あんなものを目の前で見せられたら使えない。
 私に魔法を教えてくれた家庭教師よりも遥かに上。それぐらいの圧を感じたのだ。
 それからは剣を磨くことにしている。
 国や貴族たち、さらには家族にまで心配されそして哀れみの目で見られながらも日々鍛錬を行っている。
 貴族は魔法で圧倒するというのが華麗でもっとも貴族らしい戦い方というのが国民の認識である。
 それをせずに、剣を振る。つまり、平民がやることをしているのだ。
 何度も止められたが私の意思は強かった。

 数ヶ月経ったある日、異国の剣士がやってきた。
 異国との交流、と言われているが実際にはうちの国は魔法が使えるんだぞ?っていう自慢がしたいだけ。
 お互い魔法と剣を披露するパーティーに参加をしたのだが、私は衝撃を受けた。
 私の国は魔法研究が進められていて、とても派手で力を感じる魔法を使う。
 よく見なれているしとても凄いのだが、奴の『ファイアーボール』の方がまだ凄いと感じた。
 そして、異国の剣士である。
 彼は一人で静かに座る。
 初めは何がしたいのか分からなかったが、一瞬で抜刀。そして、目の前にある竹を倒れる前に5回切りつけた。
 実際、抜刀して竹が倒れる前に切るというのは騎士長にも出来る芸当だ。
 周りは拍手をするが、心は笑っていた。
 だが、私は違う。
 彼は手を抜いていた。確実に。そんな気がする。
 それよりも惹かれたのはあの美しい剣さばき。
 誰かに話しかけられるまで私はその場に立ち尽くしていた。

 すぐにあの剣士に会いに行った。
 
 「すまない、少しよろしいか?」
 「なんでしょうかな?」

 パーティーの最中は顔をはっきり確認していなかったが、この剣士はかなり老いている。

 「……先程のパーティーで披露した剣士で間違いないか?」

 この人があの剣を?と思ってしまいつい聞いてしまった。

 「左様。私の剣はやはりこの国の魔法には敵いませんな。お恥ずかしい限りです」

 苦笑いしながら答えてきた。
 たぶんだが、他の人に色々と言われたのだろう。

 「確かに魔法は素晴らしい。この国は研究が進んでいますからな」
 「えぇ、そうですな」
 「だが、私は貴方様の剣の方が素晴らしかったと感じた」
 「これはこれは、お褒めいただきありがとうございます」

 そう言って深々とお辞儀をした。

 「いや、これは本音である。ただ、1つ聞きたいことがあり、呼び止めた」
 「なんでしょうかな?」
 「……あの時、手を抜いていたのではないでしょうか?あの剣のさばきは見事。ただ、私の国では出来る騎士は多い。それでも美しかった。手を抜いているように見えたのに美しい。この違和感がどうしても気になってしまっている。教えていただけないか?」

 少し大きめな声を出してしまい、すみませんと軽く謝った。
 剣士はじっとこちらを見つめ、答えてきた。

 「……なるほど。そなた、名は?」
 「ロバートと申す」
 「ロバート様、そなたにはその答えはまだ早い。手をだしていただけますかな?」
 「手か?」

 そう言って両手を出す。
 剣士は手を握ったり摘んだりしてきた。

 「なるほど、日々鍛錬をしていますな」
 「えぇ、私は魔法を使わないと決めました。剣で魔法を切れるその日まで」
 「ふむ、なるほど……」

 そう言って剣士は目を瞑り、黙り込んだ。
 そして、

 「ロバート様。はっきり申し上げると貴方様には魔法を剣で斬ることは出来ません」
 「な、なんだと!?」
 
 私は剣を抜こうとする。

 「魔法には魔法で、それが常識です。お勉強が足りないようですな」
 「くっ、言わせておけば……!!もうよい!!私は自分を信じて剣を振る。奴の魔法を切るまでは辞める気は無い!!時間を取らせてすまなかった。失礼する!!」

 剣で斬りかかりたいところだが、剣士の実力はあの時で気づいている。私より強い。
 剣を抜くとその時点で負けなのだ。
 ただ、私の道を止めるものはいない。だから人には頼らず自分だけを信じて進むことにした。
 この剣士も他のものと同じだっただけ。
 そうして、剣士から離れようとした時、

 「今はまだ、な」

 と、後ろから聞こえた。
 そして振り返った。

 「この国の常識である、魔法は魔法で、という言葉はよく知っていますかな?」
 「あぁ、貴族なら誰でも知っている」

 魔法は魔法で
 この言葉はあらゆる武器や戦術があったとしても魔法で解決するという前提を元に作られた言葉である。
 剣も魔法で、盾も魔法で。全て魔法で片付ける。そういった意味である。
 貴族はそれを小さい頃から教わる。そして、魔法を使うのである。

 「確かに魔法は素晴らしく強い。しかしその常識はわしの国では違う。魔法は無限にあるが、剣も同じ。剣も日々研究されていっている」

 剣士はゆっくり私の元に歩み寄ってきて、手を伸ばす。

 「これ以上は話せぬ。もし、自分の剣を信じきる自信があるならわしと共について来なさい。この国では応えは見つからぬ。わしも答えることはできぬが、道を作ってやる。どうだ?」

 私は即決した。
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