輪廻”異世界”転生

第22話 乱れ

　なんで？
　意味がわからない。
　スープを飲んでゆっくり拠点に帰っていただけなのに。
　痛みもなかった。苦しみも。
　近くに何かいた訳でもないし、死ぬ要素がひとつも無い。
　ふざけるな。
　あんなに頑張って新しい場所見つけて拠点まで作って安定させたのに。
　何も意味がなかった。
　そしてまたここの大きな木の下で生き返る。
　なんなんだ、これは夢なのか？現実なのか？もう訳が分からない。

　もう何もやる気が出なくなり、前世のように行動力はない。
　何かをやろうとしたが、思いついたのが後ろにある憎い木をひたすら殴る。それしか思いつかない。
　むしろ今のこの暗い気持ちをなにかにぶつけたい。
　体は自然と動き、ひたすら殴る。殴る。殴る。
　血が出ている、痛みもかなり感じる。でも殴る。
　何時間でも、何日でも、何世代でも。ひたすら殴って痛い気持ちだった。



　いつの間にか気を失っていた。
　手を見たが血まみれ。どうやら夢ではないらしい。
　体を動かしたいが、動かない。疲れているのだ、特に心が。
　何もしたくない、動きたくない。そう心が思っているのだろうか。
　死にたい。ただそれだけなのかもしれない。



　朝日を迎えたのは何日目だろうか。
　喉が渇いてもお腹が減ってもどうすることもない。
　どうせ、また死ぬ。どうせ。
　そしてここに戻ってくる。
　何度死んでも同じだろう……


　……


　…………


　…………………




ーーFIVE

　太陽眩しい……
　ほらね、生き返った。
　同じ倒れ方、同じ木、同じ場所。
　何も変わらない。


ーーSIX

　太陽が眩しい……

　「もう、十分だろ。神様。楽しんだだろ？楽にしてくれ」

　泣きながら神に頼んだ。
　飢えも辛いが、頑張って成し遂げた物が壊れるのも辛い。そして死も辛い。
　開放されたいと思っていた。
　そのとき、希望が来た。

　「か、神様！？い、いやボス！？」
　「コ、コケェ！！コケエエエエエエエ！！！！」

　出会って直ぐにボスは飛び蹴りを入れてきた。
　
　「いや、痛いって！！」
　「コケェ！！」
　「いや、ごめんって！！」

　何に謝っているのか分からなかったが、ボスが何かに対しての怒っていることは分かった。
　死は自分も悲しいが、他のものも悲しい。
　そうどこか胸の奥の方で自覚した。



　ボスのおかげで行動する気が起きた。
　
　「よし、やるぞ」
　「コケ」

　ボスも頷いてくれた。
　いつものように拠点に向かうのだが、今回は一気に第２拠点を目指す。
　何かを変らなければ。何故かそう思った。
　たどり着くまで時間と労力、そして心が挫けそうになるが、耐えるべきだ。
　ボスのためにも頑張ってやり遂げなくては。
　新しい人生がまた始まる。