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第一章「『魔法少女☆マジカラ』編」
第4話(Aパート)
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※今回のお話には主人公こと正は出現せず後ついでに妖精アイリスの出番も序盤以外ほぼ無いです、ご了承下さい何でもしまむら
ー【第4話『お騒ぎ!!お弁当と体育測定』】ー
「…最近何か私、ずっと酷い目にばっか合ってる様な気がする」
「や、気持ちは分かるけど開幕からいきなり何スか?」
平日の昼間、学校の屋上で一人昼食を取りながら妖精と駄弁るかない
良い子の皆は封鎖されてる屋上に勝手に入ってはいけません、いや本当に
「にしたって最近は酷いよ!!怪人にはフルボッコにされるし友達からは白い目で見られるし風評被害は結局また増えたしさぁ…
つーか何もかも全部正さんのせいだぁもう!!」
「いやその理屈はおかし…くは無いのがまた何ともッスねぇ」
まぁそりゃあ確実に正が現れてから魔法少女の被害は身体的なものは愚か精神的被害が起きてる者も居る、てか全員である
時にはぶっ飛ばされた者、時には漏らした者、時にははっちゃけた者とか…まぁ自業自得のものも割と多いけどそりゃあもう色々と
だが、しかしながら実際問題かない自身の不幸は正と出会った日から、描写されてないけど実は三話と今回の間の内にも怪人にしてやられたりドジを踏む回数が増えている、具体的には犬のアレ踏んだり怪人に引き摺り回されたり犬のアレ踏んだり
…まぁもっとも、そのほとんどがかない自身の問題なのだが
「そうは言ってもほぼかないさんの自業自得ッスよ?そもそも勝手に突っ込んだり考えなしに動くからで…」
「いやいやそれにしたって多いって!!」
と言ってもかないのモノはどっからどう見ても正関係ある以前に自業自得のものばかり、というかほぼいつも通りの事とそう変わらないのだが
しかし、それでもあの男が来てからそういう事が多くなったのは本当の事だ
特に突如雑魚と思っていた筈の敵から現れた、他の怪人とは雰囲気からして完全に違う凶暴な怪人、それはトラウマとまではいかないものの充分過ぎるレベルで目に焼き付く位の衝撃だった筈である
「はぁ…本当に不憫だわ、最近」
「いい加減元気出してくださいッスよー、かないさん」
「とまぁそれは置いといて、何か良い事ないかなぁ…宝くじとかさぁ」
「その割には結構呑気ッスね、あんな目(第一話のフルボッコ)にあって一か月も経ってないのに随分と…」
まぁ、そんな本人はそんなの知らんと言わんばかりに忘れたまんま、いつも通り平和ボケしたまんまのんびりと学生を謳歌しているのだった
「良いじゃん夢位、一億円とか欲しいっつーかどっかに落ちてねーかな」
「そんなの流石にカンタンには…って、やべっ」
「えっ?」
すると、アイリスが急に姿を隠したと同時に屋上へのドアが勝手に開いた
そしてそこから現れたのは第一話の冒頭でほんのちょっとだけチョイ役で登場していた、かないのクラスの担任の先生であった
「…あっ」
「……閉鎖してる屋上には行っちゃ駄目ですって、前に言いましたよね?」
「ず、随分前の事だからすっかり忘れちゃってて…」
そのかないの言葉を聞いた瞬間、ズンズンと先生がかないに近づいてくる
「…そうですか」
「あーうん分かりました罰は後で甘んじて受けますだからそのアイアンクローの予備動作始を止めtでぇいぁぁああああああッッ!!!!」
そう、いつも通りの出来事なのでした
ーーーー
という事があった日の昼時の時間
「頭が割れるかと思った」
「何かデジャヴ」
お仕置きもコレで一体何回なんだろうか
「大丈夫…?」
「かさみちゃんありがとう、でも頭痛いからあんま撫でないでゴメン」
ゆめみが呆れのぞみは心配そうに見、かさみはかないの頭を優しく撫でる
「にしても本当に懲りないわね…アンタ達、これで何回目よ?」
「何回も、あるの?」
「あるわよコイツ、何度勝手に屋上に行って殴られてた事か」
ここまでいくとかけられる言葉も心配というか呆れというか、それでも悪びれないのがこの作品のおバカという名の魔法少女である
「そんな事言ってもしょうかないじゃん…このまんまアイリスと喋ってたら周りに声聞こえちゃうって、私一気に変人扱いよ?」
(今までが変人なのだけど…)
「そもそも十分休憩に行っちゃいけませんよ…」
そこは電話か何かと誤魔化したり他の場所でやれば良いのだが、どうせこの女子中学生設定上馬鹿だしまぁ思いつく筈も無いだろう
というかそれ以前に勝手に屋上自体行っちゃいけないのだが
「っとまぁまぁ、それはさておいて…
愛しのおっひるご飯よー!!」
そう言ってかないが膝に乗っけて開けたのはMY学生カバン
「お昼ご飯というと…弁当ですか
かないさんのっていつも美味しそうなんですよね、今日もお手製ですか?」
「おうともさ、全部私が丹精込めた手作り料理よっ!!」
とその時のそみがそう言い放つ、どうやらかないは料理が得意なようで弁当も多分自前で作っている様である
「女としてちょっと悔しいけど本当にね、この馬鹿は料理だけは結構出来るからそこだけは割と本当に凄いのよね…」
「その乏してるのか褒めてんのか分かんない言い方を止めろ」
と言うのも実はこの赤井かないという少女、昔から一人で家に住んでいたからか自分で家事を全てある程度こなしてきていたのだ
その為であるのか料理はおろか家事全般が結構上手いという嫁入り機能を持ち合わせているのだ、もっとも性格のせいで台無し…ゲフンゲフン
まぁ兎も角、要はそこらの主婦よりも高い戦闘力力持ってるって事です
「何ならのぞみちゃんちょっと食べる?」
「ならご厚意に甘えて…と言いたいんですけども」
「やっぱり癪よね、コイツにあからさまな借りを作るのは」
「ゆめみちゃんやっぱ嫌いでしょ私の事」
そして物欲しそうな目で見ているのぞみ、いつも通りのゆめみ
だがのぞみだけはそれだけじゃなく、何かを用意している様な素振り
「いえ、そうではなく…
実は私もお弁当を作ってきたんですっ!!」
「えっ、作ってきたの!?」
「おー」
どうやら弁当を作ってきたのはかないだけでは無かった様だ、顔を赤らめ恥ずかしながらも勢いのままにとそう告白する
それにはかさみがパチパチと手を鳴らし、かないも関心する様子
「へ…へぇ、アンタ料理出来たのね」
「いえちょっとまだ不慣れだったので、恥ずかしながら失敗も多く…
でもちょっと苦労しましたが、何とか頑張って出来ました!!」
「まぁ初めてはそんなものだよ、手を切ったりなんて普通だよ普通!!」
初めてフライパンを使ってみた時に焦がしてしまった人は世の中に一体どの位いるのだろうか、同じく包丁もどれだけ切った人いるのだろうか
そんな事を思いながら、のぞみの成功を自分の事の様に喜ぶかない
「…手、怪我してるの?」
「いえそうではなく、ただ料理本を数十冊暗記する方が苦労しました」
「努力の方向音痴ッ!!」
前言撤回、苦労ではなくただの空回りだった
というか何処の世界に料理をすると言ってまず一番初めにやる事が十も超える量の料理本の調理法全部を暗記する事になる奴がいるのか
「ま、まぁうん…良いんじゃないかしら?」
「何が!?世界中探してもいねーよこんな回りくどい事する奴!!」
「で、でもちゃんと料理本通りに出来ましたよっ!!」
違うそうじゃない、そういう問題じゃない
「いや、というか本当にゆめみちゃんもこんなのに同意したの…」
「こんなのっ!?」
悪いがこればっかりは悪意以前のどうしようも無いレベルの問題である
と、その時かないがある事に気づいた
「…ははぁーん、成程そういう事かぁ
そういえば確かゆめみちゃん、料理出来たって聞いた事無いんだけど?」
「ギクッ」
ゆめみが動揺し、激しく肩を揺らす
「図星かなぁー?」
「ななななな何言ってんのよそんな訳ななな無いじゃない」
「やだこの子思ってた以上に引く位動揺してる…」
その動揺たるや正にゲームコントローラーのバイブレーションさながらの激しい揺れ、てかコレ大丈夫だよね?危ないやつじゃないよね?
「ゆめみさん料理出来るんですか?」
「うっ…そ、それは…!!」
流石天然少女のぞみと言ったところである、間髪すら入れずにかないが言い出す前にとっても痛いところをぶっ刺しにかかる
そしてかないもそれに便乗して…というか半ば呆れながら聞いてみる
「…ゆめみちゃん、得意料理は?」
「……………
カップ麺、かな…?」
「おいコラ目を逸らすなコッチ向け」
目を逸らしながら出てきた単語は最早調理ですらない、これには当然だがかないとのぞみも言葉に悩む程にも唖然
「カップ麺が、料理…!?」
「な、何よ!?ちゃんとお湯沸かすもの調理過程の一つでしょ、文句あるの!?」
「大アリだよ馬鹿野郎」
いやまぁお湯を沸かすのも調理過程って言い張ればそうかもしれないけれども、それにしたってはっきり言える根性はある意味で凄い
かないはほんの少しだけ頭を抱え、のぞみは気不味そうに見ている
「そっ…そうよパスタと同じよ!!ほら、茹でるの一緒でしょ!?」
最早その主張は何かもう苦しいというか、涙もんですらある
「もう良いんです、無理しなくて良いですから…」
「今度私達と一緒に料理を勉強しよう、な?」
「がんばれー」
「やだかつてなく全員が私に優しいんだけど畜生!!」
二人から感じるその視線はかなーり生暖かいものであったという
「っと、早くしないと昼休み終わってしまう!!早く食わねば!!」
「ねぇ嘘よね!?嘘と言ってよバーニィ!!」
これにはかないも優しさ故のスルー
「諦めましょう、ゆめみさん」
「のぞみ!?」
そしてガチトーンで首を振ってトドメを刺しにかかるのぞみ
とまぁ、そんな風に残念な空気になってる間にかないは再び鞄の中を漁りだし、目的である弁当が入っている筈の袋を取り出そうとした
だが、事件はその時起こった
「……あれ?」
はりきっていたかないの様子が何故か急におかしくなった
「どうかしたんですかかないさん?」
「かない、どうしたの?」
「いや、その…えっと」
さっきの余裕とは打って変わって冷や汗ダラダラのかない
と言ってもこの状況で不味い事といえば大分限られていくだろう
「…ん?かないアンタまさか」
「う、うん…
…鞄に入れてた筈の弁当が、無い」
そう、肝心なお昼ご飯が忽然と無くなっているという事だった
「何よ、私に散々言っといて家に忘れたの?」
「馬鹿野郎この私が飯において忘れる事なんて万に一つも無いだろうが!!」
「やだ物凄い説得力…」
数々の経験を積んだ家事マスター、言葉の重みがまるで違う
「でもそうなると弁当箱は何処に?」
「そこなんだよなぁ、鞄に入れっぱだったから落とす訳無いし…」
かないは腕を組んで必死に思い出そうとする、がそういった事に関係しそうな記憶は一切頭の中に出てはこない
それでも何とか思いつこうとしたその時である
「えっ、あれ!?」
「ん?」
のぞみが大きな声で疑問符を浮かべる
「わ、私のお弁当も無いです…さっき見た時はあったのに!?」
「えぇっ!?」
その答えはまさかののぞみも弁当が無くなっていたという事だった、それも本人がついさっき確認した筈と言っていたものがだ
当然家に忘れたのはおろか無くしたという線も無いだろう
「うーん、誰かに盗まれた…とか?」
しかしこの大人数が居る教室の中心であるこの席で、堂々と鞄から弁当を盗む馬鹿なんてはたして居るのだろうか
そんな事を考えている間にも、また重ねて事件が起こる
「あれ、私の弁当が無い!?」
「うわっ僕の昼飯もいつの間にか消えてる!!」
「俺のもやられた!!」
「「「「!!!?」」」」
クラス中がかないやのぞみと同じく用意していた昼飯が無くなったと大騒ぎをし始める、ここまでくると生徒二人の問題では済まない
これには魔法少女組も驚き、何か変だと気づき始める
「私とのぞみちゃんだけじゃなく、クラスの皆も!?」
「何かおかしいわ、どう考えてもこんな大事になる様な事をわざわざ…!!」
騒ぎは次第に広まり段々と収まりきらない位にまで大きくなっていく
「不味いですよ、このまま広まったら私達のお昼ご飯どころじゃ…!?」
このまま騒ぎが肥大化していくと次第に学校そのものの問題にもなりかねない、そんな事になったら私達だけで今日中に解決するなんてのは無理だ
詰まるところ魔法少女達の昼飯も食べる時間も無くなるというわけだ
「畜生こんな所でじっとしてられるか、私は探すぞ!!」
「ちょっかない、そんな訳の分からないフラグ立てて一体何処に行く気!?」
「ンなの決まってんだろ、弁当泥棒の犯人を見つけて取り返てやらぁ!!」
それがかないには我慢出来なかったのかすぐ様に席を立ちあがり、三人を置いてけぼりにして教室を飛び出そうとする
「見つけるってまだ泥棒かどうかも…というか一体どうやって見つけるのよ!!闇雲に探してもそんなすぐには見つからないって!!」
「るせぇ私はもう我慢の限界なんだよ、もうヤケクソじゃあぁああ!!」
最早ちょっと前に親友と言っていた筈の人の話など聞かずに勢いに身を任せる、がこれでは寧ろ騒ぎを大きくするだけであり状況は悪化してしまう
ましてや偶然盗っ人かを瞬時に見分けられる程にあからさまな奴が、目の前に現れる筈が…
「「「「…ドロ?」」」」
「ああぁぁ…あっ?」
あった、目の前に思いっきりあった
教室から出てすぐ右の廊下を見るとそこには、何故か何かを包んだ巨大な風呂敷を抱えた複数体の怪人ことドロドローンが居た
背負った風呂敷には勿論、盗んだと思われる弁当が多くはみ出ている
「「「「…………」」」」
「…………」
驚きと唐突な急展開のあまり両陣営は暫く硬直している
…因みに余談ではあるがこの時、幸いというべきか廊下には誰一人として居なく教室も混乱で廊下を見てる暇なんてのは無い
つまりは、だ
「…………うん
鬼の居ぬ間にすぐ様変身ッ!!」
「「「「!!!?」」」」
バレずに魔法少女に変身し放題、という事である
「魔法少女ぐれーとマジカラレッド参上!!という訳でそこの弁当持った盗賊怪人ども改めましてこんにちは、死ね!!」
「「「「ドロォッ!?!?」」」」
ここまでストレートな殺意を初っ端から吹っかけてくるニチアサ系魔法少女が今まで居ただろうか、いや絶対に居ないというか居てはいけない
これには敵の怪人達も困惑せざるを得ない
「全く何処に行ったのあの馬鹿…ってなんじゃあこりゃあ!?」
「ゆめみさんどうしたんですか…ってうぇぇ怪人ッ!?」
「風呂敷の中に、お弁当?」
そうする内にも残りの三人が教室から次々と現れ、怪人とレッドを目撃
場が瞬く間にもまた何か言いようのないカオスなモノになってくる
「あっ、怪人がお弁当を持ってます!!多分あの中に私達のものも…」
「「「「ド、ドロォォオオオオ!!!!」」」」
「あっ逃げた」
のぞみちゃんが指さしたと同時に、中まで殺意たっぷりの変身済レッドに思いっきり背を向けて猛ダッシュで逃げていった
そりゃあそうだろうよ
「逃がすかテメェらこの野郎!!」
「あれ、どっちが怪人だっけ?」
一応やっている事は正義の味方なのだが、その…気迫が、ね
「待ちやがれええぇぇぇぇ…」
そしてそのままレッドは逃げた怪人達を追ってそのまま全力で走っていった
「「…………」」
「…ゆめみと、のぞみはどうするの?」
「私達も、変身して追いかけましょうか…」
「ですね…」
二人は場の展開についていけないまま置いてきぼりにされ、何とも言えない気持ちになりながらも変身してレッドを追いかけていった
「いってらっしゃーい」
そして勿論ついていけないので、かさみは教室で留守番です
「弁当かぁえせぇええええッ!!」
「「「「ドローーーーッッ!!!!」」」」
必死に逃げる怪人達に必死に追うレッド
「か、怪人!?」
「いや良く見ろ、魔法少女が追いかけてる!!」
「何だ、それなら安心だな」
「それよりも怪人共の方、何か持ってないか…?」
人がわんさか居る街中で建物の間を壁を空を地面を駆け巡り、割と長い執念の三十分によるチェイスバトルが長引いている
大勢の人が見かけては魔法少女を見て安堵する、という事はこの街ではこういう事は最早日常茶飯事って事なんだろう
…いやそれもどうかなとは思うけど
ーーーー
そして長きによる攻防の末、街の外れでやっとこさ追い詰める
「ぜぇ…はぁ…や、やっと追い詰めたぞ…!!」
「「「「ド…ロォオ、ォォ……!!」」」」
しかし当然ながら両方とも長い鬼ごっこにより疲弊しまくっていた、このままではどの道悠長にしている隙にすぐにまた逃げられてしまう
だが怪人側もそれは同じ、必死に魔法少女から逃げていれば体力も持つまい
少なくともすぐに逃げられるという訳でも無いだろう
「弁当、かぇせぇええ…!!」
「「「「ォォオオ……!!」」」」
互いに拮抗しあう、先に動き相手を出し抜いた方が勝ちだ
(…追いついたは良いけどもかなり体力ヤバい、でもそれは相手も同じの筈
ならこの勝負、初手で決めた方が勝つ!!)
一瞬でも隙を見せたら…負ける、確実に
「…………っ」
「「「「…………」」」」
互いが警戒心を最大にまで高める
その場の空気は正に時代劇で良く観る様な居合い斬りの見合いそのものだ、いや勿論やってる事はただの弁当争いではあるのだが
だがこのままでは埒が開かぬままにまた追いかけっこの無限ループになってしまう、何かこの状況を打開する方法は無いだろうか
(一瞬、気を抜くな…!!)
かつてこれほどまでにシリアスな空気がこの作品にあっただろうか
まぁ何度も何度も一応言わせてもらうが、これだけ緊迫していてもやっている事自体ははただの弁当の取り合いという事だ
と、そこに状況を打破する出来事が
「ちょっとかない、一人でそんな突っ走るんじゃないわよ!!」
「や、やっと追いつきましたぁ…!!」
置いてかれた仲間の魔法少女二人が、緊迫した場面に現れたのだ
「ゆ、ゆめみちゃんとのぞみちゃ…?」
「「…っドロォ!!」」
「ッ!?」
その瞬間、刹那にも迫るほんの一瞬の隙を怪人達は見逃さなかった
レッドが仲間の方へと視線を逸らしたタイミングで数多く居る怪人の内の二、三匹が風呂敷を担ぎ上げ即座にこの場からの離脱を図ったのだ
「えっ!?何、何なの!?」
「あっ、また怪人が逃げていきますよ!!」
のぞみの言う通り一目散に遠くにまで逃げていく風呂敷担ぐ怪人達、スライムの割に結構早い逃げ足でその場をそそくさと去っていく
「こんのッ逃がす訳無いで…」
「「「「オォオオッッ!!!!」」」」
「何ィッ!?」
そして目的の物を持ったドロドローン達が逃げる時間を稼ぐかの様に、残りの怪人達が一斉にレッドの方へと勢い良く襲い掛かっていく
「クソッこの…どけ、邪魔だッ!!」
「ドロォッ!?」
道を阻む敵をちぎっては投げまたちぎっては投げるも、次々と迫ってくる怪人に足止めを食らってしまい追跡が難しくなっていく
「んのォ…そぉいやぁッ!!」
「「「「オオォォッ……!!」」」」
レッドは慌てて全開火力で複数体の敵を焼き払い、逃げた奴等をまた追おうと前を振り返る
が、遅かった
「っ、もうあんな遠くにまで…!!」
既に怪人は視界に微かに見えない位に遠くまで移動し逃げ去っていた、流石に学校の昼休み程度の時間じゃあもう間に合わない
「これはまた見事に、逃げられたわね」
「ご、ごめんなさい私のせいで…」
「ぐぬぬぬ…!!」
逃げていく怪人達をレッドは歯軋りをしながらただ見つめていた、辺りは放ったばかりの魔法の炎が虚しくもごうごうと燃え盛っている
「昼休みも残り三十分、残念だけどもう間に合わないわ…」
「わ、私の弁当があぁ…!!」
朝早くから起きて丹精込めて作ったお楽しみの弁当だろうに、レッドは下唇を執拗に噛み物凄く何というか…濃い顔をしていた
しかし血涙出すって、一体どんだけあの弁当に命かけていたのだろうか
「でもどうしましょうか…私達のお昼ご飯」
「まぁそこらのコンビニで適当に買えば良いでしょ、ほら戻るわよ」
「…………」
ブルーは強引にでもレッドを無理矢理引っ張り学校へと帰ろうとする
そりゃあもう昼休みも無くなってしまう、何せ二人や待っているかさみもまだ昼飯を食べていないのだから焦り気味にもなってしまうだろう
昼ご飯はコンビニでも最悪買える、そう考えながらブルーは背を向けて歩く
「ほら、何してんの帰るわよ」
そうして今日の怪人退治は失敗に終わるかと思われた
「………だ
……まだだぁあ!!」
だが、ここでレッドの魂に火がついたッ!!
敵の距離はの辛うじて見える程に先、一体どうするというのだろうか
「か、かないさん!?」
「ちょっとゆめみちゃん借りるよ!!」
「えっ」
レッドがブルーの手を掴み返しおもむろに背負い投げのポーズを取り、集中と執念とその他諸々で目標を発見し確実に補足する
「ボールを相手のゴールにぃ…!!」
「あれ、待って何か今嫌な予感が」
そして鋭く構えてブルーの手を強く掴んだまま投げの体制に入り
「シュウゥゥーーーーッ!!」
「ぬ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ!!!?」
ただただ遠慮無く思いっきり、力任せにブン投げた
レッドが放った砲弾…という名のブルーは空を切りながら一直線に真っすぐ逃げていく怪人達に向かってぶっ飛んでいく
それはそれはさながら大リーグボールの様に
「ああぁあかないテメー後で覚えてろォオオオオ!!!!」
恨み満々に叫ぶブルーはキャノン砲みたく目標へ向けてすっ飛んでいく、そんな状況で一体何故叫ぶ程の余裕があるのかは分からないのだが
「「ドロ?……ドロォッ!?」」
思わずそれを見た怪人達も二度見、そしてその間も無く低空飛行のまま高速で直撃しボウリングの様に共倒れになっていった
「…超エキサイティンッ!!」
「えぇー…」
遠目から見るに目的である怪人の足止めもとい退治自体は見事成功したみたいである、当然の如く被害さえ抜きにすれば
「大丈夫大丈夫ゆめみちゃんだから、それよりも弁当!!」
「いやあの、目視できる限り思いっきり頭から逝った気が…」
解決はした…!!したが…今回まだその過程と被害の考慮まではしていない、つまりその気になればこの行為の責任は砲弾や被害者になるという事も可能だろう…という事…!!
正にそんな事言いそうなレベルの鬼畜な所業である
「と、取りあえず先ずはゆめみさんを助けないと!!」
「えー、それよりも私の弁当…」
「捻りますよ」
「何処を!?」
のぞみの言葉の節々がイラついているせいかドス黒くなっていってる
「ほら早く行きますよ、やったのはかないさんなんですからね!!」
「分かった、分かったから!!」
そんなのぞみの黒い部分に脅されながらもかないは怪人の方へと足を運んだ
「私が悪かったからのぞみちゃん押さないで、コケるコケちゃuヴェッ!!」
あ、今コケた
ーーーー
てな事で二人は人間ミサイル後のゆめみと怪人の両者、後ついでに弁当も結局どうなったのかを確認しに急いで走って行った
かないは勿論嫌そうに、のぞみはとても心配しながらと
「いてて…おーい、大丈夫かいゆめみちゃーん!!」
「…えぇお陰様で、どっかの誰かさんがいきなり投げ飛ばさなきゃあね?」
手を振って走ってくるかないに、速攻恨み節マシマシなゆめみ
「あの…顔が思いっきり擦れてますけど、痛くないんですか?」
「痛くない訳無いでしょーが!!風呂とかこれどうすりゃ良いのよ!?」
「いやそういう問題ではなくないですか!?」
起き上がったゆめみの顔はもしこの作品が本当にアニメだったならば絶対にモザイクがかかる程のえげつなくかつ痛々しいものだった
にもかかわらず被害者の本人は傷口が染みる事の心配、もう四話目で既にやられ慣れ初めているのではないのかこの魔法少女
「と、兎に角このままじゃ見せられないのでモザイクかけて下さい!!」
「別に小説なんだから大丈b待ってこの絵面私が犯罪者っぽいんだけど」
「大丈夫、コレ小説だから見えてないよ」
「そういう問題じゃねぇ!!」
のぞみが慌てふためいて黒い四角の何かをゆめみの顔に張り付けた、事実小説だからセーフではあるがニチアサ的にはアウト以外の何物でもない
「っとと、そんな事より怪人…はうん、居ないな」
とその間にかないがキョロキョロ辺りを見渡し、怪人の残骸らしきもの以外には何も無いという事を改めて念入りに確認しておく
どうやら本当の本当にアレ以外に怪人はどうやら居ないみたいだ、具体的に言うとむっちゃ強い人型の怪人とか大量生産する小人怪人とか
「…よし!!それじゃあお待ちかねの弁当たーいむッ!!」
「や、あのそれよりゆめみさんの怪我の方が先な気が…」
それが分かった途端にかないは怪人が盗んだ弁当の入った風呂敷に体ごと自室のベッドみたくダイブ、そして二人に手を振って急かす
勿論二人の気持ちなんかこの子には知ったこっちゃないのである
「ほら二人とも何してんの、早く昼ご飯食べるよ!!」
「…どうせ次のパートまでに治るしそこまで大した事でも無いけどもさ、取り敢えずムカつくんでアイツの顔面ぶん殴ってきても良い?」
「そうですね、確かにそう思います」
「のぞみちゃん!?」
そりゃあ味方も敵に回るだろう、今の行い的に考えても
と、そんな事はさておき今肝心なのは取り返した弁当の問題だ
「まぁそれは後でとして…取り敢えずそれ、どうにかしないとね」
「それにしても物凄い量ですね、コレ…」
ずっと遠目からでしか見れていなかったのでゆめみとのぞみの二人は気づいていなかったが、その中身の量はかなり多く大きく積み重なっておりまるで街中の弁当を全てかき集めたとも思える程のものだった
良くこんな大きなものを背負って誰にもバレずに素早く街中を走り回り、まして複数体とはいえレッドから延々と逃げられたものだ
「兎に角先ずは…街に配るとか、警察に届けるとかします?」
「この量よ?配るなんて時間が足りないし警察に届けても迷惑極まり無いでしょうに
全く…後始末のがよっぽど面倒そうね、迷惑だっての…」
その途方も無くそびえ立つ山の様な物体にため息を付く他無かった
「わったしのおっ弁当はどっこかなぁーっと」
「ってコラ、ちょっと目を離した隙に何してんのよアンタは!!」
だがそんな後の事なんかお構い無しと言わんばかりにレッドは風呂敷の隙間から入り込み、コソ泥の様に意地汚く自分の弁当のみを掘り探す
「…まぁ良いか、どうせやる事も分かんないし好きにさせれば」
「あっかないさん、私の弁当もお願いします!!」
「了解っ!!」
二人もその能天気な姿を見て呆れたのか、結局割り切ってそれを見過ごした
と言っても確かにこんなものを警察でも専門職でも無い魔法少女にどうにかしろと言っても、どうも出来ないというのが現状だ
ならばいっそすっかりと開き直って、自分達の目的を先に終えてから警察に丸投…突き出した方が被害者にとっても良いのだろう
そんな事で今日も自分の為ではあったが、平和を守った魔法少女であった…
しかし、一番肝心であった当初の目的はというと
「…って、あぁーーーーッッ!!!!」
「ふぇ!?な、何ですか!?」
「何を大騒ぎしてんのよ…弁当はあったの?」
ブルーのその質問に、レッドがある物を抱えて震えながらも答えた
「く、く…!!」
「く?」
「黒ずんでる…!!」
「…あー」
そう、ドロドローンの特性と言うべき汚染がされきった弁当が、最早中身全体にまでしっかりと染み込んだ弁当を抱えながら
そりゃあ毒性のスライムがうっすい布っきれで包んで何十分も抱えてれば、かないのどころか中身全部が毒まみれにもなる筈だろう
「え…その、て事は私のも…!?」
「駄目になってます…」
「がーんっ!?」
だが必死で作った弁当の思いは相当でありJCを落ち込ませるには充分である
「「…………」」
「そ、そんなに落ち込まなくても良いじゃない!!どうせまた作れば…」
「「…どうせ?」」
「ヒィッ!?」
とまぁそんな訳で結局弁当の奪還は、失敗に終わりましたとさ
おしまい
《【Bパート】へ続く》
ー【第4話『お騒ぎ!!お弁当と体育測定』】ー
「…最近何か私、ずっと酷い目にばっか合ってる様な気がする」
「や、気持ちは分かるけど開幕からいきなり何スか?」
平日の昼間、学校の屋上で一人昼食を取りながら妖精と駄弁るかない
良い子の皆は封鎖されてる屋上に勝手に入ってはいけません、いや本当に
「にしたって最近は酷いよ!!怪人にはフルボッコにされるし友達からは白い目で見られるし風評被害は結局また増えたしさぁ…
つーか何もかも全部正さんのせいだぁもう!!」
「いやその理屈はおかし…くは無いのがまた何ともッスねぇ」
まぁそりゃあ確実に正が現れてから魔法少女の被害は身体的なものは愚か精神的被害が起きてる者も居る、てか全員である
時にはぶっ飛ばされた者、時には漏らした者、時にははっちゃけた者とか…まぁ自業自得のものも割と多いけどそりゃあもう色々と
だが、しかしながら実際問題かない自身の不幸は正と出会った日から、描写されてないけど実は三話と今回の間の内にも怪人にしてやられたりドジを踏む回数が増えている、具体的には犬のアレ踏んだり怪人に引き摺り回されたり犬のアレ踏んだり
…まぁもっとも、そのほとんどがかない自身の問題なのだが
「そうは言ってもほぼかないさんの自業自得ッスよ?そもそも勝手に突っ込んだり考えなしに動くからで…」
「いやいやそれにしたって多いって!!」
と言ってもかないのモノはどっからどう見ても正関係ある以前に自業自得のものばかり、というかほぼいつも通りの事とそう変わらないのだが
しかし、それでもあの男が来てからそういう事が多くなったのは本当の事だ
特に突如雑魚と思っていた筈の敵から現れた、他の怪人とは雰囲気からして完全に違う凶暴な怪人、それはトラウマとまではいかないものの充分過ぎるレベルで目に焼き付く位の衝撃だった筈である
「はぁ…本当に不憫だわ、最近」
「いい加減元気出してくださいッスよー、かないさん」
「とまぁそれは置いといて、何か良い事ないかなぁ…宝くじとかさぁ」
「その割には結構呑気ッスね、あんな目(第一話のフルボッコ)にあって一か月も経ってないのに随分と…」
まぁ、そんな本人はそんなの知らんと言わんばかりに忘れたまんま、いつも通り平和ボケしたまんまのんびりと学生を謳歌しているのだった
「良いじゃん夢位、一億円とか欲しいっつーかどっかに落ちてねーかな」
「そんなの流石にカンタンには…って、やべっ」
「えっ?」
すると、アイリスが急に姿を隠したと同時に屋上へのドアが勝手に開いた
そしてそこから現れたのは第一話の冒頭でほんのちょっとだけチョイ役で登場していた、かないのクラスの担任の先生であった
「…あっ」
「……閉鎖してる屋上には行っちゃ駄目ですって、前に言いましたよね?」
「ず、随分前の事だからすっかり忘れちゃってて…」
そのかないの言葉を聞いた瞬間、ズンズンと先生がかないに近づいてくる
「…そうですか」
「あーうん分かりました罰は後で甘んじて受けますだからそのアイアンクローの予備動作始を止めtでぇいぁぁああああああッッ!!!!」
そう、いつも通りの出来事なのでした
ーーーー
という事があった日の昼時の時間
「頭が割れるかと思った」
「何かデジャヴ」
お仕置きもコレで一体何回なんだろうか
「大丈夫…?」
「かさみちゃんありがとう、でも頭痛いからあんま撫でないでゴメン」
ゆめみが呆れのぞみは心配そうに見、かさみはかないの頭を優しく撫でる
「にしても本当に懲りないわね…アンタ達、これで何回目よ?」
「何回も、あるの?」
「あるわよコイツ、何度勝手に屋上に行って殴られてた事か」
ここまでいくとかけられる言葉も心配というか呆れというか、それでも悪びれないのがこの作品のおバカという名の魔法少女である
「そんな事言ってもしょうかないじゃん…このまんまアイリスと喋ってたら周りに声聞こえちゃうって、私一気に変人扱いよ?」
(今までが変人なのだけど…)
「そもそも十分休憩に行っちゃいけませんよ…」
そこは電話か何かと誤魔化したり他の場所でやれば良いのだが、どうせこの女子中学生設定上馬鹿だしまぁ思いつく筈も無いだろう
というかそれ以前に勝手に屋上自体行っちゃいけないのだが
「っとまぁまぁ、それはさておいて…
愛しのおっひるご飯よー!!」
そう言ってかないが膝に乗っけて開けたのはMY学生カバン
「お昼ご飯というと…弁当ですか
かないさんのっていつも美味しそうなんですよね、今日もお手製ですか?」
「おうともさ、全部私が丹精込めた手作り料理よっ!!」
とその時のそみがそう言い放つ、どうやらかないは料理が得意なようで弁当も多分自前で作っている様である
「女としてちょっと悔しいけど本当にね、この馬鹿は料理だけは結構出来るからそこだけは割と本当に凄いのよね…」
「その乏してるのか褒めてんのか分かんない言い方を止めろ」
と言うのも実はこの赤井かないという少女、昔から一人で家に住んでいたからか自分で家事を全てある程度こなしてきていたのだ
その為であるのか料理はおろか家事全般が結構上手いという嫁入り機能を持ち合わせているのだ、もっとも性格のせいで台無し…ゲフンゲフン
まぁ兎も角、要はそこらの主婦よりも高い戦闘力力持ってるって事です
「何ならのぞみちゃんちょっと食べる?」
「ならご厚意に甘えて…と言いたいんですけども」
「やっぱり癪よね、コイツにあからさまな借りを作るのは」
「ゆめみちゃんやっぱ嫌いでしょ私の事」
そして物欲しそうな目で見ているのぞみ、いつも通りのゆめみ
だがのぞみだけはそれだけじゃなく、何かを用意している様な素振り
「いえ、そうではなく…
実は私もお弁当を作ってきたんですっ!!」
「えっ、作ってきたの!?」
「おー」
どうやら弁当を作ってきたのはかないだけでは無かった様だ、顔を赤らめ恥ずかしながらも勢いのままにとそう告白する
それにはかさみがパチパチと手を鳴らし、かないも関心する様子
「へ…へぇ、アンタ料理出来たのね」
「いえちょっとまだ不慣れだったので、恥ずかしながら失敗も多く…
でもちょっと苦労しましたが、何とか頑張って出来ました!!」
「まぁ初めてはそんなものだよ、手を切ったりなんて普通だよ普通!!」
初めてフライパンを使ってみた時に焦がしてしまった人は世の中に一体どの位いるのだろうか、同じく包丁もどれだけ切った人いるのだろうか
そんな事を思いながら、のぞみの成功を自分の事の様に喜ぶかない
「…手、怪我してるの?」
「いえそうではなく、ただ料理本を数十冊暗記する方が苦労しました」
「努力の方向音痴ッ!!」
前言撤回、苦労ではなくただの空回りだった
というか何処の世界に料理をすると言ってまず一番初めにやる事が十も超える量の料理本の調理法全部を暗記する事になる奴がいるのか
「ま、まぁうん…良いんじゃないかしら?」
「何が!?世界中探してもいねーよこんな回りくどい事する奴!!」
「で、でもちゃんと料理本通りに出来ましたよっ!!」
違うそうじゃない、そういう問題じゃない
「いや、というか本当にゆめみちゃんもこんなのに同意したの…」
「こんなのっ!?」
悪いがこればっかりは悪意以前のどうしようも無いレベルの問題である
と、その時かないがある事に気づいた
「…ははぁーん、成程そういう事かぁ
そういえば確かゆめみちゃん、料理出来たって聞いた事無いんだけど?」
「ギクッ」
ゆめみが動揺し、激しく肩を揺らす
「図星かなぁー?」
「ななななな何言ってんのよそんな訳ななな無いじゃない」
「やだこの子思ってた以上に引く位動揺してる…」
その動揺たるや正にゲームコントローラーのバイブレーションさながらの激しい揺れ、てかコレ大丈夫だよね?危ないやつじゃないよね?
「ゆめみさん料理出来るんですか?」
「うっ…そ、それは…!!」
流石天然少女のぞみと言ったところである、間髪すら入れずにかないが言い出す前にとっても痛いところをぶっ刺しにかかる
そしてかないもそれに便乗して…というか半ば呆れながら聞いてみる
「…ゆめみちゃん、得意料理は?」
「……………
カップ麺、かな…?」
「おいコラ目を逸らすなコッチ向け」
目を逸らしながら出てきた単語は最早調理ですらない、これには当然だがかないとのぞみも言葉に悩む程にも唖然
「カップ麺が、料理…!?」
「な、何よ!?ちゃんとお湯沸かすもの調理過程の一つでしょ、文句あるの!?」
「大アリだよ馬鹿野郎」
いやまぁお湯を沸かすのも調理過程って言い張ればそうかもしれないけれども、それにしたってはっきり言える根性はある意味で凄い
かないはほんの少しだけ頭を抱え、のぞみは気不味そうに見ている
「そっ…そうよパスタと同じよ!!ほら、茹でるの一緒でしょ!?」
最早その主張は何かもう苦しいというか、涙もんですらある
「もう良いんです、無理しなくて良いですから…」
「今度私達と一緒に料理を勉強しよう、な?」
「がんばれー」
「やだかつてなく全員が私に優しいんだけど畜生!!」
二人から感じるその視線はかなーり生暖かいものであったという
「っと、早くしないと昼休み終わってしまう!!早く食わねば!!」
「ねぇ嘘よね!?嘘と言ってよバーニィ!!」
これにはかないも優しさ故のスルー
「諦めましょう、ゆめみさん」
「のぞみ!?」
そしてガチトーンで首を振ってトドメを刺しにかかるのぞみ
とまぁ、そんな風に残念な空気になってる間にかないは再び鞄の中を漁りだし、目的である弁当が入っている筈の袋を取り出そうとした
だが、事件はその時起こった
「……あれ?」
はりきっていたかないの様子が何故か急におかしくなった
「どうかしたんですかかないさん?」
「かない、どうしたの?」
「いや、その…えっと」
さっきの余裕とは打って変わって冷や汗ダラダラのかない
と言ってもこの状況で不味い事といえば大分限られていくだろう
「…ん?かないアンタまさか」
「う、うん…
…鞄に入れてた筈の弁当が、無い」
そう、肝心なお昼ご飯が忽然と無くなっているという事だった
「何よ、私に散々言っといて家に忘れたの?」
「馬鹿野郎この私が飯において忘れる事なんて万に一つも無いだろうが!!」
「やだ物凄い説得力…」
数々の経験を積んだ家事マスター、言葉の重みがまるで違う
「でもそうなると弁当箱は何処に?」
「そこなんだよなぁ、鞄に入れっぱだったから落とす訳無いし…」
かないは腕を組んで必死に思い出そうとする、がそういった事に関係しそうな記憶は一切頭の中に出てはこない
それでも何とか思いつこうとしたその時である
「えっ、あれ!?」
「ん?」
のぞみが大きな声で疑問符を浮かべる
「わ、私のお弁当も無いです…さっき見た時はあったのに!?」
「えぇっ!?」
その答えはまさかののぞみも弁当が無くなっていたという事だった、それも本人がついさっき確認した筈と言っていたものがだ
当然家に忘れたのはおろか無くしたという線も無いだろう
「うーん、誰かに盗まれた…とか?」
しかしこの大人数が居る教室の中心であるこの席で、堂々と鞄から弁当を盗む馬鹿なんてはたして居るのだろうか
そんな事を考えている間にも、また重ねて事件が起こる
「あれ、私の弁当が無い!?」
「うわっ僕の昼飯もいつの間にか消えてる!!」
「俺のもやられた!!」
「「「「!!!?」」」」
クラス中がかないやのぞみと同じく用意していた昼飯が無くなったと大騒ぎをし始める、ここまでくると生徒二人の問題では済まない
これには魔法少女組も驚き、何か変だと気づき始める
「私とのぞみちゃんだけじゃなく、クラスの皆も!?」
「何かおかしいわ、どう考えてもこんな大事になる様な事をわざわざ…!!」
騒ぎは次第に広まり段々と収まりきらない位にまで大きくなっていく
「不味いですよ、このまま広まったら私達のお昼ご飯どころじゃ…!?」
このまま騒ぎが肥大化していくと次第に学校そのものの問題にもなりかねない、そんな事になったら私達だけで今日中に解決するなんてのは無理だ
詰まるところ魔法少女達の昼飯も食べる時間も無くなるというわけだ
「畜生こんな所でじっとしてられるか、私は探すぞ!!」
「ちょっかない、そんな訳の分からないフラグ立てて一体何処に行く気!?」
「ンなの決まってんだろ、弁当泥棒の犯人を見つけて取り返てやらぁ!!」
それがかないには我慢出来なかったのかすぐ様に席を立ちあがり、三人を置いてけぼりにして教室を飛び出そうとする
「見つけるってまだ泥棒かどうかも…というか一体どうやって見つけるのよ!!闇雲に探してもそんなすぐには見つからないって!!」
「るせぇ私はもう我慢の限界なんだよ、もうヤケクソじゃあぁああ!!」
最早ちょっと前に親友と言っていた筈の人の話など聞かずに勢いに身を任せる、がこれでは寧ろ騒ぎを大きくするだけであり状況は悪化してしまう
ましてや偶然盗っ人かを瞬時に見分けられる程にあからさまな奴が、目の前に現れる筈が…
「「「「…ドロ?」」」」
「ああぁぁ…あっ?」
あった、目の前に思いっきりあった
教室から出てすぐ右の廊下を見るとそこには、何故か何かを包んだ巨大な風呂敷を抱えた複数体の怪人ことドロドローンが居た
背負った風呂敷には勿論、盗んだと思われる弁当が多くはみ出ている
「「「「…………」」」」
「…………」
驚きと唐突な急展開のあまり両陣営は暫く硬直している
…因みに余談ではあるがこの時、幸いというべきか廊下には誰一人として居なく教室も混乱で廊下を見てる暇なんてのは無い
つまりは、だ
「…………うん
鬼の居ぬ間にすぐ様変身ッ!!」
「「「「!!!?」」」」
バレずに魔法少女に変身し放題、という事である
「魔法少女ぐれーとマジカラレッド参上!!という訳でそこの弁当持った盗賊怪人ども改めましてこんにちは、死ね!!」
「「「「ドロォッ!?!?」」」」
ここまでストレートな殺意を初っ端から吹っかけてくるニチアサ系魔法少女が今まで居ただろうか、いや絶対に居ないというか居てはいけない
これには敵の怪人達も困惑せざるを得ない
「全く何処に行ったのあの馬鹿…ってなんじゃあこりゃあ!?」
「ゆめみさんどうしたんですか…ってうぇぇ怪人ッ!?」
「風呂敷の中に、お弁当?」
そうする内にも残りの三人が教室から次々と現れ、怪人とレッドを目撃
場が瞬く間にもまた何か言いようのないカオスなモノになってくる
「あっ、怪人がお弁当を持ってます!!多分あの中に私達のものも…」
「「「「ド、ドロォォオオオオ!!!!」」」」
「あっ逃げた」
のぞみちゃんが指さしたと同時に、中まで殺意たっぷりの変身済レッドに思いっきり背を向けて猛ダッシュで逃げていった
そりゃあそうだろうよ
「逃がすかテメェらこの野郎!!」
「あれ、どっちが怪人だっけ?」
一応やっている事は正義の味方なのだが、その…気迫が、ね
「待ちやがれええぇぇぇぇ…」
そしてそのままレッドは逃げた怪人達を追ってそのまま全力で走っていった
「「…………」」
「…ゆめみと、のぞみはどうするの?」
「私達も、変身して追いかけましょうか…」
「ですね…」
二人は場の展開についていけないまま置いてきぼりにされ、何とも言えない気持ちになりながらも変身してレッドを追いかけていった
「いってらっしゃーい」
そして勿論ついていけないので、かさみは教室で留守番です
「弁当かぁえせぇええええッ!!」
「「「「ドローーーーッッ!!!!」」」」
必死に逃げる怪人達に必死に追うレッド
「か、怪人!?」
「いや良く見ろ、魔法少女が追いかけてる!!」
「何だ、それなら安心だな」
「それよりも怪人共の方、何か持ってないか…?」
人がわんさか居る街中で建物の間を壁を空を地面を駆け巡り、割と長い執念の三十分によるチェイスバトルが長引いている
大勢の人が見かけては魔法少女を見て安堵する、という事はこの街ではこういう事は最早日常茶飯事って事なんだろう
…いやそれもどうかなとは思うけど
ーーーー
そして長きによる攻防の末、街の外れでやっとこさ追い詰める
「ぜぇ…はぁ…や、やっと追い詰めたぞ…!!」
「「「「ド…ロォオ、ォォ……!!」」」」
しかし当然ながら両方とも長い鬼ごっこにより疲弊しまくっていた、このままではどの道悠長にしている隙にすぐにまた逃げられてしまう
だが怪人側もそれは同じ、必死に魔法少女から逃げていれば体力も持つまい
少なくともすぐに逃げられるという訳でも無いだろう
「弁当、かぇせぇええ…!!」
「「「「ォォオオ……!!」」」」
互いに拮抗しあう、先に動き相手を出し抜いた方が勝ちだ
(…追いついたは良いけどもかなり体力ヤバい、でもそれは相手も同じの筈
ならこの勝負、初手で決めた方が勝つ!!)
一瞬でも隙を見せたら…負ける、確実に
「…………っ」
「「「「…………」」」」
互いが警戒心を最大にまで高める
その場の空気は正に時代劇で良く観る様な居合い斬りの見合いそのものだ、いや勿論やってる事はただの弁当争いではあるのだが
だがこのままでは埒が開かぬままにまた追いかけっこの無限ループになってしまう、何かこの状況を打開する方法は無いだろうか
(一瞬、気を抜くな…!!)
かつてこれほどまでにシリアスな空気がこの作品にあっただろうか
まぁ何度も何度も一応言わせてもらうが、これだけ緊迫していてもやっている事自体ははただの弁当の取り合いという事だ
と、そこに状況を打破する出来事が
「ちょっとかない、一人でそんな突っ走るんじゃないわよ!!」
「や、やっと追いつきましたぁ…!!」
置いてかれた仲間の魔法少女二人が、緊迫した場面に現れたのだ
「ゆ、ゆめみちゃんとのぞみちゃ…?」
「「…っドロォ!!」」
「ッ!?」
その瞬間、刹那にも迫るほんの一瞬の隙を怪人達は見逃さなかった
レッドが仲間の方へと視線を逸らしたタイミングで数多く居る怪人の内の二、三匹が風呂敷を担ぎ上げ即座にこの場からの離脱を図ったのだ
「えっ!?何、何なの!?」
「あっ、また怪人が逃げていきますよ!!」
のぞみの言う通り一目散に遠くにまで逃げていく風呂敷担ぐ怪人達、スライムの割に結構早い逃げ足でその場をそそくさと去っていく
「こんのッ逃がす訳無いで…」
「「「「オォオオッッ!!!!」」」」
「何ィッ!?」
そして目的の物を持ったドロドローン達が逃げる時間を稼ぐかの様に、残りの怪人達が一斉にレッドの方へと勢い良く襲い掛かっていく
「クソッこの…どけ、邪魔だッ!!」
「ドロォッ!?」
道を阻む敵をちぎっては投げまたちぎっては投げるも、次々と迫ってくる怪人に足止めを食らってしまい追跡が難しくなっていく
「んのォ…そぉいやぁッ!!」
「「「「オオォォッ……!!」」」」
レッドは慌てて全開火力で複数体の敵を焼き払い、逃げた奴等をまた追おうと前を振り返る
が、遅かった
「っ、もうあんな遠くにまで…!!」
既に怪人は視界に微かに見えない位に遠くまで移動し逃げ去っていた、流石に学校の昼休み程度の時間じゃあもう間に合わない
「これはまた見事に、逃げられたわね」
「ご、ごめんなさい私のせいで…」
「ぐぬぬぬ…!!」
逃げていく怪人達をレッドは歯軋りをしながらただ見つめていた、辺りは放ったばかりの魔法の炎が虚しくもごうごうと燃え盛っている
「昼休みも残り三十分、残念だけどもう間に合わないわ…」
「わ、私の弁当があぁ…!!」
朝早くから起きて丹精込めて作ったお楽しみの弁当だろうに、レッドは下唇を執拗に噛み物凄く何というか…濃い顔をしていた
しかし血涙出すって、一体どんだけあの弁当に命かけていたのだろうか
「でもどうしましょうか…私達のお昼ご飯」
「まぁそこらのコンビニで適当に買えば良いでしょ、ほら戻るわよ」
「…………」
ブルーは強引にでもレッドを無理矢理引っ張り学校へと帰ろうとする
そりゃあもう昼休みも無くなってしまう、何せ二人や待っているかさみもまだ昼飯を食べていないのだから焦り気味にもなってしまうだろう
昼ご飯はコンビニでも最悪買える、そう考えながらブルーは背を向けて歩く
「ほら、何してんの帰るわよ」
そうして今日の怪人退治は失敗に終わるかと思われた
「………だ
……まだだぁあ!!」
だが、ここでレッドの魂に火がついたッ!!
敵の距離はの辛うじて見える程に先、一体どうするというのだろうか
「か、かないさん!?」
「ちょっとゆめみちゃん借りるよ!!」
「えっ」
レッドがブルーの手を掴み返しおもむろに背負い投げのポーズを取り、集中と執念とその他諸々で目標を発見し確実に補足する
「ボールを相手のゴールにぃ…!!」
「あれ、待って何か今嫌な予感が」
そして鋭く構えてブルーの手を強く掴んだまま投げの体制に入り
「シュウゥゥーーーーッ!!」
「ぬ ぁ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ!!!?」
ただただ遠慮無く思いっきり、力任せにブン投げた
レッドが放った砲弾…という名のブルーは空を切りながら一直線に真っすぐ逃げていく怪人達に向かってぶっ飛んでいく
それはそれはさながら大リーグボールの様に
「ああぁあかないテメー後で覚えてろォオオオオ!!!!」
恨み満々に叫ぶブルーはキャノン砲みたく目標へ向けてすっ飛んでいく、そんな状況で一体何故叫ぶ程の余裕があるのかは分からないのだが
「「ドロ?……ドロォッ!?」」
思わずそれを見た怪人達も二度見、そしてその間も無く低空飛行のまま高速で直撃しボウリングの様に共倒れになっていった
「…超エキサイティンッ!!」
「えぇー…」
遠目から見るに目的である怪人の足止めもとい退治自体は見事成功したみたいである、当然の如く被害さえ抜きにすれば
「大丈夫大丈夫ゆめみちゃんだから、それよりも弁当!!」
「いやあの、目視できる限り思いっきり頭から逝った気が…」
解決はした…!!したが…今回まだその過程と被害の考慮まではしていない、つまりその気になればこの行為の責任は砲弾や被害者になるという事も可能だろう…という事…!!
正にそんな事言いそうなレベルの鬼畜な所業である
「と、取りあえず先ずはゆめみさんを助けないと!!」
「えー、それよりも私の弁当…」
「捻りますよ」
「何処を!?」
のぞみの言葉の節々がイラついているせいかドス黒くなっていってる
「ほら早く行きますよ、やったのはかないさんなんですからね!!」
「分かった、分かったから!!」
そんなのぞみの黒い部分に脅されながらもかないは怪人の方へと足を運んだ
「私が悪かったからのぞみちゃん押さないで、コケるコケちゃuヴェッ!!」
あ、今コケた
ーーーー
てな事で二人は人間ミサイル後のゆめみと怪人の両者、後ついでに弁当も結局どうなったのかを確認しに急いで走って行った
かないは勿論嫌そうに、のぞみはとても心配しながらと
「いてて…おーい、大丈夫かいゆめみちゃーん!!」
「…えぇお陰様で、どっかの誰かさんがいきなり投げ飛ばさなきゃあね?」
手を振って走ってくるかないに、速攻恨み節マシマシなゆめみ
「あの…顔が思いっきり擦れてますけど、痛くないんですか?」
「痛くない訳無いでしょーが!!風呂とかこれどうすりゃ良いのよ!?」
「いやそういう問題ではなくないですか!?」
起き上がったゆめみの顔はもしこの作品が本当にアニメだったならば絶対にモザイクがかかる程のえげつなくかつ痛々しいものだった
にもかかわらず被害者の本人は傷口が染みる事の心配、もう四話目で既にやられ慣れ初めているのではないのかこの魔法少女
「と、兎に角このままじゃ見せられないのでモザイクかけて下さい!!」
「別に小説なんだから大丈b待ってこの絵面私が犯罪者っぽいんだけど」
「大丈夫、コレ小説だから見えてないよ」
「そういう問題じゃねぇ!!」
のぞみが慌てふためいて黒い四角の何かをゆめみの顔に張り付けた、事実小説だからセーフではあるがニチアサ的にはアウト以外の何物でもない
「っとと、そんな事より怪人…はうん、居ないな」
とその間にかないがキョロキョロ辺りを見渡し、怪人の残骸らしきもの以外には何も無いという事を改めて念入りに確認しておく
どうやら本当の本当にアレ以外に怪人はどうやら居ないみたいだ、具体的に言うとむっちゃ強い人型の怪人とか大量生産する小人怪人とか
「…よし!!それじゃあお待ちかねの弁当たーいむッ!!」
「や、あのそれよりゆめみさんの怪我の方が先な気が…」
それが分かった途端にかないは怪人が盗んだ弁当の入った風呂敷に体ごと自室のベッドみたくダイブ、そして二人に手を振って急かす
勿論二人の気持ちなんかこの子には知ったこっちゃないのである
「ほら二人とも何してんの、早く昼ご飯食べるよ!!」
「…どうせ次のパートまでに治るしそこまで大した事でも無いけどもさ、取り敢えずムカつくんでアイツの顔面ぶん殴ってきても良い?」
「そうですね、確かにそう思います」
「のぞみちゃん!?」
そりゃあ味方も敵に回るだろう、今の行い的に考えても
と、そんな事はさておき今肝心なのは取り返した弁当の問題だ
「まぁそれは後でとして…取り敢えずそれ、どうにかしないとね」
「それにしても物凄い量ですね、コレ…」
ずっと遠目からでしか見れていなかったのでゆめみとのぞみの二人は気づいていなかったが、その中身の量はかなり多く大きく積み重なっておりまるで街中の弁当を全てかき集めたとも思える程のものだった
良くこんな大きなものを背負って誰にもバレずに素早く街中を走り回り、まして複数体とはいえレッドから延々と逃げられたものだ
「兎に角先ずは…街に配るとか、警察に届けるとかします?」
「この量よ?配るなんて時間が足りないし警察に届けても迷惑極まり無いでしょうに
全く…後始末のがよっぽど面倒そうね、迷惑だっての…」
その途方も無くそびえ立つ山の様な物体にため息を付く他無かった
「わったしのおっ弁当はどっこかなぁーっと」
「ってコラ、ちょっと目を離した隙に何してんのよアンタは!!」
だがそんな後の事なんかお構い無しと言わんばかりにレッドは風呂敷の隙間から入り込み、コソ泥の様に意地汚く自分の弁当のみを掘り探す
「…まぁ良いか、どうせやる事も分かんないし好きにさせれば」
「あっかないさん、私の弁当もお願いします!!」
「了解っ!!」
二人もその能天気な姿を見て呆れたのか、結局割り切ってそれを見過ごした
と言っても確かにこんなものを警察でも専門職でも無い魔法少女にどうにかしろと言っても、どうも出来ないというのが現状だ
ならばいっそすっかりと開き直って、自分達の目的を先に終えてから警察に丸投…突き出した方が被害者にとっても良いのだろう
そんな事で今日も自分の為ではあったが、平和を守った魔法少女であった…
しかし、一番肝心であった当初の目的はというと
「…って、あぁーーーーッッ!!!!」
「ふぇ!?な、何ですか!?」
「何を大騒ぎしてんのよ…弁当はあったの?」
ブルーのその質問に、レッドがある物を抱えて震えながらも答えた
「く、く…!!」
「く?」
「黒ずんでる…!!」
「…あー」
そう、ドロドローンの特性と言うべき汚染がされきった弁当が、最早中身全体にまでしっかりと染み込んだ弁当を抱えながら
そりゃあ毒性のスライムがうっすい布っきれで包んで何十分も抱えてれば、かないのどころか中身全部が毒まみれにもなる筈だろう
「え…その、て事は私のも…!?」
「駄目になってます…」
「がーんっ!?」
だが必死で作った弁当の思いは相当でありJCを落ち込ませるには充分である
「「…………」」
「そ、そんなに落ち込まなくても良いじゃない!!どうせまた作れば…」
「「…どうせ?」」
「ヒィッ!?」
とまぁそんな訳で結局弁当の奪還は、失敗に終わりましたとさ
おしまい
《【Bパート】へ続く》
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未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
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