私の婚約者は6人目の攻略対象者でした

みかん桜

文字の大きさ
16 / 68

14.刺客かヒロインか

 学園に入って初めての休日の今日、私は第二王子殿下の王子宮に来ている。

 王族が15歳になると与えられる自分の王宮。ウィル様は与えられてすぐ移動され、王子宮内に私の部屋も用意してくださったの。
 ふふっ。ここの庭は色とりどりのユリの花が咲いているし、ガセボも邸内もユリで飾るほど。だから心の中では勝手にユリ御殿って呼んでるの。

 でも今日は生憎の雨。遅れないよう早めに家を出た私は、サロンでウィル様を待っていた。ユリのガセボは次回の楽しみにとっておこう。

「ディア。お待たせ」

 サロンに入ってきたウィル様が、向かいのソファーではなく当たり前のように隣に来てくれるのが嬉しい。だから…数秒見つめ合ってしまうのは許してほしいのよね。

「調査結果を伝えるね」
「お願いします」

 さすが王家が動いただけあって、情報収集が早いわ。

「例の女生徒の名前はローズ・フラワー。男爵家の嫡子で、両親と年の離れた妹の4人家族。面倒見が良く領民からも優しいと評判の令嬢だった」

 えっ、嫡子? 庶子じゃなくて? 下位とはいえ生まれた時からの貴族令嬢が、あんな風に転ける!? 常識がなさすぎるわ。

 ん? 令嬢…?

「1年半ほど前のある日、急に言動がおかしくなったそうだよ」

 なるほど。そのタイミングで前世を思い出したパターンね。

「理解不能な言葉の中でも『すまほ』という言葉をよく言っていたと」

 スマホ…分かる。私もスマホ欲しいもん。

「兄上とラインとは『すまほ』というのは彼女の中で辞書と同意味なのだろうと結論付けたよ。『攻略法』『ぎゃくは』『かくしから』これらを『すまほ』とやらで確認したいとよく言っていたようだからね」

 スマホで『攻略方法』を確認し『逆ハー』を成功させ『隠しキャラ』に会いたいってところかな。

 やっぱり乙女ゲームだったかぁ…。

 しかも名前が薔薇に花って…薔薇にも花にも恨みはないのに、名前からして脳内お花畑なヒロイン感が漂ってくるのが物凄く嫌なんですけど。

「ディア? 大丈夫?」
「はい…」
「不安は全部俺が取り除くし、何があっても守るから」

 決定的なワードを聞き、動揺を隠せなかった私を安心させるよう、腰を引き寄せて頭を撫でてくださるウィル様。

「私も、ウィル様のこと守りますから///」

 たったこれだけでヒロインの存在を忘れそうになる私って現金なやつよね。

 ちなみに入学式の日に転けた理由は、本人曰く遅刻しないためにと走っていたら足がもつれたからだそう。衛兵による身体検査も問題なく、他に怪しい様子もなかったため厳重注意のみで済んだ。

「それにフラワー男爵家にも後ろ暗いものはなく、彼女は刺客ではないと判断した。命が狙われたわけじゃないから、安心して」
「はい。刺客でなくて良かったです」

 ごめんなさい、嘘です。刺客の方が早期解決に至ったと思ってます。

 そんな私の考えが、消えない不安が伝わってしまったのか、ウィル様は私を膝の上に乗せて抱きしめてくれた。

「言動を顧みるに、要注意人物であることに変わりないけどね」

 男爵領で事業を始めるのに上位貴族との繋がりがほしいのでは? そのきっかけの作り方が人とズレているだけでは? と他2人の殿下方と話し合ったそう。

「ディアはどう考える?」

 繋がりは繋がりでも…

「その…フラワーさんは上位貴族の令息と婚約したいのではないかと…」
「え? でも婚約者のいない上位貴族って中々いないよ?」

 むしろ婚約者のいる令息狙いだと思います。悪役令嬢が必要だろうから。

 どうやって伝えようか…。

「もしかして…婚約者がいる場合は略奪し、婚約すると?」
「恐らくですが」
「それに引っかかるバカいる!?」

 普通はいないよね。苦笑いしか出来ないわ。

「まぁそれは置いておくとして…多少の違いはあれどディアも同じ意見だし、彼女の真の狙いが分かるまで、上位貴族棟の警備を厳重にしておこうか」
「そうしてほしいです」

 学園に通う下位貴族や商人が、上位貴族と縁を結びたいと思うこと自体は悪いことじゃない。でもそのやり方って大事だよね。

 正直、他のご令息達はどうでもいい。ただ私は攻略対象者かもしれないウィル様を、ヒロインにも誰にも取られたくないから。

感想 6

あなたにおすすめの小説

いつも隣にいる

はなおくら
恋愛
心の感情を出すのが苦手なリチアには、婚約者がいた。婚約者には幼馴染がおり常にリチアの婚約者の後を追う幼馴染の姿を見ても羨ましいとは思えなかった。しかし次第に婚約者の気持ちを聞くうちに変わる自分がいたのだった。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」 謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。 けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。 なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。 そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。 恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

[完結]不実な婚約者に「あんたなんか大っ嫌いだわ」と叫んだら隣国の公爵令息に溺愛されました

masato
恋愛
アリーチェ・エストリアはエスト王国の筆頭伯爵家の嫡女である。 エストリア家は、建国に携わった五家の一つで、エストの名を冠する名家である。 エストの名を冠する五家は、公爵家、侯爵家、伯爵家、子爵家、男爵家に別れ、それぞれの爵位の家々を束ねる筆頭とされていた。 それ故に、エストの名を冠する五家は、爵位の壁を越える特別な家門とされていた。 エストリア家には姉妹しかおらず、長女であるアリーチェは幼い頃から跡取りとして厳しく教育を受けて来た。 妹のキャサリンは母似の器量良しで可愛がられていたにも関わらず。 そんな折、侯爵家の次男デヴィッドからの婿養子への打診が来る。 父はアリーチェではなくデヴィッドに爵位を継がせると言い出した。 釈然としないながらもデヴィッドに歩み寄ろうとするアリーチェだったが、デヴィッドの態度は最悪。 その内、デヴィッドとキャサリンの恋の噂が立ち始め、何故かアリーチェは2人の仲を邪魔する悪役にされていた。 学園内で嫌がらせを受ける日々の中、隣国からの留学生リディアムと出会った事で、 アリーチェは家と国を捨てて、隣国で新しい人生を送ることを決める。