私の婚約者は6人目の攻略対象者でした

みかん桜

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32.新しいカカオの使い方*3年前

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「えいやっ!」
「っ!! ディア!?」
「ウィル様も早くっ!」
「え? あっ、うん」

 怪しい少年に向かって持っていたカカオを投げつける。

 あの少年、料理人から受け取ったポットに何か入れたの。周りを気にしていたし、これは絶対ダメなやつ!

 バタンッ。

 ウィル様が投げつける前に、私の意図が分かったポーラによって投げられたカカオが、少年の頭にクリーンヒット。さすがポーラ!

 一応カカオを手に持ったまま、ウィル様の護衛に少年の安否を確認しに行ってもらう。

「………気絶、した?」
「はい。完全に意識がありません」

 良かった~。私の腕力では痛めつけることしか出来ず、逃げられたかもしれないもん。

「ウィルハルト殿下、ご指示を」

 呆気にとられたウィル様、ポケッとしている顔も可愛い。

「う、うん。とりあえず地下牢に連れて行って」
「承知しました」

 手元に残っているカカオに頬ずりしながら、カカオに感謝を送る。キミが固いおかげだよ~。

「………言いたいことはたくさんあるけど、それは今度にする」
「へ??」

 なんだろう…せっかく捕まえたのに、ウィル様にポーラに護衛のみんなも、残念な子を見るような目をしている。

「ディア、僕はやることが出来たから、今日はここで解散にしよう」
「はい」

 うんうん、あの少年を取り調べたりしないといけないもんね。

「……取り調べをするのは僕じゃないよ」
「え? 私、声に出してましたか?」
「ううん。顔に書いてる」
「っ!!」

 本当に顔に書いてるわけじゃないって分かってるのに、そう言われると咄嗟に顔に手を当ててしまう。

「いい? よく聞いて、ディア」
「はい」

 私の肩に手を置き、視線を合わせて真剣な顔のウィル様。今から言われることは予想がつく。

「狙いは僕じゃないと思うけど、念の為しばらく伯爵邸から外に出ないでね」
「分かりました」

 やっぱり。仮にウィル様もターゲットだった場合、私も安全だとは言い切れないものね。しばらくはチョコレート菓子の新作レシピに専念し、大人しく守られてよう。

「じゃあもう行くよ。気を付けて帰ってね」
「はい。ウィル様もくれぐれもお気をつけくださいませ」
「うん、ありがとう」

 といって別れ……る前に、ウィル様としばし押し問答。

 ウィル様は王宮騎士を私に付け、伯爵邸まで送り届けたい。私はポーラも強いし、伯爵家の護衛もちゃんといるんだから、このままウィル様に付いててほしい。

「これだけは譲れません。さっきの少年だけとは限らないじゃないですか」
「だからだよ。僕達の事を見ていた仲間が、近くにいるかもしれない」
「そうですよ! だからこそウィル様の側にいてほしいのです」

 むぅ…

「こら、頬を膨らませないの。ほら、早く馬車に乗って」

 結局馬車まで連れて行かれ、ポーラも協力して私を馬車に乗せ……王宮騎士が数名付いてきた。走り出した馬車の窓から王妃宮を見つめる。

 心配だよ…。

「クラウディア様、大丈夫ですよ」
「え?」
「お二人が口喧嘩している間に、応援が来ましたので」
「えっ! そうだったの!?」

 それならそうと、早く言ってくれったら良かったのに。

「言いましたよ」
「嘘だわ」
「いえ。お二人はいちゃつくのに夢中で、聞こえていないとは思いましたが」
「いちゃ…口喧嘩よ///」

 もうっ。なんか馬車の中、暑くない?





「狙われたのは兄上だったよ」
「っ!!」

 伯爵邸のサロンに入り、人払いをした後、ウィル様が言った一言に衝撃を受けてしまう。場所が場所だけに、その可能性は高いと思っていたけど…。

「あの時、ディアの予想通り毒を入れたと証言した」
「やはりそうでしたか。……あの少年はまだ牢の中に?」
「そうだね」

 王族の殺害は重罪。それが未遂であっても、命を持って償わなければいけない。まだ彼が生きているってことは…。

「主犯が別にいるのですね」
「その通りだよ」

 肯定するだけで口を閉ざす…これ以上は話せないってことね。主犯は貴族、しかも上位貴族の可能性が高いのかもしれない。

「彼は孤児で、16歳だったんだ」
「えっ!」

 16歳!? 私達より3歳も年上だったの!? 年下かもって思うくらいだったのに…十分な栄養をとれなかったのかな…。

「とてもそうは見えなかったよね」
「はい」

 実行犯の彼はとある侯爵領の孤児院育ち。15歳で孤児院を出てからは、領都の飲食店で給仕の仕事をしていたそう。それも一緒に孤児院を出されてしまった、まだ幼い弟の面倒をみながら。

「その飲食店の店主に指示され、弟を人質に取られてしまい断れなかったそうだ」
「っ、ひどい…」
「うん。……彼のした事は決して許されることじゃない。けど状況を鑑みるに、救済措置があっていいと判断した」
「そうですね」

 どんな理由であれ人の命を奪っちゃいけない。

 でも誰にも助けを求められない状況を、彼が犯罪に手を染めてしまう状況を作ってしまったのは貴族だから。その責任を私達は取らなければいけない。

 彼に反省する機会を与えられて良かった。

「弟さんは?」
「すぐに助け出し、保護したよ」
「良かったです」

 とはいえ主犯がまだ捕まっていないから、またどこかで罪を着せる相手を見繕ってくるだろう。もう暫くの間、私は大人しくしておくことになった。

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