私の婚約者は6人目の攻略対象者でした

みかん桜

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50.隠しキャラとの恋愛フラグ

「ディア、ブライアンと抱き合ってたって聞いたんだけど」
「抱きっ!? 変な言い方しないでください」

 あの日のことよね。周りにいた誰かが噂したんだろうけど…言い方よ、言い方。

「それで、事実なの?」
「お兄様といる時に、フラワー男爵令嬢から声を掛けられたんです。対応が面倒だったのでお兄様に任せようと…」
「で、抱き合ってたの?」

 食い気味で聞いてくるウィル様。

「抱き合ってません! その…抱きしめられはしましたけど、演技です」
「へぇ。抱きしめられたんだ」
「お兄様ですよ!?」
「だから?」
「えぇ…」

 めちゃくちゃ機嫌悪いじゃん。

 お兄様だよ? 家族間でハグとか普通の国だよ? 長期で出かける時はお見送りしたり、お出迎えしたりする。挨拶代わりにハグしたって今まで何も言わなかったじゃん。

「挨拶のそれとは違うでしょ」
「……お兄様ですよ?」

 むしろ前回より、挨拶のハグの方が気持ちこもってますが。

 どうしよう…ノエルや側近の皆様に視線を向けるも、誰も助け舟を出してくれない。

「ウィル様?」
「何?」

 もう、怒らないでよ~!

「えっと…お兄様に抱きしめられても何も思わないですけど、ウィル様に抱きしめられると…その……ドキドキします///」
「…そ///」

 機嫌、直った…? 顔を背けられてしまったけど、耳が赤くなっている。

 皆も頷いているし、正解だったみたい。

「ディア、顔真っ赤」

 そりゃあ機嫌を直したかったのが一番だけど、言った内容に嘘はないからね。

「ウィル様のせいです///」
「そっか」

 もうっ/// こんな恥ずかしいこと言わせないでよねっ。

「おいで」

 両手を広げているウィル様に近づき、力いっぱい抱きしめられる。

 そんな部屋の中は、皆が仕事に戻った音だけが響いていた。




「嘘つき」

 はぁ…。

「またあなたですか」

 またまたローズ、馬車乗降場で待ち伏せしてたんだけど。

 ウィル様達は急ぎの執務があって午後から早退。お兄様は三日前から王太子殿下と視察。バーバラは訓練場。サブリナはナタリー様と一緒に王妃様とのお茶会。

 だから私、珍しく1人で馬車に向かっていたの。

 っていうか私も今からお義母様とお茶会だし、ローズの相手をする暇なんてないんですが。

「なんで第二王子の婚約者だって隠してたのよ」
「一切隠していませんが」
「でも私は知らなかったわ」

 それはあなたが無知なだけでは?

「ちょっとクラウディア!」
「…………」

 クラリッサって呼ぶのはもう辞めにしたのね。

「返事ぐらいしなさいよ」
「あなたに名を呼ぶ許可を出していません」
「いい加減にしなさいよ」

 それはこっちのセリフです。

「常識を学ばれることをお勧めしますわ」

 帰ったらまた男爵家に抗議文を送らなきゃね。

 はぁ…男爵もちゃんと叱りなさいよね。

「では、急ぎますので」
「待ちなさいってば!!」
「きゃっ」

 急に腕を引っ張られ、よろけてしまった。

「何がきゃっ、よ! ムカつくわね」

 そんな事にムカつかれても…。

「離してください」
「いやよ」

 ローズのために言ってるんだよ? あっちにいる衛兵が、私達のやり取りを見てるって気付いてないの?

 駆けつけようとした衛兵をとりあえず私が止めたけど、アイコンタクト1つですぐにでもやってくる状況なんだよ? ねぇローズ、絶対分かってないでしょ。

「少しでしたら話を聞きます。なので手を離してください」
「いや」
「衛兵を呼びますよ」
「………絶対に逃げないでよ」
「逃げはしません」

 時間になったら移動するけどね。

「あなた転生者でしょ」
「?? えっと…?」

 すっごく困ってますって顔をローズに向ける。入学式の日に危険を感じてから、この顔だけは練習してたのよね。いつか転生者か問われた時の為に。

「うそ? 違うの?」
「??」

 ここで転生者ってどういう意味? とか聞いたほうが説得力が増すけど、時間がないので困り顔で押し通す。

「まぁいいわ。それより、ハルト様って太ってるのよね?」
「ハルト様? どなたのことでしょう?」
「第二王子殿下よ。ってクラウディア、あなた名前呼びを許されてないんだ。あ~可哀想」

 可哀想じゃないし、許可されてないのはそっちだし、ウィル様太ってないし。

「そうでしたか。殿下をハルト様と呼ばれる方がおりませんので」
「それノエルも言ってたわ…」

 でしょうね。

「ハルト様が太ってて引きこもってるから、全然会ってないのよね? 婚約者なのに酷い人」

 いえ、むしろ会わない日の方が少ないですよ。

「そんなに嫌なら私が変わってあげるわ」
「お断りします」
「私はクラウディアと違って、ハルト様に自信を付けてあげられるのよ」

 ふ~ん、なるほどね。なんとなく分かったかも。

「とりあえずハルト様に会わせなさい」
「お断りします。時間ですので失礼します」

 ずっと私達を気にかけてくれていた衛兵に視線を送り、ローズの足止めをお願いする。

「この事は男爵家に抗議文を送らせていただきますので」
「えっ、また!? 困るんだけど」

 なら困るような事、最初からしなきゃいいのに。

*

「ふぅ…」

 今までの情報から推測するに…

 逆ハーエンド後に6人目のルートが開放される。そして6人目の攻略対象者はこの国の第二王子。

 美男美女揃いの王族の中で、残念王子と呼ばれていることがコンプレックス。学園入学時も太ったままで、婚約者も側近もいなくて、マイナス思考に拍車がかかり引きこもり状態。

 逆ハーに成功しているから、ヒロイン1人ではなく攻略対象者全員を招待したお茶会を、おそらくメインヒーローが王城で開催。

 いくら引きこもりとはいえ第二王子にも執務があるから…王城で迷っていたヒロインを、たまたま近くにいた第二王子が助ける。

 それをきっかけにヒロインがダイエットに協力し、自信を付けさせる。ついでにその他諸々も解決して攻略完了! ってとこかしらね。

「あら…?」

 これが正解なら、私…がっつりフラグ折ってない?

 むしろ折ったというよりも……

 ヒロインより先に、私が攻略しちゃってたわ。

感想 6

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