私の婚約者は6人目の攻略対象者でした

みかん桜

文字の大きさ
55 / 68

51.悪役令嬢にランクアップ

 入学してからずっと敷いていた厳戒態勢。緩めても問題ないだろうと判断され、みんなは食堂や中庭を利用したり、昼の時間を自由に過ごすようになった。

 私達は…ウィル様が気付かれてはいないけど狙われているし、私も待ち伏せまでして絡まれるから、今まで通り王族用サロンを利用してるけど。


「きゃあ!」

 いつも通り待ち伏せしていたローズ。また何かしら絡んでくるかと思ったら、私に声をかける前に転けたみたい。

 さすがに無視出来ないし、手を貸そうかしら。

「クラウディア様、酷いです!」
「えっ?」

 驚いて差し出した手を引っ込めてしまった。

「足を引っ掛けるなんて、とても貴族令嬢がすることとは思えません」

 ?? 私、何もしてないけど…

 両手を胸の前で組み、涙目で私を責めるローズ。

「なるほど」

 王道ね。まさか実体験する機会が来るとは思わなかったわ。私にいじめられているんだとアピールしたいんだろうけど、転ける瞬間は私以外に見られちゃいけないんじゃない?

「ディアは何もしていないだろう」

 それに一番信じてほしい人が私を信じてくれているし。えっと…失敗では?


「私がハルト様と仲がいいからって…」

 えっ、この状況で続けるの?

 そもそもあなたの言うハルト様がここにいるのに。どうしよう…笑いそう。

 ぷっ。

 ……ダメだわ。笑いを堪えきれそうにないから、ウィル様の腕で顔を隠させてもらおう。

「ずるいよ、ディア」

 ごめんなさい。でも我慢できなかったんだんもん。

「そうやって…婚約者がいるのに他の男性と親しくするなんて……最低です」

 んー、婚約者なんだけどな。

「私達、親しい仲に見えますか?」
「はい。その人と付き合ってるんですか?」
「えぇ」

 既に婚約者だから、お付き合いしましょうみたいなのはなかったけどね。間違ってはないもの。

「ディア…」

 なんだか隣で嬉しそうにしているし、婚約した日を記念日にしようって後で提案してみようかな。

 第三者から見て、私とウィル様が親しい仲に見えるって言われて嬉しかったしね。

 ウィル様としばし見つめ合い…

「ディア、行こう」
「はい」

 どちらともなく手を取り合って教室に戻り始めた。

 ローズはノエルが差し出した手を取って立ち上がってるけど、いい加減ノエルの正体にも気付こうよ。

 ふぅ…。絡み方を方向転換したみたいだし、しばらく1人にならないようにしなきゃ。



 たちの悪い事に、ローズは私にいじめられていると噂を流しだした。

「はぁ、面倒だわ」

 といってもローズを信じてる人はごく少数の下位貴族のみ。それだけなら気にしないんだけど。

「ポーラ…そろそろ手を打ってもいいかな?」
「もちろんです。クラウディア様がなさらないなら、私が動くところでした」

 私のことだけならまだしも、ウィル様との仲についても言い出し始めたから。絶対に許せなくなっちゃった。

 何でも、休日になると手作り菓子を持って王宮に行っているんだと。それに関しては嘘は言ってないわね。門番に追い払われているけど、本当に来てはいるもの。

 でもローズとウィル様が休日に会っているって思われるような、含みのある言い方だから。誰一人として信じていなかったとしても、そんな噂があるだけでイヤ。

「ふふ。ありがとう。手伝ってもらう事もあるかもしれないわ」
「お任せください」

 それにしても…ローズはどうしたいの? 物語のヒロインたちは、状況は違ってもちゃんと攻略対象者を恋に落としているのよ? ウィル様はもちろん、ローズは誰一人として落としてないじゃない。

 魔法なんてない世界だから、魅了アイテムなんてものはないはず。でも媚薬成分が入った手作り料理を食べさせ、既成事実を作ろうとしてくるかもしれない。

 ポーラに早速お願いすることが出来てしまったわ。

「ポーラ。フラワー男爵家が、ここ数年で購入してきた商品を調べておいて」
「承知しました」

 ふふふ。なんだか私、悪役令嬢みたいね。

 ゲームのウィル様は婚約者がいないってことは、ゲームでの私はモブ…ううん。未登場でモブですらないかも。

 未登場から悪役令嬢…これって昇格になるのかしら?



「きゃー!」

 とうとう来ました、階段落ちイベント! 数段とはいえ、痛くないの?

 じゃないわよ。

「後ろから突き飛ばすなんて…クラウディア様…酷いです」

 せっかく軽めの罰で済ましてあげようと思ってたのに。私に更に冤罪をかけるのね。しかも傷害事件の犯人として。

「私がハルト様と仲が良いからってあんまりです」
「言っている意味が分かりません」

 私思うの。悪役令嬢よりモブの方が怖いんじゃないかって。だって何をしてくるか、全く予想つかないでしょ?

「酷いです!」
「何が?」
「何がって…」

 大体私はウィル様と階段を降りていて、ローズは1人で階段を登っていた。

「そもそも、私達と階段ですれ違うことがおかしいのよ?」
「私が男爵令嬢だからですか?」
「そうよ」
「酷いですっ!」

 酷い酷いって、語彙力のなさよ。

「道を譲るのって常識よ?」
「道じゃなくて階段です」

 え、バカなの?

「常識がなさすぎるだろう」

 ね? ウィル様もそう思うよね。

「あなたには関係ないです」

 むしろ一番関係あると思うわよ。まぁいいわ。

「男爵家に抗議文を送りますね。メープル伯爵家からと…」
「王家からも送ろう」
「っ! 王家!?」

 なんで? って驚いてるけど、本当…誰か教えてあげなよ。

「一応教えておきます。道であれ階段であれ、上位の者に道を譲るのは常識です。もちろん立ち止まって。でないと不敬罪に問われる可能性もありますよ」
「し、知らなくて…」
「知らない者が悪いのです。それから…今回の冤罪についての謝罪は不要です。許すつもりないので」

 ウィル様の正体を知らないから、階段を降りている私を見てチャンスだと思ったんでしょ? ダメよ? 踊り場で気付いたならそこで待つのが正解なんだから。

感想 6

あなたにおすすめの小説

いつも隣にいる

はなおくら
恋愛
心の感情を出すのが苦手なリチアには、婚約者がいた。婚約者には幼馴染がおり常にリチアの婚約者の後を追う幼馴染の姿を見ても羨ましいとは思えなかった。しかし次第に婚約者の気持ちを聞くうちに変わる自分がいたのだった。

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?

魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。 彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。 国外追放の系に処された。 そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。 新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。 しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。 夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。 ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。 そして学校を卒業したら大陸中を巡る! そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、 鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……? 「君を愛している」 一体なにがどうなってるの!?

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

[完結]不実な婚約者に「あんたなんか大っ嫌いだわ」と叫んだら隣国の公爵令息に溺愛されました

masato
恋愛
アリーチェ・エストリアはエスト王国の筆頭伯爵家の嫡女である。 エストリア家は、建国に携わった五家の一つで、エストの名を冠する名家である。 エストの名を冠する五家は、公爵家、侯爵家、伯爵家、子爵家、男爵家に別れ、それぞれの爵位の家々を束ねる筆頭とされていた。 それ故に、エストの名を冠する五家は、爵位の壁を越える特別な家門とされていた。 エストリア家には姉妹しかおらず、長女であるアリーチェは幼い頃から跡取りとして厳しく教育を受けて来た。 妹のキャサリンは母似の器量良しで可愛がられていたにも関わらず。 そんな折、侯爵家の次男デヴィッドからの婿養子への打診が来る。 父はアリーチェではなくデヴィッドに爵位を継がせると言い出した。 釈然としないながらもデヴィッドに歩み寄ろうとするアリーチェだったが、デヴィッドの態度は最悪。 その内、デヴィッドとキャサリンの恋の噂が立ち始め、何故かアリーチェは2人の仲を邪魔する悪役にされていた。 学園内で嫌がらせを受ける日々の中、隣国からの留学生リディアムと出会った事で、 アリーチェは家と国を捨てて、隣国で新しい人生を送ることを決める。

公爵令嬢の辿る道

ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。 家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。 それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。 これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。 ※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。 追記  六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」 謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。 けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。 なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。 そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。 恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です