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52.フラワー男爵
ポーラに調べてもらった結果、フラワー男爵家が問題のある品を購入したり…なんてことはなかった。もちろんローズ自身も。一先ず、毒殺や媚薬といった類の心配はなくなったわ。
「男爵が到着されました」
「そう。応接室にお通ししておいて」
「かしこまりました」
フラワー男爵がローズを連れて謝罪に来たの。
うちからの抗議文は何通もあるし、今回は王家からも届いてしまった。さすがに文ではなく、直接謝罪しなければと思ったんだろう。
フラワー男爵領は王都から離れているし、社交界シーズンでもないのにご苦労さまです。
「さて、どれを着ようかしら」
男爵は約束の時間通りに来た。でも私が時間通りに会う必要はない。だから男爵が到着してから準備を始めるのも予定通りなの。
「髪飾りはウィル様の色にしようかな」
「では、こちらはどうでしょう」
「そうね! それにするわ。ポーラお願い」
ウィル様から頂いた、ブラックダイヤモンドが散りばめられた髪飾り。
「ふふ」
前世なら目立たなかっただろうそれは、今の赤い髪にはよく映える。
たっぷり2時間かけて準備をし、男爵が待つ応接室へと向かった。
「お待たせいたしました」
「いえいえ」
お茶も出されず、待たされまくったローズはご機嫌斜め。でも男爵の応答も残念かなぁ。
「この度は娘がご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません」
土下座とはちょっと違うけど、床に膝を付いて謝られると…もういいから椅子に座ってと言いたくなる。
それをぐっと堪え、ローズに視線を向けてみた。
「ちょっ、お父様!?」
いきなり謝る父親に驚いているようだけど、今回の訪問理由は知っていたのよね? まさかここまでするとは思わなかったとか?
「お前も頭を下げなさい」
そう言ってローズをソファーからおろし、頭を下げさせた。私はしばらくそのまま沈黙を貫いてから、声をかける。
「今後について話しましょう。一旦、顔を上げてください」
とりあえずね。
だってローズにも言ったけど、階段落ちについては謝罪すら受け入れるつもりないから。
「どうぞ、おかけください」
「ありがとうございます」
いやいやローズさん? まだムスッとしてるけど、状況分かってる?
「先程の謝罪は、何についてでしょうか」
そもそも『ご迷惑』では済ませられないレベルだし。
「先日の階段でのことです。恥ずかしながら娘は学園入学まで領地から出たことがなく、上位貴族の方と接する機会もありませんでして…」
「無知ゆえに許せと?」
「そ、そういう意味では…今後同じことはさせませんので、許していただけないでしょうか」
「その件については謝罪を受けるつもりはないと、そうお伝えしたはずです」
話を聞いてみると、階段落ちイベント以外については謝罪文を送っているから、それで問題ないと思っていたそう。
は?
「勘違いしているようですが、謝罪を受け入れるとは言っていません」
「そんなっ!」
「それに謝罪を受け入れたからといって、それが許す事には繋がりませんよね」
「学生同士のことですし…」
おおっと。だから許せって? それはちょっと甘く見過ぎでしょう。
「クラウディアさん。私がハルト様と仲良くしているのがそんなに気に入りませんか? でも本当にただのお友達で…」
まさかのさん付け! 男爵も注意しないのね。何度も言うけど、まだ自己紹介すらしていないんですよ、私達。
それからウィル様の友達ねぇ…本人に聞いたらすぐ分かる嘘を、なんでこうも言えちゃうのだろう。
「娘もこう言っています。王宮に行く頻度は控えるように言い聞かせますので」
頻度を控える…行くなとは言わないと。そもそも王城の門で帰され、ウィル様の王宮にはたどり着いてすらないのに。
「今回、王家からも抗議文が届いたと思いますが」
「はい。ですがその場に王族はいなかったとか」
王族以外が王家からも抗議するなんて言ったら、それこそ罪に問われるんですが。ローズはともかく男爵は疑問に思おうよ。
「クラウディアさんが送るように言ったんでしょう。ハルト様が可哀想…」
あー、もうっ! 頭痛くなってきた。
膝をつき頭を下げた男爵はどこに行ったのよ? なんて優しい娘なんだ、とでも言いたげな目でローズを見ているじゃない。
ソファーに座らせたのは失敗だったわ。
要はウィル様と仲良くしているっていうローズの話を、男爵は信じているのよね。完全にローズが悪いと思って叱っていたけど、実際娘から話を聞くとそうではなかったと。
ま、そうであってほしいという思いが強いのかもしれないけどさ。
抗議文にしたって、嫉妬した私がローズに嫌がらせをしているけど、それを棚に上げて文句を言ってきてると、そう思ってるのよね?
だから形だけ謝ればそれでいいと。
正直…ローズを修道院に送るか除籍し平民にするって言われたら、それで済まそうと思っていた。
なんなら海外留学させそのまま移住、もし帰ってきても領地から一生涯出さないって約束してくれるなら、貴族のままでも許そうと思っていた。もちろん、フラワー男爵を継ぐのはローズの妹夫婦。
今後一切私達に関わらないなら、好きにしてって思ってたのにね。
「お帰りください」
これ以上今話たって意味ないから。
「ありがとうございます!」
「誤解なさらないで。謝罪は受け入れません」
「えっ?」
当たり前でしょうが。大体この状況でよく勘違いできたわね。
「クラウディアさん酷い…」
男爵もうんうんと頷いているけど、こっちが言いたいわよ。
「どうとでも思いください」
「お願いですっ! ハルト様をもっと大切にしてください」
「言っている意味が分かりませんわ」
ローズはなんで分かってくれないの…と父親の胸で涙を流している。
いやこれ何の時間?
「裁判の日程はこちらで調整させていただきます」
「「裁判!?」」
「何か問題でも?」
「そ、そこまでしなくても、クラウディアさんが謝ってくれればそれで許します…」
「許しを請うのはあなたではなくて?」
どういう思考回路をしているのか、ローズの頭の中を覗きたくなる。
*
どうにか裁判を避けたいと騒いでいた2人をなんとか追い出し、ウィル様に手紙を書く。内容はもちろんフラワー男爵達について。
男爵は王家に謝罪するため謁見申請を出している。でも陛下は暇じゃないし相手は男爵。きっと私の報告を受け、謁見申請を却下するだろう。そしてメープル伯爵家に一任すると、そう決断されるはず。
でも裁判はちょっと面倒よねぇ。一気に片付けたいし、お父様に相談しようかしら。
「男爵が到着されました」
「そう。応接室にお通ししておいて」
「かしこまりました」
フラワー男爵がローズを連れて謝罪に来たの。
うちからの抗議文は何通もあるし、今回は王家からも届いてしまった。さすがに文ではなく、直接謝罪しなければと思ったんだろう。
フラワー男爵領は王都から離れているし、社交界シーズンでもないのにご苦労さまです。
「さて、どれを着ようかしら」
男爵は約束の時間通りに来た。でも私が時間通りに会う必要はない。だから男爵が到着してから準備を始めるのも予定通りなの。
「髪飾りはウィル様の色にしようかな」
「では、こちらはどうでしょう」
「そうね! それにするわ。ポーラお願い」
ウィル様から頂いた、ブラックダイヤモンドが散りばめられた髪飾り。
「ふふ」
前世なら目立たなかっただろうそれは、今の赤い髪にはよく映える。
たっぷり2時間かけて準備をし、男爵が待つ応接室へと向かった。
「お待たせいたしました」
「いえいえ」
お茶も出されず、待たされまくったローズはご機嫌斜め。でも男爵の応答も残念かなぁ。
「この度は娘がご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません」
土下座とはちょっと違うけど、床に膝を付いて謝られると…もういいから椅子に座ってと言いたくなる。
それをぐっと堪え、ローズに視線を向けてみた。
「ちょっ、お父様!?」
いきなり謝る父親に驚いているようだけど、今回の訪問理由は知っていたのよね? まさかここまでするとは思わなかったとか?
「お前も頭を下げなさい」
そう言ってローズをソファーからおろし、頭を下げさせた。私はしばらくそのまま沈黙を貫いてから、声をかける。
「今後について話しましょう。一旦、顔を上げてください」
とりあえずね。
だってローズにも言ったけど、階段落ちについては謝罪すら受け入れるつもりないから。
「どうぞ、おかけください」
「ありがとうございます」
いやいやローズさん? まだムスッとしてるけど、状況分かってる?
「先程の謝罪は、何についてでしょうか」
そもそも『ご迷惑』では済ませられないレベルだし。
「先日の階段でのことです。恥ずかしながら娘は学園入学まで領地から出たことがなく、上位貴族の方と接する機会もありませんでして…」
「無知ゆえに許せと?」
「そ、そういう意味では…今後同じことはさせませんので、許していただけないでしょうか」
「その件については謝罪を受けるつもりはないと、そうお伝えしたはずです」
話を聞いてみると、階段落ちイベント以外については謝罪文を送っているから、それで問題ないと思っていたそう。
は?
「勘違いしているようですが、謝罪を受け入れるとは言っていません」
「そんなっ!」
「それに謝罪を受け入れたからといって、それが許す事には繋がりませんよね」
「学生同士のことですし…」
おおっと。だから許せって? それはちょっと甘く見過ぎでしょう。
「クラウディアさん。私がハルト様と仲良くしているのがそんなに気に入りませんか? でも本当にただのお友達で…」
まさかのさん付け! 男爵も注意しないのね。何度も言うけど、まだ自己紹介すらしていないんですよ、私達。
それからウィル様の友達ねぇ…本人に聞いたらすぐ分かる嘘を、なんでこうも言えちゃうのだろう。
「娘もこう言っています。王宮に行く頻度は控えるように言い聞かせますので」
頻度を控える…行くなとは言わないと。そもそも王城の門で帰され、ウィル様の王宮にはたどり着いてすらないのに。
「今回、王家からも抗議文が届いたと思いますが」
「はい。ですがその場に王族はいなかったとか」
王族以外が王家からも抗議するなんて言ったら、それこそ罪に問われるんですが。ローズはともかく男爵は疑問に思おうよ。
「クラウディアさんが送るように言ったんでしょう。ハルト様が可哀想…」
あー、もうっ! 頭痛くなってきた。
膝をつき頭を下げた男爵はどこに行ったのよ? なんて優しい娘なんだ、とでも言いたげな目でローズを見ているじゃない。
ソファーに座らせたのは失敗だったわ。
要はウィル様と仲良くしているっていうローズの話を、男爵は信じているのよね。完全にローズが悪いと思って叱っていたけど、実際娘から話を聞くとそうではなかったと。
ま、そうであってほしいという思いが強いのかもしれないけどさ。
抗議文にしたって、嫉妬した私がローズに嫌がらせをしているけど、それを棚に上げて文句を言ってきてると、そう思ってるのよね?
だから形だけ謝ればそれでいいと。
正直…ローズを修道院に送るか除籍し平民にするって言われたら、それで済まそうと思っていた。
なんなら海外留学させそのまま移住、もし帰ってきても領地から一生涯出さないって約束してくれるなら、貴族のままでも許そうと思っていた。もちろん、フラワー男爵を継ぐのはローズの妹夫婦。
今後一切私達に関わらないなら、好きにしてって思ってたのにね。
「お帰りください」
これ以上今話たって意味ないから。
「ありがとうございます!」
「誤解なさらないで。謝罪は受け入れません」
「えっ?」
当たり前でしょうが。大体この状況でよく勘違いできたわね。
「クラウディアさん酷い…」
男爵もうんうんと頷いているけど、こっちが言いたいわよ。
「どうとでも思いください」
「お願いですっ! ハルト様をもっと大切にしてください」
「言っている意味が分かりませんわ」
ローズはなんで分かってくれないの…と父親の胸で涙を流している。
いやこれ何の時間?
「裁判の日程はこちらで調整させていただきます」
「「裁判!?」」
「何か問題でも?」
「そ、そこまでしなくても、クラウディアさんが謝ってくれればそれで許します…」
「許しを請うのはあなたではなくて?」
どういう思考回路をしているのか、ローズの頭の中を覗きたくなる。
*
どうにか裁判を避けたいと騒いでいた2人をなんとか追い出し、ウィル様に手紙を書く。内容はもちろんフラワー男爵達について。
男爵は王家に謝罪するため謁見申請を出している。でも陛下は暇じゃないし相手は男爵。きっと私の報告を受け、謁見申請を却下するだろう。そしてメープル伯爵家に一任すると、そう決断されるはず。
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