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53.家族会議
この国には弁護士っていう職業はない。だから裁判ってなると、証拠を集めるのも証人を見つけるのも弁論するのも自分自身。
協力者を見つけたり代理人を立ててもいいけど、それももちろん自分でお願いしなければいけないの。だから裁判ってちょっと面倒なんだよね。
それに今回は発言のみで実害がないから、証人を集めなきゃいけないっていうのも…なんとも面倒でしかない。怪我でもしてれば診断書が証拠になったのに。それか録音機器があればなぁ…。
ちなみに、フラワー男爵の謁見申請は想定通り却下された。なのでウィル様に対しての不敬罪については、償い方法が使者から男爵へ伝えられるそう。
うちが何をしようと目を瞑るって言質は、陛下から取ってある。まぁ私達兄妹、特に私が一番の被害者だしね。
「ってことで、第一回メープル伯爵家の家族会議を開催します!」
「あははっ。それは二回目もあるのか?」
「笑いすぎですよ、お兄様」
ちょっとふざけた私達を横目にお父様が執事に合図をし、料理長新作のスイーツとカモミールティーが用意された。今日はきっとみんなイライラしちゃうと思うから、リラックス効果のある物がいいかなって。
「私、フラワー男爵令嬢を訴えるつもりはありません」
「「「えっ!?」」」
今までのことは両親にも報告していたから、裁判するんじゃなかったの? ってみんなが驚いている。
「理由は?」
「裁判したとしても、修道院送りか除籍程度だからです」
もちろん裁判費用とか慰謝料の支払いが発生して、フラワー男爵は痛手だろうけど。でも、私はそれで終わらせたくない。
「何をするつもりなんだ?」
「ちょっとお兄様。なぜ何かする前提で話すんですか」
「そのための家族会議だろう?」
「………そうでした」
男爵が裁判の方が良かったって思うことを、私は今から相談するつもりで集まってもらったんでした。
ちょっと罪が重すぎるって思われるかもしれないけど、ウィル様を出す方が悪い。
「私、ウィル様を大切にしていないそうです」
「それはそれは」
「それに彼女はハルト様と仲が良いそうですが、ウィル様は違うと仰っていたので…」
「ふっ。どちらの事だろうな」
本当、第一・第三どちらの殿下のことなのかしらね。
あら、お兄様ったら悪いお顔。
*
「……って感じで少しずつ追い詰めたいのです」
「賛成だ。なにせうちはメープルシロップ伯爵家だしな」
うん。なんの脈略もないけど、お兄様が根に持っていることだけは分かったわ。確かに男爵から謝罪文は届いたけど、本人からの謝罪はないものね。
そして家族会議の結果、私の案が採用された。というかもっと酷くなったのでは?
ちょっと男爵が可哀想かも……ま、計画は実行するけど。
私達が何をしようとしているのか。
それはフラワー男爵自身に爵位を返上させるのだ。
そう。ローズだけじゃなく、家族全員平民になっていただきます。
商会を営んでいるフラワー男爵。まぁ実際メインで動いているのは男爵の弟みたいだけど。それでも『男爵』って肩書があるからこそ、融通が利いていたこともある。そこを突こうかなって。
もちろん生活を困らせたいわけじゃないから、頑張ればそれなりにやっていける程度に困らせる予定。
「お父様には私から連絡しておくわね」
「お願いします」
一番怒りが収まりきっていないお母様。きっとお祖父様だけじゃなく、学生時代の友人にも連絡するんだろうなぁ。
「辺境伯への連絡はお父様に任せなさい」
「ふふ。ありがとうございます」
お父様までさっきのお兄様と同じ悪いお顔。
「殿下には俺からも伝えておこう」
「お兄様もありがとうございます」
王太子殿下にはウィル様からも報告があるだろうけどね。
私はウィル様とキース様と…ってウィル様の執務室にみんな集まってもらえばいいっか。
*
裁判するより面倒じゃないかって? それがそんな事ないの。だって…
私達の計画はこうだ。
・まずは贅沢品の甘味から。
メープルシロップと甜菜砂糖をフラワー商会に卸さない。一応まだ岩糖の需要もあるし、必要最低限はそっちから手に入れられる。
キース様も迷惑を掛けられたから、問題なく了承してくれた。
・次は醤油。
これも私が使用法を伝えなきゃ、隣国みたいに毒扱いだったかもしれない。それに数年前までなかったものだから、なくたって困らないでしょ。
でも醤油はまだ王太子殿下の手から離れていないの。流石に全く卸さないっていうのは出来ないので、うちの縁戚が営んでいる商会が大量買いすることにした。
・次はチョコレート。
カカオ輸入の責任者は母方のお祖父様。しかもカカオからチョコレートにする加工は、お母様の実家の伯爵領内のみで行っている。
ふふ。話を聞いたお祖父様と叔父様は、お願いする前にチョコレートを卸さないって怒ってくれたそう。
・それからドライフルーツとジャム。
これもフラワー商会に卸さないの。ジャムはメープル伯爵領だし、ドライフルーツはハービー子爵領だから全く問題ない。ノエルとはタイミングだけ合わせたわ。
・そして次は塩と豆腐関連。
砂糖同様、岩塩があるので必要最低限の塩は手に入れられる。加工前の大豆は卸すけど、豆腐や豆乳、おからや湯葉は卸さない。
ジェームズ様も迷惑を掛けられたしね。
にがりは元々宰相の領地にしか卸してないし、海水から塩を取るのにお父様が資金援助をしたからか、辺境伯は軽く了承してくれた。
・そして最後はお米。
といっても国内への普及はまだまだなんだけど、前世日本人のローズの希望なのか、フラワー商会には卸していたの。お米はウィル様案件なので言わずもがな。
そうやって上位貴族がこぞってフラワー商会に卸さなくなればどうなるか。何も言わなくたって、フラワー男爵との関わりを減らす貴族、関係を断つ商会が出てくるのだ。
困った男爵は私達に謝罪に来るだろう。そして相当頭が悪くなければ、爵位返上で許しを請うはず。
ね? 証人を集め、証言を頼んでいくより簡単でしょう?
協力者を見つけたり代理人を立ててもいいけど、それももちろん自分でお願いしなければいけないの。だから裁判ってちょっと面倒なんだよね。
それに今回は発言のみで実害がないから、証人を集めなきゃいけないっていうのも…なんとも面倒でしかない。怪我でもしてれば診断書が証拠になったのに。それか録音機器があればなぁ…。
ちなみに、フラワー男爵の謁見申請は想定通り却下された。なのでウィル様に対しての不敬罪については、償い方法が使者から男爵へ伝えられるそう。
うちが何をしようと目を瞑るって言質は、陛下から取ってある。まぁ私達兄妹、特に私が一番の被害者だしね。
「ってことで、第一回メープル伯爵家の家族会議を開催します!」
「あははっ。それは二回目もあるのか?」
「笑いすぎですよ、お兄様」
ちょっとふざけた私達を横目にお父様が執事に合図をし、料理長新作のスイーツとカモミールティーが用意された。今日はきっとみんなイライラしちゃうと思うから、リラックス効果のある物がいいかなって。
「私、フラワー男爵令嬢を訴えるつもりはありません」
「「「えっ!?」」」
今までのことは両親にも報告していたから、裁判するんじゃなかったの? ってみんなが驚いている。
「理由は?」
「裁判したとしても、修道院送りか除籍程度だからです」
もちろん裁判費用とか慰謝料の支払いが発生して、フラワー男爵は痛手だろうけど。でも、私はそれで終わらせたくない。
「何をするつもりなんだ?」
「ちょっとお兄様。なぜ何かする前提で話すんですか」
「そのための家族会議だろう?」
「………そうでした」
男爵が裁判の方が良かったって思うことを、私は今から相談するつもりで集まってもらったんでした。
ちょっと罪が重すぎるって思われるかもしれないけど、ウィル様を出す方が悪い。
「私、ウィル様を大切にしていないそうです」
「それはそれは」
「それに彼女はハルト様と仲が良いそうですが、ウィル様は違うと仰っていたので…」
「ふっ。どちらの事だろうな」
本当、第一・第三どちらの殿下のことなのかしらね。
あら、お兄様ったら悪いお顔。
*
「……って感じで少しずつ追い詰めたいのです」
「賛成だ。なにせうちはメープルシロップ伯爵家だしな」
うん。なんの脈略もないけど、お兄様が根に持っていることだけは分かったわ。確かに男爵から謝罪文は届いたけど、本人からの謝罪はないものね。
そして家族会議の結果、私の案が採用された。というかもっと酷くなったのでは?
ちょっと男爵が可哀想かも……ま、計画は実行するけど。
私達が何をしようとしているのか。
それはフラワー男爵自身に爵位を返上させるのだ。
そう。ローズだけじゃなく、家族全員平民になっていただきます。
商会を営んでいるフラワー男爵。まぁ実際メインで動いているのは男爵の弟みたいだけど。それでも『男爵』って肩書があるからこそ、融通が利いていたこともある。そこを突こうかなって。
もちろん生活を困らせたいわけじゃないから、頑張ればそれなりにやっていける程度に困らせる予定。
「お父様には私から連絡しておくわね」
「お願いします」
一番怒りが収まりきっていないお母様。きっとお祖父様だけじゃなく、学生時代の友人にも連絡するんだろうなぁ。
「辺境伯への連絡はお父様に任せなさい」
「ふふ。ありがとうございます」
お父様までさっきのお兄様と同じ悪いお顔。
「殿下には俺からも伝えておこう」
「お兄様もありがとうございます」
王太子殿下にはウィル様からも報告があるだろうけどね。
私はウィル様とキース様と…ってウィル様の執務室にみんな集まってもらえばいいっか。
*
裁判するより面倒じゃないかって? それがそんな事ないの。だって…
私達の計画はこうだ。
・まずは贅沢品の甘味から。
メープルシロップと甜菜砂糖をフラワー商会に卸さない。一応まだ岩糖の需要もあるし、必要最低限はそっちから手に入れられる。
キース様も迷惑を掛けられたから、問題なく了承してくれた。
・次は醤油。
これも私が使用法を伝えなきゃ、隣国みたいに毒扱いだったかもしれない。それに数年前までなかったものだから、なくたって困らないでしょ。
でも醤油はまだ王太子殿下の手から離れていないの。流石に全く卸さないっていうのは出来ないので、うちの縁戚が営んでいる商会が大量買いすることにした。
・次はチョコレート。
カカオ輸入の責任者は母方のお祖父様。しかもカカオからチョコレートにする加工は、お母様の実家の伯爵領内のみで行っている。
ふふ。話を聞いたお祖父様と叔父様は、お願いする前にチョコレートを卸さないって怒ってくれたそう。
・それからドライフルーツとジャム。
これもフラワー商会に卸さないの。ジャムはメープル伯爵領だし、ドライフルーツはハービー子爵領だから全く問題ない。ノエルとはタイミングだけ合わせたわ。
・そして次は塩と豆腐関連。
砂糖同様、岩塩があるので必要最低限の塩は手に入れられる。加工前の大豆は卸すけど、豆腐や豆乳、おからや湯葉は卸さない。
ジェームズ様も迷惑を掛けられたしね。
にがりは元々宰相の領地にしか卸してないし、海水から塩を取るのにお父様が資金援助をしたからか、辺境伯は軽く了承してくれた。
・そして最後はお米。
といっても国内への普及はまだまだなんだけど、前世日本人のローズの希望なのか、フラワー商会には卸していたの。お米はウィル様案件なので言わずもがな。
そうやって上位貴族がこぞってフラワー商会に卸さなくなればどうなるか。何も言わなくたって、フラワー男爵との関わりを減らす貴族、関係を断つ商会が出てくるのだ。
困った男爵は私達に謝罪に来るだろう。そして相当頭が悪くなければ、爵位返上で許しを請うはず。
ね? 証人を集め、証言を頼んでいくより簡単でしょう?
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※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
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