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しおりを挟む「………」
「………」
……そういやガキは嫌いだって…
無言のまま園児を見下ろしている彼を見て、慌てて間に入ろうとした。
と、その時。
「すごーい!!」
「?!」
どこから出したのか、早川はキャンディを持っていた。
棒付きのそれを渡された園児は、目をキラキラと輝かせる。
「まほうみたい…」
……て、手品?
「持ちネタさえありゃ、大抵はなんとかなんだよ」
ガキは単純だからな、と早川。
「ちなみに合コンでも使える」
「………」
「こどもだましね、」
唖然としていた俺は、その冷静な声に振り返る。
「りおんちゃん、」
「……それは失礼、」
すっと差し出されたのは、どこからともなく現れた一輪の花。
「ありがとう」
早川からそれを受け取った彼女は、大人顔負けの笑みを浮かべた。
「……てか、どんだけ仕込んでんだよ…」
「やっぱ一筋縄じゃいかねーな、最近のガキは」
そんな早川の言葉に、俺は笑った。
そしてあっという間に一週間が過ぎ、体験学習は終わった。
別れ際にりおんちゃんは泣きながら、またおりがみおしえてねと言った。
……いい子だったな、
他の園児たちとも一緒に折り紙やかくれんぼをして以来、随分仲良くなった。
毎日いろんな事をして、沢山遊んだ。
……みんな、いい子たちだった
やっぱり子どもっていいなと思う。
素直で純粋で、嘘がない。
保育士という仕事は、自分が想像してるよりもずっと大変なんだと思う。
実際に仕事をしてみたら、楽しいとか可愛いとか、そんな事を思う暇もないのかもしれない。
でも、きっとそれ以上にやりがいがある。
いろんな出来事を思い出しては感極まってしまい、なかなか完成しなかったレポートの期限は今日までだった。
居残りをしてなんとかそれを書き上げた俺は、職員室に向かった。
そしてドアを開けようとしたその時――かすかに、声が聞こえた。
……早川?
半分開いたドアから、そっと中を覗く。
「……困ります、」
「いいだろ、飲みに行くくらい」
……あいつ、確か…
学年主任の原田だ。
控えめだけど嫌がっている素振りを見せる早川に対し、原田はかなり強引だった。
「それとも、俺の誘いにはのれないって?」
「………」
何も答えない早川。
彼の腰にまわされた原田の手の動きが、なんだか怪しい。
「……やめてください、」
「そう言うなよ、」
なんだかもう見ていられなくて、勢いよくドアを開ける。
「先生!」
二人は驚いたように、俺の方を見た。
「……あ、レポート…持ってきたんすけど、」
廊下に出ると、早川は小さく息を吐いた。
「……あの、今のって、」
「………。気にすんな」
早川は表情を変えずに言う。
「で、レポートは?」
「てか、なんで抵抗しないんすか」
痴漢はあんだけボコボコにしたくせに。
「……上司を殴るバカがどこにいんだよ」
「けど…!」
つい声を荒げた俺に向けられたのは、冷たい表情だった。
「大人には大人の事情があんだよ」
ガキは引っ込んでろと早川は言い、俺の手からレポートを奪い取るとさっさと廊下を歩いていく。
「……っ、」
……なんだよ、それ
何も言えずに後ろ姿を見送りながら、俺はぎゅっと拳を握りしめた。
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