迷子猫(BL)

kotori

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第2章

12.海斗side

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「やっぱ街で買い物とかしておしゃれなカフェとか行って、飯は…」

目をキラキラさせている裕太の隣りで、良平がうんざりした顔をした。

「まじうざい殺したい」
「やだよデートするまで俺絶対死なねー!!」
「てゆうかうるせえおまえ」



昼休み。
俺と良平は弁当を食いながら、裕太のデートプランを一緒に考えてやっていた。

「……てかあいつ、たぶんそんなんより公園で散歩する方が好きそう」

裕太が持ってきたガイドブックをぱらぱらと捲りながら言う。

「ええ?そうなの?」
「メシもそんな気張んなくていいって。あ、あいつラーメン好きだぜ」

デートでラーメンはないだろ、と良平。
だけど美咲は今でこそ多少女の子っぽくなったけど、基本は体育会系だ。
細いわりによく食べるし。

「じゃあさ、映画とかは?!」
「ん―…B級ってゆうか、すげえくだらねえやつが好きだった気がする。あと、お笑いのライブとか」
「………」
「……意外すぎる!!でもそれはそれでなんかイイかも!!」
「……とりあえずあんま金はかかんねぇな。てか海斗さぁ、まじでなんもなかったの?」

詳しすぎじゃね、と良平。

「塾が一緒だったんだよ」
「にしてもさぁ…この間あの子が学校に来た時も」
「あああどうしようう緊張するううう!!」
「うるせえええ!」

悶えている裕太の頭を、良平がごんと殴る。

「いだぁぁぁぁ!!」
「……てゆうか良平、さっきから何イラついてんの?」
「はぁ?別にイラついてねえよ」

けどなんか、いつもと違う気がする。

「もうコイツの面倒を見なくていいと思うと清々するよ」

良平のにこやかな笑顔に、ひっでえええと裕太。

「真顔だし」
「本心だし」
「……わかった俺、これからはできるだけ良ちゃんに甘えないようにするよ…でもあとで数学と英語のノートは貸して」
「……どのへんがわかったんだよ」
「あ、俺現国頼むわ」
「………」

はぁ、と良平が大きな溜め息を吐く。

「……二人とも今回までな」
「良ちゃん大好き!美咲ちゃんの次に!」

抱きつく裕太をウザがる良平。
そうそう、こいつらはこうじゃなきゃ。




 
「腹減ったあああ」

バイト先のロッカールームに入ってくるなり、上原が言った。

「お疲れっす」
「ほんとだよマジでお疲れだよ…」

そうぼやきながら、近くにあったパイプイスを乱暴に引き寄せる。
上原のダルい、は口グセみたいなもんだけど、今日は本当に疲れた顔をしていた。

「メシ、食ってないんすか?」
「最近食欲ないの、俺」

……さっき腹減ったとか言ってなかったかこの人

金髪にピアスだらけの耳、だらしのない話し方と適当な性格。
容貌も中身も、とても三十近い男には見えない。

世の中には様々な人間がいる事を、バイトを始めてから実感した。
学校にも色んな奴がいるけど、やっぱり気が合う奴とばっかり一緒にいるようになるし。
でも、社会に出るとそうはいかない。
気が合っても合わなくても、好きだろうが嫌いだろうが否応無しに関係を作る必要性がでてくる。
正直めんどくせぇな、と思うこともあるけど。
そんな関係のなかで気づくことも多い。

たとえば上原はたしかにいい加減だし仕事はよくサボるけど、他人のミスをさりげなくフォローしてくれる事もある。
前に俺が早退した時も、店長に上手く言い訳してくれた。
後で礼を言うと、おまえがクビになったら俺が困るじゃんって真顔で言われたし、まぁそれが本音なんだろうけど。

合う合わないは別として、本当に悪い人ってそういないのかもしれない。
働くっておもしろい。
たくさん発見がある。

「……寺やんさー、彼女とかいんの?」

上原は煙草に火をつけながら、不意にそんな事を言った。


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