短編集(2)(BL)

kotori

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きらきら

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「……それって、どういう」

本村さんは茫然としていた。

「………。勝手なこと言ってるって、わかってます」

そもそも"こういう関係"を求めたのは俺だ。
それに俺たちは別に、つきあってるわけじゃないし。

「けど言ったじゃないすか、待っててって」

そんなこと言われたら、やっぱり期待するし。
それでますます好きになって、ちょっとした事で一喜一憂して。

……バカみてぇ、まじで

「……俺、本村さんといると駄目になる」

周りが見えなくなって、自分を見失って、取り返しがつかないようなミスまでして。
そしてそれをこんなふうに人の所為にしてしまう自分の弱さが、情けなくて仕方がない。

「ガキみてぇな嫉妬するし、そんなん気にしてもしょうがないってわかってんのに…」

それでも早く近づきたいって、ちゃんと理解できるようになりたいって。
だけどそう思えば思う程うまくいかなくて、追いつくどころかどんどん遠ざかってしまう。

……だったらもう、いっそのこと



「……田上くん、」

その声に、びくりと肩が震えた。

「田上くんが本当にそう思ってるなら…俺にはどうする事も出来ないけど」

でもね、と本村さんは言った。

「田上くんは、俺を救ってくれたんだよ」

……え、

思わず顔をあげると、俺の前に座る本村さんは寂しげな笑顔を浮かべていた。

「俺はね、なんかもう色んな事を諦めてたんだ。夢とか人生とか、そういうの」

そう話す彼は、ここではないどこか遠くを眺めるような眼をしていた。

「自分がした事に後悔はないよ。だけどやっぱり思う事はあるんだ。他に、何か方法があったんじゃないかって…そしたらもっと違う結果になったんじゃないかって」
「………」
「だけどね、田上くんを見てたら…俺も前を向こうって思えたんだ」

だってきらきらしてたから、と言って本村さんは笑った。

「……きらきら?」
「うん、きらきら。だから俺も、そうなりたいなって」

本村さんの手がそっと、包帯が巻かれた俺の手に触れる。

「……他人から見れば、ろくでもない人生なのかもしれない。でも俺は、君に会えた」



「田上くん、俺は君が好きだよ」


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