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しおりを挟む夕方、学校から出ようとして雨が降ってる事に気づいた。
しかも結構ひどい。
「さいあく…」
ぽつりと呟く。
ただでさえ落ち込んでたのに、更に追い打ちをかけられた気分だった。
傘を買うにも購買はもう閉まってたので、近くのコンビニまで行くしかない。
仕方がないので、パーカーのフードを被って雨のなかを走った。
冬の雨は冷たくて、身体は芯まで冷えきって、なんだか心まで凍えてしまいそうだった。
と、その時。
「ヒロ、」
振り返ると、そこには西が立っていた。
「……え、なんでいんの」
「なんでって…コンビニの帰り?」
「……メシ?」
「や、煙草」
西はそう言うと、入れば、と自分の傘を差し出してくる。
「………」
「………」
一つの傘に男が二人っていうのはなかなかキツい。
サイズ的にも、見た目的にも。
「やっぱ傘、買ってくるわ」
「いいじゃんこれで。大体そんだけ濡れてたら、あんま意味ないっしょ」
「でもおまえまで、」
「いいからいいから」
早く帰ろう、と西は言った。
「……今日さ、」
「うん」
「寸評会だったんだ。公募展の」
「うん」
「結構、頑張ったんだ」
「うん」
「けど、前とおんなじ事言われた」
「……そっか、」
西は特に何も言わなかった。
ただ隣りを歩きながら、俺の話を聞いていた。
「なんかさ、このままでいいのかなって」
「うん」
「少しでも俺、前に進めてんのかなって」
「うん」
その時ふと、気がついた。
西は普段、煙草はカートンで買う。
しかもわざわざ買いに行くのが面倒だからと、外に出たついでにまとめ買いする。
そして俺の記憶が正しいなら、ストックはまだあった。
「……あのさ、もしかして」
「部屋に帰ったら、」
「……え、」
「風呂沸いてるから。先に入れば」
「……うん、」
その何気ない西の言葉に、無性に泣きたくなったのはなんでだろう。
「今日の晩飯、何がいい?」
「鍋じゃん、やっぱ」
「了解」
まぁ結局、泣かなかったけど。
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