sweetly

kotori

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後編

24

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「……先輩…怒ってる?」
「話しかけんな」
「……ごめんなさい」
「ぜってぇ許さねえ」

昼休みの屋上。
俺の前でしゅんとして正座している季一。

「……だって我慢できなくて…」

だからって身体じゅうにキスマークつけるってどうなんだよ!!

「なんでこんなクソ暑いのに体育でジャージ着なきゃなんねぇんだよっ。俺は日焼けを気にする女子か!」

しかも調子こいて3回もヤるとか死ぬっつーの!!

「(先輩のジャージ姿っ…)だってずーっと我慢してたんだよ?…家に泊まり行った時もラブホん時も」
「……腹も痛えし!」

ただでさえいろんなとこが痛いのに!

「それはその…やっぱナマでしたかったっていうか…うう嘘ですすみませんでしたああ!」
「許すわけねーだろ、もう二度としねえ」
「ええええええ?!」
「うるせえええ!」
「ち、ちょっと待って?!ほら、俺も余裕なかったっていうかっ……え?」

半泣きだった季一がきょとんとした顔をする。

「……コレ…」
「………」

それは見慣れた、弁当箱。

「……え、もしかして」
「……食えば?」

それはナミエさんがくれたレシピをもとに、初めて作ったお弁当。

「……っ先輩っ」
「ウザいくっつくなっ…ってか、泣くんじゃねえよ!」
「だっ、だって…」
「……おいしくないかもしんないけど…」

見栄えも全然よくないし。

……料理って案外、難しいんだな…

そんなことを思っていると、いきなりがばっと抱きしめられてぎょっとした。

「……おいっ!」
「ありがとう」
「……っ」

なんだか恥ずかしくなって、季一の肩に顔を乗せて空を見上げる。

「……大好き、要」
「………」

俺もって言おうかどうか迷ったけど、やっぱり恥ずかしかったからやめた。

「……バカ」

かわりにその広い背中に手をまわす。



青い空には、一筋の飛行機雲。
俺たちが向かう先には、何があるんだろう。
本当に、ずっと一緒にいられるのかな。

「……先輩、」
「……なに、」
「勃っちゃった」
「……死ね」

俺は笑いながら、そのどうしようもない恋人を突き飛ばした。



end.
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