手をつないで(BL)

kotori

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お正月編

2

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>>巽side.



……ちょっと落ち着け、俺…

煙草に火をつけて、テレビをつける。

……動揺しすぎだろ…

コンビニに行ったままなかなか帰ってこないから電話したら、出ねえし。
迎えに行ったら、知らない男と楽しそうに歩いてるし。

「………」

……それにあの瑛って男…

そんな事を考えていると、床に転がっていた淳ががばっと起きあがった。

「……巽!」
「ん?」
「……俺とえっちしたくないですか!!」

さすがに驚いて、煙草を落としそうになった。

「……おまえ、したいの?」
「うん!!」

……こいつ…

「……なんかおまえって、ほんと残念な奴だよな…」

思わず吹き出すと、淳は顔を真っ赤にして言った。

「……できなくても、いいよ。俺、それでも巽が好きだから…巽だけだから」

必死な顔でそう言って、しがみついてくる。

……ああもう、こいつほんとに…

ぎゅっと抱きしめて、いい匂いがする髪に顔を埋めた。

「……バカ」



俺だってほんとは、自分のものにしたい。
今すぐにでも。

……けど、俺だって不安なんだよ

淳を傷つけたくない。

……ようやく、両思いになれたのに

淳は知らない。
俺が今まで、どんなに悩んできたか。



淳の事をそういう対象として意識したのは、高校に進学してからだった。
まさか淳が男とつきあうようになるとは思わなくて、でもそうなってから初めて気づいた。

淳が好きな男の話をするたびに、苛々した。
その男の前で、俺の知らない顔をする淳の事を想像するだけで堪らない気持ちになった。
俺がいないと駄目なおまえでいろよ。
そんな理不尽な事まで思ったりした。

それにやっぱり俺自身、同性を好きになるっていう気持ちを認めたくなくて。
幸運な事に女で不自由はしたことはなかったから、色んなタイプとつきあってみた。
でも結局、どれも長続きはしなかった。

ずっとごまかしてきた気持ちが溢れたのは、淳があの浮気野郎の元に戻ろうとした時。
もう絶対、行かせたくなかった。
一番大切にしてくれる奴にしろって、よく考えたら俺告ってんじゃん。
いい加減、気づけよ。
あの時俺は、そう言いたかったんだ。
なのにあいつは…。
俺の手を振り切って、行ってしまった。

……違うか、

確かに淳を傷つけたくないって思うけど、でもそれよりも。

……俺は自分が傷つきたくないんだな…

もしそれが原因で、淳が自分から離れていったら。
また、他の男のところへ行ってしまったら。
きっと耐えられないから。



「……巽?」
「……しよっか」
「……え、」
「俺もおまえとしたい」

そう言うと、淳の細い身体を抱き上げた。



淳の身体は、同じ男だとは思えないくらい綺麗だった。
でももちろん胸は平べったいし、女にはないモノもちゃんとついてる。

「……んっ…」

薄いピンク色の乳首を口に含むと、淳は艶めいた声をあげた。

「……たつ…み…っ…」

潤んだ目で見つめられて、もうそれだけでどうしようもなく興奮してしまう。
実践したことはなかったけど、一応ネットで調べた知識をフル活用して、とにかく淳が気持ちよくなれるように愛撫を施した。

「んっ、ああっ…」

ソレに触れる事には、さほど抵抗がなかった。
まあ、他の男のモノなら絶対無理だけど。

「……気持ちいいか?」
「…う…ん、…あ、やっ…!」

ヒクヒクと細い身体が震えて、淳は背中に爪をたてた。

「……あ…も、ムリ…っ!…あ…っ!」

掠れた声と同時に、達する。
白濁の液体が、俺の手を濡らした。

「……た、つ…」
「……俺もムリ」
「……え…」

淳の表情が不安げに揺れた瞬間、濡れた指をそこに挿れる。

「ひっ…あ!」

小刻みに震えていた身体が跳ねた。

「…あっ、あ、巽っ…!」

淳のなかは狭くて熱くて、トロトロしている。

「……挿れるな、」

そう言うと、淳の返事を待たずに猛りきった自分のモノをそこに押しつけた。

「…!はあっ…!あ、たつ…っ!」
「……っ!」

無意識に逃げようとする淳の腰を持ち上げて、ぐいぐいと強引に奥へと押し進める。

「あ、ああっ!」

上気した淳の頬を、涙が伝った。

「たつ…みっ、たつ…」

……やべえ、なんだよコレ…

あまりの気持ちの良さに、理性が飛びそうになる。
こんな事は初めてだった。

「……す、き…っ、巽っ…」

うわごとのように呟いて、俺の頬に触れる淳の手。

「……淳」

こみあげてくる愛しさと、ようやく一つになれた幸福感で胸がいっぱいになる。
身体を起こしてくる淳を抱きしめて、俺も、と耳元で囁いた。

「……おまえが好き」

誰よりも大切だから。
もう絶対、離さない。



 
「……ところでおまえ、なんであんなとこにいたの?」

煙草を吸っていると、ベットの上で淳が言った。

「おまえが戻ってこねえからだろ。電話出ねえし」
「え、うそ。全然気づかなかった」

そう言って、こたつの上にあった携帯に手を伸ばす。

「あ、ほんとだ。もしかしてそれで心配して来てくれたの?」
「……どっかで殴られてんじゃねえかと思って。…したら、男とベタベタしながら歩いてるし」
「ベタベタって…別にしてねぇし!」
「えらく楽しそうだったじゃねぇか」
「だって瑛兄は…あ、そういえばお年玉貰ったんだよ!おいしーもんでも食いにいこーぜ!」
「……だってって、なんだ?」
「俺、中華食いたい」
「おい、」
「巽は?」
「……中華でいいよ」
「じゃあ明日は横浜な!」
「明日は寒いからヤだ。てか、だってってなんだ!」

そんな事をぎゃあぎゃあ言い合っている間に年が明けた事に、まったく気づかない俺達だった。



end.
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