手をつないで(BL)

kotori

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anniversary編

2.コウタside

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「ごめん、待った?」
「や、俺も今来たとこ」 

放課後待ち合わせた場所は、駅前の銅像の前。
俺が少し遅れたにも関わらず、リクくんは笑顔で言った。

「行こっか」
「うん…」

リクくんは元々あっちゃんの友達で、文化祭の時に知り合った。
メールしたり電話で話すうちに仲良くなって、今ではこうやって二人で遊んだりもする。

「………」
「なに?」
「あ、ううん」

慌てて首を振る。

……どうしよう、どきどきする…



いつからそんなふうに意識するようになったのか、それはよくわからない。
ただ初めは一緒にいると楽しいと思うだけだったのに、いつの間にか次に会う日を心待ちにしている自分がいて…その気持ちに気がついた。
あっちゃんから何気なく聞き出した情報によれば、彼女はいないみたいだけど…。

……リクくん、かっこいいし…

それに話しやすいし優しいから、絶対女の子に人気があると思う。
共学だって言ってたし…。



「あのさ、」
「……え?!」

ぼんやりしていた俺はハッとする。

「あ、いや。俺、コウタと行ってみたいとこがあるんだけど…」
「え、どこ?」

と、その時。

「……リク?あんた何してんの?」

その声に振り返ると、そこには綺麗な女の人が立っていた。

「げっ…なんで、」

リクくんの顔がひきつる。

「ちょっと何その態度、お姉様に向かって」

……お、お姉さん?!

「こっ、こんばんは…」

慌てて挨拶すると、お姉さんはにっこりと笑う。

「こんばんはぁ」
「……てか、そっちこそ何してんだよ」
「えー、待ち合わせ?クリスマスだしー」

お姉さんは携帯を弄りながら言う。

「あんたこそ何してんの?今年は麻里ちゃんと一緒じゃないんだー?」

……マリちゃん?

「なんで麻里がでてくんだよ」
「あは、もしかしてフラれたのー?」
「はぁ?」

にやにや笑いながらお姉さんが言う。

「だって、去年はうちに泊まってたじゃん」
「いや、あれは」
「最近もちょくちょく遊びに来てたみたいだしー?」
「だからそれは…てかなんでおまえが知って…、」
「ママ情報ー?」
「あんのババァ…」

余計なことを、とリクくんが唸る。

「あ、あの…っ」

一人会話から取り残されていた俺は、ようやく口を開いた。

「俺…、帰るね」
「え?」
「ごめん、ちょっと用事を思い出して…」

なんとか笑顔をつくり、じゃあねと言って足早にその場を離れる。

「コウタ、」

後ろからリクくんの声が聞こえて、俺は走りだした。



どれくらい走っただろう。
駅から離れて人もまばらになった路地で、息を切らしながら膝に手をついた。

「……っ、」

……絶対、変だと思われた…

でも我慢できなかった。
あれ以上二人の会話を、聞きたくなかった。

……バカみたいだ…

イブに遊びに行こうって誘われたからって、期待なんかして。
昨日の夜は、なんだか緊張して眠れなかったりして。
勝手に一人で勘違いして、舞いあがって。

「……ほんと、バカ」

そう呟いたと同時に、ほろりと涙がこぼれ落ちた。


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