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小話(2)
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しおりを挟む恋ってもっと、きらきらしてるものだと思ってたんだ。
ふわふわしてて、あったかくて。
「それって熱でもあんじゃねぇの?」
その人のことを考えるだけで、なんだかドキドキして。
「不整脈?」
時々、胸が痛くなったりして。
「病院いけよ」
他のことを考えられなくなる。
「それで期末の追試が決定したわけだ」
別に映画や小説のヒロインみたいになりたい、なんて思ってないけど。
「ヒロインて…そもそもおまえ男だろ」
ただそんなふうな恋をしてみたいって、憧れてるだけなのに。
「……俺じゃ、ダメってこと?」
「……は?」
机の上に広げられた教科書の文字が、ぼんやりと滲む。
「……淳?」
「………」
せめて、心変わりだったならよかったのに。
それなら仕方ないって、思えたかもしれないのに。
あの優しい笑顔も、甘い言葉も、嘘じゃなかったって思えたかもしれないのに。
そしていつかは、綺麗な思い出にできたのかもしれないのに。
……遊びだった、とか
「……バカみてー…」
「………」
映画や小説のヒロインみたいになれるとは、思ってないけど。
でもこんなに報われない役ばかりまわってくるっていうのはどうなんだ。
―――
「……おい、」
「……あぁ?」
夜の繁華街。
それまでケバい女と楽しそうに話していた男の顔を、思いきり殴りつける。
「……っ!いきなり、何す…」
呆気なく地面に転がる男。
連れの女の悲鳴がうるさい。
俺はかなりシラけた気分で、そいつの情けないツラを見下ろした。
……ったく、なんでこんな奴に惚れてんだよ
馬鹿が、と呟く。
「……おいてめぇ、」
「な、なんだよ」
「今度あいつに近づいたら、ぶっ殺す」
じんじんと痺れる拳。
だけどもっと痛いのは多分、あいつの心で。
そのことにまた、どうしようもなく腹が立つ。
小さく舌打ちすると、俺は未だ茫然としている男に背を向けて歩きだした。
きっとまだ部屋で泣いているだろう馬鹿な幼なじみに、なんて声を掛けようかと考えながら。
end.
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