九尾の狐、監禁しました

八神響

文字の大きさ
42 / 117
二章 混ざり怪編

十話

しおりを挟む
「さあ、朝食も食べ終えたことですし、勉強の時間ですよ」

 三人が朝御飯を食べ終わって30分もした頃、ハクは自室から大量のプリントを持ってきて、それを机の上へと置いた。

「……いや、気が早くないか? 磨も色々環境が変わって疲れてるだろうし、今日くらいは勉強しなくても……」

 ソファーに座ってテレビを見ていた大黒は、ハクが持ってきたプリントを見て少し引き気味になりながら口を出す。

「甘いです。そうやって先伸ばしにする癖がついてしまったら、貴方みたいな怠惰な人間になってしまいます」
「まあ、それは否定しないけどさ……」

 大黒も自分を模範的な人物だと思っていないため、ハクの言葉を素直に受け入れる。

 だが、机に置かれたプリントの束をパラパラめくって内容を確認すると、途端に顔に渋味が増した。

「……なぁ、ハク」
「なんですか?」
「一応聞くけどこれって磨のために用意した問題なんだよな?」
「ええ、むしろそれ以外に何があるというんですか」
「俺としてはそれ以外の何かであってほしいから聞いたんだけども」
「?」

 要領を得ない大黒の言葉にハクは疑問符を浮かべながら首を傾げる。

 ハクが持ってきたプリントには国語、数学、英語、理科、社会といった基本五課目の問題と解答が、それぞれ五十部ずつ印刷されていた。

 今まで勉強をしてきたことがない相手に初日から渡す量、というより見せるべきですらない量なのだが、大黒が渋面を見せているのはそれとはまた別の内容からであった。

 その内容がハクにもちゃんと伝わるように大黒は明確に言葉にすることにした。

「俺の見間違いでなければ小学生レベルの問題なのはどれも最初の数枚だけで、その後はどんどん難易度が上がっていって最終的にはもう専門家レベルの問題になってるんだけど」
「…………私としては、これから磨が生きていくのに際し必要になるであろう知識分しか問題にしてなかったつもりなんですけど」

 しかしそれでもまだピンときていないハクに、大黒は思わず大声になってしまう。

「いやいやいや! これから磨がどういう人生を送るにしてもこれらの知識を全て使うことは無いぞ!?」
「なんですかなんですか。そんなに言うのならどこが駄目なのか言ってみてくださいよ」

 不満げな顔で腕を組むハクに、大黒はプリントをいくつか抜き出して、それぞれの教科の問題点を一つ一つピックアップしていく。

「じゃあまず国語! 五ページにも渡る原文ママの論語! しかも何故か問題文まで漢文!」
「ろ、論語には人生の役に立つ言葉がいっぱい書かれていますし……。問題文が漢文なのは、少しでも漢文に慣れさせるためで……」
「日本語も勉強途中な小学生にやらせることじゃない! 次数学! 意味のわからない証明問題の羅列! 今度は日本語の問題文のはずなのに何を言ってるか全く分からない!」
「それは貴方の勉強不足では……」
「そうだよ! 勉強途中な文系の俺にも一目で超難問って分かるレベルなのが問題なんだよ! 次英語! 超長文! その上見たこともない単語がいっぱいあるし、絶対一般人向けの文章じゃない!」
「ああ、それは海外で発表されている医療系の論文から抜き出してきました。英語を勉強しながら医学も学べますし一石二鳥かと」
「これじゃあ一鳥目すら落とせないんだよ! 次理科! なんか宇宙の話してる! 理科の範疇を超えてる!」
「延長線上にはあると思ったので……」
「だいぶ先のな! 最後社会! 細かすぎる法律の問題! 六法全書でも覚えさす気か!」
「いずれは……」
「覚えさす気だったんだ!? ていうか何よりも問題なのは、このプリントの山にあるのが問題文と解答だけで解説の類が一切無いことだ!」
「? 答えさえ見れば解き方は分かるでしょう?」
「常識が通じねぇ……!」

 自然と天才的な発言をするハクに大黒は頭を抱えて叫ぶ。

 まだ言いたいことはあった大黒だったが、とりあえず五教科分の問題点を言い終わったので、一旦プリントを置き冷静になる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...