九尾の狐、監禁しました

八神響

文字の大きさ
90 / 117
三章 壊れゆく日常編

十三話

しおりを挟む
「……私も分かっています。私のせいで私の周りは不幸になる。貴方がいつも傷ついているのも、磨が死んだのも、原因は全て私にあります。だから本当なら貴方が責めるのは自分じゃなくて私のはずなんです」
「別に、ハクが何かしたってわけでもないのにハクのせいって言うのはおかしいだろ。ハクに何かしようとしてる奴がたまたま多いだけだ」
「いいえ、私は今までの歴史の中でそれだけのことをしてきたんです。その辺りのことは貴方と出会った日にも話したでしょう?」
「…………」

 言われて、大黒はハクと初めて会った日に聞いたハクの過去のことを思い出す。
 時の王達の乱心を引き起こすハクの性質、そして王を諌めなかった自分を共犯だと告げたハクの言葉。
 きっと大黒がどれだけ言葉を尽くしても、そのことに対するハクの罪の意識は消えない。それが分かっていた大黒はそれ以上何も言うことが出来なかった。

「……私は怖かった。私のせいで貴方が傷つくことではなく、私のせいで貴方が変わってしまうのではないかということが怖かった。あの人達みたいに、私以外はどうでもいいって言うようになるのではないかといつも不安でした。どうしようもない状況でも子供を救えなかったことで心を痛められる優しい人……、私はそんな貴方に変わってほしくありません。――――貴方は私と一緒にいるには甘すぎます」

 ハクは泣きそうな顔で笑う。

「……ハク。まさかこのまま別れる、なんて言い出さないよな?」

 自分と一緒にいたら大黒は変わってしまう。だから自分はもう大黒と共には歩めない。
 そんな別れ話を切り出されるのではないかと、大黒は不安になる。
 だが、ハクは大黒の不安を消すようにゆるゆると首を振る。

「少しだけ、そう考えていた時期もありました。ですが、私は貴方が思っているよりもずっと我儘なんです。好きになった人から身を引くなんて私には出来そうもないんです。だから貴方も私のことが好きなのならここで誓って下さい」

 ハクは両手で大黒の頬を挟み、大黒と真正面から向き合う。

「私の大切に思っているものは私と一緒に守って下さい、貴方の大切に思っているものは私も一緒に守ります。私に害をなすものから私を遠ざけて下さい、私も貴方に害をなすものは貴方に近づけさせません。いつか私が変わってしまった時は貴方が引き戻して下さい、貴方が変わってしまった時は私が全力で貴方の目を覚まさせます。共に助け合って、共に支え合って、共に泣いて、共に笑って……そうやって私は優しい貴方と一生を過ごしていきたい。……それが私の幸せです、貴方は私を幸せにしてくれると誓ってくれますか?」

 プロポーズとも取れる言葉を出したハクの瞳は、とても真っ直ぐとは言えなかった。
 不安に、期待に、怯えに、自信に、様々な感情で揺れていた。
 そして揺れていたのは瞳だけではなく、大黒に触れている指もハクの意識していない内に震えていた。

 その震えを直に感じていた大黒は、悩む間もなく答えを出す。

「誓う。俺はハクが好きだ、そしてハクが今の俺を好きだと言ってくれるのなら、俺は今の俺のままでハクと一生を添い遂げよう。変に気負わず、自然体のままでハクの傍に居続けるよ。……だからそんな泣きそうな顔をしないでくれ、俺まで泣きそうになる」

 大黒はハクを強く抱きしめる。
 自分の存在をハクに刻みつけるように、ハクの存在を自らに焼き付けるように。
 ハクの傍から離れないということを、言葉だけではなく行動でも示した。

 その想いは、ハクにもちゃんと伝わっていた。

「……さっきも言いましたが私は我儘ですよ?」 
「今日まで知らなかった、これからは遠慮せずもっと言ってきてくれ」
「……今までよりも、もっと沢山の不幸が貴方にふりかかるかもしれません」
「ハクと出会ってから、俺は自分を不幸と最も縁遠い人間だって思ってる」
「……きっと辛い思いをすることになります」
「万が一、辛い思いをしたとしてもハクと一緒ならきっと乗り越えれるさ」
「……ふふっ、そうですね。私も貴方と一緒なら乗り越えられる気がします」

 大黒の想いに応えるようにハクも大黒の背中に手を回し、ぎゅっと力を入れる。

「いつか、貴方の過去も教えて下さい。貴方にとっては忌々しいものかもしれませんが、貴方が私を知りたいと言ってくれたように私も貴方のことを知っておきたいんです」
「聞きたいなら今から話してもいいけど、……聞いてて楽しい話じゃないぞ?」
「ええ、でしたら余計に。貴方の背負っているものを一緒に背負って、私もこれからを生きていきたいので」
「あー……じゃあどこから話そうかな……」

 二人はお互いの体温を感じながら、今まで話せていなかったことを話し出す。

 そこには遠慮も壁もなく、お互いのことを想い合っている二人の男女だけがあった。
 長い、長い話をしながら、二人はこの相手と一生を過ごしていこうと改めて心に誓う。
 誰よりも大切な目の前の相手といつまでも――――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...