2 / 21
一章 追放
第2話 屋敷でも追放
しおりを挟む
「ローズマリー。貴様との婚姻関係は破棄だ。今すぐ二人の子供を連れて出ていけ!」
はあ、そうですか。それはそれはありがとうございます。
私は心の中でそう思ったのですが、そんなことは顔には出さないようにして夫の顔を見つめていました。
大好きだった主人が事故で亡くなって2年。
信じていた義叔父に裏切られ伯爵家を乗っ取られたのが1年前。
そのまま今の夫の所に側室として嫁がされたのが半年前。
夫は私の見た目の幼い容姿が気に入らなかったのか、手の一つも出さずに今に至る。
「モンド家の血を引いたガキなら、何らかの能力やギフトが授かると思っていたが、なんだヤツの『ルゥ』とかいうふざけたギフトは! 俺のダンジョンと領地に降りかかる災難じゃないか! お前たちは厄災だ! 早く領地から出ていけ!」
ワーワーワーワーうるさいですわ。どうやらダンジョンで倒した魔物のドロップ品が全て土塊になったのが、ルーデンスのギフト『ルゥ』のせいだって言いたいのね。ボスのドロップまで土塊になったのですって? まあ、いい気味ですわ。
粗野で横暴な今の夫とその周辺。とっとと出ていきたいと思っていたのですわ。
……とは言っても病弱な娘を連れて、貴族の生活もできない平民として私はどう生きたらいいのでしょうか。
体を売ってまで生きていくことはしたくありませんわね。
とにかく今は持てるだけのお金を……夫の隠し財産のある場所からばれない程度もらっていかないと。
元夫の形見のマジックバッグ。この世にいくつあるか分からない希少品。
ばれないように使ってきたけど、今回は役に立ちそうですね。
出ていくために身の回りの整理の時間を一時間だけもらいました。その間にばれないように金貨と宝石をバッグに隠し入れたのです。我ながらよくできました。
◇
カバンの中を調べられましたが、私たち以外には底の向こうに入れたものは取り出すことができないですし、探すことも無理なのです。普通のカバンに入るだけの荷物を隅々まで調べられてから追い出されます。
今はどうしようもありません。ですがルーデンスの事は心配です。とにかくダンジョンに向かわなくてはいけません。
領地から出ていく代わりに、息子を迎えにダンジョンまで連れて行って欲しいと言ったら、「そこで野垂れ死んでもらうのも一興だ」と快く馬車で送ってもらえました。町中にいられるのすら嫌だったのでしょうね。
娘のリューが「ゴホンゴホン」と咳をしています。そのせいもあるのでしょうね。
ダンジョンの前で降ろされ、「明日もいたら殺す」と告げて馬車は去っていきました。
ルーデンスは大丈夫でしょうか。まあその前に私達もピンチなのは変わりないのですが。
とにかく火を。たき火を熾さないといけませんわ。
ゴホゴホと咳き込んで、具合の悪い娘を見守りながら薪を集めます。私は弱いだけの火魔法「ファイア」の呪文を唱えました。
指先にわずかな炎が揺らいでいます。油気の多い針葉樹の落ち葉に火を移して、枯れ枝を燃やしました。
火は尊いものです。獣除けにもなるし暖も取れます。調理をすることだってできるのです。私は調理をしたことはありませんけれども。
ルーデンスがいればきれいな水も手に入るのですが。
あの子の魔法では水はいきなり熱湯になってしまうのですが、冷ませば何も問題がないのです。このような場所ではきれいな水は貴重品です。量はそんなにないけれど生きるためには十分ですね。
私の家系は魔力が弱いのです。戦闘向きではないので生活に役立つように魔法の使い方を考えてきた伝統があります。
戦闘で魔法を使う皆様からは、おかしな目で見られていましたが便利なのですよ。
しばらく待っていると、狼がダンジョンの入り口から出てきました。
これで最後なの? そう覚悟を決めた時、ルーデンスも一緒に現れて狼の頭をなでています。
「母さん、リューまで! どうしたの? まさか!」
ルーデンスが私達に向かって駆け寄ってきました。
「ルー兄さま。よかった」
娘のリュミエルが抱きかかえられたまま安心したのか、泣き出しました。
私も一緒に泣いてしまったではありませんか。
緊張がほぐれ、ひとしきり泣いた後、ルーデンスが経験したこと、館で行われたことをお互いに話しました。狼はフェンリルで友達になったそうです。
「そうだ、これを飲んでみて」
ルーデンスは鍋にお湯を張りました。
「これが僕のスキル『ルゥ』によって出るドロップアイテムなんだ。お湯に溶かすと不思議な飲み物になるんだ」
私はどこかで見たような、不思議な土塊を手に取りました。
「こうして溶かすんだ」
お湯の中に土塊を入れました。ルーデンスがお玉でかき混ぜます。
不思議な、しかし懐かしい匂いが辺り一面に広がります。
「飲んでみてもいい?」
匂いにつられ、たまらなくなった私は、お玉から直接スープを飲みました。
その瞬間、頭の中に音楽が鳴り響いたのです!
『♫VER・モンド家の香麗なルゥ
♫アップル&ハニーも仲良く混ぜ混ぜ
家名! ♫VER・モンド家の・カレー』
懐かしい音楽が頭の中で響きます。ん? 懐かしい? こんな妙な音楽は今まで聞いたことが……? いえ、この曲は……家名はなぜ叫んで言うの? 家名? かめいといえば家の名前……家?……あっ!
その時、頭の中に映像が押し寄せるように流れた。
給食のカレー。
調理実習で作ったカレー。
ファミレスのフェアで食べたタイカレー。
インド料理店のキーマカレー。
カレー専門店でトッピングだらけにしたカレー。
近所の食堂のカツカレー。
レトルトパックのサクランボカレー。
カレーうどん。
カレー南蛮。
カレーパン。
…………。
…………。
…………。
たくさんのカレーの画像と幸せな記憶が再現される。
そして、
お母さん? と作った、普通の、ごくごく普通のお家カレー。
家族で食べた幸せの食卓。
カレーが出た日は、みんなテンションがあがった。
にこにこの笑顔で進む食事風景。
そうだ。カレーを作る時、あの人が必ず口ずさんでいた歌。
あの人? 誰だっけ。お母さんかな、
そこに必ずあったカレールゥの箱には、エントツが長く伸びたお家のマーク[h]が印刷されていた。
思い出した! あたしは麻里。丁香麻里。高校2年生の夏までの記憶があるけど……。もしかしてこの世界に生まれ変わったの? うん。ローズマリーさんの記憶もある。だけど……。今は麻里の人格だよね。それにこれ、カレーだよ。土塊って言っていたのはカレーのルゥ。そうだよね。カレーだよカレー。カレー祭りじゃない!
っていうかVER・モンド家のカレーって! アップルとハニーが混ぜ混ぜして! そのままじゃないの!
勝てる! 生きていける! 聖獣フェンリルまで仲間につけて! これラノベでいうところのチートてやつよね。
こんなかわいい息子と娘。それにカレールゥ。生きていける! 生きていけるよ! 幸せになろうよ!
あたしは大声で笑っていた。
「あはははははははは」
「どうしたの母さん!」
「お母様が、おかしくなった!」
あ、そうね。久しぶりのカレーでテンションが上がりすぎた。子供たちが心配している。
あたしは中身は女子高生の麻里だけど、この子たちにとっては母親のローズマリーなんだよね。心配かけたらいけない。
ローズマリーの記憶も気持ちも体に残っている。ローズマリーは別人とかじゃないんだ。確かにあたしがローズマリーとして歩んだ29年の人生は間違ったものではない。この子たちを思う気持ちは本物だよ。記憶も礼儀作法も倍になったと思おう!
「大丈夫ですよ。ルーデンスにリュミエル。お母様は嬉しくなっただけなのです」
「嬉しくなった? なんで?」
「ルーデンス。あなたのギフト『ルゥ』は素晴らしいギフトです。お母様と一緒に世界を変えましょう」
食の世界を変えることができる! ラノベによくある飯マズ世界なんだよね。
「ほら、このスープを飲むと体が温まるでしょう。カレーに使われる香辛料は薬の代わりにもなる素晴らしい成分を含んでいるのよ。リュミエルも飲んでみなさい」
「うむ。この料理はカレーというのか。儂の魔法に反応して古傷を治しおった。魔力に反応し、怪我や疲れを治すようだな」
聖獣様の解説いただきました! ラノベそのままの世界ですよ!
「辛い! 喉が痛い! おいしくない!」
痛い? 咳で喉が荒れているせいかも。それに子供には辛いのかな? まだ6歳だし。でも食材はこれしかないし。
味が感じられないほど薄めないと口にしない娘は、それでもカレーの効果で少しだけ体調がよくなったみたい。
「明日の朝、見回りに来た者に見つかると殺されるから、すぐにここを離れないといけないわ」
二人にそう告げると、「儂が追い払ってやるぞ」とフェンリルが言ってくれた。
でもあれじゃない? フェンリルなんて見つかるとヤバいよね。
「聖獣様が見つかればそれはそれで大騒ぎになるわ。ルーデンスのギフトに効果があることがばれても大変なことになるでしょう。とにかく他領まで行かないといけないの。最終的には他国まで行かないといけないわ」
そう。ルーデンスのギフトが有能だと分かれば、ルーデンスはこき使われ、私と娘だけが引き離されて追放される。そういうことをやる男だ。
「でもここから街道を通っても、街に着く前に夜になってしまうよ」
「それなら儂が守ってやろう。主を護るのは従者の役目。儂がいれば魔物は近づきはせんだろう」
心強い言葉に私達は感動した。
「ありがとう。でも僕たちは友達だ。主じゃなくルーって呼んで」
「分かった。ルーよ。そしてルーの母君、妹君。儂の事は聖獣様ではなくルナと呼んで欲しい」
「分かった、ルナちゃんね」
「ちゃん付けか。まあよい」
娘が「よろしくルナちゃん」と抱きつきに行った。
「まあリュー。失礼ですよ」
「まあ良い。ルーの妹だから許そう」
優しい目でリューを見ているわ。ルナ様って思ったより子煩悩?
「ありがとうございますルナ様」
「様か、まあ良しとする。母君」
「ありがとうございます。では私の事はマリーとお呼びください」
ローズマリーと麻里。二人の記憶が重なる名前を呼んでもらうことにした。
わたしはこれからこの子たちの母親として、そして日本人の記憶を持った麻里として、二人分楽しく生きていってやる! みんなで幸せになるよ!
はあ、そうですか。それはそれはありがとうございます。
私は心の中でそう思ったのですが、そんなことは顔には出さないようにして夫の顔を見つめていました。
大好きだった主人が事故で亡くなって2年。
信じていた義叔父に裏切られ伯爵家を乗っ取られたのが1年前。
そのまま今の夫の所に側室として嫁がされたのが半年前。
夫は私の見た目の幼い容姿が気に入らなかったのか、手の一つも出さずに今に至る。
「モンド家の血を引いたガキなら、何らかの能力やギフトが授かると思っていたが、なんだヤツの『ルゥ』とかいうふざけたギフトは! 俺のダンジョンと領地に降りかかる災難じゃないか! お前たちは厄災だ! 早く領地から出ていけ!」
ワーワーワーワーうるさいですわ。どうやらダンジョンで倒した魔物のドロップ品が全て土塊になったのが、ルーデンスのギフト『ルゥ』のせいだって言いたいのね。ボスのドロップまで土塊になったのですって? まあ、いい気味ですわ。
粗野で横暴な今の夫とその周辺。とっとと出ていきたいと思っていたのですわ。
……とは言っても病弱な娘を連れて、貴族の生活もできない平民として私はどう生きたらいいのでしょうか。
体を売ってまで生きていくことはしたくありませんわね。
とにかく今は持てるだけのお金を……夫の隠し財産のある場所からばれない程度もらっていかないと。
元夫の形見のマジックバッグ。この世にいくつあるか分からない希少品。
ばれないように使ってきたけど、今回は役に立ちそうですね。
出ていくために身の回りの整理の時間を一時間だけもらいました。その間にばれないように金貨と宝石をバッグに隠し入れたのです。我ながらよくできました。
◇
カバンの中を調べられましたが、私たち以外には底の向こうに入れたものは取り出すことができないですし、探すことも無理なのです。普通のカバンに入るだけの荷物を隅々まで調べられてから追い出されます。
今はどうしようもありません。ですがルーデンスの事は心配です。とにかくダンジョンに向かわなくてはいけません。
領地から出ていく代わりに、息子を迎えにダンジョンまで連れて行って欲しいと言ったら、「そこで野垂れ死んでもらうのも一興だ」と快く馬車で送ってもらえました。町中にいられるのすら嫌だったのでしょうね。
娘のリューが「ゴホンゴホン」と咳をしています。そのせいもあるのでしょうね。
ダンジョンの前で降ろされ、「明日もいたら殺す」と告げて馬車は去っていきました。
ルーデンスは大丈夫でしょうか。まあその前に私達もピンチなのは変わりないのですが。
とにかく火を。たき火を熾さないといけませんわ。
ゴホゴホと咳き込んで、具合の悪い娘を見守りながら薪を集めます。私は弱いだけの火魔法「ファイア」の呪文を唱えました。
指先にわずかな炎が揺らいでいます。油気の多い針葉樹の落ち葉に火を移して、枯れ枝を燃やしました。
火は尊いものです。獣除けにもなるし暖も取れます。調理をすることだってできるのです。私は調理をしたことはありませんけれども。
ルーデンスがいればきれいな水も手に入るのですが。
あの子の魔法では水はいきなり熱湯になってしまうのですが、冷ませば何も問題がないのです。このような場所ではきれいな水は貴重品です。量はそんなにないけれど生きるためには十分ですね。
私の家系は魔力が弱いのです。戦闘向きではないので生活に役立つように魔法の使い方を考えてきた伝統があります。
戦闘で魔法を使う皆様からは、おかしな目で見られていましたが便利なのですよ。
しばらく待っていると、狼がダンジョンの入り口から出てきました。
これで最後なの? そう覚悟を決めた時、ルーデンスも一緒に現れて狼の頭をなでています。
「母さん、リューまで! どうしたの? まさか!」
ルーデンスが私達に向かって駆け寄ってきました。
「ルー兄さま。よかった」
娘のリュミエルが抱きかかえられたまま安心したのか、泣き出しました。
私も一緒に泣いてしまったではありませんか。
緊張がほぐれ、ひとしきり泣いた後、ルーデンスが経験したこと、館で行われたことをお互いに話しました。狼はフェンリルで友達になったそうです。
「そうだ、これを飲んでみて」
ルーデンスは鍋にお湯を張りました。
「これが僕のスキル『ルゥ』によって出るドロップアイテムなんだ。お湯に溶かすと不思議な飲み物になるんだ」
私はどこかで見たような、不思議な土塊を手に取りました。
「こうして溶かすんだ」
お湯の中に土塊を入れました。ルーデンスがお玉でかき混ぜます。
不思議な、しかし懐かしい匂いが辺り一面に広がります。
「飲んでみてもいい?」
匂いにつられ、たまらなくなった私は、お玉から直接スープを飲みました。
その瞬間、頭の中に音楽が鳴り響いたのです!
『♫VER・モンド家の香麗なルゥ
♫アップル&ハニーも仲良く混ぜ混ぜ
家名! ♫VER・モンド家の・カレー』
懐かしい音楽が頭の中で響きます。ん? 懐かしい? こんな妙な音楽は今まで聞いたことが……? いえ、この曲は……家名はなぜ叫んで言うの? 家名? かめいといえば家の名前……家?……あっ!
その時、頭の中に映像が押し寄せるように流れた。
給食のカレー。
調理実習で作ったカレー。
ファミレスのフェアで食べたタイカレー。
インド料理店のキーマカレー。
カレー専門店でトッピングだらけにしたカレー。
近所の食堂のカツカレー。
レトルトパックのサクランボカレー。
カレーうどん。
カレー南蛮。
カレーパン。
…………。
…………。
…………。
たくさんのカレーの画像と幸せな記憶が再現される。
そして、
お母さん? と作った、普通の、ごくごく普通のお家カレー。
家族で食べた幸せの食卓。
カレーが出た日は、みんなテンションがあがった。
にこにこの笑顔で進む食事風景。
そうだ。カレーを作る時、あの人が必ず口ずさんでいた歌。
あの人? 誰だっけ。お母さんかな、
そこに必ずあったカレールゥの箱には、エントツが長く伸びたお家のマーク[h]が印刷されていた。
思い出した! あたしは麻里。丁香麻里。高校2年生の夏までの記憶があるけど……。もしかしてこの世界に生まれ変わったの? うん。ローズマリーさんの記憶もある。だけど……。今は麻里の人格だよね。それにこれ、カレーだよ。土塊って言っていたのはカレーのルゥ。そうだよね。カレーだよカレー。カレー祭りじゃない!
っていうかVER・モンド家のカレーって! アップルとハニーが混ぜ混ぜして! そのままじゃないの!
勝てる! 生きていける! 聖獣フェンリルまで仲間につけて! これラノベでいうところのチートてやつよね。
こんなかわいい息子と娘。それにカレールゥ。生きていける! 生きていけるよ! 幸せになろうよ!
あたしは大声で笑っていた。
「あはははははははは」
「どうしたの母さん!」
「お母様が、おかしくなった!」
あ、そうね。久しぶりのカレーでテンションが上がりすぎた。子供たちが心配している。
あたしは中身は女子高生の麻里だけど、この子たちにとっては母親のローズマリーなんだよね。心配かけたらいけない。
ローズマリーの記憶も気持ちも体に残っている。ローズマリーは別人とかじゃないんだ。確かにあたしがローズマリーとして歩んだ29年の人生は間違ったものではない。この子たちを思う気持ちは本物だよ。記憶も礼儀作法も倍になったと思おう!
「大丈夫ですよ。ルーデンスにリュミエル。お母様は嬉しくなっただけなのです」
「嬉しくなった? なんで?」
「ルーデンス。あなたのギフト『ルゥ』は素晴らしいギフトです。お母様と一緒に世界を変えましょう」
食の世界を変えることができる! ラノベによくある飯マズ世界なんだよね。
「ほら、このスープを飲むと体が温まるでしょう。カレーに使われる香辛料は薬の代わりにもなる素晴らしい成分を含んでいるのよ。リュミエルも飲んでみなさい」
「うむ。この料理はカレーというのか。儂の魔法に反応して古傷を治しおった。魔力に反応し、怪我や疲れを治すようだな」
聖獣様の解説いただきました! ラノベそのままの世界ですよ!
「辛い! 喉が痛い! おいしくない!」
痛い? 咳で喉が荒れているせいかも。それに子供には辛いのかな? まだ6歳だし。でも食材はこれしかないし。
味が感じられないほど薄めないと口にしない娘は、それでもカレーの効果で少しだけ体調がよくなったみたい。
「明日の朝、見回りに来た者に見つかると殺されるから、すぐにここを離れないといけないわ」
二人にそう告げると、「儂が追い払ってやるぞ」とフェンリルが言ってくれた。
でもあれじゃない? フェンリルなんて見つかるとヤバいよね。
「聖獣様が見つかればそれはそれで大騒ぎになるわ。ルーデンスのギフトに効果があることがばれても大変なことになるでしょう。とにかく他領まで行かないといけないの。最終的には他国まで行かないといけないわ」
そう。ルーデンスのギフトが有能だと分かれば、ルーデンスはこき使われ、私と娘だけが引き離されて追放される。そういうことをやる男だ。
「でもここから街道を通っても、街に着く前に夜になってしまうよ」
「それなら儂が守ってやろう。主を護るのは従者の役目。儂がいれば魔物は近づきはせんだろう」
心強い言葉に私達は感動した。
「ありがとう。でも僕たちは友達だ。主じゃなくルーって呼んで」
「分かった。ルーよ。そしてルーの母君、妹君。儂の事は聖獣様ではなくルナと呼んで欲しい」
「分かった、ルナちゃんね」
「ちゃん付けか。まあよい」
娘が「よろしくルナちゃん」と抱きつきに行った。
「まあリュー。失礼ですよ」
「まあ良い。ルーの妹だから許そう」
優しい目でリューを見ているわ。ルナ様って思ったより子煩悩?
「ありがとうございますルナ様」
「様か、まあ良しとする。母君」
「ありがとうございます。では私の事はマリーとお呼びください」
ローズマリーと麻里。二人の記憶が重なる名前を呼んでもらうことにした。
わたしはこれからこの子たちの母親として、そして日本人の記憶を持った麻里として、二人分楽しく生きていってやる! みんなで幸せになるよ!
265
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
追放悪役令嬢は、絶品農業料理で辺境開拓!気づけば隣国を動かす「食の女王」になってました
緋村ルナ
ファンタジー
身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王子から追放された公爵令嬢ベアトリス。絶望の辺境で、彼女は前世の知識と持ち前の負けん気を糧に立ち上がる。荒れた土地を豊かな農地へと変え、誰もが食べたことのない絶品料理を生み出すと、その美食は瞬く間に国境を越え、小さなレストランは世界に名を馳せるようになる。
やがて食糧危機に瀕した祖国からのSOS。過去の恩讐を乗り越え、ベアトリスは再び表舞台へ。彼女が築き上げた“食”の力は、国家運営、国際関係にまで影響を及ぼし、一介の追放令嬢が「食の女王」として世界を動かす存在へと成り上がっていく、壮大で美味しい逆転サクセスストーリー!
スキル『農業』はゴミだと追放されたが、実は植物の遺伝子を書き換える神スキル【神農】でした。荒野を楽園に変えて異世界万博を開催します!
黒崎隼人
ファンタジー
「そのスキル『農業』?剣も魔法も使えないクズはいらん、失せろ!」
勇者召喚に巻き込まれて異世界へ転生した植物オタクの青年カイルは、地味なスキルを理由に王都を追放され、死の荒野へと捨てられた。
しかし、誰も知らなかったのだ。
彼のスキルが、ただの農業ではなく、植物の遺伝子さえ書き換え、不毛の大地を瞬く間に聖域に変える神の力【神農】であることを。
荒野を一瞬で緑豊かな楽園に変えたカイルは、伝説の魔獣フェンリルを餌付けして相棒にし、傷ついた亡国の美姫ソフィアを助け出し、自由気ままなスローライフを開始する。
やがて彼が育てた作物は「エリクサーより効く」と評判になり、その噂を聞きつけた商人によって、彼の領地で世界規模の祭典――『異世界万博』が開催されることに!?
一方、カイルを追放した王国は深刻な食糧難に陥り、没落の一途をたどっていた。
「今さら戻れと言われても、この野菜は全部、俺とソフィアのとフェンのものですから」
最強の農民が送る、世界を揺るがす大逆転・万博ファンタジー、ここに開幕!
新緑の光と約束~精霊の愛し子と守護者~
依羽
ファンタジー
「……うちに来るかい?」
森で拾われた赤ん坊は、ルカと名付けられ、家族に愛されて育った。
だが8歳のある日、重傷の兄を救うため、ルカから緑の光が――
「ルカは精霊の愛し子。お前は守護者だ」
それは、偶然の出会い、のはずだった。
だけど、結ばれていた"運命"。
精霊の愛し子である愛くるしい弟と、守護者であり弟を溺愛する兄の、温かな家族の物語。
他の投稿サイト様でも公開しています。
【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~
御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。
十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。
剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。
十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。
紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。
十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。
自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。
その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。
※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。
神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。
異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。
前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。
神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。
朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。
そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。
究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。
追放された悪役令嬢、農業チートと“もふもふ”で国を救い、いつの間にか騎士団長と宰相に溺愛されていました
黒崎隼人
ファンタジー
公爵令嬢のエリナは、婚約者である第一王子から「とんでもない悪役令嬢だ!」と罵られ、婚約破棄されてしまう。しかも、見知らぬ辺境の地に追放されることに。
絶望の淵に立たされたエリナだったが、彼女には誰にも知られていない秘密のスキルがあった。それは、植物を育て、その成長を何倍にも加速させる規格外の「農業チート」!
畑を耕し、作物を育て始めたエリナの周りには、なぜか不思議な生き物たちが集まってきて……。もふもふな魔物たちに囲まれ、マイペースに農業に勤しむエリナ。
はじめは彼女を蔑んでいた辺境の人々も、彼女が作る美味しくて不思議な作物に魅了されていく。そして、彼女を追放したはずの元婚約者や、彼女の力を狙う者たちも現れて……。
これは、追放された悪役令嬢が、農業の力と少しのもふもふに助けられ、世界の常識をひっくり返していく、痛快でハートフルな成り上がりストーリー!
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/387029553/episode/10775138
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる