今の生活に飽きたら神の使徒(魔族)になりました

結木 太一

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〜2020/06/15まで執筆分

68話//打ち合わせ

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やりたいこと会議から2日が経った。
僕は宣言通り、やりたいことをやるために鍛冶場や調合部屋の充実化を計った。おかげで2日の割にはかなりの便利施設として整ったとおもう。これからのことも考えてまずは回復薬作りから始めよう。というわけで、来たはいいものの…。

「設備を整えることに必死になって素材を揃えるの忘れてた…。これじゃなにも作れないや」

なので採取をしに行こうと思ったのだが、軽快なノックと共にセラが入ってくるやいなや「やっぱりここでしたか。書類など仕事が溜まってますよ」と執務室に引き戻された。これは当分出かけられないやつだ。仕方ない。働こう。


その頃マスカル・ナハムの2人は商業ギルドマスターのバレードのもとに向かっていた。2人のやりたい長期計画とバレードの提案の擦り合わせをして実行に移すためだ。
話し合いのためにはもっと時間がかかると思っていたが案外早めの会談の場が設けることが出来た。

「ようこそ!依頼ですか?登録ですか?」

「ギルドマスターのバレードを出してくれ」

「失礼ですが事前の問い合わせなど行っていらっしゃいますか?」

おや?もしやこの受付嬢は分かってらっしゃらない?

「ちょっ!!失礼しました!!すぐにバレードを呼んで参ります!!」

どうやら先輩らしき受付嬢が呼びに行くついでに先ほどのもう1人を裏に連れていった。「えっ!」という声が聞こえてきたから素性について聞かされたのだろう。
しばらくするとバレードと最初の受付嬢が出てきた。

「お待たせしました。私の執務室まで案内致します。
その前に先ほどはこちらの受付嬢が大変失礼を致しました。…ただ馬車が到着した様子がなかったのですが」

「申し訳ありませんでした!!!どんな処罰もお受け致します!!」

「気にしてないっすよー」

「まぁ俺たちも歩いてきたし、貴族の証も出さなかったしな」

2人は安堵の表情を浮かべたかと思うと、歩いてきたと聞き驚愕していた。まぁたしかに貴族のイメージというと馬車とかに乗って偉ぶってるイメージ強めだけど、同じ領地で暮らすのだからそこに差があってはダメだろう。貴族といえども人間。多少地位に違いがあるだけだ。

「……。寛大なお心に感謝致します…」

「ひとまずこちらにお進みください」

受付嬢はまだしっかり理解出来ていないようだ。真っ白になった頭にクエスチョンを浮かべている印象を受けた。
人目につく場ではまずいと判断したバレードによって足早にギルドマスターの執務室に案内された。

部屋に入ると机の横に同じくらいの高さまで積まれた書類の山と壁一面にギッシリと並べられたファイルが目に入る。少しオフィスの仕事ができない上司の机を思い出した。やったのかやってないのか分からない書類が散乱してたなぁ。

へやの中央に置かれたソファに腰掛ける。

「本来なら私が赴くところをお越しいただきありがとうございます。今日は先日の件の話と思っていてよろしいですか?」

「それも関係してくるな。けどまずは俺たちの話を聞いてもらえるとありがたい」

そう言ってナハムは説明を始めた。やりたいこと会議で出た食の改善。スラム街の住民の保護と教育。これらの説明をした。ところどころバレードは目を見開き、驚くような素振りを見せるも説明が終わるまでは静かに聞いていた。代わりに顔がとてつもなくうるさかったが。

「なるほど。それが行われれば領主としての活動もできる上に後々私が提案した件も解決できますね。しかし、その為の費用はどうされるのですか?かなりの額が必要になると思うのですが」

「そうっすねー。まずはハムさんの提案するスラム街の人たちを保護して彼らに働いてもらうのがいいと思うっす」

「俺も同じだ。まずは彼らを保護し職を与えることが大切だろう。
その職を与える時点で彼らに畑作業を担当してもらえば食料の自給率が上がるしスラム街を無くすための一石を投じることになるだろう。
ここからは食の改善の為にだが大きな養殖場や牧場を作るのも手だろう。これで肉の安定供給に繋がるだろうしその人員をスラムの者を登用したり、それこそ商業ギルドから派遣をするのもありだろうな。
そしてだ。この領主と商業ギルドが主体となって行うことによってこの間のお前の提案がより実行可能なものになる」

「食材の低コストでの仕入れですね」

「その通りだ。自分たちで経営するところから仕入れるのだからムダに間に挟むことなくできる限りの低価格で仕入れができる。他の店に仕入れをしてもらえれば売上は上がるしな。
だがこれはちゃんと安定生産ができてからの話になるからすぐに食事処を開くことは出来ない。だとしても損より利益のが多いと思うけどな」

「…そうですね。その通りです。その案、乗りました!」

こうしてお互いのやりたいことに向けて意見が一致したので細かいところを詰めていく。ひとまずはギルドが大人数受け入れられる土地や牧場などに使えそうな土地を探すことになった。その間はナハム達はスラムなどこの領地の視察になるだろう。

「こんなところっすねー」

「だな。もう1つやりたい事があるがこれはまだ実行できる可能性が低いからなんとなく意識に留めて貰えればいいんだが、教育の為に学校を作ろうと思ってる。
その為にその道に詳しい人物を集めようと思ってるからその時は協力を頼みたい」

「かしこまりました」

これで話も終わったことだし領主邸に帰ろうとしたとき、バレードに呼び止められた。

「今更ですが、出来ればこういう会談の場合は貴族らしい格好で馬車でお越しください。今日みたいになるとお互いに損も多いでしょうし」

お互いと言いながらどこかこちらに重きがあるかのように少し睨むような目が向けられる。たしかに受付嬢には悪いことをしたと思うし、この注意はしっかり覚えておこう。




×××++××++×××

風邪でぶっ倒れて何も書けずでした。
皆さんも体調にお気をつけください。
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感想 1

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