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日常ランキング トイレにて
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緊急度 80 Aランク
社会の厳しさ度 100 Sランク+
【解説】
トイレの個室とは、この生き馬の目を抜く世知辛い世の中で、唯一といっていいほど落ち着ける場所、人類安息の地である。
by、トイレ野郎
名言風の冒頭で始まった今回の記事だが、このありがたいお言葉は筆者の友人である『トイレ野郎』が宴の席で語った言葉である。
トイレ野郎はその名の通りトイレの専門家であるため、『うんこ野郎』或いは『クソムシ』『便所野郎』『WC野郎』の愛称でも親しまれている、生粋のトイレ職人である。
トイレ野郎「なあランク君(筆者のこと)」
筆者「うん?(こ?)」
トイレ野郎「なんじゃかんじゃ言うても、うんこしてる時が一番幸せやね……」
筆者「……他にねーのかよ」
トイレ野郎「……会社はリストラされ、嫁にも逃げられ、もう俺の居場所はトイレの個室以外ないんや……ないんやでランク君……」
筆者「……知らねーよ……このうんこ野郎……」
ひとしきりむせび泣いた二人は、そのまま夜の歓楽街へと消えていった……。
そうしてぼったくりバーで身ぐるみ剥がされたあげく消費者金融に連れていかれ借金を背負わされたあと進研ゼミに申し込まなかったことを今更ながら後悔した上で全ての借金を筆者に押し付けてうんこ野郎が行方をくらませたため、それらは全てドッキリだったことをネタバラシできないまま、筆者とうんこ野郎は永久に会うことはできなくなった。高3の冬の話である。
……。
……。
……。
……上記のエピソードは本文と何ら関係ないため、殊更記述する必要はどこにもない。
じゃあ書くんじゃねーよ!!このうんこ狂いが!!
……気を取り直して行こう。
先日筆者はある回転寿司屋で、突然うんこをしようと思い立った。
驚かれる向きも多いかと思われるが、別にうんこをしようと思い立ったのは今回が初めてではない。
この世に生を受けてから今まで、数えきれないほどうんこをしよう、いや、うんこをしたいと思い立ってきた筆者である。
当然思い立ってからフィニッシュまで、どこに行って何をすればいいのか、パンツの下ろし方からティッシュを切る長さに至るまで、全ての手順を完璧に理解しきっている。便意を感じて何をすればいいのか、赤子のように迷う必要はないのである。
そのため、とても手慣れた感じでスススイと大便器へ。その際、周囲の客やスタッフにうんこをすることを気取られてはならぬので、顔はあくまでさりげない小便顔である。(どんな顔やねん)
首尾よく大便器に到着すると、中は無人であった。
『……こいつは好都合だぜ……ここに大便器があることに、誰も気付かないでいやがる……!!』
思わず顔から汗をたらし、ニヤリと勝利を確信する筆者。
パンツを勢いよくずり下げ、さあ大砲を発射しようとした次の瞬間、何者かに外からトイレのドアが壊れんばかりの勢いで、『ドンドン!!』と幾度となく叩かれた。『ノック』というのではない、完全な『横暴』といった感じである。
壊れそうな鍵を抑えながら状況把握に努めると、外から子供の悲鳴にも似た叫び声が聴こえた。
「あけてください!!あけてください!!あけて!!あけて!!うぅうぅううう!!あかない!!あかない!!」
どうやら便意を催したクソガキ……あわわ、少年が無理矢理ドアをこじ開けようとしているようだった。
人が中に入っているのだから開く訳がないのだが、それにしても頼み方というものがあるだろう。
そもそも筆者もさっき座ったばかりだし、まだ肝心の腹部に巣くう魔を追い払えていない。
黙って無視する筆者。
『ドンドン!!』
『ドンドン!!』
……横暴は止まない。
このクソガキ……ゲフンゲフン、少年は大便器を即刻明け渡せという強い意志を示すために、このテロ活動を絶対に止めない腹積もりらしい(まあ、確かに腹にはフンが積もっているだろうが。積もったフン、人それをフン詰まりという。俺の人生ドン詰まり。違うか!!わっはっはっはっ!!)。
……いや、少年少年とは言うが、先方はクソがしたいとご所望であるため、その意味に於いては確かにクソガキという表記で間違いないと思わないでもない。
先方には積もる話もあるのだろうが、こちらにしてみれば知らない人だし、残念ながら初めから交渉の余地はないのだよ。
便器に座り耳を塞ぎ、現実逃避しながら逃げちゃ駄目だと自分に言い聞かせていると……。
「うぅうぅう!!もれる!!もれちゃうよお!!あけて!!あけてよお!!」
……日本全国のお子様を持たれる方々、教育関係各位、申し訳ありません!!言わせて頂きます!!
知らねーよ!!もれようがもれまいが知ったこっちゃねーよ!!こっちだってさっき座ったばっかりなんだよ!!お願いすればなんでも聞いてもらえると思ってんじゃねーぞゆとりが!!絶対にここは譲らねえぞゴラァっ!!
『ドンドン!!』
『ドンドン!!』
……あらやだわ、ぜんぜん止まないじゃないこの人。
ようし、わかったぞ。そっちがその気なら、こちらにも考えがあるのだ。(別に大した考えではない)
そもそも、それが人にものを頼む態度なのか。どれだけ逼迫しているかは知らないが、軽くノックしてから「すいませーん、用が済んだらあけていただいてもいいですか。ちょっと危ないんですー」とでも言えば、快く筆者は用を済ませた上で場所を譲るだろう。
或いは、初めから何も言わないで我慢して待っていれば、いずれ黙っていても出ていくのに、何故自ら墓穴を掘ろうとするのか。
こちらとしては意地になって、どんどん譲る気がなくなってしまうではないか。なんなら、自分で掘った墓穴にうんこをしてみてはどうか。違うか!!わっはっはっはっ!!
……。
……。
……まあ、それはともかくとして、ヒステリックにドアを叩きつけて、「あけて!!あけてよおおおお!!」じゃねーよ!!貴様と俺とは同期の桜か!!顔も知らない赤の他人に、そんな失礼な態度があるか!!
と、ここまで考えて、筆者は心を鬼にすることを決めた。
ここで席を譲ってしまっては、このクソガキ……あわわ、少年のためにならない。
ここでごねりまくって欲望が果たされれば、彼はこの先ごねれば何でも自分の願いが満たされると考えるだろう。
世の中にはどんなに願っても満たされない、上手くいかない理不尽なことの方が多い。
自分の願いなど、社会に出るとまず潰されると思っておいた方が良いのである。
互いが互いを思いやってこその共生社会だ。自己愛など、クソの役にも立たない。(別に上手くはない)
確かに今、うんこは終わった。うんこに携わる者として必要不可欠とされる一連の動作はやり終えたが、だからと言って筆者はこのまま彼に席を譲る訳にはいかないのである。
彼が社会に於いて何より大切な、他者に対する礼儀、思いやりを覚えた時。その時初めて、筆者は彼に席を譲ろう。
そうして、筆者は彼に言うのである。
待たせてごめ『ドンドン!!』『ドンドン!!』『ドンドンドンドンドンドンドンドン!!』『ドドドドン!!ドド!!ドドドドドドドドドン!!ドドン!!ド!!ドドッ!!』
……。
……。
……彼が悪いのではない。彼を育んだ周りの教育が悪かったのである。
『ドン!!ドン!!ドドドン!!ドドドンドン!!』
太鼓の達人かキサマは!!
そうして、無限とも思われる長い戦いに終止符が打たれるのは、いつも突然である。
外から急に母親の声がしたかと思うと、少年を他のトイレに連れていくと言って、フン詰まりの少年を連れてどこかに消えていった。
後に残ったのは、尻を丸出しにした筆者と、これ以上ないほどの静寂、まだ流していないうんこだけだった。
尻を拭きながら筆者は思った。
いや、母親ワシに謝罪の言葉ないんかい!!
……顔も名前も知らない少年よ。
とてつもなく広い世界の、とてつもなく狭いこの場所で、キミと私はライバル(?)同士だった。
しかし、キミと私とは、何らかの縁があったからこそ、ここでこうして出逢ったのかもしれない。
今回のことで、キミが少しでも社会の厳しさを肌で感じてくれたのなら、私が席を譲らなかった意味も少しはあると思う。
人生は、本当に難しい。
でも、だからこそやりがいがあるんだ。
縁があったらまた逢おう。
その時は、先にうんこを済ませておくように。
私はキミを、『ドンちゃん』と呼ぼう。
……。
……。
……って、何なんだこのクソみたいな話は!!ちょっといい話で終わらせようと試みてんじゃねーよ!!
単にクソしたいガキにクソを譲らなかっただけの話だろ!!
一言で終わるじゃねーか!!
なんでこれをいい話にすり替えられると思ったんだ!!
ぜんぜん誤魔化せてねーよ!!
終われねーよこれじゃ!!
ふざけやがってクソが!!時間を返せ時間を!!
あと、クリスハートは邦楽と洋楽どっちなんだ!!
……クソの話だけに、クソのような話だったということで、お許し下さい。
社会の厳しさ度 100 Sランク+
【解説】
トイレの個室とは、この生き馬の目を抜く世知辛い世の中で、唯一といっていいほど落ち着ける場所、人類安息の地である。
by、トイレ野郎
名言風の冒頭で始まった今回の記事だが、このありがたいお言葉は筆者の友人である『トイレ野郎』が宴の席で語った言葉である。
トイレ野郎はその名の通りトイレの専門家であるため、『うんこ野郎』或いは『クソムシ』『便所野郎』『WC野郎』の愛称でも親しまれている、生粋のトイレ職人である。
トイレ野郎「なあランク君(筆者のこと)」
筆者「うん?(こ?)」
トイレ野郎「なんじゃかんじゃ言うても、うんこしてる時が一番幸せやね……」
筆者「……他にねーのかよ」
トイレ野郎「……会社はリストラされ、嫁にも逃げられ、もう俺の居場所はトイレの個室以外ないんや……ないんやでランク君……」
筆者「……知らねーよ……このうんこ野郎……」
ひとしきりむせび泣いた二人は、そのまま夜の歓楽街へと消えていった……。
そうしてぼったくりバーで身ぐるみ剥がされたあげく消費者金融に連れていかれ借金を背負わされたあと進研ゼミに申し込まなかったことを今更ながら後悔した上で全ての借金を筆者に押し付けてうんこ野郎が行方をくらませたため、それらは全てドッキリだったことをネタバラシできないまま、筆者とうんこ野郎は永久に会うことはできなくなった。高3の冬の話である。
……。
……。
……。
……上記のエピソードは本文と何ら関係ないため、殊更記述する必要はどこにもない。
じゃあ書くんじゃねーよ!!このうんこ狂いが!!
……気を取り直して行こう。
先日筆者はある回転寿司屋で、突然うんこをしようと思い立った。
驚かれる向きも多いかと思われるが、別にうんこをしようと思い立ったのは今回が初めてではない。
この世に生を受けてから今まで、数えきれないほどうんこをしよう、いや、うんこをしたいと思い立ってきた筆者である。
当然思い立ってからフィニッシュまで、どこに行って何をすればいいのか、パンツの下ろし方からティッシュを切る長さに至るまで、全ての手順を完璧に理解しきっている。便意を感じて何をすればいいのか、赤子のように迷う必要はないのである。
そのため、とても手慣れた感じでスススイと大便器へ。その際、周囲の客やスタッフにうんこをすることを気取られてはならぬので、顔はあくまでさりげない小便顔である。(どんな顔やねん)
首尾よく大便器に到着すると、中は無人であった。
『……こいつは好都合だぜ……ここに大便器があることに、誰も気付かないでいやがる……!!』
思わず顔から汗をたらし、ニヤリと勝利を確信する筆者。
パンツを勢いよくずり下げ、さあ大砲を発射しようとした次の瞬間、何者かに外からトイレのドアが壊れんばかりの勢いで、『ドンドン!!』と幾度となく叩かれた。『ノック』というのではない、完全な『横暴』といった感じである。
壊れそうな鍵を抑えながら状況把握に努めると、外から子供の悲鳴にも似た叫び声が聴こえた。
「あけてください!!あけてください!!あけて!!あけて!!うぅうぅううう!!あかない!!あかない!!」
どうやら便意を催したクソガキ……あわわ、少年が無理矢理ドアをこじ開けようとしているようだった。
人が中に入っているのだから開く訳がないのだが、それにしても頼み方というものがあるだろう。
そもそも筆者もさっき座ったばかりだし、まだ肝心の腹部に巣くう魔を追い払えていない。
黙って無視する筆者。
『ドンドン!!』
『ドンドン!!』
……横暴は止まない。
このクソガキ……ゲフンゲフン、少年は大便器を即刻明け渡せという強い意志を示すために、このテロ活動を絶対に止めない腹積もりらしい(まあ、確かに腹にはフンが積もっているだろうが。積もったフン、人それをフン詰まりという。俺の人生ドン詰まり。違うか!!わっはっはっはっ!!)。
……いや、少年少年とは言うが、先方はクソがしたいとご所望であるため、その意味に於いては確かにクソガキという表記で間違いないと思わないでもない。
先方には積もる話もあるのだろうが、こちらにしてみれば知らない人だし、残念ながら初めから交渉の余地はないのだよ。
便器に座り耳を塞ぎ、現実逃避しながら逃げちゃ駄目だと自分に言い聞かせていると……。
「うぅうぅう!!もれる!!もれちゃうよお!!あけて!!あけてよお!!」
……日本全国のお子様を持たれる方々、教育関係各位、申し訳ありません!!言わせて頂きます!!
知らねーよ!!もれようがもれまいが知ったこっちゃねーよ!!こっちだってさっき座ったばっかりなんだよ!!お願いすればなんでも聞いてもらえると思ってんじゃねーぞゆとりが!!絶対にここは譲らねえぞゴラァっ!!
『ドンドン!!』
『ドンドン!!』
……あらやだわ、ぜんぜん止まないじゃないこの人。
ようし、わかったぞ。そっちがその気なら、こちらにも考えがあるのだ。(別に大した考えではない)
そもそも、それが人にものを頼む態度なのか。どれだけ逼迫しているかは知らないが、軽くノックしてから「すいませーん、用が済んだらあけていただいてもいいですか。ちょっと危ないんですー」とでも言えば、快く筆者は用を済ませた上で場所を譲るだろう。
或いは、初めから何も言わないで我慢して待っていれば、いずれ黙っていても出ていくのに、何故自ら墓穴を掘ろうとするのか。
こちらとしては意地になって、どんどん譲る気がなくなってしまうではないか。なんなら、自分で掘った墓穴にうんこをしてみてはどうか。違うか!!わっはっはっはっ!!
……。
……。
……まあ、それはともかくとして、ヒステリックにドアを叩きつけて、「あけて!!あけてよおおおお!!」じゃねーよ!!貴様と俺とは同期の桜か!!顔も知らない赤の他人に、そんな失礼な態度があるか!!
と、ここまで考えて、筆者は心を鬼にすることを決めた。
ここで席を譲ってしまっては、このクソガキ……あわわ、少年のためにならない。
ここでごねりまくって欲望が果たされれば、彼はこの先ごねれば何でも自分の願いが満たされると考えるだろう。
世の中にはどんなに願っても満たされない、上手くいかない理不尽なことの方が多い。
自分の願いなど、社会に出るとまず潰されると思っておいた方が良いのである。
互いが互いを思いやってこその共生社会だ。自己愛など、クソの役にも立たない。(別に上手くはない)
確かに今、うんこは終わった。うんこに携わる者として必要不可欠とされる一連の動作はやり終えたが、だからと言って筆者はこのまま彼に席を譲る訳にはいかないのである。
彼が社会に於いて何より大切な、他者に対する礼儀、思いやりを覚えた時。その時初めて、筆者は彼に席を譲ろう。
そうして、筆者は彼に言うのである。
待たせてごめ『ドンドン!!』『ドンドン!!』『ドンドンドンドンドンドンドンドン!!』『ドドドドン!!ドド!!ドドドドドドドドドン!!ドドン!!ド!!ドドッ!!』
……。
……。
……彼が悪いのではない。彼を育んだ周りの教育が悪かったのである。
『ドン!!ドン!!ドドドン!!ドドドンドン!!』
太鼓の達人かキサマは!!
そうして、無限とも思われる長い戦いに終止符が打たれるのは、いつも突然である。
外から急に母親の声がしたかと思うと、少年を他のトイレに連れていくと言って、フン詰まりの少年を連れてどこかに消えていった。
後に残ったのは、尻を丸出しにした筆者と、これ以上ないほどの静寂、まだ流していないうんこだけだった。
尻を拭きながら筆者は思った。
いや、母親ワシに謝罪の言葉ないんかい!!
……顔も名前も知らない少年よ。
とてつもなく広い世界の、とてつもなく狭いこの場所で、キミと私はライバル(?)同士だった。
しかし、キミと私とは、何らかの縁があったからこそ、ここでこうして出逢ったのかもしれない。
今回のことで、キミが少しでも社会の厳しさを肌で感じてくれたのなら、私が席を譲らなかった意味も少しはあると思う。
人生は、本当に難しい。
でも、だからこそやりがいがあるんだ。
縁があったらまた逢おう。
その時は、先にうんこを済ませておくように。
私はキミを、『ドンちゃん』と呼ぼう。
……。
……。
……って、何なんだこのクソみたいな話は!!ちょっといい話で終わらせようと試みてんじゃねーよ!!
単にクソしたいガキにクソを譲らなかっただけの話だろ!!
一言で終わるじゃねーか!!
なんでこれをいい話にすり替えられると思ったんだ!!
ぜんぜん誤魔化せてねーよ!!
終われねーよこれじゃ!!
ふざけやがってクソが!!時間を返せ時間を!!
あと、クリスハートは邦楽と洋楽どっちなんだ!!
……クソの話だけに、クソのような話だったということで、お許し下さい。
応援ありがとうございます!
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