現世では底辺配信者の僕が『バズる才能視(ビジョン)』で異世界の美少女をプロデュースしました

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第15話 事件発生

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 お目当ての道場がまったくの大ハズレだったことで、僕たちは途方に暮れ、次の目的も決められず町をトボトボと歩いていた。

「あの……これからどうしましょう……」

「町の人たちに聞き込みした結果があの道場だったわけだからね……。これ以上聞き込みを続けても効果は薄いんじゃないかな……」

 落胆する僕たちに、画面のコメントが追い打ちをかけてくる。

《え~っと、これいまなんの時間?www》

《特に展望もなく落ち込んでるとこ見せられてもなぁwwすまん、動きがあるまでちょっと離脱するはwww》

 なにも動きがないことでつまらない配信になってしまったようで、視聴者さんの同接数もドンドン減っていき、画面には寂しい数字が残るのみだった……。

 どうする……? 配信の面でも修行の面でも、プロデューサーとしてなにか手を打たなければならないことは間違いないが、このまま聞き込みを続けても、またあの詐欺寸前道場の名前があがるだけだろう。

 人々がなにを選択するか迷ったときに、その判断の大きな材料とするものは、本来の価値よりまず『人気』と『知名度』であることは、現世での底辺配信者時代の経験から身をもって知っている。

 世間の多くの人たちが評価しているものであれば、おそらく一定以上のクオリティーは担保されているのだろうという、多数派同調バイアスによる『マヤカシの信頼』だ。つまり、それに支配されてしまっているこの町でこれ以上聞き込みを続けても、大きな効果を得られる可能性は低い。

 と。

 悩む僕の横で「ぐぅ~っ」と謎の音が鳴ったかと思うと、アカリが恥ずかしそうにお腹を抑えていた。

 アカリが顔を真っ赤にして、音が鳴ったことを必死に否定する。

「はわわっ! ち、違うんですっ! い、いまのはなんというか、いくつものぐうぜんが重なったすえの哀しい音色というか、決まった時間帯になるとなぜか起こる人体のふしぎなふしぎな超常現象というかっ!」

《アカリちゃん可愛いwww》

《お腹鳴っただけでそこまで必死に否定しなくてもwwww》

《そうか、配信ずっと観てて気づかなかったけど、もうお昼だもんね》

「ははは、別に恥ずかしがらなくてもいいさ。アカリもお腹すいたよね。そろそろ昼食にしようか」

「は、はいっ! ありがとうございますっ!」

 今後どうしていくかも大事だけど、その前に腹が減っては戦はできぬというもの。今後のことについてはご飯を食べながらゆっくり考えることにしよう。

 また哀しい音色が鳴ってアカリが恥ずかしい思いをしないように、僕たちはひとまず昼食をとりに行くことにした。

 町の飲食店に着くと、僕たちはランチタイムでお得になっていたセットをそれぞれ注文した。

《いいな~、めっちゃ美味しそう》

《悲報。アカリチャンネル、急にメシテロチャンネルになるww》

《こうなると、もはやなにがコンセプトのチャンネルなんだwww》

《やべぇ、見てたら腹減ってきた、オレもなんか食べよwww》

 正直アカリだけでなく、朝から配信を続けてきて僕もかなりお腹が減っていたので、テーブルに料理が届いた瞬間にがっついてしまった。

「うん、美味しい! アカリもしっかり食べるんだぞ」

「はいっ! ふふっ、二人で食べると、一人で食べるよりずっと美味しいって、なんだかふしぎですね」

 アカリと二人で談笑しながら、美味しい料理を食べ進める幸せな時間。

「? どうされましたトベさん?」

「いや、ほんとに幸せそうに食べるなぁと思って。ふふふっ」

「は、恥ずかしいのであんまりじっくり見ないでください……」

「いやいや、そんなに幸せそうに食べてもらったら、お店の人も嬉しいと思うよ。気にせずゆっくり食べな。僕はその間に今後のことを考えておくから」

 僕のほうが先にごちそうさましてしまったため、アカリが食べ終わるのを待ちながら今後の作戦を考えていくことにする。

 しかし、こんななんでもない時間っていいなぁ。僕も一年という期限付きの身でなかったら、もっとゆっくりアカリとこの異世界ライフを楽しみたいのだけど。

 テーブルに並んだ料理を、本当に幸せそうにほおばるアカリ。

 こんななんでもない、ありふれた日常こそ、僕たちが大切にしなきゃいけないものなんだろう。

「美味しい? アカリ」

「ほ、ほっへもほいひいへふっ!」

「ははは、プロデューサー指示、食べながら喋らないように」

 僕がありふれた日常の、ありふれない幸せをかみしめていた、そのときだった。

「きゃあぁああぁあぁあっ!」

 どうやらこの世界に連れてきた女神さまは、僕をゆっくりさせるつもりはないらしい。

 どこかから女性の悲鳴が聴こえ、僕はアカリと顔を見合わせると、すぐに会計を済ませ声の飛んできた方角へと向かった。

《なんだなんだ?》

《離脱したやつ乙。なんか面白そうな事件発生www》

 声の飛んできた方角へ向かうと、そこには道に倒れた一人の女性と、刃物を持った一人の男が対峙していた。

 刃物を持った男は、修羅のような表情で涙を流しながら叫んだ。

「許さない……! 僕を捨てるなんて絶対に許さないぞ!」

 別れ話のもつれなのか、なおも女性ににじり寄る男。

 あまりの恐怖に腰が抜けたのか、女性はもはや立てないようで、道を這いずるようにして助けを求めている。僕たちはすぐに女性の元に駆け寄ると、二人でその身体を支えた。

 しかし、肝心の『問題』はまだなにも解決していない……。

 目の前の『脅威』は徐々に、少しずつではあるが確実に、その距離を詰めてきている……!

《いきなりヤバい展開www》

《視聴者数グングン伸びてるやんwwww》

《メシテロの時点で離脱しなくてマジでよかったwwww》

 くそっ! どうする……? アカリの剣技はまだまだ未熟、あの男を抑えられるかどうかは完全に未知数だし、そんないちかばちかでアカリの身を危険にさらすわけにはいかない。いざとなれば僕が盾となって二人を守るしか……。

「アカリ……」

「はい……」

「僕がおとりになる……。その隙に、アカリはこの人を連れて逃げるんだ」

「そんな! ダメです! トベさんを置いてなんて絶対に行けません!」

《朗報。トベ、男気を見せる》

《あれ……? オレ、トベのこと嫌いだったはずなのに……》

《これはプロデューサーの鑑》

《トベ……お前、アカリちゃんのためなら命すらかけられるのか……》

「てめぇらなにゴチャゴチャ話してんだよぉッ! ……き、絆ってやつか……? ムカつくなぁッ! 邪魔だからまずはてめぇらから殺してやろうかッ!」

 男が雄叫びをあげながら突進してきた、まさにそのときだった。

 道横の路地裏からフラリと、一人の酔っぱらいが現れたのは。
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