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第19話 ブレイズの過去
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ゼインさんが点ててくれたお茶と、いかにも高級そうなお茶菓子をいただきながら、僕たちは茶室でブレイズについて語り合った。
「それで、どうじゃ。あやつ、ブレイズは元気そうだったかの?」
「ええ、真っ昼間からお酒をたしなまれてはいましたが、お身体のほうはすこぶる元気そうでしたよ。ブレイズさんとはいまは会われていないのですか?」
「うむ、たしか数年前に会ったのが最後じゃったかのう。そうかそうか、元気にしていたか」
「道で刃物を持った男と女性がトラブルになっていたのですが、ブレイズさんは一瞬でそれを制圧してしまったんですよ。僕たち本当に感動しました!」
「ですですっ! あんなすごい剣技を見たのははじめてでしたっ!」
「ハハハ。お主、アカリ殿と言ったかな? あやつにかかればその程度のことは造作もないことじゃて。なにしろ、ブレイズはワシの数多くの弟子の中でも、群を抜いて剣の才能にあふれていた男だったからな」
「……だった?」
なんだか含みのある言葉にそう問うと、上機嫌だったゼインさんの表情が、みるみるうちに曇っていくのがわかった。
ゼインさんは茶室全体に暗い影を落とすように、ゆっくりと語り始めた。
「……若い頃のブレイズは、ワシがいままで見てきた剣士で一番の天才だったよ。間違いなくこのイーストエリアで最強といえる天才剣士だった。だが、あれはいまから二十年ほど前か、ある『武道会』の日に悲劇は起こったのじゃ……」
『武道会』……それって、どこかで聞き覚えがあるような……?
喉まで出かかってるのにどうしても出てこない、僕がそんなモヤモヤを抱えていると、画面のコメントが指摘の声であふれる。
《武道会って、あのときあの人が言ってたよなwww》
《ああ~! そっか、あいつか! あんなモブみたいな人みんなよく覚えてるなwww》
《えっ、待って、誰? やべぇ、俺全然わからないんだがwww》
《頼む、誰かヒントくれ。ただし答えは絶対言うなよwww》
《ヒントは『剣』に関することwww》
《がんばれ~! 思い出せトベ~!》
なおも答えを出せないでいる僕に、アカリが助け舟を出してくれた。
「トベさん。あの、武道会って、たしか最初に訪問しました道場の方が……」
そうか! あのときだ!
僕はあの道場の、師範代の人が言っていたことを思い出した。
『はっ! それではいつごろお願いできそうでしょうか! 半年ほど前からずっと稽古をつけていただいておりませんし、武道会も近いため、私もそろそろ実践形式の修練に移りたいと……』
たしかに言っていた。その武道会の開催が近いということも。だが、それとブレイズの過去にどんな関係が……?
「このブシドータウンでは一年に一度、それぞれの道場の剣の腕を競う武道大会が開かれておってな。あの二十年前が記念すべき第一回目の開催だった。そこで初代の王者となったのが、いまはこの町でも一番人気の道場となっている、テンペンの道場だったというわけじゃ」
テンペン……あの弟子たちから『先生』と呼ばれていた男……。
「ブレイズさんも言っていました。僕たちがあの道場で教えてもらうのはやめにしたと言ったら、笑ってお前たちは見る目があると。ゼインさんもご存知で?」
ゼインさんは僕の問いに対して、コクリと頷いた。
「しかし、この世界は人気が先行の部分もあるでのう。テンペンの道場が初代の王者となってからは、皆があそこが一番強かった、だから一番良い道場なのだと錯覚し、入門希望者が殺到しておった。皆が皆見る目のある者ばかりではないし、実際趣味程度で剣を習いたい者にとっては、評判は悪くないようじゃよ。ただ、それが実戦で使える剣かというとまた別の話になるが」
人気が先行の部分もある、それは現世の配信の世界でも似たようなもんだったよなぁと、僕は自分の過去と相通ずるものを勝手に感じてしまった。
しかし、それほど強かったブレイズが、なぜテンペンの詐欺寸前道場などに敗れてしまったのか? 問題はそこだ。そこのボタンの掛け違えさえなければ、テンペンの道場がいまのように人気になることはなく、ブレイズはいまも剣を続けていたと思うのだが……。
お茶で一旦喉を潤すと、ゼインさんは言葉を続けた。
「このブシドータウンで初めての武道会、ワシの道場からはブレイズが代表として選ばれた。弟子で一番腕の立つ者を選ぶのは当然じゃからな。いまでもこの選択は間違っていなかったと思っておる。が、いまとなってはこの選択が、いまもなおブレイズを苦しめているのかもしれないと思うと……」
「ブレイズさんが剣を捨ててしまったのって……。ブレイズさんに一体なにがあったんですか?」
ゼインさんの話は、いよいよ核心部分に迫っていこうとしていた。
「ブレイズには将来を約束した女性がおった。名をミモザという」
「それで、どうじゃ。あやつ、ブレイズは元気そうだったかの?」
「ええ、真っ昼間からお酒をたしなまれてはいましたが、お身体のほうはすこぶる元気そうでしたよ。ブレイズさんとはいまは会われていないのですか?」
「うむ、たしか数年前に会ったのが最後じゃったかのう。そうかそうか、元気にしていたか」
「道で刃物を持った男と女性がトラブルになっていたのですが、ブレイズさんは一瞬でそれを制圧してしまったんですよ。僕たち本当に感動しました!」
「ですですっ! あんなすごい剣技を見たのははじめてでしたっ!」
「ハハハ。お主、アカリ殿と言ったかな? あやつにかかればその程度のことは造作もないことじゃて。なにしろ、ブレイズはワシの数多くの弟子の中でも、群を抜いて剣の才能にあふれていた男だったからな」
「……だった?」
なんだか含みのある言葉にそう問うと、上機嫌だったゼインさんの表情が、みるみるうちに曇っていくのがわかった。
ゼインさんは茶室全体に暗い影を落とすように、ゆっくりと語り始めた。
「……若い頃のブレイズは、ワシがいままで見てきた剣士で一番の天才だったよ。間違いなくこのイーストエリアで最強といえる天才剣士だった。だが、あれはいまから二十年ほど前か、ある『武道会』の日に悲劇は起こったのじゃ……」
『武道会』……それって、どこかで聞き覚えがあるような……?
喉まで出かかってるのにどうしても出てこない、僕がそんなモヤモヤを抱えていると、画面のコメントが指摘の声であふれる。
《武道会って、あのときあの人が言ってたよなwww》
《ああ~! そっか、あいつか! あんなモブみたいな人みんなよく覚えてるなwww》
《えっ、待って、誰? やべぇ、俺全然わからないんだがwww》
《頼む、誰かヒントくれ。ただし答えは絶対言うなよwww》
《ヒントは『剣』に関することwww》
《がんばれ~! 思い出せトベ~!》
なおも答えを出せないでいる僕に、アカリが助け舟を出してくれた。
「トベさん。あの、武道会って、たしか最初に訪問しました道場の方が……」
そうか! あのときだ!
僕はあの道場の、師範代の人が言っていたことを思い出した。
『はっ! それではいつごろお願いできそうでしょうか! 半年ほど前からずっと稽古をつけていただいておりませんし、武道会も近いため、私もそろそろ実践形式の修練に移りたいと……』
たしかに言っていた。その武道会の開催が近いということも。だが、それとブレイズの過去にどんな関係が……?
「このブシドータウンでは一年に一度、それぞれの道場の剣の腕を競う武道大会が開かれておってな。あの二十年前が記念すべき第一回目の開催だった。そこで初代の王者となったのが、いまはこの町でも一番人気の道場となっている、テンペンの道場だったというわけじゃ」
テンペン……あの弟子たちから『先生』と呼ばれていた男……。
「ブレイズさんも言っていました。僕たちがあの道場で教えてもらうのはやめにしたと言ったら、笑ってお前たちは見る目があると。ゼインさんもご存知で?」
ゼインさんは僕の問いに対して、コクリと頷いた。
「しかし、この世界は人気が先行の部分もあるでのう。テンペンの道場が初代の王者となってからは、皆があそこが一番強かった、だから一番良い道場なのだと錯覚し、入門希望者が殺到しておった。皆が皆見る目のある者ばかりではないし、実際趣味程度で剣を習いたい者にとっては、評判は悪くないようじゃよ。ただ、それが実戦で使える剣かというとまた別の話になるが」
人気が先行の部分もある、それは現世の配信の世界でも似たようなもんだったよなぁと、僕は自分の過去と相通ずるものを勝手に感じてしまった。
しかし、それほど強かったブレイズが、なぜテンペンの詐欺寸前道場などに敗れてしまったのか? 問題はそこだ。そこのボタンの掛け違えさえなければ、テンペンの道場がいまのように人気になることはなく、ブレイズはいまも剣を続けていたと思うのだが……。
お茶で一旦喉を潤すと、ゼインさんは言葉を続けた。
「このブシドータウンで初めての武道会、ワシの道場からはブレイズが代表として選ばれた。弟子で一番腕の立つ者を選ぶのは当然じゃからな。いまでもこの選択は間違っていなかったと思っておる。が、いまとなってはこの選択が、いまもなおブレイズを苦しめているのかもしれないと思うと……」
「ブレイズさんが剣を捨ててしまったのって……。ブレイズさんに一体なにがあったんですか?」
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