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しおりを挟む快晴の太陽が眩しく輝き、水を上げた薔薇についた滴を宝石のように煌めかせた。
薔薇園の花は生き生きと咲き誇り愛情を込めて手入れされていることが一目観れば感じ取れた。
美しい童話の中に出てくるような庭園は、城のような尖った屋根の白亜色をしたお屋敷を一層引き立てており、幻想的な空間を作り出していた。
白亜の壁に赤色の薔薇と緑の葉が溶け込む中、不釣り合いな格好をした少女が庭園の隅にしゃがみ込んでいた。
日除けの為に被った質素な帽子。
作業する際に邪魔に鳴らないように一つにゆわれた黒髪。
繋ぎの作業着は土がついており、手袋をはめた手には剪定ハサミが握られていた。
腕捲りした肌は日に焼けており、健康的な色合いをしていたが、薔薇の刺で傷ついた傷跡が痛々しくもあった。
「もうすぐでしょうか?」
少女は太陽の位置を確認して、剪定作業をしていた手を止めた。
毎日決まった時間帯にお屋敷の窓から廊下を歩く気品正しいお嬢様の姿を拝見することが出来た。
お嬢様が通りかかる時間帯は少女にとって束の間の休憩時間であり、至福の時でもあった。
自身が手入れした薔薇園の隙間から、お上品なお嬢様のお姿を崇めるのだ。
これほど眼福な時間はないだろう。
この一瞬の為だけに、庭師になったと言っても過言ではない。
金色の長い髪は歩くたびにゆらゆらと揺れ黄金色の波のようだ。髪に太陽の光が反射して天使の輪を生み出す。
穢れのない純白なドレスは余計な飾りがない分、お嬢様の清楚を強調させた。
すらりとした手足は陶器の様に白く滑らかなだ。
一瞬で通り過ぎてしまうお嬢様を見送った後もしばらくの間見目麗しいお姿を思いだし、ひとときの幸せに浸るのであった。
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