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しおりを挟む今日庭師の少女と初めてマトモな会話が成立した。
庭師の少女の話によると、お屋敷にはお嬢様がいるらしい。
青年は自身の姿を鏡に映して滑稽だと嘲笑った。
金色の長髪ウィッグを被り、白いドレスを着た成人間近の男性が鏡に映っているのだ。
滑稽と言わずにはいられない。
庭師の少女は女装した青年を躊躇いなくお嬢様と呼んだ。
誰が見ても女装だと見破れる簡単な女装だ。
化粧もパットもしていない。
庭師の少女がなぜ女装の青年をお嬢様だと思ったのだろうか?
お嬢様が暮らす為だけのお屋敷。
お嬢様の為だけに手入れされた薔薇庭園。
本来このお屋敷に住んでいるはずのお嬢様とはどんな人物だったのだろうか?
新たに得た情報を元に今後の方針を練ることにした。
数日お嬢様として庭師の少女に接触してわかったことがある。
庭師の少女は午前に話しかけても反応しない。
薔薇庭園の作業に没頭しているのだ。
指定された時間帯に廊下を歩いていると、必ず窓の外から庭師の少女が作業の手を止めて、うっとりとした眼差しをお嬢様に向けている。
このときに窓から話しかけてはいけない。
何故ならば、話しかけた深夜の時間帯に茨の蔦が襲いに来るからだ。
初めて茨の蔦に襲われた時ほど過激ではないのだか、地味に痛いので学習した。
お嬢様として庭師の少女と話が出来る時間帯は仕事が終わった後から夕方までだった。
たいした会話は出来ていないが、庭師の少女と対話することは価値がある事だと思っている。
青年は活動パターンを見極め効率の良い行動スケジュールを導きだした。
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