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しおりを挟む幼い頃。薔薇庭園のお屋敷に住んでいた。
我が一族は、厄除けの為に、幼い子供に女装をさせる風習があった。
子供を守る為とう言われれば聞こえはいいが当人にとっては軟禁生活と大差なかった。
お人形のように好きでもない格好をさせられ、自由のきかない行動範囲。
せっかく綺麗に庭園された薔薇さえも、視界に入れることすら許されない。
あの薔薇の形は?色は?品種は?
わからない。
視線を向けたこともない。
色鮮やかな世界のはずなのに、幼き日の思い出は、灰色に塗りつぶされ、歪み、やがて無くなる。
大人になって身分を捨て自由になったけれど、生活は困難で何でもいいから住み込みのバイトを探した。
まさか出ていったはずの屋敷に戻って来るとは思わなかった。
主を失ったはずの薔薇庭園は幼き日と変わらず、いやより美しく色鮮やかに咲き誇っていた。
毎日飽きもせずに丁寧に薔薇を剪定していた人がいるとは知らなかった。
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