魔宝石 

覗見ユニシア

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≪ホーリーの鏡≫編

✡再会は事件の始まり✡

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「ねえ。舞」
「ん?」
「もう冬が近いね」
「やだ。瞳、親父っぽいよ」
「そう?」

 わたしは、頭を掻いた。
 わたしは、武井舞の事を舞と呼べるようになるまで親しくなった。
 舞もわたしの事を安心して瞳と呼んでくれるようになったことが嬉しい。
 今日は、わたしの恋人、葉月 隆と、その友達に会うことになっている。

「遅いな。隆」
「わたし、不安になって来た」
「大丈夫だって」
「で、でも~」
「あ、来たよ。舞しっかり」
「う、うん」

 公園の入り口に隆と友達らしい二人組が現れた。

「よう、瞳」
「隆。ひさしぶり」

 舞は、わたしにしがみついていた。

「そちらの子は、誰だい?」
「武井舞さんよ。結構男子にもてるんだから。ね。舞」
「え、ええ」

 舞は、緊張してしまっている。

「男にモテるんだ」
「そうよね。舞」
「瞳。いじめないでよ」
「ばれた」
「ばればれ」

(ふふ、よかった。舞の緊張がほぐれたみたい)

「あ、こいつは」
「隆、こいつは、って紹介の仕方はないだろう?おれは、渡辺 検事(わたなべ けんじ)て、名前があるんだよ」
「初対面の人に紹介する為に、言ったに決まっているだろう?」
「うふふ」

 舞が笑っている。

「ご、ごめんなさい。つい、面白くて」
「そうだな」

 皆、笑い出していた。
 わたし達うまく友達になれそうな気がする。

「それにしても、何か事件起こらないかな?」
「検事は、本当にミステリー小説の読み過ぎだな」
「あ!」
「どうした。瞳」
「何か事件か?」
「じ、事件。え、ええ~!」

 わたしは、皆の動揺を無視して、気配を探った。

「……何かが、来る」
「な、何かって?」

 舞が、泣きそうな顔をしている。

「きゃ―!」

 その時、悲鳴が聞こえた。

「行ってみよう」
「ああ」

 検事と隆は、悲鳴の聞こえた方に駈け出した。

「待って、二人とも」

 わたしは、舞の腕を握った。

「行こう」
「え?う、うん」

 困惑気味な舞の手を引っ張って、わたしは二人の後を追った。
 悲鳴のした辺りに人だかりが出来ていた。

「隆。何かあったの?」

 一足先に到着していた隆が、わたしの声に気付いて振り返った。

「この人。何か恐ろしい凶器で殺されている」
「きゃー」

 死体を目撃した舞が悲鳴を上げた。

「舞!」

 崩れ落ちそうになる、舞の身体を支えた。

「凶器は、包丁や、ナイフでは無いな」

 死体を観察していた検事が、冷静に判断を下した。
 サイレンの音が聞こえた。
 誰かが通報したのだろう。
 警察官がやってきた。

「普通、昼間の目立つ公園で殺害するか?」

 警察官達が、死体の調査を始める。
 野次馬は、遠巻きに見つめていた。

「では、皆さん。お手数ですが、持ち物検査をさせてもらいますので、一列に並んでください」

 持ち物検査が、始まって、最後のわたしの順番が来た。

「異常なしだな」
「あの」
「ん?」
「何で殺されたか、凶器はわかったんですか?」

 警察官が困った顔をした。

「それが、まだ……」
「そういえば、鈴木さん。事件が発生する直前に、何かが来るって、警戒していたよな。あれって、この殺人事件の犯人を感知したんじゃ?」
「まさか?」

 わたしは、苦笑いを浮かべた。
 しばらくして、警察官達は死体を片付けて帰って行った。
 わたし達は、日蔭を探して、ゆっくりと話をしようと提案した。
 公園内を散策していると、ナンパ男が現れた。

「よう、そこの女。俺と付き合ってくれよ」
「い、いや」
「反応も可愛いね」

 ナンパ男の手が舞に延びようとした時、わたしは、とっさに舞と男の間に入り込み、手を叩き落とした。

「いて。てめーなにしやがるんだ!」
「女の子虐めるのは、やめなよね」
「なんだと。ブス娘!」
「なんですって!」

 わたしは、頭に血が上ってしまった。
 舞を虐めた上に、わたしの事をブス娘ですって。

「この!」

 わたしは、ナンパ男に突進した。

「いって」

 ナンパ男は尻餅をついた。

「事件の後に、事件を起こすのはどうかと思いますけれど」

 確かに、検事の言うことも一理ある。

「さっさと帰って」
「は、はい」

 ナンパ男はあっという間に逃げてしまった。
 逃げ足だけは、速いのだから。
 今日は、物騒な事が続いたから、早く帰宅することにした。



 わたしは、家に帰るとテレビを付けた。
 公園で目撃した傷跡と同様の傷跡を残された被害者が他にもいるようだ。
 凶器は未だ特定されておらず、警察も捜査を強化するらしい。
 電話の音がして、わたしは受話器を手に取った。

「もしもし。鈴木です」
「大変だ。武井さんが攫われたんだ!」
「え?」

 わたしの頭の中は、真白になってしまった。

「瞳?」

 茫然としてしまったわたしの意識を隆が、呼び戻す。

「大丈夫。それで、舞はどこに攫われたの?」
「それは」
「もしかして、わからないの?」
「いや、場所は、犯人によって告げられている。ただ、偽名の可能性が高くて」
「それでも、いいの。舞の居場所を教えて」

 わたしが、懇願すると、隆は、しぶしぶ教えてくれた。

「笑わないでくれよ。犯人は、魔法世界のルンデ城って所に誘拐したから、来いって言ってきたんだ」
「魔法世界」

 この言葉を聞くのは、とても久しぶりだ。
 まさか、隆の口からこの言葉を聞く機会が訪れるとは思ってはいなかったけれども。

「隆。今すぐに、検事を連れて、わたしの家に来て」

 わたしは、それだけ言うと電話を切った。





 数分後。
 隆と検事がわたしの家へとやって来た。

「一緒に、舞を助け出すのを手伝ってほしいの」
 わたしの申し出に、二人は困惑の表情を浮かべた。
「助けたい気持ちはわかるけれども、どうやって、武井さんの所まで行くんだ」
「わからない。でも、今だったら、魔法世界にもう一度行けるような気がする」
「もう一度って?」
「信じてもらえないかもしれないけれど、わたし、一度魔法世界に行ったことがあるの」

 ハヤセ。セール。ローイ。シャイワーブズイの顔が浮かんだ。

「舞をどうしても、連れ戻したいの」

 わたしの必死さが伝わったのか、隆は、うなずいてくれた。

「わかった。瞳を信じるよ。連れ戻そう。武井さんを」
「なんだか、わからないけれど、おもしろそうだから、ついて行くぜ」
「隆。検事。ありがとう」

 わたしは、お守りを握りしめた。
 お守りの中には、ローイの形見の笛が入っていた。
 ローイ。わたし達を魔法世界に連れて行って。
 わたしの心の中に、ハヤセの家の風景が浮かんだ。

「テレポート」

 わたしが、呪文を唱えた瞬間。浮遊感を感じた。
 わたし達は、魔法世界へと旅たった。
 わたしにとっては、なつかしい思い出の場所へ。
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