魔宝石 

覗見ユニシア

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≪ホーリーの鏡≫編

✡小さな町イメ✡

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 青い空がどこまでも続いている。

「ねえ、ローイ。また旅だね」
「そうね」

 ローイは風を切って飛んでいく。
 その度にわたしの髪も風になびく。

「すげー。飛んでいるぞ。おれ」

 検事が興奮気味だ。

「おい。あんまりはりきるなよ。後で疲れるぞ」
「そうだよ。検事」
「だって」

 検事が歯を食いしばる。
 確かに、空を飛ぶ貴重な経験をしてわたしの心も高揚していた。

「町があるな」

 セールが、森の中に小さな町を発見した。

「もうすぐ、日が暮れる。今晩はあの町に泊まろう」

 セール達を乗せたシャイワーブズイが、町へと降り立つ。
 わたし達もその後を追った。




「宿屋を探すか」

 木が立ち並ぶ道を歩いていると、白い髭を生やした老人が、走って来た。

「助けてくれ」

 走って来た白髭の老人は、わたし達の目の前で倒れた。

「どうなさったのですか?」
「この村を救ってくれ」

 白髭の老人をわたしに手を伸ばそうとして、力尽きた。

「おじいさん?おじいさん!」

 わたしがいくら揺すっても、白髭の老人は、目を覚まさなかった。

「ガオー」

 魔物の遠吠えが聞こえた。
 足跡と共に、こちらに近づいてくる。

「瞳。襲われる前に逃げよう」

 隆が、震えながら言った。

「ミト」

 ローイは、わたしの判断を待っている。

(逃げる?そんなこと、わたしには、出来ない。
 だって、本当のミト様だったら、きっとこの町を救うに決まっている)

「ローイ。わたし、この町を魔物から救いたい。だから、隆達を連れて逃げて」
「ミトが、行くなら、わたしも行くわ」
(やっぱり、ローイならわたしに付き添ってくれるよね)
「隆は、安全な所に隠れていて」

 わたしと、ローイは、高く、高く空へと舞いあがった。
 そして、素早く駆け抜ける。

『ガオー』

 魔物はまるで、ティラノサウルスに翅を生やしたかのような姿だった。

「燃え上がれ。魔物」
『ガオ?』
「全然効かないよ?」
(やっぱり、わたしじゃ、駄目なの?)
「炎よ。炎の海よ」
『ガオー!』

 魔物が、炎に焼かれて苦しんでいる。

「ミト大丈夫だったか?」
「来てくれたんだ。セール」
「まあね」

 魔物が、呻き声を上げながら、暴れている。

『ガオ~』

 魔物が、縦長の炎を吐き出した。
 炎の先には

(隆!)

 わたしは、隆の姿を見つけて、冷や汗が出た。

「ローイ。炎の前まで行って!」
「わかったわ」

 一気に、空中から、地上へと降りる。
 風を切って、森を素早く抜ける。

「隆。逃げて!」
「え?」

 炎が、隆の目の前に迫る。

「うわ!」

 隆は、炎を見て、腰を抜かしてしまった。

(間に合って!)
「風よ。風の盾よ」

 わたしは、隆と炎の間に瞬時に入り込むと、風の盾を展開させた。

「水よ。水の雨よ」

 空中に残ったセールが呪文を唱える声が聞こえた。
 その瞬間雨が降り出し、炎を消し去った。
 わたしは、疲れ切って、その場に倒れこんでしまった。




「う、う~ん」
 目を開けると、ランプの明かりが見えた。
 まだ、めまいがする。

「大丈夫?」

 紫色の髪をした女性が、心配そうに、わたしの事を見ていた。

「ええ」
「わたしは、ナル。わたしの話を聞いてくれる?」
「……」

 わたしは、よくわからないけれど、思考回路が回らなかったので、頷いていた。

「わたしね。人間どうして魔法を使えないのか知りたいんだ」
「……?」
「魔法世界の人々はね、人間を恨んでいる」
「……どうして?」
「魔法使いわね、死ぬと魔宝石になるんだ。

 使える魔法によって、種類は違うのだけれども。
 人間は、魔宝石欲しさに、沢山の魔法使いを殺したの。
 その危機を助けて下さったのが、≪神のお助け≫ロミーイト様だったの。
 そうして、人間が魔法世界に来られないようにしてくださった。
 でも最近、巨大な虫型の兵器を使って、魔宝石のみを魔法使いから奪う輩が現れたの」

「……」
「だから、魔法が使えない魔法使いが、沢山いるのよ」
(それって、クミロトードの町で、起こった現象と同じ)
「それ以上、言うな」

 突然部屋のドアが開いて、威厳に満ちた老人が現れた。

「おじいちゃん。どうして話してはいけないの?やっと魔法が使える魔法使いが現れたのに」
「入りたまえ」

 ナルの祖父の指示で、セール達も部屋へと入って来た。

「そこの小娘は、人間だと言ったな」
「はい」

 ナルは、驚いた顔をした。

「嘘よ。この子が、人間だなんて」

 ナルが、「やった」とか「大発見だわ」とか一人で騒ぎ出した。

「馬鹿者!」

 ナルの祖父の一括で、ナルは黙り込んだ。

「人間がどうやって魔法世界に来た」

 わたしは、ナルの祖父にも、魔法世界に来た経緯を説明した。
 ナルの祖父は、しばらく考えるそぶりをした。

「今日は、泊って行け。明日ナルにルンデ城までのテレポートの術をさせる」
「ありがとうございます」

 その晩、ナルの質問攻めに会い、わたしは、すこし疲れた。





 次の日。
 窓を開けると、外はまだ日が昇って居なかった。
 ひんやりとした風が、部屋の中に入り込む。

(今日、ルンデ城に行けるんだ。
 かならず、舞を助けて、人間世界に帰るんだ)

「じゃあ。準備はいい?」

 朝食を済ませた後。
 わたし達は、ナルの用意してくれた魔法陣に乗った。

「じゃあ。手をつないでね」

 皆で円を描くように手を繋ぐ。

「では、行ってらっしゃい」

 ナルが呪文を呟くと、わたし達は、ルンデ城へと旅立った。
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