盗賊は風を纏い、海賊は水を纏う。

覗見ユニシア

文字の大きさ
47 / 115
海賊編 第三章 ノリ―ア姫

47

しおりを挟む

「エレメンタル大陸の五つの王国は、隣国の島国の住人の移住は認めても、隣国の島国に援軍を送ることは、拒否したのでございます」
「それは、なぜだ?」
「他国の島国を救出に向かうほどの余分な戦力は、エレメンタル大陸には、ないとのこと判断でした。しかし、ジイは、その協議に納得出来なかったのでございます。ですので、ラセ様に頼んだのでございます」
「ラセに頼んだって、王国の部隊に所属しているのだ。王国の許可が取れなければ、動けるわけが、無いだろう?」

 クレイ言い分は、もっともだ。

「フォーチューン国が、困っているのですか?」

 ラセの言葉に、ジイは、頷いた。

「今は、まだ闇の霧の脅威は、フォーチューン国の本島までは、辿りついてはいません。
 ですが、いつかは、避けられないでしょう」

 ラセは、服の上から、指輪を握りしめた。
 ラセが、嫁ぎに行く予定だった所は、フォーチューン国だった。
 ウェイルの故郷でもある国。
 その国までも、闇の帝国に奪われてしまうのは、悔しかった。
 それに、ラセには、精霊達も味方してくれるし、セントミアもいる。
 せっかく手に入れた有力な闇の霧の手がかり。
 手放したくはない。
 それが、温かみのある食事との別れだとしても。

「ジイさん。李祝の正確な場所の地図を頂けますか?
 出来れば、船の乗り場も」

 ラセの申し出に、ジイは目を細めた。

「ラセ!この申し出を受けると言うことは、王国に逆らう行為になるのだぞ!」
「だったら、今から、闇の霧対策部隊を抜ける。これで、問題はないはず」
「ラセ!そういう問題じゃない。王国に逆らうことが、どれほど危険な事か」
「知っている。この身を持って体験して来たから」

 ラセは、氷の底の様に冷たい眼差しをした。
 クレイは、ラセの威圧感に負けて黙り込んだ。

「ラセ」

 ノーリア姫が、ラセの手を握りしめた。

「また、貴方を辛い目に会わせてしまうのですね」

 ラセは、ノーリア姫の手を握り返した。

「ノーリア姫のせいではありません」
「ラセ。わたくしをゆるしてくれますか?」

 また泣き出してしまいそうな、ノーリア姫を出来るだけ優しい笑みになるように、ラセは見つめた。

「ノーリア姫は、何も悪くありません」
「ラセ」
「悪いのは、周りに会わせて、ごまかす事の出来なかった私です」

 ノーリア姫は、俯いて泣き出してしまった。
 ノーリア姫には、きっとラセの正体がばれているのだろうなと確信していた。

 幼い頃。まだノーリア姫と知り合ったばかりの頃。
 ラセは、周りの人間に会わせることが出来なかった。
 だから、ノーリア姫に嘘つきと呼ばれた。
 周りの人にも、嘘吐きと呼ばれた。
 ウェイルだけは、嘘吐きと呼ばなかった。
 だから、逃げるようにウェイルの居る国へと嫁いだのだと思う。

 結局それもかなわなくて、ラセの居場所は、王国のどこにも無くなってしまって。
 王国を敵に回した時の怖さは、誰よりも知っているつもりだった。
 王国の恩恵に見捨てられた時の苦しみは、誰よりもわかるつもりだった。
 だから、李祝を助けたいと思った。
 たとえ、誰を敵に回しても、大切な事を守れないのならば、何の意味もないのだから。

「ラセ様なら、そうおっしゃってくれると思っておりました。
 地図を渡しますので、ついてきていただけますか?」
「わかりました」

 ジイの言葉に、ラセは、立ち上がった。

「今まで、お世話になりました」

 ラセは、その場に居る全員にお辞儀をすると、ジイと共に部屋から出て行く。

「おい。本当にラセ一人でこのままだと行っちまうぞ!いいのかよ!」

 ラセとジイが居なくなった室内。
 ルイが、声を張り上げた。

「王国の決断に逆らう者は、王国の敵だ。
 次に会うときは、討伐命令が出ているかもな」

 クレイが、自虐的に告げた。

「そんな」

 ルイは、動揺のあまり、床に座り込んだ。

「どうして、なんで、ただ、ラセは、闇の霧に悩まされる人達を助けたいって思っただけなのに」
「ラセ一人で何が出来る?たとえ無事に李祝に辿りついたとしても、闇の帝国に返り討ちに会うだけだ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

処理中です...