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海賊編 第八章 棺
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しおりを挟む「ラセ大丈夫かい?」
目的地にたどり着いたマムが、荷台に積んでいた大きな荷物の箱を開けた。
「大丈夫。それよりも棺は」
箱の中に潜んでいたラセは外に出ると、地面に着地した。
「これだよ。合っているかい」
マムは黒い棺を指差した。
「……たぶん合っていると思う」
「なら、さっさとずらかろうぜ。ここ墓ばかりで薄気味悪いぜ」
ガベルは辺りを見渡して震えた。
確かに、墓があちらこちらにあり、薄暗い場所だった。
「先代王家の墓を薄気味悪い扱いしているんじゃないよ」
文句を垂れながらも、ガベルとマムは大きな箱に棺を積み込む。
「ひさしぶりね。セラ」
ラセは、昔の名を呼ばれて、振り返った。
「誰!」
奥から出てきた女性を見て、ラセは身体を震わせた。
「王妃……様」
「堅苦しい言い方は無にしましょう。セラ。いいえ今はラセと名乗っているのだったかしら」
「どうして、ここに」
ラセは、震えながら、後ろへと下がった。
「あなたが棺を探している事をウェイル王子から窺ったの。
それで、どうしても会いたくなって、マムとノーリア姫に協力してもらったの」
「マムに?」
ラセは、マムを見た。
「さすがに王妃の望みじゃ断れないからね」
マムは、いたずらがばれた子供の様な笑みを浮かべた。
「私の事をだましていたの?」
「強引な手段を使わないと、会わせることも出来なかったからね」
「親分が途中で参加されたことは、予想外だったけれど、会えて嬉しいわ」
「元気そうで、なによりだ。ロティーラ」
ガベルとロティ―ラ王妃は抱擁を交わした。
ラセは、すがる物を探して胸元を擦る。
でも、婚約指輪は無くて、焦りばかりがこみ上げる。
「セラ。ずっと放置してごめんなさい。
でも、ずっと心配で会いたかったわ」
「……ならどうして、助けてくれなかったの。
精霊が見えると嘘吐き呼ばわりされた時。
闇の霧の間者と疑われて、公開処刑された時。
どうして、庇ってくれなかったの。
私は、ずっと父上と母上にすがりたかった。
味方で居てほしかったのに!」
泣き崩れたラセの肩にロティーラは手を置いた。
「セラ。あなたは、人間の中でも二つの属性を宿す特別な存在。
闇の帝国は、あなたのような存在を産みだしたくなくて、ずっと前に水の国と風の国の
王子セイハと王女であるわたしの婚約を破談にしようとした。
わたし達は、どうしてもあなたに闇の帝国と立ち向かってもらう必要があった。
辛い思いをさせたことを後悔しているわ。
でも、強くなってほしかった」
「……」
「わたし達が成し遂げられなかったことを、あなたに押し付けてしまっているのだと、自覚はしているわ。
でもお願い。この世界を闇の帝国より救うことができるのは、あなただけなの」
ロティーラ王妃にお願いされたラセはどう対応してよいかわからなかった。
ただ、身体から震えが収まっているのを感じた。
望まれるのは、闇の帝国を倒す事だけ。
ラセは今までの辛さがどうでもよくなった。
心配そうにラセを見守るロティーラ王妃と視線を合わせる。
何年ぶりだろうか?ロティーラの顔をきちんと見るのは。
ロティーラ王妃は、ラセと視線が合うと微笑んだ。
ラセは、片膝を付いた。
「ロティーラ王妃。私は、かならずや、闇の帝国を打ち取りましょう」
「セラ」
ロティーラ王妃は、悲しげな表情を浮かべた。
そしてしゃがみ込み、頭を下げたままのラセを抱きしめた。
「王妃…様?」
「お母さんって呼んでくれないの?」
ラセを優しく包み込むロティーラ王妃のぬくもりを感じた。
ラセは目を閉じて、ロティーラ王妃のぬくもりを味わう。
「王妃から離れな。侵入者!」
武器を振り、風を切る音がした。
「イハ!どうしてここに!」
墓場にやってきたイハ王子に気付きロティーラはラセから身体を離した。
やわらかい体温が無くなったことを寂しく感じた。
「こそこそしている怪しい連中が城に侵入していれば、気になって尾行するのは当然だろ」
イハ王子は、棍棒を肩に担いだ。
「おまけに、亡霊を語って、王妃に取り入ろうとするとは、怪しからん輩だ」
「違うわ。この人達はわたしが招いたのです」
「心優しい王妃は騙されているだけだ。
風の国の王子の名に懸けて成敗してやる」
イハ王子は、棍棒をラセめがけて振り回した。
「駄目!」
イハ王子とラセの間にロティーラ王妃が割り込む。
イハ王子はロティーラ王妃に棍棒が当たりそうになる寸前で軌道を逸らした。
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