盗賊は風を纏い、海賊は水を纏う。

覗見ユニシア

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海賊編 第八章 棺

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 ロティーラ王妃は、祝福の笑みを浮かべた。
 それとは、対照的にラセの表情は青ざめていた。
 ルイはロティーラ王妃にラセの所有権を求めた。
 それは、つまり、ラセがセラ姫であることが、ばれた事を意味する。

「これで、ラセは、俺の物だな。もう一人にしないから」

 戻って来たルイが得意げに微笑んだ。

「……」

 ラセは、怯えた小動物のように、近寄って来たルイを避けた。

「ラセ?」

 ルイが訝しげな表情を浮かべる。
 全員の視線がラセに集中する。
 ラセは、怖くなって、しゃがみ込んだ。

「来ないで!」

 ラセの拒絶に反応して、風の精霊が墓地に舞う。
 強風にルイはよろめいた。

「ラセ!」
「……いつ知ったの?私の正体」

 おびえるラセを刺激しないように、ルイは一定の距離を保った。

「最初にラセがセラ姫だって気付いたのは、クレイだった。
 クレイの両親は、末姫がウェイル王子の嫁ぎ先へ向かう船を任されていた。
 闇の霧に襲われて、帰って来なくなって。セラ姫だったラセに八つ当たりをしたんだ。
 クレイとチャナの行動を気付けなくて、止められなくて悪かったと思っている」

 ラセは、ルイの言葉を黙って聞く。

「前に『どうして、闇の霧対策部隊の海賊船に乗っているの?』って俺に聞いたよな。
 その時『海賊船は、俺の家みたいな者で、家族が闇の霧と戦うのならば、俺も戦う?みたいな感じ?』って適当に答えたら、ラセ怒ったよな。
 『私は、人生をかけている』んだって。
 あの時、明確な決意を示せなかったけれど、
 今ようやく、胸を張って言える。
 俺は、ラセが闇の帝国に立ち向かうから、闇の帝国と戦う。
 ラセが何者でも、かまわない。
 俺が傍に居たくて、一人にしたくないから、どこまでもついて行く」
「……ルイはお人よしなだけ、だと思う。
 どうして、私の為にここまでしてくれるの?
 私は、ルイに何もしてあげられないのに」

 誰かと親しくなるのが怖くて、そっけない態度しか取れなかった。
 それなのに、ルイはいつでも優しくて、ラセを気にかけてくれる。
 ラセは、ルイの行動が不思議で仕方がなかった。

「俺もよくわかんないけどさ。
 ラセの必死さに、心奪われたのだと思う」
「私は、必死じゃない。
 本当はいつでも逃げ出したくて仕方がなかった。
 でも、私にしか出来ないことだから、仕方がなく耐えてきた」
「ラセの独りよがりなところが、見ていて辛かった。
 どうして、誰かに頼ろうとしないのだろうって。
 俺じゃ力不足だってわかっているけれど、頼ってもらえないのは寂しかった」
「自分は異質な存在だから、いつも皆に溶け込めなかった。
 誰かを信じて、裏切られるのが、怖かった。
 嘘付きって、呼ばれたくなかった!」
「ラセ」
「ウェイルは、私の事を嘘吐きと呼ばなかった。
 だから、すがった。でも、現実から目を反らして逃げているだけだって気付いていた。
 ウェイルが、優しかったのは、水の大精霊の命令だったからだって知った時ショックだった。ウェイルが、親友のホークと仲が良いのを見て、嫉妬した。
 家族だって言ってくれたクレイに殺意を向けられて、悲しかった。
 ルイと約束を果たしたかった!」

 ラセは、いままでため込んでいた想いを吐き出していた。
 泣きながら、ラセは叫んでいた。
 ルイは、ゆっくりとした足取りでラセに近づくと、背中をあやすようにさすった。

「ため込まなくたって、いいんだ。俺は、何でも聞いてやるから」

 ルイの言葉が、疲れ切ったラセの心に優しくしみこんだ。

「うん」

 今だけは、ルイに甘えて居たかった。



「こうやって、話をするのは、十年ぶりか?」

 セイハ王は、向かいに立つ青年に向けて声をかけた。

「そうだね。セラ姫が嫁ぎに行く前が最後だったから」

 セイハ王に対面するウェイルは、闇の霧を極限まで薄めるように努力していた。

「今日は、セラに会えるかもしれない大事な日だったのだが」
「その機会をロティーラ王妃に作るきっかけを作ってあげたのは、僕なんだけどね」
「それで、大事な話とはなんだ?あまり時間を取れないのだが」
「そうだね。僕にも時間はないし、一言だけ告げて置くよ」
「?」
「もうすぐ、闇の帝国との最終決戦が始まる。
 その為に、フォーチューン国と協力して戦力を蓄えておくといい」
「ふっ。忠告されなくても、そのつもりだ」

 セイハの言葉に満足したウェイルは、闇の霧に溶け込み姿を消した。
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