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第一章:転生と旅立ち
マイラに説教されて、俺も少しは反省した
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レベル4を超えるころには、ミンミンのHP、MPも40を超えた。
(レベル1あたり10増えるらしいので計算が楽だ)
こうなると低レベルモンスター相手のクエストは余裕でクリアできるので、1日に複数のクエストが可能だ。
お金も順調に増えている。
・・しかし、問題がひとつだけあった。
せっかくスタンガンを持たせたにもかかわらず、ミンミンはまったく使用しないのだ。
おかげで毎回ミンミンはダメージを負い、回復呪文でなんとかしている有様だ。
「どうしてスタンガンを使わない?スライム系には特に有効なはずだぞ。いちいちダメージを負っているんじゃ、上位のクエストに進めないじゃないか」
「申し訳ございません。ミンミンはどうも攻撃は苦手なのです」
「苦手ってそんな難しいもんじゃないよ。敵に押し当ててスイッチ押すだけじゃない」
「・・・・」
「とにかくもう少し自分の身を護ってくれ」
━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━
「あんた、やっぱり馬鹿ね。女の子の気持ちがまったくわかってない」
俺は朝に家の近所で遭遇したマイラにまた怒られている。
ミンミンの事を彼女に相談したのは間違いだったか。。
「ミンミンちゃんがどうしてヒーリング専門の魔法使いなのか考えたことある?」
「え?いや、そっちのが得意なんじゃないの?」
「馬鹿。彼女は相手を傷つける攻撃魔法が嫌だから癒しの魔法に専念したんじゃない。なのにそんな武器渡したって使うわけないでしょ」
・・・そうなのか?気づかなかった。
「もちろんそれは冒険者としては失格よ。でも無理強いしちゃダメ。マーカスがリーダーとしてもう少し暖かく見守ってあげなきゃ」
俺がミンミンにスタンガンをあげたとき、てっきり喜んでいると思っていたが違っていたのか。
たしかに俺は女の子の気持ちがわかっていないようだ。
「わかった。気を付けるよ。ミンミンには無理をさせないようにする」
━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━
マイラに説教されて、俺も少しは反省した。
今朝は町の北方面、やや遠方の地で単価の高い希少種のスライムであるラピススライムを狩ることにしたのだ。
ラピススライムはその美しい瑠璃色から、王族や貴族の衣類を染める高級染料の材料となる。
希少なうえ守備力が通常のスライムより高いため、買取単価は1000キルトにもなる。
遠方でも荒稼ぎすればミンミンのテレポの呪文で一気に町のギルドに帰れる。
俺たちは森に囲まれた沼地を今日の狩場に選んだ。
「ミンミン、昨日は無理言ってすまなかった。お前は俺が守るから攻撃はしなくていい。しかしスタンガンはどうしても身に危険があるときだけは使ってくれ。いいな」
「マーカス様・・・」
「ごめん。俺、マイラに怒られちゃった。俺はぜんぜんミンミンの気持ちがわかってなかったよ。反省している」
「・・・まだです。。」
「え?」
「なんでもありません。ではラピススライムを集めましょう」
ミンミンは例によってかわいらしいフォームでマキエスの呪文を唱えた。
あたりに甘い香りが漂う。
しかし、しばらく待っているとそれをかき消すような嫌な臭いが漂ってきた。
まるでプラスチックを燃やすような、気分の悪くなる悪臭である。
あたりの森からぷよぷよしたスライムがたくさん現れた。
「マーカス様、へんですわ。あれはラピススライムではありません!」
たしかにそのスライムたちはラピスの瑠璃色ではなく、蛍光グリーンで全身に気泡のようなものが浮かび上がっていて、それが割れると悪臭のガスを放つ。
これが胸の悪くなる匂いの原因だ。
「なんだ?こいつらは?」
「わかりません。おそらく変異種ですわ。マーカス様、お気を付けください」
気味の悪い変異種のスライムは続々と俺たちに迫って来た。
俺は近づいてくるスライムを片っ端からぶん殴り蹴散らした。
大きなスライムがその体を持ち上げて、小柄なミンミンを飲み込もうとしている。
俺はあわてて、そのスライムをひっ掴み、投げ捨てた。
このあたりで俺は自分の身体に異変を感じた。
手足が痺れる。気分が悪く額から冷や汗が流れている。
おかしい、俺のHPは無限大だから、ダメージは負わないはずなのに。。
全身に痺れが回り、動きの鈍くなった俺の足元から変異種スライムが這い上がってくる。
これはかなりヤバいんじゃなかろうか?
バチッ!!と音がした。
ミンミンがスタンガンを使って、その変異種スライムに電撃を加えている。
スライムはキュンという声を上げて縮みあがりひっくり返った。
衝撃や斬撃には比較的強いスライム種は、炎と電撃には弱いのだ。
しかしそのミンミンにも変異種スライムが這い上がっている。
「ぽ、い、ず、な、い !」
ミンミンは俺にワンドを押し当てて毒消しの呪文を唱えた。
急速に体力を回復した俺は鞄からヌンチャクを取り出し、変異種スライムを次々に倒した。
すべてのスライムがひっくり返ったところで見ると、ミンミンもひっくり返っている。
「ミンミン!」
駆け寄るとミンミンが応えた。
「マーカス様、ご無事ですか?」
「俺はお前の魔法のおかげで無事だ。それより早く自分を回復させろ」
「はい」
そう言うとミンミンはようやくポイズナイとナオルンの呪文を唱えた。
ミンミンはいつもこうだ。
自分のためにはスタンガンを使わなかったのに、俺のピンチにはためらわず使った。
俺の無事を確認するまで自分には回復呪文を使わない。
・・・鈍感な俺にもわかるさ。これは仲間意識なんかじゃない。
これは愛だ。間違いなくミンミンは俺=マーカスを愛している。
しかし俺にはミンミンのピュアで一途な愛に応える資格はない。
俺はあまりにもこの世界で女たちの愛を弄び過ぎているからだ。
俺は変異種スライムを鞄に回収するとミンミンに声をかけた。
「ミンミン、レベルが上がったぞ。HPに余裕ができたから、ゆっくり歩いて帰ろう」
「はい、マーカス様」
ミンミンはぴょこんと立ち上がった。
◆マーカス
レベル:7
職業:戦士
スキル:カラテ
魔法:ググル ツーハン エレクトロ
武器:サイ ヌンチャク トンファー
防具:チョーキの道着 チョーキの防具
アイテム:魔法の鏡
所持金:128000キルト
◆ミンミン
レベル:5
HP:50
MP:35/50
職業:魔法使い
スキル:王立ラミラス魔法アカデミー卒
魔法:ナオルン ポイズナイ マキエス テレポ ミナオルン ミナポイズナイ
武器:スタンガン
防具:魔法使いのローブ
アイテム:魔法使いのワンド
(レベル1あたり10増えるらしいので計算が楽だ)
こうなると低レベルモンスター相手のクエストは余裕でクリアできるので、1日に複数のクエストが可能だ。
お金も順調に増えている。
・・しかし、問題がひとつだけあった。
せっかくスタンガンを持たせたにもかかわらず、ミンミンはまったく使用しないのだ。
おかげで毎回ミンミンはダメージを負い、回復呪文でなんとかしている有様だ。
「どうしてスタンガンを使わない?スライム系には特に有効なはずだぞ。いちいちダメージを負っているんじゃ、上位のクエストに進めないじゃないか」
「申し訳ございません。ミンミンはどうも攻撃は苦手なのです」
「苦手ってそんな難しいもんじゃないよ。敵に押し当ててスイッチ押すだけじゃない」
「・・・・」
「とにかくもう少し自分の身を護ってくれ」
━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━
「あんた、やっぱり馬鹿ね。女の子の気持ちがまったくわかってない」
俺は朝に家の近所で遭遇したマイラにまた怒られている。
ミンミンの事を彼女に相談したのは間違いだったか。。
「ミンミンちゃんがどうしてヒーリング専門の魔法使いなのか考えたことある?」
「え?いや、そっちのが得意なんじゃないの?」
「馬鹿。彼女は相手を傷つける攻撃魔法が嫌だから癒しの魔法に専念したんじゃない。なのにそんな武器渡したって使うわけないでしょ」
・・・そうなのか?気づかなかった。
「もちろんそれは冒険者としては失格よ。でも無理強いしちゃダメ。マーカスがリーダーとしてもう少し暖かく見守ってあげなきゃ」
俺がミンミンにスタンガンをあげたとき、てっきり喜んでいると思っていたが違っていたのか。
たしかに俺は女の子の気持ちがわかっていないようだ。
「わかった。気を付けるよ。ミンミンには無理をさせないようにする」
━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━
マイラに説教されて、俺も少しは反省した。
今朝は町の北方面、やや遠方の地で単価の高い希少種のスライムであるラピススライムを狩ることにしたのだ。
ラピススライムはその美しい瑠璃色から、王族や貴族の衣類を染める高級染料の材料となる。
希少なうえ守備力が通常のスライムより高いため、買取単価は1000キルトにもなる。
遠方でも荒稼ぎすればミンミンのテレポの呪文で一気に町のギルドに帰れる。
俺たちは森に囲まれた沼地を今日の狩場に選んだ。
「ミンミン、昨日は無理言ってすまなかった。お前は俺が守るから攻撃はしなくていい。しかしスタンガンはどうしても身に危険があるときだけは使ってくれ。いいな」
「マーカス様・・・」
「ごめん。俺、マイラに怒られちゃった。俺はぜんぜんミンミンの気持ちがわかってなかったよ。反省している」
「・・・まだです。。」
「え?」
「なんでもありません。ではラピススライムを集めましょう」
ミンミンは例によってかわいらしいフォームでマキエスの呪文を唱えた。
あたりに甘い香りが漂う。
しかし、しばらく待っているとそれをかき消すような嫌な臭いが漂ってきた。
まるでプラスチックを燃やすような、気分の悪くなる悪臭である。
あたりの森からぷよぷよしたスライムがたくさん現れた。
「マーカス様、へんですわ。あれはラピススライムではありません!」
たしかにそのスライムたちはラピスの瑠璃色ではなく、蛍光グリーンで全身に気泡のようなものが浮かび上がっていて、それが割れると悪臭のガスを放つ。
これが胸の悪くなる匂いの原因だ。
「なんだ?こいつらは?」
「わかりません。おそらく変異種ですわ。マーカス様、お気を付けください」
気味の悪い変異種のスライムは続々と俺たちに迫って来た。
俺は近づいてくるスライムを片っ端からぶん殴り蹴散らした。
大きなスライムがその体を持ち上げて、小柄なミンミンを飲み込もうとしている。
俺はあわてて、そのスライムをひっ掴み、投げ捨てた。
このあたりで俺は自分の身体に異変を感じた。
手足が痺れる。気分が悪く額から冷や汗が流れている。
おかしい、俺のHPは無限大だから、ダメージは負わないはずなのに。。
全身に痺れが回り、動きの鈍くなった俺の足元から変異種スライムが這い上がってくる。
これはかなりヤバいんじゃなかろうか?
バチッ!!と音がした。
ミンミンがスタンガンを使って、その変異種スライムに電撃を加えている。
スライムはキュンという声を上げて縮みあがりひっくり返った。
衝撃や斬撃には比較的強いスライム種は、炎と電撃には弱いのだ。
しかしそのミンミンにも変異種スライムが這い上がっている。
「ぽ、い、ず、な、い !」
ミンミンは俺にワンドを押し当てて毒消しの呪文を唱えた。
急速に体力を回復した俺は鞄からヌンチャクを取り出し、変異種スライムを次々に倒した。
すべてのスライムがひっくり返ったところで見ると、ミンミンもひっくり返っている。
「ミンミン!」
駆け寄るとミンミンが応えた。
「マーカス様、ご無事ですか?」
「俺はお前の魔法のおかげで無事だ。それより早く自分を回復させろ」
「はい」
そう言うとミンミンはようやくポイズナイとナオルンの呪文を唱えた。
ミンミンはいつもこうだ。
自分のためにはスタンガンを使わなかったのに、俺のピンチにはためらわず使った。
俺の無事を確認するまで自分には回復呪文を使わない。
・・・鈍感な俺にもわかるさ。これは仲間意識なんかじゃない。
これは愛だ。間違いなくミンミンは俺=マーカスを愛している。
しかし俺にはミンミンのピュアで一途な愛に応える資格はない。
俺はあまりにもこの世界で女たちの愛を弄び過ぎているからだ。
俺は変異種スライムを鞄に回収するとミンミンに声をかけた。
「ミンミン、レベルが上がったぞ。HPに余裕ができたから、ゆっくり歩いて帰ろう」
「はい、マーカス様」
ミンミンはぴょこんと立ち上がった。
◆マーカス
レベル:7
職業:戦士
スキル:カラテ
魔法:ググル ツーハン エレクトロ
武器:サイ ヌンチャク トンファー
防具:チョーキの道着 チョーキの防具
アイテム:魔法の鏡
所持金:128000キルト
◆ミンミン
レベル:5
HP:50
MP:35/50
職業:魔法使い
スキル:王立ラミラス魔法アカデミー卒
魔法:ナオルン ポイズナイ マキエス テレポ ミナオルン ミナポイズナイ
武器:スタンガン
防具:魔法使いのローブ
アイテム:魔法使いのワンド
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