悪役令嬢なにそれ?レベルのおっさん、美少年戦士に転生して異世界最強チートの勇者を目指します

冨井春義

文字の大きさ
19 / 44
第一章:転生と旅立ち

マイラに説教されて、俺も少しは反省した

しおりを挟む
レベル4を超えるころには、ミンミンのHP、MPも40を超えた。
(レベル1あたり10増えるらしいので計算が楽だ)

こうなると低レベルモンスター相手のクエストは余裕でクリアできるので、1日に複数のクエストが可能だ。
お金も順調に増えている。

・・しかし、問題がひとつだけあった。

せっかくスタンガンを持たせたにもかかわらず、ミンミンはまったく使用しないのだ。
おかげで毎回ミンミンはダメージを負い、回復呪文でなんとかしている有様だ。

「どうしてスタンガンを使わない?スライム系には特に有効なはずだぞ。いちいちダメージを負っているんじゃ、上位のクエストに進めないじゃないか」

「申し訳ございません。ミンミンはどうも攻撃は苦手なのです」

「苦手ってそんな難しいもんじゃないよ。敵に押し当ててスイッチ押すだけじゃない」

「・・・・」

「とにかくもう少し自分の身を護ってくれ」



━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━


「あんた、やっぱり馬鹿ね。女の子の気持ちがまったくわかってない」

俺は朝に家の近所で遭遇したマイラにまた怒られている。
ミンミンの事を彼女に相談したのは間違いだったか。。

「ミンミンちゃんがどうしてヒーリング専門の魔法使いなのか考えたことある?」

「え?いや、そっちのが得意なんじゃないの?」

「馬鹿。彼女は相手を傷つける攻撃魔法が嫌だから癒しの魔法に専念したんじゃない。なのにそんな武器渡したって使うわけないでしょ」

・・・そうなのか?気づかなかった。

「もちろんそれは冒険者としては失格よ。でも無理強いしちゃダメ。マーカスがリーダーとしてもう少し暖かく見守ってあげなきゃ」

俺がミンミンにスタンガンをあげたとき、てっきり喜んでいると思っていたが違っていたのか。

たしかに俺は女の子の気持ちがわかっていないようだ。

「わかった。気を付けるよ。ミンミンには無理をさせないようにする」


━━…━━…━━…━━…━━…━━━━…━━…━━…━━…━━…━━


マイラに説教されて、俺も少しは反省した。

今朝は町の北方面、やや遠方の地で単価の高い希少種のスライムであるラピススライムを狩ることにしたのだ。
ラピススライムはその美しい瑠璃色から、王族や貴族の衣類を染める高級染料の材料となる。
希少なうえ守備力が通常のスライムより高いため、買取単価は1000キルトにもなる。

遠方でも荒稼ぎすればミンミンのテレポの呪文で一気に町のギルドに帰れる。

俺たちは森に囲まれた沼地を今日の狩場に選んだ。

「ミンミン、昨日は無理言ってすまなかった。お前は俺が守るから攻撃はしなくていい。しかしスタンガンはどうしても身に危険があるときだけは使ってくれ。いいな」

「マーカス様・・・」

「ごめん。俺、マイラに怒られちゃった。俺はぜんぜんミンミンの気持ちがわかってなかったよ。反省している」

「・・・まだです。。」

「え?」

「なんでもありません。ではラピススライムを集めましょう」

ミンミンは例によってかわいらしいフォームでマキエスの呪文を唱えた。

あたりに甘い香りが漂う。
しかし、しばらく待っているとそれをかき消すような嫌な臭いが漂ってきた。

まるでプラスチックを燃やすような、気分の悪くなる悪臭である。

あたりの森からぷよぷよしたスライムがたくさん現れた。

「マーカス様、へんですわ。あれはラピススライムではありません!」

たしかにそのスライムたちはラピスの瑠璃色ではなく、蛍光グリーンで全身に気泡のようなものが浮かび上がっていて、それが割れると悪臭のガスを放つ。
これが胸の悪くなる匂いの原因だ。

「なんだ?こいつらは?」

「わかりません。おそらく変異種ですわ。マーカス様、お気を付けください」

気味の悪い変異種のスライムは続々と俺たちに迫って来た。

俺は近づいてくるスライムを片っ端からぶん殴り蹴散らした。

大きなスライムがその体を持ち上げて、小柄なミンミンを飲み込もうとしている。
俺はあわてて、そのスライムをひっ掴み、投げ捨てた。

このあたりで俺は自分の身体に異変を感じた。

手足が痺れる。気分が悪く額から冷や汗が流れている。
おかしい、俺のHPは無限大だから、ダメージは負わないはずなのに。。

全身に痺れが回り、動きの鈍くなった俺の足元から変異種スライムが這い上がってくる。
これはかなりヤバいんじゃなかろうか?


バチッ!!と音がした。


ミンミンがスタンガンを使って、その変異種スライムに電撃を加えている。
スライムはキュンという声を上げて縮みあがりひっくり返った。

衝撃や斬撃には比較的強いスライム種は、炎と電撃には弱いのだ。

しかしそのミンミンにも変異種スライムが這い上がっている。

「ぽ、い、ず、な、い !」

ミンミンは俺にワンドを押し当てて毒消しの呪文を唱えた。

急速に体力を回復した俺は鞄からヌンチャクを取り出し、変異種スライムを次々に倒した。
すべてのスライムがひっくり返ったところで見ると、ミンミンもひっくり返っている。

「ミンミン!」

駆け寄るとミンミンが応えた。

「マーカス様、ご無事ですか?」

「俺はお前の魔法のおかげで無事だ。それより早く自分を回復させろ」

「はい」

そう言うとミンミンはようやくポイズナイとナオルンの呪文を唱えた。

ミンミンはいつもこうだ。
自分のためにはスタンガンを使わなかったのに、俺のピンチにはためらわず使った。
俺の無事を確認するまで自分には回復呪文を使わない。

・・・鈍感な俺にもわかるさ。これは仲間意識なんかじゃない。

これは愛だ。間違いなくミンミンは俺=マーカスを愛している。

しかし俺にはミンミンのピュアで一途な愛に応える資格はない。
俺はあまりにもこの世界で女たちの愛を弄び過ぎているからだ。

俺は変異種スライムを鞄に回収するとミンミンに声をかけた。

「ミンミン、レベルが上がったぞ。HPに余裕ができたから、ゆっくり歩いて帰ろう」

「はい、マーカス様」

ミンミンはぴょこんと立ち上がった。



◆マーカス
レベル:7
職業:戦士
スキル:カラテ
魔法:ググル ツーハン エレクトロ
武器:サイ ヌンチャク トンファー
防具:チョーキの道着 チョーキの防具
アイテム:魔法の鏡 
所持金:128000キルト

◆ミンミン
レベル:5
HP:50
MP:35/50
職業:魔法使い
スキル:王立ラミラス魔法アカデミー卒
魔法:ナオルン ポイズナイ マキエス テレポ ミナオルン ミナポイズナイ
武器:スタンガン
防具:魔法使いのローブ
アイテム:魔法使いのワンド
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...