空手バックパッカー・リターンズ

冨井春義

文字の大きさ
37 / 61
バンコク(タイ)

女の子たちに会いに行く

しおりを挟む
 ・・・サイアムスクエアで買った、とっておきの襟付きシャツを着て。

 さて、やってきたのはバンコクの中心部にあるオフィス街です。

「タカ。ここだ。ここ」

「へー。。ここですか。でっかい建物ですねえ」

 私がよく通っていたこのアクセサリー屋は、バンコクでもかなり大手の部類に入る問屋さんで、ちゃんとした会社です。
 自社ビルで一階は広いショールームになっており、二階がオフィスとストックルーム。この建物は主に若者向けのアクセサリーを扱っていますが、別のビルではゴールドや宝石も扱っています。

「じゃあ、師匠。女の子ってOLさんですね」

「そうそう(ニヤリ)。本物のOLだぞ」

 タカは就職をすぐにしくじったので、OLとおつきあいしたことがありません。なにかあこがれがあるようです。 

「ここの2階のオフィスにエームちゃんてカワイ子ちゃんがいてね、その娘が僕にすごくなついてるんだ。もっとも他の女の子もみんな僕のフアンだけど」

「は~~。。にわかには信じられないですね。。師匠はタイ人ウケするんですかね?」

 ・・・日本人にはウケないが・・と言いたいのかねキミは!

  

 入り口ではガードマンがセキュリティーしています。
 ネームカードを見せてエームと商談に来た・・と伝えるとドアを開けてくれます。そこからすぐの階段で二階に上がると、そこはコンピューターが並ぶオフィスです。働いているのは全員が若い娘さんです。 

「なんか、ここの制服って色っぽいですね」 

「タイの会社は制服を生地で支給するから、みんな自分好みのデザインで仕立てるんだ。ミニが流行っているから、ミニの娘が多いだろ」


 そのうちのひとり、スカートではなくキュートなパンツスーツの女の子がやってきます。

「いらっしゃいませ~」いい笑顔だ。。

 私も飛び切りの笑顔をかえしつつ・・・

  
「エームは居るかい?トミーが来たと伝えてくれたまえ」

「はい。トミーさんですね。いまエームはストックルームに居ますから呼んできます」

「あ、じゃあいいよ。こっちから行くから。ありがとう(にこっ)」


 オフィスとガラスで仕切られた向こうがストックルームです。常時50人くらいの若い女の子が待機していて、接客しています。
 いまも中には西洋人の顧客が商品を見ていますが、彼らも間が悪い。
 私が中に入れば、彼らを接客する女の子はひとりもいなくなるのだ。

 ガラスの扉を開けてタカを連れて中に入ります。

 以前と変わらず、女の子がいっぱい。


「サワディー!トミーちゃんが来たぞ~」

 女の子たちの目が一斉にこっちを向きます。
 突然声をかけたものだから、みんなびっくりしてキョトンとしている。
 近くに居る娘に笑顔をみせて・・

「やあ、しばらく。エームは居るかい」

「あ、は・はい。呼んできます」

 ・・・かわいい奴だなあ。。。

 緊張しています。

 向こうからエームがやってくる。軽い茶色に染めた長い髪。スレンダーな体型で手足が長く、前と変わらずとってもかわいい。

「エーム!会いたかったよ。君に会いにトミーが来たぞ」

 エームもひさしぶりに私を見て緊張しているようです。

「こ・こんにちは。。あの・・何か飲みますか?」

 エームがコーラを持ってきます。

 なにか私の顔を不思議そうに眺めてモジモジしています。ひさしぶりなので恥ずかしいのでしょう。


「あ、エーム。これは連れのタカ。彼もここが見たいと言うので連れてきた」

「こんにちは。タカさん」

「押忍。(タイ人相手にもそれかい!)」

  

「なあ、どうしたのエーム。なんかおとなしいじゃない。ヘンだなあ」

 エームは私の顔をじっと見つめながら、ためらいがちに口を開きます。

「あの・・・弟さんは・・・?」

「え?弟・・・・って?」

「いえ・・ほら、去年まではトミーさんて若くてスマートな人が来てくれてたじゃないですか。あなた、お兄さんでしょ?顔が似ているし。。。」

  

 ・・・・・・・・・・・・・・・・実話です(泣)

  

「なあ、師匠。そう気を落とさないで。まあ、たしかに以前よりもデブにはなったけど、まだ大丈夫だって!」

 早々にそのアクセサリー屋を退散してのタクシーの中、落ち込んでいる私をタカが慰めてくれています。。。

「師匠!ちょっとくらいデブでもいいじゃない。デブ専の女だって居るよ」

 ・・・タカ君。慰めてくれるのはうれしいが、そう何度もデブっていわなくても。。。 

「師匠だってまだ、とりかえしのつかないデブじゃないよ。いまからでもがんばって痩せれば、また女の子にモテモテになるって!な、がんばろう」

 ・・・それもそうだ。今はすこし太りすぎたけど、太るのももう限界にきているだろう。いままでの人生で一番太ったんだもんなあ。。なに。ちょっと食べるのをガマンすれば、きっと元通りになるさ。

 ・・・そうしたら・・・またエームに会いに行こう。 

 と、このときはよもや後に更に10kg以上も体重が増え、3桁体重になるとは夢にも思ってなかったのです。。。

  
 気落ちしながら、宿に戻ると・・・あ!あの後姿は!!

「中田さん!」

 間違えなく中田さんだ。なのに、彼は呼んだのが聞こえない振りして階段を登っていきます・・・しかし帰ってくるのが早かったな? 

「中田さん!ちょっと待て!」

 走って追いかけると、向こうも走って階段を登ります。逃げてやがるな!!

「待てっ!このっ」

 部屋のドアのカギを開けて入ろうとするところで後ろから捕まえました。

「中田さん!どういうつもりだ!・・・?ん?・・あれ?」

 振り返った中田さんの顔。目の周りは黒くなっており、頬が赤くはれ上がっています。殴られたあとだ!

「中田さん!それは一体!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜

菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。 まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。 なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに! この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。

処理中です...